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女神の懺悔(3)
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「……まだ息が有る奴が居るようだな」
エンが崩れ落ちた建物や、地面に転がるアンダー・ドラゴン構成員を観察して言った。
「みんなはここに居て下さい。俺がとどめを刺してきます」
全員殺すんだ……。
でも生き残っている人も重度の火傷を負っただろうし、楽にしてあげることが優しさなのかもしれない。
「俺が行くよエン。自分がやったことの後始末は自分でつける」
「それなら私も……」
マキアと共に立候補した私を、全員が慌てて止めに入った。
「馬鹿か、おまえはここに居ろ」
「そうだよ」
「これから何をするか解ってないだろ」
「あの……私……」
「スズネ、キミは死体を間近で見たことが有るのか?」
ルービックの問いに私は頭を横に振った。
「ならやめておけ。焼死体は綺麗な見た目じゃない。爆風で手や脚が欠損した者も居るだろう」
想像して背筋が凍った。みんなが私を気遣ってくれているのも解る。それでも私は行かなくちゃならない。
「私がアンダー・ドラゴンという存在をこの世界に産み落としたんです。彼らもまた、創造主である私の子供なんです」
「スズネ……」
「アンダー・ドラゴンはこれからも暴走し続けるでしょう。もう滅ぼすしかないと私も覚悟を決めました。危険な子供を世に出してしまった碌でもない親ですが、せめて彼らの最期を見届けたいんです」
「………………」
私の決意を汲んでルービックが微笑んだ。
「その覚悟、受け取った。ならば共に行こう。決して平坦な道では無いがキミなら進めるだろう」
頷く私の頭を誰かがよしよしと撫でた。ルービックだと思ったら黒猫だった。
「決まったのなら素早く片付けましょう。スズネ、無理だと思ったらいつでも退がれよ?」
目端が利く忍者のエンを先頭にして、私達は焼け跡へと歩を進めた。
地面に寝転んでいる男達の大半は息を引き取っていたけれど、肌がただれた手足を動かして痛みに呻いている者も居た。エンが屈んで彼らの首筋を斬り、永遠の眠りを与えていった。
「くっ、来るなぁ!」
「悪魔め!!」
奥へ進むと建物の陰に、立ち姿の男達が二人潜んでいた。彼らは下っ端構成員が好む終末ファッションをしていない。幹部ほどの威厳は持っていないが中堅クラスのメンバーなのだろう。
この男達はたいして火傷を負っていなかった。マキアの魔法の威力を察知して、即座に後方へ退り建物を盾にしたのだ。元気な状態ならきっとそれなりに強い戦士なのだと思う。
しかし煙を吸って身体が重くなり、今の彼らは走って逃げることができないようだ。鈍い動作で出鱈目に剣を振り回して、近付くギルド職員を牽制していた。
「悪いが見逃せないんだ」
ルパートが腰から細身の剣を抜いて瞬時に一人を斬り伏せた。そして二人目にも剣を向けた。
「畜生、これまでかよ!」
「………………?」
そこで何故かルパートの動きが止まった。彼は剣を構えたまま生き残った最後の一人、額の左側に二連の特徴的な黒子が有るアンダー・ドラゴン構成員を長らく見つめていた。
「……まさか」
ボソリと呟いたルパートを仲間達が不思議がった。斬られる直前だった男も訝しむ目をルパートへ向けた。
「何を躊躇っているんだルパート。その男がどうかしたか?」
背後から声をかけたルービック。それに反応したのは、ルパートに剣を向けられている男の方だった。
「……は? ル……パート……? ルパートだって…………?」
男に名前を呼ばれたルパートは剣を握る右手を震わせた。
「おまえ……おまえは……、やはりギル……なのか?」
ルパートと、ギルと呼ばれた黒子の男はしばらく互いの顔を凝視していた。
「おいルパート、奴を知っているのか?」
「……っ」
心配したルービックにルパートは答えず、対峙している男を大声で怒鳴りつけた。
「何やってんだギル!! どうしておまえがアンダー・ドラゴンの連中なんかと一緒に居るんだよ!?」
「………………」
「騎士にまでなった男が、何で犯罪組織に加担してんだ!」
騎士? 目の下に濃いクマを作り、無精髭を生やした悪人顔のこの男が!?
