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9章 帰郷!エルフの里へ ~悪戦苦闘の子育て編~

お家で過ごそう ~逆鱗に触れた者達 inレヴィンside~

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「ねぇ、あなた・・・メラニウム王国の国王よねん?」
「・・・はい」
「どうして私がまたココにいるかわかるかしらん?」
「・・・存じております。誠に申し訳ございませんでした」
「・・・」

オレは今、マデリーヌと一緒にメラニウム王国の王城にある謁見室にいる。
いる・・・というよりは、急に現れたマデリーヌに拉致されて連れてこられたというのが正解だ。
目の前には、明らかに以前よりやつれたメラニウムの王と王太子のカリオス殿が、青ざめた顔をしながら必死にマデリーヌに謝罪している。

どうやらここ最近、またエリュシオンの家にちょっかいをかけてくる輩がいるらしく、相手は高ランクの冒険者だという。

国を跨いで依頼をこなす冒険者達は、国に属さず自由であることが特徴だが、それでも滞在している間ある程度は国の法に従う義務がある。
それに以前の抗議以降、エリュシオン達の住むメラルダ郊外の土地は、様々な国の貴族や冒険者達の別荘や拠点というプライベート区域である事を理由に、他の家々への干渉は知り合いでもない限り禁止、不可侵とするよう国法を定めたばかりだった。

だが、冒険者も高ランクとなると面倒な者達が多く、国の手に負えない者もいる。
メラニウムの国王はすべき事はきちんとしてくれているので、今回はむしろとばっちりを受けた被害者だろう。
・・・なんだか今にも倒れそうな国王と王太子が少し可哀そうに見えてくる。

「マデリーヌ、オレが同じ立場でも高ランクの冒険者の対応は難しい場合があるよ。彼らは“国に属さないから従う義務はない”と言い張ったり“法については知らなかった”と言って、自分達の良いように勝手な行動をする者が多いんだ」
「レヴィエール王・・・」
「ふ~ん・・・レヴィンがそこまで言うなら仕方ないわねん。だったら、法を知らなくてもあの辺りが不可侵だとわかるようにしておきなさいな。腕試ししたいのかわからないけど、こっちはギルドやら家の周辺に来る冒険者が多すぎるせいで、子供からの「ぱぱ」呼びをベルに先越されたってエリュシオンが凄く怒ってるんだから」
「え、”パパ”呼び?先を越された??」

マデリーヌ、それじゃ相手は全くわからないよ。
しかもすごく怒ってる理由ってそれなんだ・・・

「エリュシオンの事だから、このままだとめんどくさいからって町ごと破壊するか、冒険者達を皆殺しにするか、どちらかやりかねないわよん?」
「??!!そっ、そんな、まさか・・・」
「いや、メラニウムの王よ・・・本当にそうなる可能性はあるよ。私は彼を知ってるけど、相当我慢してると思う。現時点で死者がいないのは奇跡みたいなものだ」
「!!!」

完全に脅しのような発言だけど、事実なんだから仕方がない。
サーヤのおかげで無用な殺生をしなくなったけど、基本的に自分の仲間以外の人間の生死はどうでもいいはずだ。

メラニウムの王とカリオス殿はすぐに家臣へ通達し、対処し始めた。

「マデリーヌ、一度サーヤの所に連れて行ってくれないかい?サーヤ達の様子も気になるし、モニカにガルドニアの現状も伝えておきたいし・・・」
「ふふっ、良いわよん♡じゃ、メラニウムの王と王太子、後はよろしくねん♡♡」

こうして、俺とマデリーヌはメラニウムの王の謁見室から転移魔法でサーヤの家へと向かった。



メラルダにあるサーヤの家のリビングに転移すると、モニカと双子達、ベルナート殿がソファで寛いでいた。
この場にサーヤはいないらしい。

「まぁ、マデリーヌ様とレヴィン様。お久しぶりです、このような体勢で失礼いたします」
「あぁ、気にしなくて良いよ。大分お腹も大きくなったね、順調みたいで良かった」
「はい。皆様とても良くして下さるので・・・本日は何かございましたの?」
「モニカちゃん、サーヤちゃんやミナト達がいないみたいだけれど・・・」
「・・・それが・・・」

モニカとベルナート殿が少しだけバツの悪そうな顔をしている・・・
もしやサーヤ達に何かあったのか・・・??

