星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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お爺ちゃん

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「私の“麗しのグエン=ローゼンハイム号”がーーッ!!」
 グエンが地面に崩れ落ちる。
 う~ん。登場と共に爆発炎上とは。
「あっという間だったな」
「こら」
 憎まれ口を叩く俺の頭に手を乗っけて、リロイがぐにぐにする。
「反省してます」
 船長を始め乗組員の人たちには余計な事言った申し訳なさがあるんだが、誰も怪我なく無事だったせいか、グエン見ると緊迫感なく舌打ちしたくなって来る。

 二次爆発はないみたいだ。
 庭のちょうど真ん中辺りに不時着して、被害も建物には無く地面が少々抉れた程度。

 安堵でぼーっとしてると、屋敷からわらわらと人が大勢出て来るのが見えた。妖精の森にあった屋敷よりこっちの方が規模は小さいのに、驚く位大勢の人が居た。多くは使用人とおぼしき人たちで何人かは門の方に走って行く。見ると野次馬が来ててそちらの対応に向かったみたいだ。ご近所さんにも謝罪が要るよね。メイドさんたちの何人かは救急箱みたいなのを持っていた。
「わお、メイドさんだよ」
「僕も本物初めて」
 クライヴさんで執事さんにはそれなりに慣れてるけど、メイドさん。年配の女の人も居るけど、皆んな可愛い上に上品だ。現代日本で本物のメイドさんなんてまずお目に掛かれないので俺たちは盛り上がってしまった。
 そういう対象として見てる訳じゃない。
 ヒヨリと、多分ライトも。
 二人は兎も角俺は異性愛者だった筈なのにな。それともそう思ってたのは現代日本の弊害なんだろうか。個人的にヒヨリ以外で誰が好きだと思った事がなかったしな……。
 
 その大勢の中、中心に二人、偉い感じの人が居る。
「怪我はないか」
 この中で一番歳上だろう。それだけじゃなく一番上品でもある。その人が傍まで来て声を掛けた。
 年相応の落ち着きのある声が聴き心地好い。キールにもそう思ったが異世界の人だからじゃないと思う。ヒヨリにもそう思うし。水属性なのかな。そんな感じはしないけど。
 小柄で華奢、白髪なので元の髪色は分からないが瞳の色はリロイと同じ濃紫の、そして若いリロイより力強さがある。穏やかな感じなのに凄く威厳があり、それでいて威圧感が無くて包み込まれる。

 お爺ちゃんだ。

 リロイのお爺ちゃんは小柄なのに、凄く大きく見えた。息子に爵位を譲って悠々自適の生活なんだとか。
 俺たちは応接室に通されて、風呂が用意されるまでお茶する事になった。船長さんたちは別の部屋だ。
 なんとこれから事情聴取だと。仕掛けられた爆弾が見つかるまで。
 俺たちを救った英雄なのに。英雄だからか。英雄は大変だ。
 別に本気で疑われてはない。一般的な手続きなんだろうが憤りを感じてしまう。それだったら俺たちも同じだし。
 自分が飛行船の爆発炎上できな臭いのが気になる。それで豪華なソファに座るのが気が引けたんだが。そう言うと。
「お行儀が良い」
 嫌味な感じじゃなくそう言われた。
 言ったのは、前宰相という人で、イギー=ウエッヴス。もう一人の偉い感じのする人だ。
 前宰相という人も大きくはないが、みっちり詰まってる。背は大きくないががっしりしてて一線を退いたというけれど元気でパワフル。こういう人は自分一番だったら鼻持ちならないんだろうがリロイのお爺ちゃんを心酔してるのが、良い印象を受けた。お爺ちゃんをトップに出来なかったのが、現役中やり残した最も後悔する事だったとか。
「トップって、宰相じゃないぞ」
 今一番そこに近い人からの耳打ちを無視。
 不敬罪とか反逆罪になるんじゃ、ヒヨリが呟いた。

 お爺ちゃんは、リロイ・ミュート=アームストロング。
 リロイと、ファーストネームどころかミドルネームまで一緒だった。
 呼び方をどうしよう。

「お爺ちゃんでいいぞ」
 思っている事を察してそう言ってくれる。ウエッヴスさんもニコニコと笑ってるので良いのかな。

 向こうでは俺にお爺ちゃんは居なかった。俺の生まれる随分前に二人とも亡くなってて、親から聞いた話でお爺ちゃんには親にはない親近感を覚えていたから、目の前の“お爺ちゃん”に嬉しくなる。

「あの女とは違いますよ」
「?」
 “お行儀が良い”と言われた事に関してだが。
「もしかして、異世界人居るの?」









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