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二
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しおりを挟む「あの薬、薄毛になるんだね……?」
ライラの回答を聞いたフォンは、どこか恐る恐ると言った様子で確認をしてくる。
なぜ彼がたじろいでいるのかは不明だが、ライラはこれまでの試薬や薬品の成分解析の結果を元に明瞭に述べた。
「はい。そのようです」
残念ながら、実験の結果は"薄毛の可能性が0.1%ある"というものだった。
実験を手伝ってくれたモフモフの体毛が自慢の小さな生物<モフねずみ>の中に、薄毛の傾向が出たものがいたのだ。
若干お腹の辺りの毛が寂しくなってしまった被験体No.999の<モフねずみ>――通称『モフマール』は現在療養中である。
そのモフマールのことを思い出しながら、ライラは悲しげに眉を下げた。
「学生の頃に発明したものですが、実験を元に成分を見直していたら、副作用が気になりまして。今のままだと、将来、利用者が薄毛になるかもしれないんです。よほど高頻度で利用しなければ問題はないかもしれないのですけれど」
「……え」
「ですから、その副作用を出来るだけ減らせるようにと思いまして。製品化するにあたり、0.1%でも身体に害があるのであれば、それは成功とは言えません。同時に毛生え薬も発明中です」
「そ、そうか……是非頑張って……」
「はい! 頑張ります!」
なぜだか頭皮を押さえるフォンの姿を不思議に思いつつ、ライラは新薬の調合に勤しむことにした。
(フォンも応援してくれています。頑張って成果を出さなくては! もしかしたら、フォンも使ってみたかったのかもしれませんね)
今のところ、ライラが作成した<髪の色を変える魔法薬>は試薬品の状態だ。
リカードの依頼で毎日作って渡しているものの、彼が何に使っているのかは分からない。
それに、たまに瓶の数が合わないことがあり、こちらについては犯人は大体目星がついている。
(そうです。リカードにもお伝えしなくては。もしかしたら、彼も薄毛に……?)
「どうしよう」「僕も発明しなきゃ」とフォンがぶつぶつと何やら呟いている傍らで、ライラはそんなことを考えていた。
「遅くなった! ふたりともおつかれー! って、今日はやけに静かだな……?」
遅れてリカードがこの研究室に到着した時、そこにはいつもどおり研究に没頭するライラと、やけに鬼気迫る表情で作業をするフォンの姿があった。
「ああ、リカード! 聞いてください。実はあの<髪の色を変える魔法薬>に薄毛の副作用が見られるのです!」
「あっ、本当? わ~……それは困った事になったな……?」
ライラから例の薄毛の話を聞かされたリカードは、心配そうな彼女をよそに、なぜだか憐れみの表情をフォンに向けていた。
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