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怒涛のパーティーは続いている
しおりを挟む「もう直ぐヒヨリの誕生日だ」
そういえば。
誕生日とは、大切な人を特に大切にする日。
春の早い季節に生まれた彼の誕生日には、木蓮が咲いていた。俺たちの家の玄関先で仲良く咲く。この世界は日本ほど暖かくないので、あの大きな鳥の形をした花はヒヨリの誕生日から少し遅れて咲くのかな?
「こんな時に思い出すな」
離れていた唇が言葉を奪う様にしてまた合わされる。
他の男の事って事? そういうのって本当にあるんだね。恋愛もキスも初心者の俺はどう反応していいか分からず、慣れた年上の男に身をゆだねる。
ただの休憩場所の筈なのに、豪華な部屋だ。多分パーティーで盛り上がったお貴族様たちがお使いになるーーそういうところだというのは想像がつく。
リロイの向こうにベッドが見えているから。パーティーから抜け出してそういう部屋に連れて来られたのだが、彼は俺をベッドに誘う事はなくソファに座らせた。
彼とキスしながら思い出したのは、ヒヨリの誕生日と、先程のパーティーイベントでの例のアレだ。
高らかに宣言したお嬢様に疑問が湧く。
『どうやって?』
どうやって宝に願いを聞いてもらうんだ?
そのまま願いを言い続ける?
それとも月夜の晩に月の光に晒す?
お爺ちゃんやキールに意見を求める人も居たが、俺たちに説明した以上のものを客のお貴族様たちにキールは提供せず、ジョバンニ=カスティーリャの独壇場は揺るがず、答えは出ないままパーティーはざわざわを続ける。
誰に訊いたのか?
”かぐや姫のお宝”が何かの噂になっていてーー例えば暇な図書館の高い天辺に巣食っている俺たちと同郷の彼女が煽っているのかーーと思っていたら、ジョバンニ=カスティーリャ本人のご要望だった。
話のでどこはジュジュかも知れないが、求めているのはジョバンニ=カスティーリャらしく、お宝を探しにこの国にやって来たというのだ。
そして自分を餌にしてこの国の貴族たちから、お宝に関する情報、お宝それ自体を欲している。
何故彼が、お宝を欲しているのかというのは分からない。キールが言ってた様な事かも知れないし、もっと別に叶えたくても叶えられない願い事があるのかも。ただそれは問題じゃなく、彼にお宝を提供すべく躍起になって手段を選ばなくなっている人がいるという事だ。
少なくとも関連して詐欺事件は起こっているわけで。
この今日の茶番。
そこに在る【龍の首の玉】が本物だと信じている人間なんて居ない(信じたい人間は居るとしても)。
公爵家に【龍の首の玉】を売りつけたペテン師はいる訳で。
「あいつが主犯なんじゃないか」
リロイは、自分を餌にしてお宝にお金を注ぎ込む人間を唆してるのは、当のジョバンニ=カスティーリャだと思っている。
その線もありかな、と俺たちも思うが。
ただ、この国に二つしかない公爵家の片方を詐欺で引っ掛けようとするリスクを考えると、そこまでするかなというのはキールの意見。
彼は何が欲しいのか?
少なくとも、公爵家の令嬢や、公爵家ではないだろう。
本当に宝物が欲しいのか?
まるで『竹取物語』だ。
“逆かぐや姫”。
”かぐや姫男バージョン”。
宝が欲しくて、自分を欲する人間を唆す。
「自分で探せばいいのに」
ライトの言葉に皆んな目を細くする。こういうところヒヨリは好きになったのかな。
俺の問題は、ライトも同じだと思うが。
在るか無いかのお宝問題はどうでも良く、ヒヨリの誕生日どうしようという事だ。
あんまりこんなとこに長居してもしょうがないし、パーティーもそろそろお開きかと思い俺たちは部屋を出た。出たところで別の部屋から出て来たライト、ヒヨリと出会す。
「ライトなんて子供のクセに!」
喧嘩を始めようかとする俺ーー本気じゃない戯れ合いみたいなケンカーーは、微かな物音に気付いて彼らが出て来た部屋に再び彼らを押し込んでそのままリロイを引っ張り込む。
「どうした?」
訊くリロイに、唇に人差し指を当てる。
風属性の俺は耳がよい。
まだまだ在るそれ用の部屋の鍵が開く音がして人が出て行く気配。
リロイとライトがこちらのドアの隙間から外の様子を伺う。
暫くして、大きく扉を開き放ち、
「わぁお」
ライトが目を見開いてパーティー会場への廊下を見ている。
「厄介だな」
リロイもライトと同じ方を凝視している。
「誰が居たの?」
ヒヨリの問いにとんでもない答えが返って来た。
「ジョバンニ=カスティーリャと、リズベスト夫人だ」
とんでもない答えは続く。
「何かお腹が……」
ライトの頬が赤い。リロイは冷静だ。
「空洞になってたな」
「空洞?」
ヒヨリが訊き返す。俺も分からん。
火属性の彼らはーー他の火属性の魔法を使える人も同じ能力を持っているとは限らないが、ライトとリロイは俺たちに視えないものを視る事が出来る。
「リズベスト夫人の腹の辺りが黒くなってた」
「ブラックホールみたいだったよ」
「「え?!」」
俺とヒヨリは声を上げた。
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