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素直になりたくて(1)
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ギルドへ帰還した翌日、キースとユーリが休みを貰った日。
冒険者ギルドには様々な依頼が持ち込まれるが、中には冒険者に敬遠される依頼というものが存在する。ランク別に定められている最低報酬しか貰えない依頼がそれだ。命を懸けたのに見返りがしょっぱくては、冒険者のヤル気が削がれてしまうのも無理はない。
逆に報酬がべらぼうに良くても、難易度が高過ぎて冒険者が挑戦できない依頼も存在する。AランクやSランクの冒険者パーティーは数が少ないのだ。
まぁそんなこんなで、私とルパートは手付かずだった依頼の一つを消化する為に出動していた。Dランクフィールドで鳥系のモンスターをひたすら狩るクエストだ。
一体一体の強さは大したことないのだけれど、集合性が強いムクドリが闇進化したモンスターなので阿保みたいに数が多く、更に空の敵なので黒魔術師か射手が居ないと詰む。だから不人気依頼として二ヶ月間近くも放置されていた。
放置依頼の全てを片付けることは人手不足で不可能だが、できる限りはこうして救済するようにしている。(三ヶ月経っても達成されなかった依頼は破棄。依頼主に委託金が返金されるよ)
「風の刃よ、鋭き空の王の爪よ、我らを囲む敵を切り刻め!」
ルパートが得意のかまいたち魔法でモンスターの大半を倒し、魔法の隙間を縫って接近してきた数羽を私が鞭で叩き落とした。
いいコンビネーションだと我ながら思う。ルパートが魔法を使えることを早く打ち明けてくれていたら、もっともっと依頼の数をこなせていただろうに。強い敵が棲息するフィールドへも赴《おもむ》けたはずだ。
でもきっと彼は、私を危険なフィールドへ連れていきたくなかったんだろうね。僅《わず》かに付く危険手当の為に怪我をさせたら馬鹿馬鹿しいと思って。
(……………………)
今なら解る。私にばかり荷物を持たせたのは、いざとなったらルパートが私を護って戦う為。トイレで遅くなった時にからかってきたのは、モンスターが居るフィールドで私が独りになる時間を減らしたいから。そして私を戦わせないように回収のクエストばかり選んでいた。
「な、何だよ」
戦闘後、じっと見つめる私にルパートがたじろいた。
まったく、照れ屋か何だか知らないけど、私は鈍いんだからもっと解りやすく気持ちを伝えてよ。あなたの優しさに気づけなくてずっとスルーしてたじゃないか。
……感謝どころか私、悪態ばっかりついていたよね。
「ありがとうございます先輩。いつも護ってくれて」
今からだって遅くない、素直になろう。まずは積極的に感謝の気持ちを伝えるんだ。
「え、ええ!?」
礼を言われると予想していなかったのか、ルパートは明らかに狼狽えた。
「いや、おまえだって戦ったじゃん」
「はい。でも先輩が前面に立ってくれたので余裕を持って挑めました。だからありがとうございます」
「どうしたんだよ急に」
私は苦笑した。ルパートはルパートで素直に礼を受け取ることができないでいた。長年いびつな関係を築いてきた私達は、仕事の後にお互いを労うことすらままならない。
「私は気が強いので、条件反射でつい憎まれ口を叩いてしまいますが……」
「………………」
「先輩には感謝しているんですよ、これでも」
「……そっか」
漸く気持ちが伝わったようで、ルパートは嬉しそうに微笑んだ。
見つめ合うこと数秒間。あ、コレちょっとヤバイ展開が来るかなと私は身構えたのだが、ルパートは顔をつい、と空へ向けて本日の戦果を告げただけだった。
「二百羽以上倒したから群れは消えたな。クエスト達成と見ていいだろう。ギルドへ帰るぞ」
あれ?
