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第12話 本当の家族

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「噂好きなのが貴族ですからねぇ。本当は、真実が漏れる危険のある人物は排除しておきたいところだけど……」

「ハンナは、いつだって忠実な――信頼できるメイドよ!」

「それは、でしょう? 始末してそれを隠すのも大変だから乗ってあげようかしらとも思いましたけど……それには喉を潰しておいた方がよろしいかしら?」

 そう言ってエマは、まるで悪魔のようにニタリと不気味に笑いかけてきた。

「まっ、待って! そんなことをしなくてもハンナは、何も喋らないわ! それに貴族とのかかわりも無くなるのですし」

「ふ~ん……」

 エマはエステルの心の奥底を見透かしたような目つきで相槌を打つと「なるほど」と小さく呟く。

「――な、に?」

「あなたは色々と言っておきながら、そこのメイドを守りたいだけなのね~ぇ。たかがメイドを……。私と出会った頃からあなたたちはベッタリだったものね~ぇ。そ~う」

 まるでエマは品定めでもしているかのようにエステルとハンナを交互にジロジロと見るとフッと鼻で笑ったのだった。

「そのメイドと並んでる方がよっぽど親子なんじゃありません? あんな立派な母親がいながら……ねぇ? 本当の母親とはまるで他人のようで」

「お母、様は……私のことなんて……」

 母親の話になった途端、エステルが俯いてたどたどしく喋り出したのを見てエマはプッと吹き出し、クスクスと下品に笑いだすのだった。

「そうね~! あの女は実の娘であるあなたよりも、むしろ私の方を可愛がってくださるぐらいですし。あなたの婚約者が私のことばかり構うようになってからはそれはもう顕著になったわよねぇ」

 何も言い返せずにエステルはギリリと奥歯を噛みしめた。

「まあいいわ。所詮はユーレイと卑しい庶民。しかも片方は罪人の世話係として自ら進んで冬の館に入った変わり者。それが何を言ったところで誰も気にも留めないでしょうし、頭がおかしくなったと言われるのがオチですしね」

 ガクンとエステルが床に崩れ落ちたのを見るや、エマは嬉しそうな顔で廊下へと出るドアに向かう。

「く・れ・ぐ・れ・も、私の野望の妨げになるようなことはこれ以上しないと約束してくださいよ。

 念を押すようにそれだけ言い捨てるとエマは部屋から出ていった。

「お嬢様っ!」

 エマがいなくなるとバッとエステルのもとへと駆け寄り、そのハンナの目にはジワリと涙が浮いていて……。

「私のことなんて……そんなに気にかけてくださらなくても……。お嬢様の身の安全が一番大事ですのに……」

「いいの……私にとっての、唯一の家族ですもの――ハンナ」
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