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5章 帰郷!エルフの里へ ~記憶喪失編~
船で過ごそう ~少しずつ変化する記憶 inセイルside~
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◇
ベルナートへの“ご褒美”として、サーヤを1人で向かわせたけど、なんとなくベルナートが暴走することはわかってたし、エリュシオンが向かったら盛大にキレるだろうなぁとも思ってた。
そして、エリュシオンはすぐにサーヤを連れ帰ってくるだろうと思ってたんだけど・・・―――
「う~ん・・・なかなか帰ってこないね。これは予想外だ☆」
仕方がないからボクの方から獣人女の部屋に転移してみた。
ホントはもう顔も見たくないんだけどね・・・
「ねぇ、キミ達いったい何やってるの?何で獣人女に説教されてるわけ?」
部屋に転移した瞬間、見た光景に対して出た言葉はこれだった。
だって、呪いをかけた張本人の獣人女がベッドの上に立って、床に座らせたサーヤとベルナートとソファに座ったエリュシオンに説教してるなんて、何がどうなったらそうなるわけ?
しかもエリュシオンなんてちょっと懐かしいような嬉しいような、まんざらでもない顔してるし・・・
「そもそもキミ、自分の立場わかってるの?呪いがキミの死を持って完成するのを阻止するために生かしてあげてるだけで、生きてるだけで良いならもっと別の方法だってあることを理解しておいた方が良いよ」
「!!」
「今のエリュシオンは、キミのせいで最愛の婚約者だって忘れちゃってる状態なんだよ?・・・自分がどれだけのことをしたか身体に教えないとさすがにわからないかなぁ・・・」
やっと獣人女は自分の立場に気づいたらしい。
お前は“生きてる”のではなく、“生かされてる”だけだということに。
今さら顔を青くしたって自業自得だ。同情する気はさらさらない。
だけど、とんでもないお人好しがここにいる。
「あの、ミリーさん」
そう、サーヤだ。
今回一番の被害者で、一番傷ついてるはずなのにこんなときでも相手を気遣う“バカ”が付くくらいのお人好し。
「あたしはあなたがしたことを許せるほど、懐の深い人間じゃありません。でも、記憶があったら答えてくれなかったであろうことも聞けたし、たとえ記憶を失って、あたしのことを忘れてしまっていても、今でもエルはあたしとの繋がりを忘れないでいてくれるほど強く想ってくれていることがわかったし、あたしもどんなエルでもやっぱり好きだなと改めて気づきました。感謝する気はありませんが、悪いことばかりでもありません」
確かにエリュシオンが呪いにかからなかったら聞けなかったであろう話はあった。
サーヤはそんなエリュシオンも好きだと思えたからこそ、抱かれることに抵抗もなかったんだろうね。
でもね、悪いことばかりではないかもしれないけど、そもそも良いことの方が少ないんだよ。
サーヤは少しでも悪いことばかりじゃないって思っているだけ。
「あなたは“忘却の呪い”によって、すべてを忘れたエルが孤独になり、結果あたし達が別れれば良いとでも思ったのかもしれないけど、こんなこと位じゃあたし達は別れたりしません。舐めないでください」
サーヤが獣人女に負けないよう、強い意思を持って言い返している。
その言葉の通り、獣人女の思惑なんかに負けない意思はとても立派だ。
だけど・・・―――
「あたしは死ぬまで、エルと別れるつもりはありません。どんなことがあったって、エルと一緒に乗り越えて見せます。あなたの望み通りになんかなりませんから」
「サーヤ・・・」
・・・エリュシオンは気づいたみたいだね、サーヤの握りしめている手が震えてることに。
サーヤは強がっているだけ、虚勢を張ってるだけだ。
強い意思を持っていたって、決して強いわけじゃない。強くあろうと頑張っているだけで、前世を含めたってまだたった20~30年しか生きていない普通の女の子なんだから。
