喚ばれた先は異世界で…!? ~天涯孤独となったが、実は俺には娘がいたようです~

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)

文字の大きさ
1 / 2

【前編】

しおりを挟む
「あぁ……ついに俺も、一人ぼっちか………。」

 雪のチラつく寒空の下、カイロ代わりに買ったペットボトルの温かい紅茶を啜りながら駅から自宅への道を足早に歩いていた。
 日本へ大寒波が押し寄せ、俺の今住んでいる地域には珍しく降った雪が視覚的にも寒さと寂しさを煽り、それが俺の気持ちを感傷的に沈ませる。
 40歳過ぎの男で、結婚をしたいと思ったこともあったがタイミングを逃したりなんやかんやあって未だに独身………。
 大学生の頃に早くに亡くなった母、そしてつい先日父も亡くなってしまい実家に行っていた。
 俺は一人っ子で今であり、疎遠となっている遠い親戚がいるぐらいで葬式も呆気なく終わってしまったのだった。
 長いこと父しか住んでいなかった実家は物も少なくがらんどうで……母が居なくなった後の父が抱えていた寂しさを物語っているようであった。

「結婚もせず、子供も作らず……。」

 両親が死んでしまえば本当に天涯孤独というやつで、若い頃の俺は年を取った俺がまさかこんな風になっているとは夢にも思っていなかったものだ。

「それなりに何度か彼女はいたこともあったが……。あの時に結婚していれば、違ったのかな~。」

 20代の頃なんかまだまだ遊びたいという欲求ばかりで彼女を怒らせることも多くあり、子供を考えていた彼女の方がもういい年だからとおそらく俺からのプロポーズを待っていたであろう節はあった。
 だけど俺はそれに気付かないフリをして……待つことに疲れた彼女がいつの間にか俺のもとから去っていった。

「あの娘には悪いことを……いや、あれで良かったのか………。」

 風の噂で、あの娘はその後すぐに婚活パーティーで知り合った男と結婚して幸せにやっていると聞いた。

「俺なんかと一緒になっちゃ苦労続きだったろうしな~……ハハッ……。」

 時折りピューと吹く冷たい風が頬へと当たり、俺の思考を鈍らせる。
 やっと着いた自宅のドアに鍵を差し、カチャリと冷たい金属音を鳴らして開けると誰も居ない家の中に向かってポツリと呟く。

「ただいま……。」

 返事なんて返ってくるはずもなくシーンと静まり返っており、数日ぶりに帰ってきた自分の家は誰か別の人の家のように感じられた。

「本来ならここで『おかえりなさい』って、奥さんと子供の声がするのかな……。」

 なんとなく思ってしまったそんなことに自分自身、酷く落ち込んでしまう。

「俺の家って……こんなに広かったっけ? なにも……なかったっけ?」

 共に暮らす家族がいれば感じられるはずの温もりや安心感の全くない家の中は、今朝見た実家と同じ様にも感じられた。
 流石にこの年齢にもなれば、若い頃のように遊ぶことのできる友達もおらずに俺は一人で過ごす時間が多かった。
 大出世……なんて凄いのはする事がなかったが仕事はそれなりに忙しく、リビングには休日にやりこむゲームソフトが溢れていた。

「なんだかなぁ………。」

 心の奥にズシリときた何か重たいものを外へと吐き出す様にしてフウーと溜め息を吐く。
 エアコンのスイッチを押し、暖房をつけると俺は振り向いてボーっと背後にあったキッチンを眺める。

「こんな年の男にまだチャンスはあるのかな……。子作りは……自身が無いな~。いや、もう無理か………。」

 今日はより一層、どうしても弱気になってしまう。
 俺はただ結婚したいわけじゃなくて子供が欲しい!
 天涯孤独だからこそ、自分の血を引いた子供が……。

「もっと若ければなぁ………。こんな風に思う様になったのが遅すぎたな……。」

 部屋も温まってきたからとネクタイを緩め、冷蔵庫から缶ビールと1つ取り出す。
 リビングに置かれたソファに俺はドカリと座り、プシュッと開けた缶ビールをゴクゴクゴクと呷る。
 一気に飲んだ缶ビールを口から離すとプハァーとお決まりの呼吸をし、空となった缶を上へと掲げる。

