止まった秒針は壊すに限る

メイベ・モカベルン

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止まった秒針は壊すに限る4

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出来立ての死体が、複数体あった。
間に合わなかったと、ケレは思わなかった。
適当な場所に座り込む。ただ、例の賊が来るのを待った。
ゆらりと人影が現れた。
「一杯、どう?」
ケレは、カップに一杯のソリアミ茶を淹れて賊に言う。
「それ、毒だぞ」
その言葉に、ケレはぽかんと口を開けた。その間抜けな表情に、賊は口をへの字に曲げていた。
「あと、それは特に俺達には効かないぞ」
「どうして?」
「俺たちの国では、主流の毒でな。まずは、耐性をつけさせられるんだよ」
なぜだか懇切丁寧にソリアミ茶の解説に入る賊の顔を、ケレは凝視した。

「なぜ、自分の身元を明かすの?」
「探し人のことを知っていると踏んだんだ」
「ソリアミさん」
「名前は知らない。姉だ」
「母親の名前は、覚えている?」
「ソリエ」
ケレが、気まずげに視線を逸らす。ソリアミの母親の名前だったからだ。
「ちなみに、父親の名前は?」
今度は、賊がケレに質問した。
「ソリアミさん自身からは、聞いていないわ。幼いころに亡くしたことだけは、話してくれた」
賊の声が一瞬詰まる。
「君は」
「多分、あなたの姉の友人」
賊が続く言葉を、詰まらせている。
ケレは、詰まっているものを押し出す言葉をつづけた。
「数日前、亡くなった」
「俺は、殺していない」
賊の心が揺さぶられているのは、ケレにはわかった。
しかし、この場で彼を討つということはできなかった。
「罪人として弔われなかった。とだけは伝えられるわ。
でも、彼女に何の罪があったまでは、私はわからない」
「父親のせいだ」
ケレは何も答えなかった。
「俺たちの父親は、母親にあたる人を拉致して。俺と姉さんがこの世で生を受けた。
この国ではさ。他国に人間と子をもうけることは罪らしい」
賊の一人称が変わったことを流しつつ、ケレは沈黙を守ることにした。
賊の言葉が長々と続く。
だた、ケレはソリアミの弟というだけで、言葉を聞いていた。
ソリアミの弟、という嘘か本当化はわからない。けれど、それだけを理由に、この男だけは討たないと、沈黙を守ることで伝えたかったのだ。

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