人間の人生なんて、ボク達精霊やエリュシオンのようなエルフから見たら、またたくまに年老いて亡くなってしまう。だからこそ人間は強欲で、愚かで、とんでもないことをしでかす。
サーヤはそんなことないけど、彼女はエリュシオンに会ってから、どんな些細なことでも全力で楽しみ、一生懸命考えて生きてきた。
特に、エリュシオンとの結婚を意識してからは嬉しい反面、自分はいつまでエリュシオンと一緒にいられるのかと不安を感じるほどに。
一瞬一瞬を大事に、目の前にいる人や精霊を差別することなく受け入れる太陽の様な温かい人間、それがサーヤだ。そんなサーヤと一緒にいたくて精霊達もどんどん集まるようになってきた。
加護を与えることで流れる時間がゆっくりになり通常の人間よりも長生きできると話したとき、ノルンは迷いなくサーヤに加護を与えると決めていたし、それを聞いた初対面であるフランもすぐに加護を与えると決めていた。
本来精霊王の加護を1人の人間が複数受けるなんて、自殺行為も良いところだけど、サーヤは幸い“魔力の器”という特殊能力を持っていて、魔力保有量が加護を与えるごとに確実に増えている。
それに“黒”であり、光の精霊王であるマデリーヌの加護があるエリュシオンと魔力の相性も抜群で、魔力過多、魔力不足はすぐに対応できるし、たとえ以前のように瀕死になるような重傷を負っても、マデリーヌの魔法で回復することが可能だ。
それでも、ボク達でどうにもできないのが老いによる寿命だ。
だからこそ、サーヤの大事な時間を台無しにした獣人女をボクは許す気はない。
サーヤはエリュシオンが部屋に連れ帰ったから、これ以上サーヤの心が傷つくことはないだろう・・・今はね。
ボクはさっさとこんな茶番を終わらせてあげなきゃ・・・
「獣人女・・・なんか言うことはある?見ての通り、お前の望みは何一つ叶うことはないよ」
「・・・そう、みたいね・・・」
「1人で被害者ぶるのもいい加減にしなよね。サーヤがただ平和に生きてきただけの人間だとでも思ってる?あの子、何度も殺されかけて酷い目に遭ってるんだよ。・・・しかも同じ人間にだ」
「え・・・?」
「お前みたいに自業自得じゃない。あの子は単なる逆恨みで罪もないのに殺されかけた。ようやく回復して、問題も解決して、エリュシオンの故郷であるエルフの里へ結婚の挨拶に行くのにこの船に乗ったらこのザマだよ」
「・・・」
「これ以上、ボクの加護者を傷つけたら五体満足でいられると思わないことだね。わかったらせいぜい大人しくしてなよ」
「・・・」
これで獣人女がエリュシオンの呪いが解けるまで大人しくしてればそれで良い。
あとはベルナートに監視を含めて任せておけば良いからね。
「あ、そうだ、ベルナート」
「なに、セイル」
「記憶が見えるって言う黒曜石、いくつか貰える?」
「あ、うん。いいよ、今持ってるのは2つだけど」
「ありがと☆」
毎日説明するのは面倒だし、証拠となるモノを見せた方が早いからね。
後で手紙も添えて部屋に置いてこよう。
「あ、そうそうベルナート、今後はサーヤの許可なしに抱きついちゃダメだよ☆」
「・・・え?どうして??」
「ノルンにも言われたことあるでしょ?“サーヤの嫌がる行動はするな”って。もし、これ以上サーヤへの甘えがエスカレートするようなら、ボクもエリュシオンと同じ方法で調教・・・いや、躾してあげるからね☆」
「・・・し、しないっ!ちゃんとサーヤに、か、確認するっ!!」
「あ、ボクそろそろ行動開始すると思うから、獣人女の監視、任せて良いよね?」
「(コクコクコク)」
「ふふ☆言うことをちゃんときけるわんこには、ちゃんとご褒美もあげるからね♪」
ベルナートは尻尾をピーンとしたかと思ったらぶんぶん振ってる・・・ように見えた。実際に尻尾なんてないけど。
さっきのサーヤの服装から明らかにやりすぎた感じはわかったけど、転がってる小瓶からエリュシオンが激マズ回復薬を飲ませたということはわかる。恐らくそれでおいたした駄犬にしつけしたってことかな?
