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ヤンデレ集団Bチーム(1)
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AチームとCチームは馬車に乗って街の外の目的地へ赴いた。
私が所属するBチームは街の中のポイントに当たったので、今日は徒歩で出動だ。マシューの父である男爵の統治のおかげかフィースノーの街はとても発展している。しかし賑わう街にはどうしても裏の顔……、治安の悪い場所ができてしまうのも事実だ。
貧困者が集まってスラム地区を形成したり、金持ちや観光客を狙う犯罪者が多く流れ着きマフィア地区が誕生することが有る。今日向かっているのもその内の一つだ。
「飲み屋と木賃宿が並ぶ地区か。いかにも犯罪者が身を潜ませていそうな場所だねぇ」
マシューが地図を見て感想を述べた。生まれ故郷であるが、貴族の彼には馴染みの無い場所だろう。
ユーリが意見した。
「下っ端の構成員はそこで見つけられるかもしれない。……首領は居ないだろうがな」
「どうして?」
「あの人は出張の際、金持ち商人の振りをして堂々と高い宿に泊まっていた。元貴族だったからな、やろうと思えば綺麗な所作ができるので従業員に怪しまれることは無かったよ」
なるほど。堂々とすることで逆に王国兵団の目を欺けていたのか。
「じゃあ今日のBチームは、首領確保という大手柄を立てることが無理っぽいね~。残念」
「たとえ下っ端であっても取り締まれば治安は良くなる。無駄じゃないよ」
マシューを窘めたのはキースであった。マシューは素直に返事をした。
「ですね! この街を良くすることは領主であるエディオン家の使命でもありますし、頑張ります!!」
構成員は殺してもいいかとルービックに笑いながら尋ねたマシューと、情熱を持って任務遂行に当たろうとしている今のマシュー、どちらが彼の本質なんだろう。
「ロックウィーナ気をつけて。街の雰囲気が変わってきた」
キースが小声で注意してきて、護るように私の横へぴったりくっ付いた。目だけ動かして周辺を窺うと彼の言う通り、危険区域に立ち入ったのだと解った。
薄汚れた衣服を身に着けた男達が路上で煙草をふかしていて、道端にはゴミが散乱している。まだ明るいのに露出の多い安っぽいドレス姿の女性が、所々に立っていて通行人を品定めするように見ている。たぶん客待ちの娼婦だろう。
目立たないように支部の赤い防護ベストは着用してこなかったが、清潔感の有る身なりをしているだけで私達は充分に人目を引いた。もっとも、ちょっかいをかけようとしてきたチンピラくんは皆、先頭を歩くソルの凍てつく視線に射られて退散していった。「俺も射貫いて欲しい」とユーリが呟いたが全員で華麗にスルーした。
「そこまで治安が悪いという訳ではないようだな」
少し歩いたところでソルが感想を述べた。私も同感だった。
「そうだね。昼間だからかな? 夜になれば酔っ払いが増えるだろうし、グンと危険度が上がるんじゃない?」
「取り敢えずは宿屋をしらみつぶしに当たって、宿泊客に怪しい輩が居ないかチェックしてみるか」
私達が円になって作戦を立てていると、少し離れた所から女性の声が届いた。
「マシューではないか!?」
その声を聞いたマシューは一瞬表情を曇らせたが、すぐに笑顔を作って女性の方を振り返った。
「こんにちは、サティー」
そこには立派な胸当てを装着した長い黒髪の女性一人と、彼女に付き従う男性が二人居た。全員三十代後半に見えて、腰には剣を差していた。
サティーと呼ばれた女性はにこやかな表情で私達の元へ来た。
「おまえも街の見回りかい?」
「そんなところです。なるほど、サティーが目を光らせてくれたから、この辺りは比較的落ち着いているんですね」
サティーはマシューと親しい間柄のようだ。マシューに気さくなサティーは、私達には丁寧な口調で自己紹介をした。
「はじめまして。私はサティー・エディオン。マシューの叔母に当たります。皆さんは甥の同僚の方々ですか?」
へっ? 叔母? 甥?