「どうした、キョトンとして。それに何で猫足立ちになって構えている?」
「いや絶対に先輩が身体を触ってくるか、キスを狙ってくるかの二択だと思ったので」
「おまえカウンター入れる気だったのかよ。あのなぁ……」
ルパートは左手を自分の額に添えた。頭が痛いのポーズだ。
「……前に無理やり押し倒したことを反省してるんだよ。おまえの気持ちを無視してコトを進めたりはもうしないから」
自己を省みるのは良いことだよね。成長に繋がる。でもさ、
「その後に開かれた誕生日の夕食会で、ほっぺにちゅーしてきましたよね? 不意打ちで」
私は納得できずに突っ込んだ。
「一瞬だったじゃん! アレくらいはいいだろう?」
「良くねーよ。いいと思うんならどうして今はしないんです? あ、誘ってる訳じゃないですよ?」
ルパートはふ~っと音を立てて深く息を吐いた。
「……頬にキスは周りにみんなが居たからできたんだ。気持ちが昂ったとしても、仲間の存在がストッパーになっておまえを押し倒すことは無いだろうって」
「…………え」
私は周囲を見渡した。人っ子一人居ない。残った僅かな鳥のモンスターも散り散りになって逃げていった。
「ええと、誰も居ない所でキスなんかしちゃったら止まれない感じですか?」
「そうだ。今けっこう我慢してる状態だ」
げ、そうなの!? 我慢ってアンタ……。
冒険者ギルドには様々な依頼が持ち込まれるが、中には冒険者に敬遠される依頼というものが存在する。ランク別に定められている最低報酬しか貰えない依頼がそれだ。命を懸けたのに見返りがしょっぱくては、冒険者のヤル気が削がれてしまうのも無理はない。
逆に報酬がべらぼうに良くても、難易度が高過ぎて冒険者が挑戦できない依頼も存在する。AランクやSランクの冒険者パーティーは数が少ないのだ。
まぁそんなこんなで、私とルパートは手付かずだった依頼の一つを消化する為に出動していた。Dランクフィールドで鳥系のモンスターをひたすら狩るクエストだ。
一体一体の強さは大したことないのだけれど、集合性が強いムクドリが闇進化したモンスターなので阿保みたいに数が多く、更に空の敵なので黒魔術師か射手が居ないと詰む。だから不人気依頼として二ヶ月間近くも放置されていた。
放置依頼の全てを片付けることは人手不足で不可能だが、できる限りはこうして救済するようにしている。(三ヶ月経っても達成されなかった依頼は破棄。依頼主に委託金が返金されるよ)
「風の刃よ、鋭き空の王の爪よ、我らを囲む敵を切り刻め!」
ルパートが得意のかまいたち魔法でモンスターの大半を倒し、魔法の隙間を縫って接近してきた数羽を私が鞭で叩き落とした。
いいコンビネーションだと我ながら思う。ルパートが魔法を使えることを早く打ち明けてくれていたら、もっともっと依頼の数をこなせていただろうに。強い敵が棲息するフィールドへも赴《おもむ》けたはずだ。
でもきっと彼は、私を危険なフィールドへ連れていきたくなかったんだろうね。僅《わず》かに付く危険手当の為に怪我をさせたら馬鹿馬鹿しいと思って。
(……………………)
今なら解る。私にばかり荷物を持たせたのは、いざとなったらルパートが私を護って戦う為。トイレで遅くなった時にからかってきたのは、モンスターが居るフィールドで私が独りになる時間を減らしたいから。そして私を戦わせないように回収のクエストばかり選んでいた。
「な、何だよ」
戦闘後、じっと見つめる私にルパートがたじろいた。
まったく、照れ屋か何だか知らないけど、私は鈍いんだからもっと解りやすく気持ちを伝えてよ。あなたの優しさに気づけなくてずっとスルーしてたじゃないか。
……感謝どころか私、悪態ばっかりついていたよね。
「ありがとうございます先輩。いつも護ってくれて」
今からだって遅くない、素直になろう。まずは積極的に感謝の気持ちを伝えるんだ。
「え、ええ!?」
礼を言われると予想していなかったのか、ルパートは明らかに狼狽えた。
「いや、おまえだって戦ったじゃん」
「はい。でも先輩が前面に立ってくれたので余裕を持って挑めました。だからありがとうございます」
「どうしたんだよ急に」
私は苦笑した。ルパートはルパートで素直に礼を受け取ることができないでいた。長年いびつな関係を築いてきた私達は、仕事の後にお互いを労うことすらままならない。
「私は気が強いので、条件反射でつい憎まれ口を叩いてしまいますが……」
「………………」
「先輩には感謝しているんですよ、これでも」
「……そっか」
漸く気持ちが伝わったようで、ルパートは嬉しそうに微笑んだ。
見つめ合うこと数秒間。あ、コレちょっとヤバイ展開が来るかなと私は身構えたのだが、ルパートは顔をつい、と空へ向けて本日の戦果を告げただけだった。
「二百羽以上倒したから群れは消えたな。クエスト達成と見ていいだろう。ギルドへ帰るぞ」
あれ?
「どうした、キョトンとして。それに何で猫足立ちになって構えている?」
「いや絶対に先輩が身体を触ってくるか、キスを狙ってくるかの二択だと思ったので」
「おまえカウンター入れる気だったのかよ。あのなぁ……」
ルパートは左手を自分の額に添えた。頭が痛いのポーズだ。
「……前に無理やり押し倒したことを反省してるんだよ。おまえの気持ちを無視してコトを進めたりはもうしないから」
自己を省みるのは良いことだよね。成長に繋がる。でもさ、
「その後に開かれた誕生日の夕食会で、ほっぺにちゅーしてきましたよね? 不意打ちで」
私は納得できずに突っ込んだ。
「一瞬だったじゃん! アレくらいはいいだろう?」
「良くねーよ。いいと思うんならどうして今はしないんです? あ、誘ってる訳じゃないですよ?」
ルパートはふ~っと音を立てて深く息を吐いた。
「……頬にキスは周りにみんなが居たからできたんだ。気持ちが昂ったとしても、仲間の存在がストッパーになっておまえを押し倒すことは無いだろうって」
「…………え」
私は周囲を見渡した。人っ子一人居ない。残った僅かな鳥のモンスターも散り散りになって逃げていった。
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