ふふ☆良いしつけ方法が見つかって何よりだ♪
「あ、あの・・・呪いについてなんだけど・・・」
ずっと黙ってた獣人女が急に呪いについて話し始めた。
呪いを知った経緯はどうでも良かったけど、解呪方法まで聞けたのは意外だった。
正直信用できないけど、材料を聞く限り信憑性は高そうだ。信じても良いかもしれない。
・・・ただし、材料を集めるのに少し骨が折れそうだ。
「・・・ふ~ん、どういう風の吹き回し?」
「病気と寿命で自分がもう長くないと思ったとき、静養も兼ねて医者にガルドニア行きを勧められてシュルテンに来たわ。とても平和で住みやすい国だった。“エリュシオンもこの国にいるんだろうな”となんとなく思いながら数年経った今、港でエリュシオンを見かけた。・・・エリュシオンが昔お姉ちゃんと過ごしてたとき・・・いや、それ以上に幸せそうな顔で笑ってるのを見て、ものすごく腹が立った。・・・アタシとお姉ちゃんのことなんかもう忘れてるんだって」
「・・・」
「最初は一人ぼっちになった自分と同じ孤独をエリュシオンも味わえば良いって思った・・・でも、それは違ってたのね。・・・すでに孤独だったエリュシオンはやっと、孤独ではなくなったんだ・・・」
「・・・ボクが、解呪方法を含めてそれを信用するとでも?」
「どうとでも取ればいい。アタシはどうせもうすぐ死ぬ。悔いは残したくないから言いたいことを言っただけよ・・・」
獣人女はそう言って憑き物が落ちたような柔らかい笑みを浮かべていた。
・・・たぶん、もうこちらの手を煩わせることはないだろう。
サーヤは明日までエリュシオンが離さないだろうから、ボクはとりあえずノルンやカルステッド達に解呪方法を伝えて今後の打ち合わせをした。
ゼノの位置は把握してるからいつでも転移できることを伝えると、サーヤの従兄であるアレクは「では先に素材採集と情報収集のため、俺とアルマをゼノまで送ってください」とお願いしてきた。
さすがサーヤを第一に考える身内だね。頭の回転と行動力の速さにゼノまで転移で送ることをボクも快諾した。
カルステッドはゼノに着いてから宿屋の手配と情報収集、リンダはサーヤの護衛と必要に応じて獣人女の世話担当でこっちに残る。
ミナトは現在ノルンと森で静養させていて、ゼノに着く日に迎えに行く予定だ。
あとは、この手紙と黒曜石を部屋に持っていけば、ゼノに到着する日まではボクも少しは動けるだろう。
手にした手紙を持ってサーヤとエリュシオンの部屋に向かった。
「・・・セイルか・・・」
「あらら~、またサーヤを抱き潰しちゃったの?さすがにヤリ過ぎじゃない??」
「こいつは、俺に抱かれているときは何も考えられなくなるからな・・・余計なことを気にしなくて済むだろう」
「記憶がないなりに、サーヤをわかってきたみたいだね☆」
「あぁ・・・無意識だがな。・・・だが、こいつはそろそろ限界だ。毎日コレが続いたら、サーヤは壊れるぞ」
目を真っ赤にしながら眠っているサーヤを愛おしそうに優しく撫でるエリュシオン。
やっぱりエリュシオンも気づいてたみたいだ。
記憶がないとしてもやっぱりサーヤのことを理解してるんだね。
「わかってる。だからこれを持ってきたんだ☆」
「手紙と・・・黒曜石?」
「そう、とりあえずボクやサーヤがいちいち説明しなくても事情が分かるよう記憶を見てもらおうと思ってね☆魔力を流したら見えるよ♪」
「それは妙案だな。どれ・・・」
エリュシオンが2つの黒曜石の中身を確認し始めたけど、なんかものすごく固まってる。
「これ、誰の記憶だ?」
「ん?もちろんボクが見た記憶だよ☆」
「~~~~~~~っ」
なんか、ものすごく恥ずかしそうにしてるけど仕方ないじゃない。ボクが見た記憶で1番2人の関係がわかりやすいときのコトが、城でエリュシオンがプロポーズしたときと、シュルテンに着いた日の宿屋での夜だ。
さすがに自分の言ってることとヤってることが予想外過ぎるんだろうね☆
そんな居たたまれない感じのエリュシオンを無視して、眠っているサーヤの涙をそっと拭いながら声をかける。
「もう少しの辛抱だからね、サーヤ・・・それまでは過去のエリュシオンと触れ合って、少しでも楽しく過ごして笑っていて・・・」
このまま朝まで起きることはないだろうけど、明日以降、少しでもキミの心の負担が減りますように・・・
今はゆっくりとおやすみ・・・―――
ベルナートへの“ご褒美”として、サーヤを1人で向かわせたけど、なんとなくベルナートが暴走することはわかってたし、エリュシオンが向かったら盛大にキレるだろうなぁとも思ってた。
そして、エリュシオンはすぐにサーヤを連れ帰ってくるだろうと思ってたんだけど・・・―――
「う~ん・・・なかなか帰ってこないね。これは予想外だ☆」
仕方がないからボクの方から獣人女の部屋に転移してみた。
ホントはもう顔も見たくないんだけどね・・・
「ねぇ、キミ達いったい何やってるの?何で獣人女に説教されてるわけ?」
部屋に転移した瞬間、見た光景に対して出た言葉はこれだった。
だって、呪いをかけた張本人の獣人女がベッドの上に立って、床に座らせたサーヤとベルナートとソファに座ったエリュシオンに説教してるなんて、何がどうなったらそうなるわけ?
