ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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それぞれの想い(3)

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☆☆☆


 昼休憩。馬車から降りて昼食を摂りに少し開けた場所へ出た。マシューは聖騎士達に合流して彼らと過ごすようで姿を消した。
 ふと、歩く私の影が二つ重なって濃くなった気がした。振り返ると忍者が背後にピッタリくっ付いていた。

「わ、エン!?」
「今日のメシは隣り合って座ろう。さ、早く」

 言ってエンは私の手を引いて適した地形に座らせた後、横の大地へ所持していたクナイ六本の内四本をグサグサグサグサと突き立てた。場所取りのつもりらしい。
 そして食料を配布している兵士の元へ行き、私とエンの二人分を受け取ってそそくさと戻ってきた。

「ほら、アンタの分だ」
「あ、ありがとう……」

 忍者の素早い行動をポカンと口を開けて見守ってしまっていた他の男達は、3テンポくらい遅れてからようやく我に返り、そしてヒソヒソし出した。

「何だよアレ、まるで恋人気取りじゃね?」(ルパ先)
「調子に乗ってきたな忍者。忍者Ⅱは弟分を止めんか」(魔王)
「いや~、まさか奥手なアイツがあんなに積極的になるとはなぁ」(忍者Ⅱ)
「笑い事じゃない。21歳、性欲のみで突っ走ってしまうお年頃だ」(勇者)
「ちょっとやだぁ、お姉様がエンちんこ菌に侵食されちゃう」(女装男)
「ほっほっほ。まだもう一方の隣の席が空いておりますぞ?」(執事)
「……そうでした! そこには僕が……」(暗黒僧侶)

 しかし井戸端会議に興じていたせいで行動が遅れた男達は、冷静だったマキアに先を越された。

「隣お邪魔するね~。贅沢だって解ってるけど、そろそろデザートに果物でも欲しいやね」
「わ、ワンコ~。おまえは大好きな忍者の隣に座れば良かろうに!」
「そう皆さんに言われていっつも俺、ぺいって弾かれるじゃないですか。たまにはいいでしょ。それにロックウィーナを好きな男が左右を挟むと大変ですよ。彼女、落ち着いて食事ができなくなります」

 マキアの主張を大人げない年長組はねじ伏せようとした。

「そんなことは無い。出自を自慢する訳ではないが、貴族としての教育を受けてきた私ならば、彼女を的確にリードして快適な時間を提供することができるだろう」
「俺にはウィーと過ごした七年間が有る。ウィーの癖や好みを熟知している。ソイツの望みを自然に叶えてやれる自信があるぜ?」

 胸を張ったエリアスとルパートへマキアが疑問を呈した。

「そうですかね? お二人は欲望に負けそうになりましたよね?」
「……あん?」
「エリアスさんは昨日、ルパート先輩は一昨日おととい、夕飯の時にロックウィーナへキスしようとしましたよね? いや、したのかな? 俺見てましたよ」

 うえぇっ、マキア見てたんかい!

「うおっ、おまえ見てたのかよ!?」

 ルパートが私の心の声とシンクロした。嫌な所で気が合うね。アルクナイトがそんな彼をじろりと睨んだ。

「何だと……? おいチャラどういうことだ。詳しく説明しろ」
「いやその、何て言うか」
「エリアスさんも……、いったい陰で何をしてくれているんですかね~」
「未遂だから! キース殿、頼むから凝視しないでくれ!!」
「信じらんない! お兄様達なんて不能になっちゃえ!」

 年長組プラスアルファが騒いでいるのを放っておいて、私とエンとマキアは食事に取りかかることにした。

「マキア、助かった」
「一つ貸しだからなエン。ハハ、なんつって。おまえの恋は応援したいから気にすんなよ」
「……マキアはそれでいいのか?」
「へ? 何が?」
「いや。ありがとう」

 私を挟んでバディ二人は親密度を更に上げたようだ。レベルアップ系のゲームなら、絆ポイントが溜まると協力技が使えるようになったりするんだよね。
 ……ああ、テレビゲームは岩見鈴音の世界に存在するものだ。あの夢以外にも、彼女の世界の知識が時々私の頭に入ってくる。

 ゲームと言えば……私が置かれているこの状況、まさに乙女ゲームそのものだよな。
 乙女ゲームとは、一人の女性主人公が複数のイケメン男性キャラと仲良くなり、最終的には一人に絞って、狙った相手と恋愛的なハッピーエンドを目指すゲームを指す。女のコの夢と妄想と欲望がこれでもかというくらいに詰め込まれている。
 ぶっちゃけ、岩見鈴音は乙女ゲームを参考にして小説を書いたんじゃないかと私は推測している。エンディングの一枚絵といいナレーションといい、乙女ゲーム要素がてんこ盛りの十日間ループだった。

「ロックウィーナ、今夜アンタを迎えに行く」
「ふぇっ!?」

 この世界について考察していた私は、エンから投げられたストライクな発言を瞬時に理解できなかった。

「あの、今何て……?」
「夜に女性テントまで迎えに行くから、時間を空けておいてくれ」
「えっ、よ、夜……?」

 たじろぐ私。これは夜デートのお誘いなのか!?
 ちゃんと確認しよう。真面目な稽古の誘いかもしれない。以前手合わせをしたいと彼は言っていたし。

「ええと、徒手空拳で私と打ち合いたいってことかな?」
「それにも魅力が有るが、今回は二人きりで話がしたいんだ」

 組み手じゃなかったー。デートの方だったー。
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