星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

文字の大きさ
19 / 72

不時着*

しおりを挟む

*ほぼネタバレですが、飛行船は爆発炎上します。誰も怪我しませんが、苦手な方は飛ばして下さい。


ーーーーーーーーーーーーー



 最初に言っておく。
 皆んな怪我一つなく荷物まで無事だったのはひとえに、船長の的確な判断と指示、そして乗組員の確かな技術の賜物である。
 王子様は何もしていない。

 気付いたのはライトだった。
 俺たちは中を見学したり、また外を眺めたり飽きることがなかった。ライトはまた一人で外を眺めていたのが、不思議そうに顔を窓の方に向けたままこっちにやって来た。
 彼の視える目で何か視てるんだろうか?

「本当に空飛べるんだね。でも危なくないのかな」
「?」
「人が居たよ」
「飛べるが、違反だ」
 空気が一変、船内に緊張感が走る。
「どこだ?!」

 ……みゃぁあ……。
「猫?」
 グエンが呟いた。俺も聞こえた。
「やっぱり、猫いるんじゃ。乗る時もした」
 ホラーはヤだ、とふざけようとした時。

 ドン!!

 という爆発音と共に俺たちは衝撃で宙に浮いた。

「爆弾?!」

 もう一度言おう!
 王子様は何もしていない。
 下手に風を送ると絶妙なバランスをぎりぎりで保っているのに変な負荷がかかってそれが崩れてしまうと、釘を刺されて魔法は使えない。風は逆に火を煽りかねないし。

 俺たちはしっかり抱き合った。グエンなら移動可能だったのだろうが、それはしなかった。乗組員を見捨てる事が出来ない。一応責任者だし。俺はパニックで思い付かなかったけど。パニックじゃなかったとしても瞬間移動なんか出来るとは思わない。だから六人で抱き合ったまま大人しくしてた。俺はリロイの胸に頭をぎゅっと押し付けた。

 左の窓に黒煙が流れていくのが見える。
 片方だけ爆破されたらしく機体がバランスを崩してぐらぐらと揺れる。
 視界もぐらぐらと揺れる。
 俺たちもお団子になったままぐらぐらと揺れた。
 
 落ちて行った先は住宅街だった。
「戻る暇はない! このまま行く!」
 住宅街に差し掛かった所で爆破は行われた?
「まさかわざとか?!」
 もともと公爵家に着陸する予定はそのまま遂行された。
 もっと安全な川の辺りとかあったらしいが、引き帰す途中で住宅街に突っ込む可能性の方が高くて、それなら公爵家の庭に不時着するのが一番安全だった。

「あっつ!」
 火が近くまでやって来てるが、熱さが退いた。
 キールの水だ。
 機体のバランスが逆に崩れるかも知れないという不安で、俺たちの周りにしか魔法を掛けられない。
 魔法って便利な様で、万能ではないんだな。

 船体は加速して、さっきより酷い衝撃が下から来た。
 そしてそのまま前にズズズッと進み止まった。
 ドアが開いて、人や荷物を強引に外に送り出す。炎上してる飛行船から大分離れたところに放り出された。
 やっとの王子様の風魔法の出番だ。
「他に運び出す物はないか?!」
 何も無い事を確認すると、どこからか水が勢い良く飛んで来た。
 見ると大きな噴水がある。キールが噴水の水を使って、飛行船の消火にあたる。ヒヨリが気付いてキールに手を添えると、水は勢いを増した。
 さっきまで空の王様の様に優雅に飛んでいた飛行船は見る影も無くなっていた。真っ黒焦げに焦げて、どす黒い煙を噴き出している。
「乗組員全員無事です!!」
 その声に、安堵の空気が流れる。 


 それから縁起でもない事言った俺は反省はしました。
 でもやっぱり、飛行船は焼け落ちるものなんだと思う。誰にも言わないけど。


 そして、王都に起こっている問題とはこの事だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。 となります。

勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される

八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。 蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。 リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。 ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい…… スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

王様の恋

うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」 突然王に言われた一言。 王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。 ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。 ※エセ王国 ※エセファンタジー ※惚れ薬 ※異世界トリップ表現が少しあります

処理中です...