しかもエリュシオンなんてちょっと懐かしいような嬉しいような、まんざらでもない顔してるし・・・
「そもそもキミ、自分の立場わかってるの?呪いがキミの死を持って完成するのを阻止するために生かしてあげてるだけで、生きてるだけで良いならもっと別の方法だってあることを理解しておいた方が良いよ」
「!!」
「今のエリュシオンは、キミのせいで最愛の婚約者だって忘れちゃってる状態なんだよ?・・・自分がどれだけのことをしたか身体に教えないとさすがにわからないかなぁ・・・」
やっと獣人女は自分の立場に気づいたらしい。
お前は“生きてる”のではなく、“生かされてる”だけだということに。
今さら顔を青くしたって自業自得だ。同情する気はさらさらない。
だけど、とんでもないお人好しがここにいる。
「あの、ミリーさん」
そう、サーヤだ。
今回一番の被害者で、一番傷ついてるはずなのにこんなときでも相手を気遣う“バカ”が付くくらいのお人好し。
「あたしはあなたがしたことを許せるほど、懐の深い人間じゃありません。でも、記憶があったら答えてくれなかったであろうことも聞けたし、たとえ記憶を失って、あたしのことを忘れてしまっていても、今でもエルはあたしとの繋がりを忘れないでいてくれるほど強く想ってくれていることがわかったし、あたしもどんなエルでもやっぱり好きだなと改めて気づきました。感謝する気はありませんが、悪いことばかりでもありません」
確かにエリュシオンが呪いにかからなかったら聞けなかったであろう話はあった。
サーヤはそんなエリュシオンも好きだと思えたからこそ、抱かれることに抵抗もなかったんだろうね。
でもね、悪いことばかりではないかもしれないけど、そもそも良いことの方が少ないんだよ。
サーヤは少しでも悪いことばかりじゃないって思っているだけ。
「あなたは“忘却の呪い”によって、すべてを忘れたエルが孤独になり、結果あたし達が別れれば良いとでも思ったのかもしれないけど、こんなこと位じゃあたし達は別れたりしません。舐めないでください」
サーヤが獣人女に負けないよう、強い意思を持って言い返している。
その言葉の通り、獣人女の思惑なんかに負けない意思はとても立派だ。
だけど・・・―――
「あたしは死ぬまで、エルと別れるつもりはありません。どんなことがあったって、エルと一緒に乗り越えて見せます。あなたの望み通りになんかなりませんから」
「サーヤ・・・」
・・・エリュシオンは気づいたみたいだね、サーヤの握りしめている手が震えてることに。
サーヤは強がっているだけ、虚勢を張ってるだけだ。
強い意思を持っていたって、決して強いわけじゃない。強くあろうと頑張っているだけで、前世を含めたってまだたった20~30年しか生きていない普通の女の子なんだから。
人間の人生なんて、ボク達精霊やエリュシオンのようなエルフから見たら、またたくまに年老いて亡くなってしまう。だからこそ人間は強欲で、愚かで、とんでもないことをしでかす。
サーヤはそんなことないけど、彼女はエリュシオンに会ってから、どんな些細なことでも全力で楽しみ、一生懸命考えて生きてきた。
特に、エリュシオンとの結婚を意識してからは嬉しい反面、自分はいつまでエリュシオンと一緒にいられるのかと不安を感じるほどに。
一瞬一瞬を大事に、目の前にいる人や精霊を差別することなく受け入れる太陽の様な温かい人間、それがサーヤだ。そんなサーヤと一緒にいたくて精霊達もどんどん集まるようになってきた。
