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18 やはり私には理解できないわ
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確かにそうなのだが、それならば元婚約者より家格が上であればいいだけなのだ。わざわざ王女であるスカーレット自ら嫁ぐ必要はない。
しかしグレイが思いを寄せる令嬢が必ずしも王太子妃、王妃としての素養があるかは分からない。
スカーレットはその令嬢の側近となり間接的にグレイを支えるため、この国に降嫁という形で残ることに決めた──らしいのだ。
クラレットは心底分からないといった顔でスカーレットに尋ねた。
「そもそも王太子殿下がそれを望むと王女殿下に仰ったのですか?ウィスタリア侯爵令嬢を好ましく思っていると」
「え?」
スカーレットはクラレットの言葉にハッとした。
グレイの想い人がキャナリィではないという可能性を全く考えていなかったのだ。
「え?違うというの・・・?」
「いえ、私は王太子殿下のお気持ちを存じ上げないので──」
そう言ってクラレットはキャナリィの方を見た。
「──幼少の頃は確かに殿下の婚約者候補に名を連ねましたがお気に召されなかったようで・・・恥ずかしながら一番に候補から外されたのですよ」
続くキャナリィの言葉にスカーレットは愕然とした。
王族として広い視野を持って過ごしてきたつもりだった。
引き返せないところにまで来ているというのに、まさか自分は思い込みだけでここまで来てしまったのか──スカーレットは眩暈がした。
そして、突然スカーレットがこの国への留学を決めた理由が心を寄せる人がいるからだと信じて疑っていなかった侍女や護衛は、顔には出さずに心から驚いていた。
スカーレットがそんなことを考えていたとは・・・しかも見切り発車であった様子──。
スカーレットは幼い頃グレイと会ったことがあり、グレイが初恋なのだとキャナリィとクラレットに話して聞かせた。
その時に友好国の王子との婚約が嫌だと我儘を言ってしまったスカーレットは、同じ友好国なのにビリジアン王国とはあった見合い話が、未だ婚約者のいないバーミリオン王国と一度も上がらなかったのは、自分がグレイに嫌われてしまったからに違いないと思ったらしい。
自身が嫁ぐことが叶わないのであれば、せめてグレイが幸せになれるよう努力をしよう──そう思い立ったということだった。
「何故王太子殿下に直接確かめなかったのですか?」
クラレットがスカーレットに問うた。
「そんな、面と向かってあなたが好きなのはウィスタリア侯爵令嬢ですかなんて伺うことなど出来ませんわ」
「では、何故キャナ様に直接会わずに情報収集ばかりされておられたのですか?」
クラレットは良い機会だと以前感じた疑問を解消することにした。
「──グレイ様の想い人に会いたくなかったのよ」
王族の立場を利用し、キャナリィの気持ちを知らなかったとはいえ思い合う二人の婚約解消をも厭わず、長年慕う方に自分以外の人を娶らせ、自身はその幸せをフォローするために好きでもない他の男性の元に嫁ぐ──。
文字通り人生を掛けてグレイの幸せを望んだスカーレットも、ある意味恋に狂っていたのかもしれない。
まぁ、本人の気持ちを確認することなく行動に出たことは如何なものかとは思うが──それも恋によるものであれば・・・
キャナリィは大きなため息をついた。
(恋とは王族をも狂わせるものなのね──やはり私には理解できないわ)と。
この時までキャナリィはまさか王族ですら「恋」に振り回されることがあるなどとは、全く思っていなかったのである。
グレイへの気持ちが明らかになったばかりのスカーレットは初恋を引きずる恋愛初心者。
クラレットは未だ自分を手に入れるために公爵の地位を捨てたジェードの気持ちに気付いてはいない。
そして貴族としての生き方を優先するあまり完全受け身のキャナリィ──気配を消し成り行きを見つめていた侍女や護衛はそんな背景を知るはずもないが、今、とても不安になっていた。
スカーレットの本当の気持ちが分かり、スカーレットも自身の気持ちを認めている。
事は良い方向に動いているような気がするものの、このままシアンがスカーレットを、王太子がキャナリィをエスコートするようなことになれば、キャナリィとシアンの婚約解消が現実のものとなってしまう可能性が高まってしまうのだ。
