星降る真夏の夜に、妖精の森で迷子になる。

折原ミフク

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いきなり、会議。

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 “人の気配”とはなんぞや、という論争があった様な無かった様な。そんなものが有るのか無いのか、有るとしたら一体何なのか?
 今の僕には分かる。
 それは騒々しく、その中心は王子様の態を成している。


「なかなか面白い事になってるじゃないか」
「「うわっ?!」」
 何故か俺とライトが手を取り合って驚いてしまった。

 さっきまで居なかった人物が急に現れると驚く。当たり前だけど。
 しかも、いきなり、何人も!
 グエン、ゾフィー、エドモンド警部を始めとする警察の人々、そしてジュジュが居た。

「何でお前が居るんだ、って顔だな」
 俺たちと同じ異世界からの転移者、ジュジュは言った。
 ジュジュは大変な美女だが、その美しいのが禍々しいとしか俺の目には映らない。
「色々と話題が集まってるらしいからな。確かめに来たんだ。出たんだろう?」


◇◇◇◇


 ジョバンニ=カスティーリャとリズベスト夫人が同じ部屋から出て来たのに驚いて、ライトとヒヨリ共々俺はまたリロイとさっきまで居た部屋に戻って、息を潜めて大人しくしていた。
 なんせ他人の秘密を覗き見してるんだから。
 最近こんなの多いな、嫌だな。こちらのせいじゃ無く、その結果はいい所に落ち着いてるとはいえ。
 と思って、少なからず罪悪感に苛まれていたから余計に、いきなりの大勢の人の気配と出現に心底驚いたのだ。
 だけど現れた人々はこの状況に喜んでいるみたいだった。自分の立場やら現れた事情背景を無視して。
 きっと、いつでも能天気な王子様の影響に違いない。


「うわ~! 俺、転移魔法って初めてです!」
 彼は確か、アッテンボロー君。エドモンド警部の部下。警部以外で名前の分かるのは彼だけだ。彼の他に二人居る若い警察官も、驚いた表情をしている。

「グエンは分かるけど、他の人は何で?」
 王弟にして、王太子殿下はまだ決まった相手ーー配偶者も婚約者も居ないので、この手のパーティーは脱兎の如く逃げる。なので今日は何処で何してんだろうと思ってたら、ここに来て何をしてんだ?

「それはね! 三人も転移魔法が使える人間が居るからなんだね!」
 意気揚々と答えるグエンに。
「へ~、そうなんだぁ。って、ちげーわ!」
 応えるのは既に俺だけだと気付いているが止めたくても止められないのは、同じ風属性の師匠だからだ。
 だってもう、誰もうちの師匠に構ってくれないんだもの。

「ライト、あ~ん。このパイ、絶品だよ」
「あ~ん」
 ライトとヒヨリは、部屋の中に用意されていた軽食やお菓子をお互い食べさせるので忙しいし、リロイも明後日の方を向いている。乳兄弟のクセに! いや、乳兄弟だからか。
 完全に俺は王太子殿下担当になってしまっている。
 何で、俺と彼は同じ風属性なんだろう?

「不穏な話が出て来て、エドモンド警部に相談を受けたんだ」
 ゾフィーがまともに答えてくれる。
「不穏な話?」
「大量の在庫処理がなされたらしいんです」
 アッテンボロー君が、自分の職務を思い出した様で報告を始めた。
 それでも深刻な感じにはならず、皆んなはライトとヒヨリを見倣って、軽い食事を始めた。


「爆弾のか?」
 本当に、不穏な話になって来た。リロイが眉を顰めて訊き返す。
「はい。しかも、その出所と思われる地下組織の人間たちが次々と居なくなってるんです」
 ?
「地下組織同士で抗争して殺し合ってるという意味じゃ無い。この街から逃げ出してる」
 エドモンド警部が説明不足だと思ったらしくアッテンボロー君の報告に付け足した。
「トップはもともと近所に居るわけじゃないし、爆弾騒ぎで近所にいた奴らも地方や他所の国に逃げてたんだが」
 悪党は自分たちの行う悪行の遠くにいるものらしい。
「自分たちが原因なのに」
 リロイが忌々しいと毒付いた。

「それが下っ端連中まで居なくなってる。自分たちが原因のせいで歓楽街も閑古鳥でな。自分で自分の首を絞めるとはまさにこの事なんだが。そいつらが家族や連れを伴って一気にこの街から出て行ってる。
 情報屋から、大量に在庫処理がなされたらしい、とタレコミがあったんだが。それが使われると決まったわけじゃないし、そこまでの情報はないんだが、地下組織もどうやら確かな事を掴んでるわけじゃない。逆に何か悪党の勘というのかな、そういうのが働いたらしくてな」
「それは本当に逆に何かありそうですね」
「だが、大量のブツが誰に流れたかは突き止めた。一人の人間……。
 ジョバンニ=カスティーリャ」

 それは今まさにこの屋敷のパーティーの中心人物の名前だった。 
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