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第二章

042「二人の高校生探索者《シーカー》の誕生」

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 ギルドマスター倶利伽羅炎呪との初対面から三日後のお昼——いつものように屋上で唐沢と胡桃沢三人で食事をしている時、俺はふとある話を切り出した。

「あのさ⋯⋯二人とも探索者シーカー資格試験はどんな感じだ?」
「ん? なんだ? 藪から棒に?⋯⋯⋯⋯まあ、いつも通りだよ。いつも通り、体鍛えて魔法やスキルの勉強とか、まあ、そんな感じ」
「そうね。私も唐沢と似たような感じね」
「⋯⋯てことは、今でも探索者シーカーになりたいって思ってるんだよな?」
「「当たり前だ(よ)!」」

 綺麗にハモッたね。

「⋯⋯よかった」
「ん? よかった?」
「⋯⋯実は、今度探索者シーカー資格試験が大幅に変わるんだけど⋯⋯」
「「え?」」

 俺は二人に探索者シーカー資格試験が面接と筆記試験だけになる話を切り出した。

「え? で、でも、それじゃあ、今までの初級魔法と初級スキル獲得って条件はどうなるんだ?」
「それなんだけど⋯⋯実は最近あるレア物から『魔力洗浄マナクリーン』というスキル書を獲得した探索者シーカーがいてな? で、その『魔力洗浄マナクリーン』というスキルの効果ってのが体内魔力の澱みを解消するっていう効果なんだが、これをすると⋯⋯⋯⋯魔法やスキルを100%・・・・獲得できるようになるんだ」
「「⋯⋯へ? 100%?」」
「ああ。だから、これまで自力で魔法とスキルを獲得できなかった人も、誰でも魔法とスキルが獲得できるようになる。そのため、今後は探索者シーカー資格試験は面接と知識の筆記試験⋯⋯⋯⋯特に面接が重視されるようになるらしい。何でも探索者シーカーの質の向上を目指すとか何とか⋯⋯」
「い、いや、ちょっと待て⋯⋯」
「ん? どうした唐沢?」
「ソ、ソラ君、ちょっと⋯⋯いい?」
「ん? どうした胡桃沢?」


「「誰でも魔法とスキルが獲得できるぅぅぅぅぅ~~~~~っ!!!!!!!」」


 綺麗にハモッたね。


********************


「す、すごい!? じゃ、じゃあ⋯⋯その面接と筆記試験に合格すれば俺でも探索者シーカーに⋯⋯」
「あ、ちなみに筆記試験を合格して1年以内なら筆記試験は免除らしい。だからすでに合格している唐沢と胡桃沢は筆記試験免除だと思うぞ?」
「「おお!」」
「あとは面接か~⋯⋯大丈夫かな~⋯⋯」
「何言ってんの、唐沢!」
「胡桃沢⋯⋯?」
「いいじゃない、面接だけなら! 魔法とスキルを自力で獲得することに比べれば!」
「お、おお! そうだなっ!!」

 唐沢と胡桃沢⋯⋯二人とも同じ目標に向かって頑張ってきたからか、最初よりもかなり仲良くなっているようだ。そんな二人にここでさらに今回の『主旨』となる話を投下した。

「あ、ちなみに、今言ったレア物倒してスキル『魔力洗浄マナクリーン』をゲットした探索者シーカーって⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯俺だから」
「「え? えええええええええええ~~~~~~っ!!!!!!」」

 綺麗にハモッたね。

「マ、マママ、マジぃぃぃぃぃぃ!?」
「大マジ。しかも二人に『魔力洗浄マナクリーン』をかけてすぐに初級魔法と初級スキルである『ファイヤバレット』と『身体強化』の魔法書・スキル書も借りてある」

 と言って、俺は二人分の魔法書とスキル書を見せた。

「え? そ、それって、つまり⋯⋯」
「ああ。放課後にでも二人に直接俺が『魔力洗浄マナクリーン』をかけたら、魔法書とスキル書を渡すよ。あ、ちなみに面接のほうも免除になったから魔法とスキルを獲得してギルドに行けばすぐに探索者シーカーの身分証を発行してくれるぞ」
「「え? 面接免除?⋯⋯何で?」」
「ああ⋯⋯実は『魔力洗浄マナクリーン』をゲットした後、ギルドに報告するよう言われてたから行ったらギルドマスターに会うことができてさ⋯⋯」
「ええっ! ギ、ギルドマスターっ!? そ、そそ、それって⋯⋯⋯⋯⋯⋯倶利伽羅炎呪に会ったってことか?!」
「ああ、会った。で、その時に二人の話もしてな⋯⋯」
「「ええっ?!」」

 そう。実はあの日、部屋から退出する直前、ギルドマスターである倶利伽羅炎呪に二人の話をして、その二人に個人的に魔力洗浄マナクリーンをしていいか確認をした。すると、

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「ん? 別にいいよ? ていうか、二人分の初級の魔法書とスキル書も持っていきなよ?」
「ええっ! い、いいんですか?!」
「ああ、問題ないよ。だってソラ君が一緒に組もうと思っている人物なんでしょ? だったら、その二人の人柄は問題ないと僕が判断するよ。⋯⋯そもそも今日のソラ君への『勧誘』の話もソラ君の人柄を見て判断したわけだし。そんなソラ君が一緒に組みたいっていう奴なら問題ないさ。⋯⋯まー下心・・がないってわけじゃないけどね?(ニッ)」
「あ、ありがとうございます!」

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 といった感じで、初級魔法書とスキル書を二人分もらえたのだ。

「ソ、ソラ君⋯⋯それってつまり、私たちすぐにでも探索者シーカーになれるってこと?」
「ああ、そういうことだ。今日の放課後にでもやろうかと思ってるよ」
「マ、マジ? 夢じゃ⋯⋯ないよな?」
「現実だ」
「す、すげえ⋯⋯! お、俺が⋯⋯探索者シーカーに⋯⋯」
「わ、私も⋯⋯探索者シーカーに⋯⋯なれる⋯⋯のよね?」
「ああ、なれる」
「はは⋯⋯やった⋯⋯やったぁぁぁぁぁ!!!!!」
「グス⋯⋯こんな早くに⋯⋯本当に探索者シーカーになれるなんて⋯⋯」

 唐沢と胡桃沢は各々で喜びを実感しているようだ。⋯⋯よかった。



——放課後

 俺は二人に『魔力洗浄マナクリーン』をかけた後、初級の魔法書とスキル書を渡す。そして、

「おおおおお! やった、やったぁぁ!! ステータスに魔法とスキルが出てるぅぅ~~~っ!!!!」
「わ、わたしも! ステータスにちゃんと『ファイヤバレット』『身体強化』って⋯⋯⋯⋯やったわっ!!!!」

 その後、二人に急かされながらギルド本部へ行き、

「はい、これが二人の探索者シーカー身分証よ。無くさないでね」
「「は、はい!」」
「ウフフ⋯⋯。二人とも探索者シーカー合格おめでとうっ!!」
「「あ、ありがとうございますっ!!」」

 こうして、二人の高校生探索者シーカーが誕生した。


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名前:唐沢利樹

レベル:1

魔法:<初級>ファイヤバレット
スキル:<初級>身体強化

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名前:胡桃沢星蘭

レベル:1

魔法:<初級>ファイヤバレット
スキル:<初級>身体強化

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