状況は変わっていない。
時間は一刻一刻と迫ってきている。
果たしてこの三人の令嬢だけで良い解決策を導き出すことが出来るのだろうかと──。
しかしグレイが思いを寄せる令嬢が必ずしも王太子妃、王妃としての素養があるかは分からない。
スカーレットはその令嬢の側近となり間接的にグレイを支えるため、この国に降嫁という形で残ることに決めた──らしいのだ。
クラレットは心底分からないといった顔でスカーレットに尋ねた。
「そもそも王太子殿下がそれを望むと王女殿下に仰ったのですか?ウィスタリア侯爵令嬢を好ましく思っていると」
「え?」
スカーレットはクラレットの言葉にハッとした。
グレイの想い人がキャナリィではないという可能性を全く考えていなかったのだ。
「え?違うというの・・・?」
「いえ、私は王太子殿下のお気持ちを存じ上げないので──」
そう言ってクラレットはキャナリィの方を見た。
「──幼少の頃は確かに殿下の婚約者候補に名を連ねましたがお気に召されなかったようで・・・恥ずかしながら一番に候補から外されたのですよ」
続くキャナリィの言葉にスカーレットは愕然とした。
王族として広い視野を持って過ごしてきたつもりだった。
引き返せないところにまで来ているというのに、まさか自分は思い込みだけでここまで来てしまったのか──スカーレットは眩暈がした。
そして、突然スカーレットがこの国への留学を決めた理由が心を寄せる人がいるからだと信じて疑っていなかった侍女や護衛は、顔には出さずに心から驚いていた。
スカーレットがそんなことを考えていたとは・・・しかも見切り発車であった様子──。
スカーレットは幼い頃グレイと会ったことがあり、グレイが初恋なのだとキャナリィとクラレットに話して聞かせた。
その時に友好国の王子との婚約が嫌だと我儘を言ってしまったスカーレットは、同じ友好国なのにビリジアン王国とはあった見合い話が、未だ婚約者のいないバーミリオン王国と一度も上がらなかったのは、自分がグレイに嫌われてしまったからに違いないと思ったらしい。
自身が嫁ぐことが叶わないのであれば、せめてグレイが幸せになれるよう努力をしよう──そう思い立ったということだった。
「何故王太子殿下に直接確かめなかったのですか?」
クラレットがスカーレットに問うた。
「そんな、面と向かってあなたが好きなのはウィスタリア侯爵令嬢ですかなんて伺うことなど出来ませんわ」
「では、何故キャナ様に直接会わずに情報収集ばかりされておられたのですか?」
クラレットは良い機会だと以前感じた疑問を解消することにした。
「──グレイ様の想い人に会いたくなかったのよ」
王族の立場を利用し、キャナリィの気持ちを知らなかったとはいえ思い合う二人の婚約解消をも厭わず、長年慕う方に自分以外の人を娶らせ、自身はその幸せをフォローするために好きでもない他の男性の元に嫁ぐ──。
文字通り人生を掛けてグレイの幸せを望んだスカーレットも、ある意味恋に狂っていたのかもしれない。
まぁ、本人の気持ちを確認することなく行動に出たことは如何なものかとは思うが──それも恋によるものであれば・・・
キャナリィは大きなため息をついた。
(恋とは王族をも狂わせるものなのね──やはり私には理解できないわ)と。
この時までキャナリィはまさか王族ですら「恋」に振り回されることがあるなどとは、全く思っていなかったのである。
グレイへの気持ちが明らかになったばかりのスカーレットは初恋を引きずる恋愛初心者。
クラレットは未だ自分を手に入れるために公爵の地位を捨てたジェードの気持ちに気付いてはいない。
そして貴族としての生き方を優先するあまり完全受け身のキャナリィ──気配を消し成り行きを見つめていた侍女や護衛はそんな背景を知るはずもないが、今、とても不安になっていた。
スカーレットの本当の気持ちが分かり、スカーレットも自身の気持ちを認めている。
事は良い方向に動いているような気がするものの、このままシアンがスカーレットを、王太子がキャナリィをエスコートするようなことになれば、キャナリィとシアンの婚約解消が現実のものとなってしまう可能性が高まってしまうのだ。
状況は変わっていない。
時間は一刻一刻と迫ってきている。
果たしてこの三人の令嬢だけで良い解決策を導き出すことが出来るのだろうかと──。
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