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辺境伯とヒロイン
しおりを挟む「マーガレット様!」
抱きついていたマーガレットが気を失って倒れこむのを、ユリシアは引き止めようとしたが、小柄なのでそのまま一緒に倒れそうになった。
そこにヴォーレンが2人とも地面に直撃しないよう、支える形で抱きとめ、ゆっくりと下ろした。
ユリシアは慌てて立ち上がってマーガレットの顔をみる。
「ど、どうしたの?」
「……大丈夫だ。気を失われているだけだ。それよりもユリシア、何故此処におまえがいる?」
嗜めるヴォーレンの視線を受けて、ユリシアは思わず視線をそらして。もじもじしている。
「だ…から。….ごめんなさい。」
「…アネモネの華園の横が叔父の護衛警護対象だったな。直ぐ戻りなさい。」
「でも…マーガレット様が……。」
ちらりと視線をマーガレットにやるユリシアに、ヴォーレンはため息をついた。
「わたしが王宮に連れて行く。おまえは1人で叔父の元へ戻れるな?」
「……。うん。」
ユリシアが頷くと、ヴォーレンはマーガレットを横抱きにして背を向け、歩いてゆく。
その姿を後ろから見送るように見つめていたユリシアは、思わず叫んだ。
「ヴォーレン!」
ユリシアの呼び掛けに、ヴォーレンは足を止めて振り返る事なく言葉を発した。
「…ユリシア、おまえの気持ちは、わたしには勿体ない。10も歳上の相手じゃなくて、年頃も身分も見合う者を望んだ方が良い。」
そう言い残して去って行こうとするヴォーレンに、ユリシアはその瞳に涙を溜めて叫ぶでもなく、けれどはっきりとした声音で言った。
「ごまかさないで、ちゃんと言って。」
「……。」
「ちゃんと返事を貰わないと、私は何時迄も貴方に未練を残すのよ。ちゃんと言って。」
「わたしは、爵位を持つ貴族としていずれ、結婚し子を生むだろうと思う。だけど多分それは、互いに割り切れる相手でしか無理だ。」
「….。それはマーガレット様のため?」
「わたしが自分で決めた事だ。主に忠誠を誓った。わたしはいつでも主を優先する。」
「それを、望まれていなくても?」
「…ーそうだな。」
「なら、暫く結婚は無理ねー。」
「は?」
「だってね、ヴォーレンは嫌々お家の為に、嫁がなければならない人を嫁に取れる性格じゃないでしょう?かと言って金さえあれば良いとかって女も無理。
せっかくイケメンなのに面倒くさい性格。」
「…悪かったな。」
「理解してあげられるの、私だけでしょ?」
「……しぶといな。」
「まぁ、ずっと好きだったから。こればっかりはアッサリ手放せないのよ。
わかるでしょ?」
「…はぁ。取り敢えず、ユリシアは伯父の所に早く戻ってやれよ。心配してるぞ。」
「はーい。」
やっと満足したのか、ユリシアは再び茂みの中に入ってゆく。その前に、一応振り返って忠告した。
「ヴォーレン!髪についてる花弁、とっておかないと王子に誤解されたら貴方死ぬわよ!!」
「誤解?」
首を傾げて、ユリシアの言葉の意味を考えてみる。辺りを見渡してから冷静になって考えてみると、とてつも無く宜しくない考えに気が付いて顔が赤くなった。
(確かに、まるで茂みの中で良からぬ事していたと思われかねない。)
ひとまず、ヴォーレンは身嗜みを確認してから王宮へ戻る事にした。
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