マシューが苦笑して付け足した。
「分家の叔父さんに嫁いだ人だよ。前に話した騎士団副団長の叔父さん。結婚前はサティーも王国兵団の騎士だったんだ」
おお、騎士団内でラブロマンスが……。
「マシューさんの叔母様で先輩なんですか?」
「ふふっ、先輩だけれど私はただの騎士に過ぎなかったから、聖騎士のマシューの方が出世していますよ。でもね、少年だったマシューに剣技を教えたのは私だったんです」
「先生でもあったんですか……」
嫁いできたということは、彼女はマシューの血が繋がらない近親者か。キリッとした目元、厚い唇を持つクッキリした顔立ちのなかなかの美人さんだ。
王都へ引き上げた王国兵団の代わりに、エディオン家の私兵が街の巡回をできる範囲でしてくれていると聞いた。私達は偶然その現場に居合わせたんだな。
つい私はサティーをじっと見てしまった。
「お嬢さん、私の顔に何か付いていますか?」
「わ、すみません! ジロジロ見るなんて初対面の方に対して無作法でした」
頭を下げて謝罪した私を見て、サティーが甥をからかった。
「素直なお嬢さんだ。マシュー、おまえも付き合うならこういうコにすればいいのに。いつも何だってあんなチャラチャラした軽そうなコばかりを選ぶんだい?」
「はいはいサティー、とっとと見回りに戻って下さい。叔父さんに宜しく」
「何だよ、おまえ達も一緒に見回ればいいだろう?」
「俺達は極秘任務で人を捜しているんです。今以上の人数で行動すると目立ってしまいますから離れて下さい」
「ふっ、解ったよ。お嬢さんお名前は?」
「ロックウィーナです」
「ロックウィーナ嬢、甥を頼みますね」
サティーは爽やかに去っていった。風のようだ。あーでも、マシューのことも最初は爽やかな青年だと思ったんだっけ。サティーも密かに病んでいないことを祈る。
私が所属するBチームは街の中のポイントに当たったので、今日は徒歩で出動だ。マシューの父である男爵の統治のおかげかフィースノーの街はとても発展している。しかし賑わう街にはどうしても裏の顔……、治安の悪い場所ができてしまうのも事実だ。
貧困者が集まってスラム地区を形成したり、金持ちや観光客を狙う犯罪者が多く流れ着きマフィア地区が誕生することが有る。今日向かっているのもその内の一つだ。
「飲み屋と木賃宿が並ぶ地区か。いかにも犯罪者が身を潜ませていそうな場所だねぇ」
マシューが地図を見て感想を述べた。生まれ故郷であるが、貴族の彼には馴染みの無い場所だろう。
ユーリが意見した。
「下っ端の構成員はそこで見つけられるかもしれない。……首領は居ないだろうがな」
「どうして?」
「あの人は出張の際、金持ち商人の振りをして堂々と高い宿に泊まっていた。元貴族だったからな、やろうと思えば綺麗な所作ができるので従業員に怪しまれることは無かったよ」
なるほど。堂々とすることで逆に王国兵団の目を欺けていたのか。
「じゃあ今日のBチームは、首領確保という大手柄を立てることが無理っぽいね~。残念」
「たとえ下っ端であっても取り締まれば治安は良くなる。無駄じゃないよ」
マシューを窘めたのはキースであった。マシューは素直に返事をした。
「ですね! この街を良くすることは領主であるエディオン家の使命でもありますし、頑張ります!!」
構成員は殺してもいいかとルービックに笑いながら尋ねたマシューと、情熱を持って任務遂行に当たろうとしている今のマシュー、どちらが彼の本質なんだろう。
「ロックウィーナ気をつけて。街の雰囲気が変わってきた」
キースが小声で注意してきて、護るように私の横へぴったりくっ付いた。目だけ動かして周辺を窺うと彼の言う通り、危険区域に立ち入ったのだと解った。
