ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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それぞれの想い(6)

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 彼の気迫に押されて私は、座ったままジリジリと後退あとずさりしたくなった。腕を掴んだエンはそれを許してくれなかったが。

「アンタの傍に居たい」
「エン」
「触れたい」
「あのね……」
「心が欲しい」
「待って、そんなに急いで答えを出さないで」
「無理だ」

 言ってエンは私を草の上に押し倒した。
 またか~~~~!!!! エリアス、アルクナイト、ルパートに続いてこれで四人目だよ。性急な男どもと、危険を学習しない私。どっちも大馬鹿だ。

「エン、どきなさい。私の気持ちを無視してコトを進めないで!」

 私は自分の上にし掛かる男へ抗議した。

「アンタは俺に恋をしていない」
「……そうだね。友達だと思ってる。でもそれは他の男性にも同じことを言えるよ。私はまだ誰にも恋をしていない。急に何人もの人に告白されて戸惑ってるの。お願いだから考える時間をちょうだい」

 私はゆっくりした口調でエンの気を静めようと努めた。しかし彼は既に心を決めてこの場に来ていたのだった。

「悪いがロックウィーナ、アンタの気持ちが固まるまで待っていられない」
「はっ……?」
「グズグズしていたら他の誰かに先を越される。アンタが他の男に抱かれるなんて、そんなことは許せない」
「エン…………?」

 私はエンの瞳の中に、若さ故に暴走する狂気を見つけた。この後のことを想像して全身がおののき、私は彼を跳ね除けようとした。

「くっ」

 エンの目を狙った私の熊手突きは払い落とされ、もう一方の手はエンの脇に挟まれて動きを封じられた。そして彼は左手で私の服の後ろ襟首を掴み、腰を捻って両脚を前に出して抑え込みの体勢を取った。
 これは岩見鈴音の住んでいた「日本」という国に存在する柔道の技だ。はしもそうだが、エンの故郷である東国と日本には共通点がたくさん有った。



「うう~~~~っ」

 しばらく私はエンの腕の中でもがいていたが、抑え込みは解けず体力だけが消耗していった。エンは私に怪我をさせずに無力化することに成功したのだ。

「う~~~~……」

 やがてぐったりと私から力が抜けたタイミングで、腰部分に熱い何かが触れた。エンの指だった。

「っ!?」

 腰に付けていた鞭が外され、少しめくられた私の服の中に彼の手が侵入していたのだ。肌へ直に指が這う感触。私は思わず身をよじった。

「エン、やめて!」
「………………」

 眉一つ動かさずに彼は私を見下ろしていた。まるで忍びとして任務に当たっている時のように。

(どうしよう、どうしよう、エンは本気だ……!)

 彼は私を抱こうとしていた。
 エンの手は私の肌を撫でながら上がってくる。やがて胸部へ到達するだろう。このままでは、なし崩し的に私は彼と肉体関係を持つことになる。

(駄目、そんなことできない!!)

 エンが真面目で優しい青年だということは知っている。自分の損得を考えずに、バディのマキアや義兄弟のユーリの為に陰で動く仲間想いの人だ。
 好きだよ。だけど私にとってエンは友達なのだ。
 恋してない相手には捧げられない。

(大声を出して女性兵士を呼ぼうか!?)

 そうしたらエンは兵士達に袋叩きにされるだろう。規律の厳しい王国兵団内で、婦女暴行を働いた者として処罰対象になってしまうのだ。ギルドの仲間もきっと彼を許さない。
 それは避けたい。エンさえ考え直してくれたら丸く収まるのだから。

「エン、あなたは私がアルクナイトにキスマークを付けられた時、強引な彼の行動に対して怒ってくれたじゃない」

 私は説得を試みた。彼の心に響くことを願って言葉をつむいだ。

「あなたは無理やり女性にこんなことをする人じゃない。今は頭に血が上ってどうかしちゃってるの」
「………………」
「お願い、冷静になって」
「俺は冷静だ。自分が何をしているか理解している」
「エ……」

 私の懇願は最悪な形で退けられた。エンの唇によって口を塞がれたのだ。

「!……!……!」

 情熱的で長いキス。これによって悲鳴を上げて女性兵士に助けを求めるという、残されていた最終手段も封じられてしまった。

「!!」

 エンの指が私の胸の膨らみに触れた。親とは違う、性欲に突き動かされた接触。
 増幅された恐怖と、拒絶心。
 抵抗できない自分よりも強い男の下で、私の肌は容易く蹂躙じゅうりんされていった。

(嫌、嫌だ、こんなのは嫌……)

 絶望が涙を形成しようとしたその時、

「この馬鹿野郎、エン!!!!!!」

 怒気をはらんだ声が頭上から降りそそいだ。
 同時にふっと身体が軽くなり呼吸も楽になった。閉じていたまぶたを開けると、上に乗っていたエンが横の草の上に尻餅をついていた。

 柔らかい月の光に赤髪がぼんやり照らされていた。
 私の危機に駆けつけ、エンを突き飛ばしてくれたマキアがそこに居た。
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