「独身貴族に、カンパイ!」

 自分自身に向け、厭味ったらしく言ってみた。
 この後の残された人生に待ち構える避けようのない孤独に対し、どうしようもなく嫌な気持ちになった。

「自業自得とはいえ、辛いものだな……。」

 持っていた空になった缶ビールを思わず片手でグシャリと潰す。

「俺に息子……いや、娘がいたらなぁ…………。」

 そんな妄想をしている途中でウトウトと意識が途切れていく。
 新幹線で行く距離の実家の往復に、一人で葬式に実家の掃除と、自分でも気付かぬ内にだいぶ疲れていたのだろう。
 普段ではなんでもない量のビール1缶で完全に酔っ払ってしまい、着替えもしないままにソファに持たれた状態で寝てしまっていた。

「…パ。………パパ。――ねぇ、パパったら!」

 耳元に響く子供の声に煩いなと、イラっとして目を覚まして起き上がった。

「うるっさい!」

「パパぁ!」

 目覚めてすぐ、俺の目の前には両手を上げて喜ぶ中学校一年生程度の少女の姿があった。

「―――?」

 何のことか分からない俺はただ茫然とその少女を見つめていた。
 少女は俺のこと『パパ』と呼び、しきりに喜んでいるが………。

「いや、人違い………。」

 訂正しようと口を開くが全く俺の話を聞いてはくれない。
 そこへ、カツコツと音を鳴らしながら誰かが近づいてくる音がした。
 ギーと軋む音を鳴らしながら、目の前にある木製のドアが開いた。

「マリア! 下の部屋まで騒ぐ声が聞こえていたわよ。それで……召喚は上手くいったの?」

「ママ! ほらっ! ねっ!!」

「まぁ!!」

 入ってきた女は少女から「ママ」と呼ばれ、少女に指し示された俺の存在を確認するとポッと頬を赤らめて嬉しそうに微笑みかけてきた。

「あの………。」

 少女はママと呼んでいた女と二人して手を繋ぎ、キャアキャアと喜んでこっちの反応などきにしちゃいない。

「あのー!」

「あっ! あら……ごめんなさいね。」

 大きな声で何度か呼びかけるとやっと気が付いたようで、申し訳なさげに俺に返事を返した。

「あの、なんなんですか? これはいったい………。」

 キョロキョロと見渡しながら周りを確認してみたがどこかの建物の屋上に居るのかって感じで、屋根を支える柱と空しか見えずに俺は不安になった。

「えっと……まずはいきなりの事で驚かれたでしょう? ごめんなさい。」

 床に座ったままの俺に向かって女はペコリと頭を下げ、深々とお辞儀をした。

「えっ。えぇ……。」

「実はここはあなたからすれば『異世界』って呼ばれる場所で………。」

「『異世界』??」

「えぇ、それで……あのぉ………。」

 女はモジモジとしながら先の言葉を口にする事を恥ずかしがり、照れからか目を伏せた。
 俺は何なのだろうかと首を傾げ、目の前に居るその女の顔を見つめた。
 咄嗟の事でちゃんと見ていなかったが、こうして見るとかなり美人だなぁ……。

「あの……私のこと、憶えていませんか?」

 意を決したように女は俺の目の前までズイッと顔を近付けさせた。

「――と、言われましても……。会ったこと――ありますっけ?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

新緑の光と約束~精霊の愛し子と守護者~

依羽
ファンタジー
「……うちに来るかい?」 森で拾われた赤ん坊は、ルカと名付けられ、家族に愛されて育った。 だが8歳のある日、重傷の兄を救うため、ルカから緑の光が―― 「ルカは精霊の愛し子。お前は守護者だ」 それは、偶然の出会い、のはずだった。 だけど、結ばれていた"運命"。 精霊の愛し子である愛くるしい弟と、守護者であり弟を溺愛する兄の、温かな家族の物語。 他の投稿サイト様でも公開しています。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...