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23話(1)【室町和風ファンタジー / あらすじ動画あり】
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■お忙しい方のためのあらすじ動画はこちら↓
https://youtu.be/JhmJvv-Z5jI
■他、作品のあらすじ動画
『【和風ファンタジー小説 あらすじ】帝都浅草探しモノ屋~浅草あきんど、妖怪でもなんでも探します~』
-ショート(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94
-完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
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藤若は義満の腕をそっと押しのけ、一歩進んだ。御息所に、そしてその中の高橋殿に伝えるように言う。
「貴方は誰よりも気高く、賢い人だ。だから、わかるでしょう。大樹様──いや、源氏に近づく者たちをいくら傷つけても、貴方が傷つくだけだ。もう、こんなことはやめないと」
「……お前に……お前たちに何がわかるんだっ!」
几帳が、御息所の叫びで一斉に揺れた。一時は薄まりつつあった瘴気が再び、不穏な渦を巻く。
「──まったく、その通りね」
御息所の背後から、その肩にゆるりと青白い、華奢な腕が回った。
いつからそこにいたのだろう。セイが御息所を背後から抱き締め、その耳元に真っ赤な唇を寄せていた。
「まったく、あの男たちは何もわかっていないのよ。まっとうな言葉でまっとうなことを言えば、説得できると思っている。まったく、心がないのかしらね」
セイの声は、ほの暗い歓喜に満ちていた。少女の容貌には似合わぬ、艶っぽい微笑みがその顔に浮かぶ。
「でも安心して。あたしにはわかる。あなたの気持ちが、痛いほど。だって、あたしもそうだったもん。恋しさで全身が焼かれ、化け物になっても、焦がれずにはいられない。それなのに、こんなに想っているのに男は答えてくれない。憎い? 憎いんでしょう? なら、なぜ復讐しようと思わないの?」
「復讐……?」
「そうよ。いくら相手の女を殺したって無駄。そんなの、あとからいくらでも湧いてくる。なら、本人を殺してしまえばいいのよ。そうすれば、男は永遠にあなたの物になる。もう思い悩むこともない」
「……思い悩むことも、ない……?」
御息所がセイを振り返った。
「そうよ。あなたは賢いんだか何だか知らないけど、考えすぎなのよ。嫉妬を感じるのは恥ずかしいことじゃない。大切なのは、気持ちのままに行動すること」
セイは御息所の手をとり、目の前の義満を指差した。
「やってしまいなさい。恋の炎は燃え上がらせてなんぼ。相手も自分も燃やし尽くしてしまうまでが恋よ!」
セイは感極まったように叫んだ。
「……う……うああああぁぁっ……!」
頭を抱えた御息所の身体から、瘴気が一気に広がる。真っ黒だったそれは一瞬にして炎となって燃え上がり、辺りを飲み込み始めた。
「ふふふ。そうよ! その調子! もっと暴れてしまいなさい!」
広がる炎の中、セイは悶絶するように、自分自身を抱き締めた。
その頬は赤く染まり、瞳は嬉々として潤んでいる。あらわになった肩口に、蛇の鱗のようなものが浮かび始めた。
「セイっ……!」
藤若は火の粉を避けながら、叫んだ。
「一体、何やっているんだっ! どうしたんだよっ!」
「うふふ。だって、しょうがないでしょう! あたし、強い瘴気を感じると、昔のことを思い出して興奮しちゃうのよぉ!」
セイが手を広げ、懐かしむように目を細めた。
「あの時は本当に惜しかったわぁ! 鐘の下に隠れたあの人を追い込んだまではいいものの、お坊さんたちに封じられちゃうし。まぁ、こうして花鬼として蘇れたから、いいけど」
「え……セイが、花鬼……?」
「あら、やっぱり気づいてなかったのね。まぁ、あたし自身、自分のようなモノを花鬼なんていうの始めて知ったんだけど」
セイは蛇の鱗に覆われた両腕を、大きく広げた。
「藤若。あたしはね、通りがかりのいい男に一目惚れして裏切られ、そのあまりの恋しさと憎しみで大蛇になってしまった花鬼なのよ!」
セイは、少女のような無垢さで首を傾げる。
「でもね、今はあの人に恨みがある訳じゃない。あたしは自分のやりたいことをやっただけ。後悔はないわ。それでもあたしは、今も強い瘴気を感じると、当時の気持ちを思い出して、気持ち良くなっちゃうのお!」
セイは御息所の肩にもたれ掛かり、立ち尽くす義満に暗い笑顔を向けた。
「さぁ、思い知るがいいわ。女の情念が、どれだけ恐ろしく、哀しいものか」
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