加護を与えることで流れる時間がゆっくりになり通常の人間よりも長生きできると話したとき、ノルンは迷いなくサーヤに加護を与えると決めていたし、それを聞いた初対面であるフランもすぐに加護を与えると決めていた。
本来精霊王の加護を1人の人間が複数受けるなんて、自殺行為も良いところだけど、サーヤは幸い“魔力の器”という特殊能力を持っていて、魔力保有量が加護を与えるごとに確実に増えている。
それに“黒”であり、光の精霊王であるマデリーヌの加護があるエリュシオンと魔力の相性も抜群で、魔力過多、魔力不足はすぐに対応できるし、たとえ以前のように瀕死になるような重傷を負っても、マデリーヌの魔法で回復することが可能だ。
それでも、ボク達でどうにもできないのが老いによる寿命だ。
だからこそ、サーヤの大事な時間を台無しにした獣人女をボクは許す気はない。
サーヤはエリュシオンが部屋に連れ帰ったから、これ以上サーヤの心が傷つくことはないだろう・・・今はね。
ボクはさっさとこんな茶番を終わらせてあげなきゃ・・・
「獣人女・・・なんか言うことはある?見ての通り、お前の望みは何一つ叶うことはないよ」
「・・・そう、みたいね・・・」
「1人で被害者ぶるのもいい加減にしなよね。サーヤがただ平和に生きてきただけの人間だとでも思ってる?あの子、何度も殺されかけて酷い目に遭ってるんだよ。・・・しかも同じ人間にだ」
「え・・・?」
「お前みたいに自業自得じゃない。あの子は単なる逆恨みで罪もないのに殺されかけた。ようやく回復して、問題も解決して、エリュシオンの故郷であるエルフの里へ結婚の挨拶に行くのにこの船に乗ったらこのザマだよ」
「・・・」
「これ以上、ボクの加護者を傷つけたら五体満足でいられると思わないことだね。わかったらせいぜい大人しくしてなよ」
「・・・」
これで獣人女がエリュシオンの呪いが解けるまで大人しくしてればそれで良い。
あとはベルナートに監視を含めて任せておけば良いからね。
「あ、そうだ、ベルナート」
「なに、セイル」
「記憶が見えるって言う黒曜石、いくつか貰える?」
「あ、うん。いいよ、今持ってるのは2つだけど」
「ありがと☆」
毎日説明するのは面倒だし、証拠となるモノを見せた方が早いからね。
後で手紙も添えて部屋に置いてこよう。
「あ、そうそうベルナート、今後はサーヤの許可なしに抱きついちゃダメだよ☆」
「・・・え?どうして??」
「ノルンにも言われたことあるでしょ?“サーヤの嫌がる行動はするな”って。もし、これ以上サーヤへの甘えがエスカレートするようなら、ボクもエリュシオンと同じ方法で調教・・・いや、躾してあげるからね☆」
「・・・し、しないっ!ちゃんとサーヤに、か、確認するっ!!」
「あ、ボクそろそろ行動開始すると思うから、獣人女の監視、任せて良いよね?」
「(コクコクコク)」
「ふふ☆言うことをちゃんときけるわんこには、ちゃんとご褒美もあげるからね♪」
ベルナートは尻尾をピーンとしたかと思ったらぶんぶん振ってる・・・ように見えた。実際に尻尾なんてないけど。
さっきのサーヤの服装から明らかにやりすぎた感じはわかったけど、転がってる小瓶からエリュシオンが激マズ回復薬を飲ませたということはわかる。恐らくそれでおいたした駄犬にしつけしたってことかな?
