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24話(1)【室町和風ファンタジー / あらすじ動画あり】
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■お忙しい方のためのあらすじ動画はこちら↓
https://youtu.be/JhmJvv-Z5jI
■他、作品のあらすじ動画
『【和風ファンタジー小説 あらすじ】帝都浅草探しモノ屋~浅草あきんど、妖怪でもなんでも探します~』
-ショート(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94
-完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
ーーーーーーーーーーー
「昔……」
どれくらい経っただろう、義満がぽつりぽつりと話し始めた。
「俺の幼い頃に、南朝の残党が御所を襲ったことは話しただろう? 南朝どもは襲撃の際、御所に火を放ち、火は瞬く間に御所を包みこんだ。乳母の目をかいくぐって一人で遊んでいた俺は、周りを取り巻く炎に動くこともできず、ただひたすら泣き叫んでいた。あとから知ったんだが、襲撃に動揺した父は俺の存在も忘れて、我先に近江へと脱出したらしい。母も父の家臣たちもそれについていき、誰一人として俺を探しに来てくれる者はいなかった。焼かれる御所の中に、俺は一人、取り残されたんだ」
皮肉的な笑みが、義満の顔に広がる。
「……その時のことが今も忘れられなくて、火を見る度に思い出す。そして身体が動かなくなるんだ……」
義満は震える自分の手を見つめた。体を包んでいた輝かしいまでの〝気〟も、今は見えないくらいに弱まっている。
「まったく情けない話だが、そうゆうことだ。だから、お前は高橋を連れて逃げてくれ。俺は、こいつを失う訳にはいかないんだ」
高橋殿の頬に、義満は手を這わせた。
「俺があの炎の中から抜け出せたのは、こいつのおかげなんだ。高橋はもともと父の愛妾の一人だった。御所炎上の際、高橋は俺の姿が見えないのに気がついて、引き戻ってきてくれたんだ。そして乳母とともに、俺を炎の中から救い出してくれた」
義満は、悔しそうに眉を顰めた。
「なのに、すまない……こんなに辛い思いをさせていたなんて。俺はこいつの強さに甘えていたみたいだ。こいつが目を覚ましたら、お前から謝っておいてくれないか?」
義満はふっと顔を上げ、藤若の手首をきつく掴んだ。
「くそじじいや頼之にも伝えておいてくれ。俺のあとは頼むと。何としてでも戦を止めて平和な世にしてくれ。俺と同じような、くだらない公家と武家の争いに振り回される子どもを、これ以上出させないでくれ」
義満がどんと、藤若の身体を押した。
「もう行け。火の手が回ってきた。色々、頼んでしまってすまんな」
「大樹様っ……」
炎の中、義満が優しく微笑む。
「もう南朝でも北朝でも構わない。お前は俺が認めた者だ。きっとお前なら、俺の助けがなくとも、申楽を大きくしていけるだろう」
全てを諦めたような義満の声が悔しくて、グッと足を止める。
「無理です! 申楽には──僕たちには、貴方がいないと! だから、貴方を置いていくことは出来ません!」
「……!? 何をして──」
「歩けないなら、担いででも連れていきます!」
藤若は、義満の脇に手を入れ、もう一方の腕で高橋殿を抱き上げた。
「無理だっ! お前の体格じゃ。高橋だっているのに」
「黙ってて下さい」
グッと足に力を入れ、一歩一歩進む。だが途中で足がもつれ、ともに崩れ落ちてしまう。
「だから言ったんだ」
義満がグイッと身体を離してきた。
「このままだと、三人とも助からない。一番大切なものを決めろ。それ以外は切り捨てるんだ!」
「嫌ですっ……僕は貴方と違うんです! 誰も切り捨てることは出来ない! たとえ、それが綺麗事だとしても! 絵空事だとしても!」
「いい加減にしろ! 俺はもういいんだ。きっと、これが幼い時から決まっていた俺の運命なんだ。運命からは逃れられない。源氏がそうだったようにな」
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