星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ノエル

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不時着*

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*ほぼネタバレですが、飛行船は爆発炎上します。誰も怪我しませんが、苦手な方は飛ばして下さい。


ーーーーーーーーーーーーー



 最初に言っておく。
 皆んな怪我一つなく荷物まで無事だったのはひとえに、船長の的確な判断と指示、そして乗組員の確かな技術の賜物である。
 王子様は何もしていない。

 気付いたのはライトだった。
 俺たちは中を見学したり、また外を眺めたり飽きることがなかった。ライトはまた一人で外を眺めていたのが、不思議そうに顔を窓の方に向けたままこっちにやって来た。
 彼の視える目で何か視てるんだろうか?

「本当に空飛べるんだね。でも危なくないのかな」
「?」
「人が居たよ」
「飛べるが、違反だ」
 空気が一変、船内に緊張感が走る。
「どこだ?!」

 ……みゃぁあ……。
「猫?」
 グエンが呟いた。俺も聞こえた。
「やっぱり、猫いるんじゃ。乗る時もした」
 ホラーはヤだ、とふざけようとした時。

 ドン!!

 という爆発音と共に俺たちは衝撃で宙に浮いた。

「爆弾?!」

 もう一度言おう!
 王子様は何もしていない。
 下手に風を送ると絶妙なバランスをぎりぎりで保っているのに変な負荷がかかってそれが崩れてしまうと、釘を刺されて魔法は使えない。風は逆に火を煽りかねないし。

 俺たちはしっかり抱き合った。グエンなら移動可能だったのだろうが、それはしなかった。乗組員を見捨てる事が出来ない。一応責任者だし。俺はパニックで思い付かなかったけど。パニックじゃなかったとしても瞬間移動なんか出来るとは思わない。だから六人で抱き合ったまま大人しくしてた。俺はリロイの胸に頭をぎゅっと押し付けた。

 左の窓に黒煙が流れていくのが見える。
 片方だけ爆破されたらしく機体がバランスを崩してぐらぐらと揺れる。
 視界もぐらぐらと揺れる。
 俺たちもお団子になったままぐらぐらと揺れた。
 
 落ちて行った先は住宅街だった。
「戻る暇はない! このまま行く!」
 住宅街に差し掛かった所で爆破は行われた?
「まさかわざとか?!」
 もともと公爵家に着陸する予定はそのまま遂行された。
 もっと安全な川の辺りとかあったらしいが、引き帰す途中で住宅街に突っ込む可能性の方が高くて、それなら公爵家の庭に不時着するのが一番安全だった。

「あっつ!」
 火が近くまでやって来てるが、熱さが退いた。
 キールの水だ。
 機体のバランスが逆に崩れるかも知れないという不安で、俺たちの周りにしか魔法を掛けられない。
 魔法って便利な様で、万能ではないんだな。

 船体は加速して、さっきより酷い衝撃が下から来た。
 そしてそのまま前にズズズッと進み止まった。
 ドアが開いて、人や荷物を強引に外に送り出す。炎上してる飛行船から大分離れたところに放り出された。
 やっとの王子様の風魔法の出番だ。
「他に運び出す物はないか?!」
 何も無い事を確認すると、どこからか水が勢い良く飛んで来た。
 見ると大きな噴水がある。キールが噴水の水を使って、飛行船の消火にあたる。ヒヨリが気付いてキールに手を添えると、水は勢いを増した。
 さっきまで空の王様の様に優雅に飛んでいた飛行船は見る影も無くなっていた。真っ黒焦げに焦げて、どす黒い煙を噴き出している。
「乗組員全員無事です!!」
 その声に、安堵の空気が流れる。 


 それから縁起でもない事言った俺は反省はしました。
 でもやっぱり、飛行船は焼け落ちるものなんだと思う。誰にも言わないけど。


 そして、王都に起こっている問題とはこの事だった。
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