「何とか言えよギル!!」
「うるせぇ!!!!」
男が吠えるように応答した。
「テメェのせいだろーがルパート! テメェのせいで俺は騎士団から追放されたんだ!!」
二人の会話が噛み合ってしまった。この男がギルで間違いないようだ。
「俺のせいにするか! 裏切り者の分際で!!」
「落ち着けルパート!」
ルービックが割って入った。彼も抜刀して剣先をギルへ向けている。
「騎士団を追放されたということは、貴様は諍いを起こし除名処分を受けた、ルパートの幼馴染みなのか?」
静かに問うルービックの全身をギルは視認した。
「ハハッ……。鎧が無かったから気づかなかったが、あなたはルービック大隊長様でいらっしゃいましたか。今は更に出世して連隊長とかですかね?」
「……師団長だ」
「ハハハハハッ、そいつはスゲェ! 聖騎士は流石に出世が早くて羨ましいですなぁ! 仰る通り、自分はかつて騎士団に所属していたギルであります。隊長職に就けなかったカス騎士ですがね。ハハハハハ!」
狂ったようにギルは馬鹿笑いをした。
エンが崩れ落ちた建物や、地面に転がるアンダー・ドラゴン構成員を観察して言った。
「みんなはここに居て下さい。俺がとどめを刺してきます」
全員殺すんだ……。
でも生き残っている人も重度の火傷を負っただろうし、楽にしてあげることが優しさなのかもしれない。
「俺が行くよエン。自分がやったことの後始末は自分でつける」
「それなら私も……」
マキアと共に立候補した私を、全員が慌てて止めに入った。
「馬鹿か、おまえはここに居ろ」
「そうだよ」
「これから何をするか解ってないだろ」
「あの……私……」
「スズネ、キミは死体を間近で見たことが有るのか?」
ルービックの問いに私は頭を横に振った。
「ならやめておけ。焼死体は綺麗な見た目じゃない。爆風で手や脚が欠損した者も居るだろう」
想像して背筋が凍った。みんなが私を気遣ってくれているのも解る。それでも私は行かなくちゃならない。
「私がアンダー・ドラゴンという存在をこの世界に産み落としたんです。彼らもまた、創造主である私の子供なんです」
「スズネ……」
「アンダー・ドラゴンはこれからも暴走し続けるでしょう。もう滅ぼすしかないと私も覚悟を決めました。危険な子供を世に出してしまった碌でもない親ですが、せめて彼らの最期を見届けたいんです」
「………………」
私の決意を汲んでルービックが微笑んだ。
「その覚悟、受け取った。ならば共に行こう。決して平坦な道では無いがキミなら進めるだろう」
頷く私の頭を誰かがよしよしと撫でた。ルービックだと思ったら黒猫だった。
「決まったのなら素早く片付けましょう。スズネ、無理だと思ったらいつでも退がれよ?」
目端が利く忍者のエンを先頭にして、私達は焼け跡へと歩を進めた。
地面に寝転んでいる男達の大半は息を引き取っていたけれど、肌がただれた手足を動かして痛みに呻いている者も居た。エンが屈んで彼らの首筋を斬り、永遠の眠りを与えていった。
「くっ、来るなぁ!」
「悪魔め!!」
奥へ進むと建物の陰に、立ち姿の男達が二人潜んでいた。彼らは下っ端構成員が好む終末ファッションをしていない。幹部ほどの威厳は持っていないが中堅クラスのメンバーなのだろう。
この男達はたいして火傷を負っていなかった。マキアの魔法の威力を察知して、即座に後方へ退り建物を盾にしたのだ。元気な状態ならきっとそれなりに強い戦士なのだと思う。
しかし煙を吸って身体が重くなり、今の彼らは走って逃げることができないようだ。鈍い動作で出鱈目に剣を振り回して、近付くギルド職員を牽制していた。
「悪いが見逃せないんだ」
ルパートが腰から細身の剣を抜いて瞬時に一人を斬り伏せた。そして二人目にも剣を向けた。
「畜生、これまでかよ!」
「………………?」
そこで何故かルパートの動きが止まった。彼は剣を構えたまま生き残った最後の一人、額の左側に二連の特徴的な黒子が有るアンダー・ドラゴン構成員を長らく見つめていた。
「……まさか」
ボソリと呟いたルパートを仲間達が不思議がった。斬られる直前だった男も訝しむ目をルパートへ向けた。
「何を躊躇っているんだルパート。その男がどうかしたか?」
背後から声をかけたルービック。それに反応したのは、ルパートに剣を向けられている男の方だった。
「……は? ル……パート……? ルパートだって…………?」
男に名前を呼ばれたルパートは剣を握る右手を震わせた。
「おまえ……おまえは……、やはりギル……なのか?」
ルパートと、ギルと呼ばれた黒子の男はしばらく互いの顔を凝視していた。
「おいルパート、奴を知っているのか?」
「……っ」
心配したルービックにルパートは答えず、対峙している男を大声で怒鳴りつけた。
「何やってんだギル!! どうしておまえがアンダー・ドラゴンの連中なんかと一緒に居るんだよ!?」
「………………」
「騎士にまでなった男が、何で犯罪組織に加担してんだ!」
騎士? 目の下に濃いクマを作り、無精髭を生やした悪人顔のこの男が!?
「何とか言えよギル!!」
「うるせぇ!!!!」
男が吠えるように応答した。
「テメェのせいだろーがルパート! テメェのせいで俺は騎士団から追放されたんだ!!」
二人の会話が噛み合ってしまった。この男がギルで間違いないようだ。
「俺のせいにするか! 裏切り者の分際で!!」
「落ち着けルパート!」
ルービックが割って入った。彼も抜刀して剣先をギルへ向けている。
「騎士団を追放されたということは、貴様は諍いを起こし除名処分を受けた、ルパートの幼馴染みなのか?」
静かに問うルービックの全身をギルは視認した。
「ハハッ……。鎧が無かったから気づかなかったが、あなたはルービック大隊長様でいらっしゃいましたか。今は更に出世して連隊長とかですかね?」
「……師団長だ」
「ハハハハハッ、そいつはスゲェ! 聖騎士は流石に出世が早くて羨ましいですなぁ! 仰る通り、自分はかつて騎士団に所属していたギルであります。隊長職に就けなかったカス騎士ですがね。ハハハハハ!」
狂ったようにギルは馬鹿笑いをした。
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