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番外編:IF 辺境伯もう一つの展開だったら1
しおりを挟む※この物語は本編とは関係ありません。
本編は本日休載です。↓以下読んでくれないと多分ストーリーがわかりません。
これはお蔵入りとなったIFルートとなります。事情により没になった原稿です。
時間軸
本編「お嫁様は(元?)運命の人と出会いを果たす2」の展開を途中から変えております。なので前半内容重複しています。
「お嫁様は(元?)運命の人と出会いを果たす1」から見返してくださるとより分かりやすいです。
本編のみ楽しみたい方は飛ばしてください。本日はお休みです。すみません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~本編「お嫁様は(元?)運命の人と出会いを果たす1」の続き~
↓
私が驚いて固まっている間に、辺境伯は私の背景にある窓の外の光景を見て何かを悟ってくれたようだった。
何食わぬ顔で、話題をふってくれた。
「マーガレット妃殿下、実はここの庭園は広いんです。自慢は薔薇園ですが、薔薇園の反対側にある花も綺麗ですよ。
そちらの方は薔薇園よりも人気がなくて、ゆっくり花を愛でられます。」
「え…?と、辺境伯様は、此処の庭園に詳しいのですか?」
「あ…誤解しないでください!別に人気のない場所に誘いこもうとか、怪しいあれではありませんよ!
あの、妃殿下もたまにはお一人でのんびり出来たらと…。」
汗を飛ばしながら、しまったと言う顔で頬を赤くして頭をかく姿に、思わず笑ってしまいそうになった。
「怪しいなどと思ってませんよ。宰相は信用した人しか庭園に行く権利を与えない方ですから。
辺境伯様も今から庭園に行くところだったのですか?」
「そうなんです。実は、友人の娘を探していて…。」
「ご友人の?まぁ、逸れてしまったのですか?
私もご一緒に探しましょうか?」
「ぁあ、いや…もう居場所はわかったので…。」
「?…あ…」
分かりやすく困ったような面持ちになったのを見てピンときてしまった。王子の横にいた令嬢だ。
「あの…もし、良かったら。探していた御令嬢の名前を教えてくださいませんか?」
これは小説の進行状況の確認。
知っていたら心の準備が出来る。小説で王子が心を決めたシーンなら、近々私に話をしてくる。
前もって知っていれば、余計な感傷などは見せず、笑顔で小説のマーガレットのように振る舞えるよう覚悟をしておける。
「モントリア伯爵の令嬢なんですが、どうもさっき様子がおかしかった気がしたもので…。」
モントリア伯爵令嬢。間違いない、やはり彼女はユリシア・モントリア。
この恋愛小説のヒロイン。
「!妃殿下、どうしました!?」
「あ…」
ホロホロと瞳から溢れる滴に、今度は自分が泣いているのだとちゃんとわかった。
辺境伯が、かなり慌てている様子がわかる。
凄く困っている。ちゃんと止めないと、止めないとって思うのに余計とまらない。
何故?
私はただ、子離れされていく感傷に浸っているだけなのに。
その筈なのに。
昨日も、一昨日も、欠かす事なく毎日囁かれてきた声が、指先が、温もりが。
思い出すとこんなに苦しい。
するとそこに、後ろから貴婦人達の上品な笑いが聞こえてきた。廊下の角を曲がった所にある御手洗いから会場に戻る所なのだろう。
(私は、人前でこんな姿を晒す訳にはいかないのにー・)
焦っているのに涙は止まらなくて、マーガレットはどうして良いのか本当に分からなくなっていた。
「妃殿下、ご無礼をお許しください。」
声が聞こえた瞬間、頭からバサリと辺境伯のコートをかけられ、視界が暗くなった。
そのまま力強く手を引かれ、つられて足が動く。
辺境伯は国境沿いの要であり、己自身も強く居ようとする方もいるとか。
彼もまたその1人なのか、普段の明るく穏やかな人柄からは考えられない程に、手の平は固く、力強さを感じる。
その暖かい誠実さの滲む手に、誰にも泣き顔を見られたくない私の気持ちを察してくれたからコートをかけてくれたのだと直ぐに理解した。
2人が向かったのは、先程辺境伯が勧めていた、薔薇園とは反対にある人気のない庭園。それを奥へと突き進んでゆき、長椅子が見えて来た所で歩みをとめる。
「……。」
「……。」
「…………。」
「….………。」
緩やかな風が2人の間に流れ、沈黙を先に破ったのは辺境伯だった。
「…すみません、困っているかと…。」
「…はい、困って居たので、気にしないでください。ありがとうございます。」
マーガレットはぺこりと頭を下げたが、コートに顔を埋めたままなので辺境伯の顔は見えず、反応はわからない。
そして辺境伯は返事のかわりにこう言った。
「御手を。よろしければ、こちらに座ってみてください。」
そう声をかけられて直ぐ、視界の悪いマーガレットをエスコートするように、辺境伯はそっと片手を取った。
誘導された先には長椅子があって、そのまま自然と腰を下ろして座るマーガレットに、辺境伯から不思議と笑みを浮かべているのが伝わってくる。
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