「あ、リーたん!」
「マデリーヌさん、あれ?レヴィンさんもいる」
「マデリーヌ、来てたんだね」

サーヤ達の声に振り返ったが、その姿に一瞬言葉を失った。

ミナト殿の頬には、薬を塗ったガーゼが貼られていてとても痛々しく、カイト殿は頭に包帯を巻いて手足に同じようなガーゼが貼られておりミナト殿よりも痛々しい。
そして、サーヤは足首に包帯を巻いて少し引きずっているようだ。

「サーヤっ!ミナト殿、カイト殿もその怪我は?!」
「サーヤちゃん達のその怪我・・・うふふ♡いったどこのどいつの仕業なのかしらん?」

隣にいるマデリーヌがものすごく怒ってる。

「えっと、その・・・」
「きょうね、みんなおでかけで、おゆすばんしてたの。そしたら、ばーんってなって、どごーんってなったの!」
「今日は人数も多かったし、連携してたから僕達苦戦しちゃって・・・早く皆を護れる位強くなりたい」
「あたしは、2人がセイルに助けを求める念話が聞こえて思わず飛び出したら、門を出た所でちょうどミナトちゃんがあたしの方に吹っ飛んできて、受け止めきれずに転んじゃいました。お恥ずかしい・・・」
「そう・・・皆頑張ったのね。偉いわ」

マデリーヌはそう微笑んでサーヤ達に近づき、回復魔法で3人の怪我を治す。
一見聖母のように慈愛に満ちた顔をしてるけど、目が笑っていないし口調も変わった。
・・・これは完全にキレてるだろう・・・

「サーヤちゃん、エリュシオンは?」
「んと、さっきセイルと駆け付けてくれて、外の人達を片付けてくるって・・・」
「そう・・・はい、治療完了よん♡まだ痛むかしらん?」
「リーたん、いたくない!ありがとなの♡」
「うん、すっかり治ったよ。ありがとうマデリーヌ」
「あたしも治りました!ありがとうございます」
「ふふっ、どういたしまして♡じゃ、私もちょこ~っとエリュシオン達を手伝ってくるわねん♡♡」

そう言って、マデリーヌは転移魔法でこの場からいなくなった。
恐らくエリュシオンのいる場所に転移したんだろう。

「3人共無事で良かった。先ほどメラニウムの王に、”法を知らなかった”と言い逃れ出来ないようこの辺りが不可侵だとわかりやすくして欲しいと伝えて来たよ。今いる奴らはエリュシオン達に任せておけば大丈夫だろうね」
「ありがとうございます。あたし、エルのくれたブレスレットを通してバリア張るのが精いっぱいで・・・少しでも役に立てるよう時間がある時はもっと魔法を練習しようと思います」
「あたちも、もっともっと、つよくなゆの!」
「僕も、もっと広範囲の魔法を使えるように頑張るね」

えっと、確か聞いた限りじゃ最近家の周りをうろついてるのは、カルステッドでも苦戦を強いられる高ランクの冒険者達で、しかも今日は人数が多かったんだよね?

3人は自分を弱いとか役に立たないみたいな言い方してるけど、高ランクの冒険者集団を相手にあの怪我だけで済んだならもう十分凄いし、多分今頃冒険者達は、ここに手を出した事を後悔するくらい酷い目に遭ってるに違いないと思う。
だって、一番傷つけちゃいけない皆が大事に護ってる人達を傷つけちゃったからね・・・



俺はこの件のもみ消しのため、もう一度メラニウムの王に会う事になるだろうなぁと思いながら、皆と一緒にリビングでエリュシオン達の帰りを待つ事にした・・・――――
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