ふふ☆良いしつけ方法が見つかって何よりだ♪
「あ、あの・・・呪いについてなんだけど・・・」
ずっと黙ってた獣人女が急に呪いについて話し始めた。
呪いを知った経緯はどうでも良かったけど、解呪方法まで聞けたのは意外だった。
正直信用できないけど、材料を聞く限り信憑性は高そうだ。信じても良いかもしれない。
・・・ただし、材料を集めるのに少し骨が折れそうだ。
「・・・ふ~ん、どういう風の吹き回し?」
「病気と寿命で自分がもう長くないと思ったとき、静養も兼ねて医者にガルドニア行きを勧められてシュルテンに来たわ。とても平和で住みやすい国だった。“エリュシオンもこの国にいるんだろうな”となんとなく思いながら数年経った今、港でエリュシオンを見かけた。・・・エリュシオンが昔お姉ちゃんと過ごしてたとき・・・いや、それ以上に幸せそうな顔で笑ってるのを見て、ものすごく腹が立った。・・・アタシとお姉ちゃんのことなんかもう忘れてるんだって」
「・・・」
「最初は一人ぼっちになった自分と同じ孤独をエリュシオンも味わえば良いって思った・・・でも、それは違ってたのね。・・・すでに孤独だったエリュシオンはやっと、孤独ではなくなったんだ・・・」
「・・・ボクが、解呪方法を含めてそれを信用するとでも?」
「どうとでも取ればいい。アタシはどうせもうすぐ死ぬ。悔いは残したくないから言いたいことを言っただけよ・・・」
獣人女はそう言って憑き物が落ちたような柔らかい笑みを浮かべていた。
・・・たぶん、もうこちらの手を煩わせることはないだろう。
サーヤは明日までエリュシオンが離さないだろうから、ボクはとりあえずノルンやカルステッド達に解呪方法を伝えて今後の打ち合わせをした。
ゼノの位置は把握してるからいつでも転移できることを伝えると、サーヤの従兄であるアレクは「では先に素材採集と情報収集のため、俺とアルマをゼノまで送ってください」とお願いしてきた。
さすがサーヤを第一に考える身内だね。頭の回転と行動力の速さにゼノまで転移で送ることをボクも快諾した。
カルステッドはゼノに着いてから宿屋の手配と情報収集、リンダはサーヤの護衛と必要に応じて獣人女の世話担当でこっちに残る。
ミナトは現在ノルンと森で静養させていて、ゼノに着く日に迎えに行く予定だ。
あとは、この手紙と黒曜石を部屋に持っていけば、ゼノに到着する日まではボクも少しは動けるだろう。
手にした手紙を持ってサーヤとエリュシオンの部屋に向かった。
「・・・セイルか・・・」
「あらら~、またサーヤを抱き潰しちゃったの?さすがにヤリ過ぎじゃない??」
「こいつは、俺に抱かれているときは何も考えられなくなるからな・・・余計なことを気にしなくて済むだろう」
「記憶がないなりに、サーヤをわかってきたみたいだね☆」
「あぁ・・・無意識だがな。・・・だが、こいつはそろそろ限界だ。毎日コレが続いたら、サーヤは壊れるぞ」
目を真っ赤にしながら眠っているサーヤを愛おしそうに優しく撫でるエリュシオン。
やっぱりエリュシオンも気づいてたみたいだ。
記憶がないとしてもやっぱりサーヤのことを理解してるんだね。
「わかってる。だからこれを持ってきたんだ☆」
「手紙と・・・黒曜石?」
「そう、とりあえずボクやサーヤがいちいち説明しなくても事情が分かるよう記憶を見てもらおうと思ってね☆魔力を流したら見えるよ♪」
「それは妙案だな。どれ・・・」
エリュシオンが2つの黒曜石の中身を確認し始めたけど、なんかものすごく固まってる。
「これ、誰の記憶だ?」
「ん?もちろんボクが見た記憶だよ☆」
「~~~~~~~っ」
なんか、ものすごく恥ずかしそうにしてるけど仕方ないじゃない。ボクが見た記憶で1番2人の関係がわかりやすいときのコトが、城でエリュシオンがプロポーズしたときと、シュルテンに着いた日の宿屋での夜だ。
さすがに自分の言ってることとヤってることが予想外過ぎるんだろうね☆
そんな居たたまれない感じのエリュシオンを無視して、眠っているサーヤの涙をそっと拭いながら声をかける。
「もう少しの辛抱だからね、サーヤ・・・それまでは過去のエリュシオンと触れ合って、少しでも楽しく過ごして笑っていて・・・」
このまま朝まで起きることはないだろうけど、明日以降、少しでもキミの心の負担が減りますように・・・
今はゆっくりとおやすみ・・・―――
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私にはできない。
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