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312 小さな決意
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「納得できませんわ!」
ルキアスとザネクがパーティーを離れて独りで探索したいと告げた時、エリリースは叫んだ。
「あたしもだわー」
シャルウィは声の大きさこそ普通ながら腕組みで不満を顔全体で表現する。
「ごめん」
「すまん」
ルキアスとザネクは言い訳らしい言い訳もせず、ただただ頭を下げた。
「あ、あの!? そんな……!」
エリリースは動揺した。別に謝って欲しかったのではない。反意して欲しかっただけ。
エリリースにとってルキアス達と一緒のダンジョン探索は堅苦しい現実から解放される息抜きにも似た楽しい時間なのだ。勿論、ダンジョン探索も現実で、危険と隣り合わせでもある。肉体的にも精神的にも疲れる。週の大半を探索に充てている今は探索が日常のようでもある。それでも一生の殆どを過ごすだろう時間と比べれば探索をしていられる期間、立場を越えた友人達と気兼ねなく過ごせる期間は短い。
「あっそう」
シャルウィは面白くなさそうに言う。
「判ったわ。エリリース、こんな連中ほっといてあたし達だけで行きましょ」
「あ、あの……」
シャルウィはエリリースの腕を引っ張ってダンジョンへと向かう。エリリースが戸惑うのもお構いなしだ。
「ちょ! ちょっと待って!」
「来ないで! あんた達はあんた達で勝手するんでしょ! なら、こっちはこっちで勝手にやるわよ!」
慌てて引き留めようとしたルキアスだったが、シャルウィの大喝に足を止めた。彼女の言葉はその通りなので返す言葉が無い。
シャルウィは立ち竦むルキアスを一瞥だけして、再びエリリースを引っ張ってダンジョンへと向かう。ルキアスはその姿を呆然と見守った。
やや遅れてリュミアが小走りにルキアスの横を通り過ぎる。ちらりと振り返ってルキアスに「めっ」と叱りつけるような視線を一瞬投げると、そのままエリリースを追ってダンジョンへと入って行った。
「あちゃ、こりゃ今晩は姉ちゃんからの叱られ確定だ……」
ザネクが頭を掻きながらルキアスに並んだ。
「でもしゃあねぇ。俺らのやる事は早々にあいつらを護れるだけの実力を付けることだ」
「そうだね」
「じゃあ、俺らも行くか」
「うん。お互いに頑張ろう」
二人は小さな決意を胸にダンジョンへと向かった。
ルキアスとザネクがパーティーを離れて独りで探索したいと告げた時、エリリースは叫んだ。
「あたしもだわー」
シャルウィは声の大きさこそ普通ながら腕組みで不満を顔全体で表現する。
「ごめん」
「すまん」
ルキアスとザネクは言い訳らしい言い訳もせず、ただただ頭を下げた。
「あ、あの!? そんな……!」
エリリースは動揺した。別に謝って欲しかったのではない。反意して欲しかっただけ。
エリリースにとってルキアス達と一緒のダンジョン探索は堅苦しい現実から解放される息抜きにも似た楽しい時間なのだ。勿論、ダンジョン探索も現実で、危険と隣り合わせでもある。肉体的にも精神的にも疲れる。週の大半を探索に充てている今は探索が日常のようでもある。それでも一生の殆どを過ごすだろう時間と比べれば探索をしていられる期間、立場を越えた友人達と気兼ねなく過ごせる期間は短い。
「あっそう」
シャルウィは面白くなさそうに言う。
「判ったわ。エリリース、こんな連中ほっといてあたし達だけで行きましょ」
「あ、あの……」
シャルウィはエリリースの腕を引っ張ってダンジョンへと向かう。エリリースが戸惑うのもお構いなしだ。
「ちょ! ちょっと待って!」
「来ないで! あんた達はあんた達で勝手するんでしょ! なら、こっちはこっちで勝手にやるわよ!」
慌てて引き留めようとしたルキアスだったが、シャルウィの大喝に足を止めた。彼女の言葉はその通りなので返す言葉が無い。
シャルウィは立ち竦むルキアスを一瞥だけして、再びエリリースを引っ張ってダンジョンへと向かう。ルキアスはその姿を呆然と見守った。
やや遅れてリュミアが小走りにルキアスの横を通り過ぎる。ちらりと振り返ってルキアスに「めっ」と叱りつけるような視線を一瞬投げると、そのままエリリースを追ってダンジョンへと入って行った。
「あちゃ、こりゃ今晩は姉ちゃんからの叱られ確定だ……」
ザネクが頭を掻きながらルキアスに並んだ。
「でもしゃあねぇ。俺らのやる事は早々にあいつらを護れるだけの実力を付けることだ」
「そうだね」
「じゃあ、俺らも行くか」
「うん。お互いに頑張ろう」
二人は小さな決意を胸にダンジョンへと向かった。
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