止まった秒針は壊すに限る

メイベ・モカベルン

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止まった秒針は壊すに限る2

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ケレは、とある一室で賊の襲撃の件で取り調べを受けていた。
「まるで、おとぎ話に出てくるような存在でした」
賊はこの国の主力である魔力を用いた攻撃を無効化したこと、加えて、明らかに人ではない身体能力と攻撃範囲の広さ、人ではないほどの硬さをもっていたこと。そして、毒があまりにも通用しないことなどを伝えた。
出された結論は、「意味不明な供述」とされて、ケレの取り調べは終わった。
ケレが扉を開けてすぐに、壁にもたれかかっていたソリアミと目が合う。
二人は言葉を交わことなく肩を並べて帰路を目指す。目的地は、ソリアミの実家だ。
辺境の地に配属が決まったことで、落ちこぼれの烙印をされたケレは家族の一員ではなくなった。よって宿無しである。
賊が来る前に、辺境の村ではケレとソリアミは常に一緒にいた。お茶を飲んだり、廃墟を秘密基地としたりとやっていることが、幼稚なことを二人でやっていた。
むろん村には何人もの警護の任についていた者がいたが、誰もがソリアミと距離を取っていた。
ソリアミが危険物であるかのような扱いで、害が及ばないように皆必死で距離感を伺っていた。
「どうだったの?」
「意味不明な供述と言われました」
やっぱりね。とソリアミが笑みを含んだ呆れ声を出す。
「魔力が無効とか、魔力を吸い込むとかが引っかかってんでしょうね」
「引っかかっているなら、原因究明をする方が…」
「ケレ、お前はそういうところが分かっていない。この国で魔力無効とかは皆考えられないのよ」
「えっ?」
現に、近衛部隊の二人が見ていたのだ。生き残りの一兵卒ではない。
「私もお前も、どういったカラクリであんなことができるか、説明なんてできないでしょう」
ケレがおずおずを首を縦に振る。
「下手な発言で混乱を招くことに繋がるは避けたいのよ。上が水面下でうまくやってくれれば。それでいいってことよ」
住宅街からまだまだ距離がありそうだなーと、ソリアミがぼやきながら歩みを進める。
ケレは、ふと足を止めた。
敵への対処法を伝えただけだ、「燃料切れを狙う。何か肝心な部位を壊す。エネルギーを大きく与えて壊す」ことを話した。だが、取り調べの担当は、どうして、なぜを繰り返した。
そして、ソリアミが言うようにケレは、その証拠を出せなかったのだ。
(どうして、私はそう思ったんだ?きっかけは?)
ふと、秘密基地でソリアミが置いていた本のことを思い出した。秘密基地を作ろうと提案したのはケレだ。その案に乗ったソリアミは、その秘密基地で大量の本を置いていた。
そして、ケレもソリアミの持ち込んだ本を読んでいた。
首都でも見かけないような変わった本が多かった。
「ねぇ、ソリアミさん」
もしかして、と続けるや否や、ソリアミがケレを抱きしめていた。
そして、視界には赤い何かが映っていた。血だ。ソリアミの血だ。
ケレは、ソリアミを抱きしめ返していた。
視線の先には、血に染まった愛剣を握ったヒルケシュがいた。
「お前のせいで、ラーガディアさんは!」
その怒号は建物を震わせ、ケレの骨まで軋ませるような激しさだった。
ケレは、ただソリアミを抱きしめることしかできなかった。
完全にこと切れてしまっているソリアミを抱いたまま、言葉を発せないままでいた。
「完全片腕がなくなった」
お前のせいだ。怨嗟のこもった目でケレとソリアミを睨む。

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