薄汚れた衣服を身に着けた男達が路上で煙草をふかしていて、道端にはゴミが散乱している。まだ明るいのに露出の多い安っぽいドレス姿の女性が、所々に立っていて通行人を品定めするように見ている。たぶん客待ちの娼婦だろう。
目立たないように支部の赤い防護ベストは着用してこなかったが、清潔感の有る身なりをしているだけで私達は充分に人目を引いた。もっとも、ちょっかいをかけようとしてきたチンピラくんは皆、先頭を歩くソルの凍てつく視線に射られて退散していった。「俺も射貫いて欲しい」とユーリが呟いたが全員で華麗にスルーした。
「そこまで治安が悪いという訳ではないようだな」
少し歩いたところでソルが感想を述べた。私も同感だった。
「そうだね。昼間だからかな? 夜になれば酔っ払いが増えるだろうし、グンと危険度が上がるんじゃない?」
「取り敢えずは宿屋をしらみつぶしに当たって、宿泊客に怪しい輩が居ないかチェックしてみるか」
私達が円になって作戦を立てていると、少し離れた所から女性の声が届いた。
「マシューではないか!?」
その声を聞いたマシューは一瞬表情を曇らせたが、すぐに笑顔を作って女性の方を振り返った。
「こんにちは、サティー」
そこには立派な胸当てを装着した長い黒髪の女性一人と、彼女に付き従う男性が二人居た。全員三十代後半に見えて、腰には剣を差していた。
サティーと呼ばれた女性はにこやかな表情で私達の元へ来た。
「おまえも街の見回りかい?」
「そんなところです。なるほど、サティーが目を光らせてくれたから、この辺りは比較的落ち着いているんですね」
サティーはマシューと親しい間柄のようだ。マシューに気さくなサティーは、私達には丁寧な口調で自己紹介をした。
「はじめまして。私はサティー・エディオン。マシューの叔母に当たります。皆さんは甥の同僚の方々ですか?」
へっ? 叔母? 甥?
マシューが苦笑して付け足した。
「分家の叔父さんに嫁いだ人だよ。前に話した騎士団副団長の叔父さん。結婚前はサティーも王国兵団の騎士だったんだ」
おお、騎士団内でラブロマンスが……。
「マシューさんの叔母様で先輩なんですか?」
「ふふっ、先輩だけれど私はただの騎士に過ぎなかったから、聖騎士のマシューの方が出世していますよ。でもね、少年だったマシューに剣技を教えたのは私だったんです」
「先生でもあったんですか……」
嫁いできたということは、彼女はマシューの血が繋がらない近親者か。キリッとした目元、厚い唇を持つクッキリした顔立ちのなかなかの美人さんだ。
王都へ引き上げた王国兵団の代わりに、エディオン家の私兵が街の巡回をできる範囲でしてくれていると聞いた。私達は偶然その現場に居合わせたんだな。
つい私はサティーをじっと見てしまった。
「お嬢さん、私の顔に何か付いていますか?」
「わ、すみません! ジロジロ見るなんて初対面の方に対して無作法でした」
頭を下げて謝罪した私を見て、サティーが甥をからかった。
「素直なお嬢さんだ。マシュー、おまえも付き合うならこういうコにすればいいのに。いつも何だってあんなチャラチャラした軽そうなコばかりを選ぶんだい?」
「はいはいサティー、とっとと見回りに戻って下さい。叔父さんに宜しく」
「何だよ、おまえ達も一緒に見回ればいいだろう?」
「俺達は極秘任務で人を捜しているんです。今以上の人数で行動すると目立ってしまいますから離れて下さい」
「ふっ、解ったよ。お嬢さんお名前は?」
「ロックウィーナです」
「ロックウィーナ嬢、甥を頼みますね」
サティーは爽やかに去っていった。風のようだ。あーでも、マシューのことも最初は爽やかな青年だと思ったんだっけ。サティーも密かに病んでいないことを祈る。
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