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それぞれの想い(4)
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「話すのは構わないけれど、夜は……マズイんじゃないかな?」
「そうだよエン。応援するって言ったけど夜に二人きりは急ぎ過ぎだよ。話したいことが有るなら今話しなよ」
マキアも口添えしてくれたのだがエンは引かなかった。
「誰にも邪魔されずに、一度二人きりで話したいんだ。俺の心は今混乱している。この気持ちが何なのかを、はっきりさせたいんだ」
それは私に恋をしているかどうか、確認したいということ? それでもし恋心が確定したらどうなるの?
「ロックウィーナ、頼む……!」
ちょっと怖い。でも苦しそうなエンの顔を見ていると無下にできなかった。彼には何度も親切にしてもらった恩が有ることだし。
「……話すだけだよ?」
「ロックウィーナ、断りなよ!」
「大丈夫だよマキア。女性兵士のテントからそう遠く離れないようにする。何か遭ったら大きな声を出して助けを呼べるように。それでいいよね? エン」
「ああ。感謝する」
私は流されているのかもしれない。でも私の方が四つも年上だし、身を護る技も有るし、いざとなったら助けを呼べばいい、何とかなるだろうと考えていた。
それはとても甘い判断だったと、私は後に大きく後悔することになる。
☆☆☆
午後の馬車内、颯爽と乗り込んできたルービック師団長に私達の目が点になった。ルービックは呆気に取られている私達へ、自分がここに居る理由を説明した。
「いや何か、マシューの元気が無くてな。私の馬車でエドガーに彼を慰めてもらっているんだ。私は邪魔になると思いこちらへ移らせてもらった」
白い歯を見せる爽やか笑顔で説明されても意味がよく解らなかった。キースが不思議そうに尋ねた。
「師団長も一緒に慰めれば宜しいのでは?」
だよね。
「そうしたいのは山々なんだが、私とマシューは性格がイマイチ合わなくてな。きっと私では彼の悩みに寄り添ってやれないだろう」
「そうですか? お二人とも明るくて社交的。気が合うのだと思っていました」
「ああー……。マシューはな、今でこそ明るく振る舞っているが、騎士団に入った当初は引っ込み思案で殻に閉じ籠るタイプだったんだ」
それは意外だ。ぐいぐい積極的に来る若いお兄ちゃんという印象だから。
ルービックは遠い目をした。
「いや実は今も……、マシューの本質は変わっていないのかもな。無理をして明るい振りをしているんじゃないかと思う時が有る」
「なるほど……。彼が闇魔法の使い手であることが納得できました。術者の本質に魔法適性は似通うと言われていますから」
キースの発言にルパートとマキアも頷いた。
器用なルパートは風。熱く爽やかな心根のマキアは火と風。優しさと……心に闇を背負ってしまったキースは光と闇。アルクナイトは正に天才だ。
「マシュー中隊長は隠れ陰キャだったのか……。だとしたら師団長とは合いませんね。師団長は根っからの陽キャですもんね」
彼をよく知るルパートにまとめられ、ルービックはバツの悪い顔をした。
「ま、そういうことだ。その点エドガーは落ち着いた優しい男だからな、安心してマシューを任せられる」
「師団長もとても優しくて落ち着いた方だと思いますよ? 私は師団長のおかげで女性兵士と仲良くなれたのですから」
私がフォローしてルービックは微笑んだが、隣のルパートが渋い顔をした。
「師団長が優しいのはよく解っている。でも落ち着きは無いぞ」
「おいルパート。昔の私はもう居ない」
「昔……。師団長は昔、どんなお人柄だったんですかぁ?」
好奇心からリリアナが首を突っ込んできた。
「いや、それは……」
ルービックは誤魔化そうとしたが、ルパートが暴露した。
「王国兵団に何度も補導されていたそうだ」
「補導!?」
「保護だ、保護」
「どうしてそんな経緯にぃ?」
「ああー……」
ルービックは頭を掻いて恥ずかしそうにしたが、みんなにじっと見られてポツポツ語り始めた。
「実は私は……子供の頃から正義の味方に憧れていてな。それで十五、六歳の頃に友人と一緒に自警団を結成して、出身地である王都の平和を日夜守っていたんだ」
何となく先が読めた。
「そして私はどうやら特異体質らしい。身体を循環している癒しの魔力のおかげか、魔法を唱えなくても軽い怪我なら瞬時に自己回復してしまうんだ」
「不死身のルービックと言う通り名をお持ちでしたね」
「それは便利な体質ですね。僕は自分の怪我を治療する際、とても疲れてしまいます」
キースは感心していたが、私は指揮官でありながら敵の本拠地へ突入しようとしたルービックを思い出した。止めていたエドガーとマシューのことも。
ルービックは「ちょっとの怪我なら回復して元通り~」とか言って暴走するんでしたっけ?
「身体が頑丈なもんで少~し調子に乗ってしまうことが有ってな、王国兵団に何度か保護されてしまったんだ」
「絶対に補導ですよね?」
「違うからルパート、保護だから。それでもってそんなに体力が有り余っているなら兵団に入ればいいと、当時の聖騎士に勧められたんだ」
「自警団の名の下でやり過ぎた罪を精算する交換条件として、無理やり入団させられたと先輩から聞きましたよ?」
「違うから。でもまぁ、王国兵団に入ったおかげで聖騎士になれたし大出世もしたわで、結果オーライだったよな」
ははは。本当に陽キャだった。
これはマシューさん相談できないやね。共感を求めて悩める陰気ボールをたくさん放っても、爽やか笑顔スマッシュで全て打ち返されそうだ。
「そうだよエン。応援するって言ったけど夜に二人きりは急ぎ過ぎだよ。話したいことが有るなら今話しなよ」
マキアも口添えしてくれたのだがエンは引かなかった。
「誰にも邪魔されずに、一度二人きりで話したいんだ。俺の心は今混乱している。この気持ちが何なのかを、はっきりさせたいんだ」
それは私に恋をしているかどうか、確認したいということ? それでもし恋心が確定したらどうなるの?
「ロックウィーナ、頼む……!」
ちょっと怖い。でも苦しそうなエンの顔を見ていると無下にできなかった。彼には何度も親切にしてもらった恩が有ることだし。
「……話すだけだよ?」
「ロックウィーナ、断りなよ!」
「大丈夫だよマキア。女性兵士のテントからそう遠く離れないようにする。何か遭ったら大きな声を出して助けを呼べるように。それでいいよね? エン」
「ああ。感謝する」
私は流されているのかもしれない。でも私の方が四つも年上だし、身を護る技も有るし、いざとなったら助けを呼べばいい、何とかなるだろうと考えていた。
それはとても甘い判断だったと、私は後に大きく後悔することになる。
☆☆☆
午後の馬車内、颯爽と乗り込んできたルービック師団長に私達の目が点になった。ルービックは呆気に取られている私達へ、自分がここに居る理由を説明した。
「いや何か、マシューの元気が無くてな。私の馬車でエドガーに彼を慰めてもらっているんだ。私は邪魔になると思いこちらへ移らせてもらった」
白い歯を見せる爽やか笑顔で説明されても意味がよく解らなかった。キースが不思議そうに尋ねた。
「師団長も一緒に慰めれば宜しいのでは?」
だよね。
「そうしたいのは山々なんだが、私とマシューは性格がイマイチ合わなくてな。きっと私では彼の悩みに寄り添ってやれないだろう」
「そうですか? お二人とも明るくて社交的。気が合うのだと思っていました」
「ああー……。マシューはな、今でこそ明るく振る舞っているが、騎士団に入った当初は引っ込み思案で殻に閉じ籠るタイプだったんだ」
それは意外だ。ぐいぐい積極的に来る若いお兄ちゃんという印象だから。
ルービックは遠い目をした。
「いや実は今も……、マシューの本質は変わっていないのかもな。無理をして明るい振りをしているんじゃないかと思う時が有る」
「なるほど……。彼が闇魔法の使い手であることが納得できました。術者の本質に魔法適性は似通うと言われていますから」
キースの発言にルパートとマキアも頷いた。
器用なルパートは風。熱く爽やかな心根のマキアは火と風。優しさと……心に闇を背負ってしまったキースは光と闇。アルクナイトは正に天才だ。
「マシュー中隊長は隠れ陰キャだったのか……。だとしたら師団長とは合いませんね。師団長は根っからの陽キャですもんね」
彼をよく知るルパートにまとめられ、ルービックはバツの悪い顔をした。
「ま、そういうことだ。その点エドガーは落ち着いた優しい男だからな、安心してマシューを任せられる」
「師団長もとても優しくて落ち着いた方だと思いますよ? 私は師団長のおかげで女性兵士と仲良くなれたのですから」
私がフォローしてルービックは微笑んだが、隣のルパートが渋い顔をした。
「師団長が優しいのはよく解っている。でも落ち着きは無いぞ」
「おいルパート。昔の私はもう居ない」
「昔……。師団長は昔、どんなお人柄だったんですかぁ?」
好奇心からリリアナが首を突っ込んできた。
「いや、それは……」
ルービックは誤魔化そうとしたが、ルパートが暴露した。
「王国兵団に何度も補導されていたそうだ」
「補導!?」
「保護だ、保護」
「どうしてそんな経緯にぃ?」
「ああー……」
ルービックは頭を掻いて恥ずかしそうにしたが、みんなにじっと見られてポツポツ語り始めた。
「実は私は……子供の頃から正義の味方に憧れていてな。それで十五、六歳の頃に友人と一緒に自警団を結成して、出身地である王都の平和を日夜守っていたんだ」
何となく先が読めた。
「そして私はどうやら特異体質らしい。身体を循環している癒しの魔力のおかげか、魔法を唱えなくても軽い怪我なら瞬時に自己回復してしまうんだ」
「不死身のルービックと言う通り名をお持ちでしたね」
「それは便利な体質ですね。僕は自分の怪我を治療する際、とても疲れてしまいます」
キースは感心していたが、私は指揮官でありながら敵の本拠地へ突入しようとしたルービックを思い出した。止めていたエドガーとマシューのことも。
ルービックは「ちょっとの怪我なら回復して元通り~」とか言って暴走するんでしたっけ?
「身体が頑丈なもんで少~し調子に乗ってしまうことが有ってな、王国兵団に何度か保護されてしまったんだ」
「絶対に補導ですよね?」
「違うからルパート、保護だから。それでもってそんなに体力が有り余っているなら兵団に入ればいいと、当時の聖騎士に勧められたんだ」
「自警団の名の下でやり過ぎた罪を精算する交換条件として、無理やり入団させられたと先輩から聞きましたよ?」
「違うから。でもまぁ、王国兵団に入ったおかげで聖騎士になれたし大出世もしたわで、結果オーライだったよな」
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