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想いは解放されて願いとなる(5)
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まだ解散していなかった祝福隊が告白をやり遂げたマキアへ拍手を贈る中、いつもの調子に戻った彼はキースへ謝罪した。
「すみませんキース先輩、暴言を吐いてしまって。でもこれが俺の正直な気持ちです。あなたが退くと言うのなら俺が前へ出ます」
「………………」
「それとエン、ロックウィーナを好きだって黙っててゴメンな」
「知ってた」
相棒のエンはあっさり言った。
「え! そうなん!?」
「前に俺を応援すると言ったおまえに聞いたろ? マキアはそれでいいのかって」
「あ……そっか。何だ、けっこう早い段階でバレてたんだ……」
「バディなんだから当たり前だ」
「こっから俺、本気で行くけどいい?」
「そうすべきだ。俺も負けない」
親友同士の深い絆を感じた。ルパートとギルもこうなれていたら悲劇は訪れなかっただろうに。
そのルパートが宣言した。
「俺も頑張ろっと。ウィー、やっぱ俺はおまえが好きだわ」
…………はい?
「あの、先輩? 戻ってこられるとややこしくなるのですが」
二人で泣いて抱き合って恋を終わらせたアレは何だったんだ。
「だって肝心のキースさんがあのザマなんだ、諦め切れねぇだろうが」
ルパートが侮蔑の視線をキースへ向けた。
「俺はアンタを認めていた。アンタさえしっかりウィーを受け入れていれば、二人の未来を応援するつもりだったんだぞ? それが何だよ、情けねぇったら」
挑発されてもキースは言い返さなかった。その様子を見てアルクナイトとエリアスも名乗りを上げた。
「……ワンコやチャラ男の言う通りヘタったな、白。そんなおまえにロックウィーナは渡せん。おまえに言われるまでもなく、ロックウィーナは魔王アルクナイトの妻とする」
「このエリアス・モルガナンも宣誓する。ロックウィーナを護り愛し抜くのは自分であると」
またカオスになっちゃったよ。でも私も波に乗った。
「私も諦めません!」
そうだよ。キースが心変わりをして私を嫌いになったのならともかく、まだ好きでいてくれる状況で諦められるもんか。私だって頑張るんだ。
「キース先輩が背負ってきたものの重さを私は知りません。あなたを支えるには力不足かもしれません。私がハッキリと、自信を持って提示できるのはあなたを好きだという気持ちだけです」
キースはマキアからあれだけ批判されても平然としていたのに、私の訴えからは逃げようと顔を背けた。
「好きだという気持ちしかないから……私はこれを大切に育てます。あなたに届くように、いつか実を結ぶように!」
キースが歯を食いしばった。苦しそうだ。
感情が揺さ振られているってことは、彼の中にも私に対する確かな想いが存在するという証拠だ。
なら望みは有る。両想いなんだもの。
彼は前に言った。「自分は幸せになることを諦めている」と。それを覆してやる。意地でも幸せな未来をプレゼントしてみせる。幸せを押し付けてやるんだ、私の心と身体と一緒に彼へ。
私は願う。私達の想いが通じ合い、寄り添い、更に大きなものへと成長できますように。
☆☆☆
会議室の告白ラッシュから二時間後。
マキアとエンを加えたBチームは馬車二台に分乗して、出動先に決まったケベック湿原へ到着した。水溜りが多いので足がぬかるみに嵌まらないよう、注意して歩かなければならないフィールドだ。
先に馬車から降りたマキアが手を差し出してエスコートしてくれた。私が手を取ると彼は嬉しそうにニコッと笑顔を見せた。積極的になったマキアに戸惑うものの、つい可愛いと感じてしまう。
逆にキースは私を避けて違う馬車に乗ってここまで来た。寂しいけど焦っちゃ駄目だよね。
「はたしてここにアンドラの構成員が居るかどうか」
「……人気が無いな」
「地形が悪いし、例の件で立ち入り自体が制限されているからな」
最後に発言したのは我らがギルドマスターのケイシーだ。今回のミッションには急遽、普段は事務仕事の彼も同行することになった。キースの精神状態が不安定だから、それも有るが主にもう一つの理由によって、マスターは久々に戦士の装いでこの地に降り立った。
私達は仕事モードに切り替わり、湿原の地図を見ながら輪になって本日のミッションについて話し合った。
「ガチでドラゴンが出てきたらどうします~?」
そう言ったマシューはあまり怖がっていない様子だったが、私は非常に怯えていた。ドラゴンなんかと戦いたくない。
そう、これこそがマスターが同行した理由。このケベック湿原には犯罪者の他に、恐ろしいドラゴンが棲息しているかもしれないのだ。
実は一ヶ月ほど前に国から冒険者ギルドへ、Sランクに相当する超高難易度の依頼が入っていたのだ。それがサンダードラゴンの討伐だ。ちなみに国からは500万ゴル預かり、仲介料と保険料を差し引いた成功報酬は300万ゴルとなっている。
とはいえドラゴンを倒せるSランクパーティなどそうそう居ない。依頼は未達成のまま放置されていた。
「ドラゴン発見情報は一ヶ月前なんでしょう? もう別のフィールドへ移動しているのでは?」
エンの指摘通りだったらいいのに。ドラゴン怖いよぉ。
「だがこの湿った空気と温度は、爬虫類系モンスターが好む環境だ」
ソルの意見にうへぇとなった。定住しちゃってるのかなぁドラゴンさん。
「すみませんキース先輩、暴言を吐いてしまって。でもこれが俺の正直な気持ちです。あなたが退くと言うのなら俺が前へ出ます」
「………………」
「それとエン、ロックウィーナを好きだって黙っててゴメンな」
「知ってた」
相棒のエンはあっさり言った。
「え! そうなん!?」
「前に俺を応援すると言ったおまえに聞いたろ? マキアはそれでいいのかって」
「あ……そっか。何だ、けっこう早い段階でバレてたんだ……」
「バディなんだから当たり前だ」
「こっから俺、本気で行くけどいい?」
「そうすべきだ。俺も負けない」
親友同士の深い絆を感じた。ルパートとギルもこうなれていたら悲劇は訪れなかっただろうに。
そのルパートが宣言した。
「俺も頑張ろっと。ウィー、やっぱ俺はおまえが好きだわ」
…………はい?
「あの、先輩? 戻ってこられるとややこしくなるのですが」
二人で泣いて抱き合って恋を終わらせたアレは何だったんだ。
「だって肝心のキースさんがあのザマなんだ、諦め切れねぇだろうが」
ルパートが侮蔑の視線をキースへ向けた。
「俺はアンタを認めていた。アンタさえしっかりウィーを受け入れていれば、二人の未来を応援するつもりだったんだぞ? それが何だよ、情けねぇったら」
挑発されてもキースは言い返さなかった。その様子を見てアルクナイトとエリアスも名乗りを上げた。
「……ワンコやチャラ男の言う通りヘタったな、白。そんなおまえにロックウィーナは渡せん。おまえに言われるまでもなく、ロックウィーナは魔王アルクナイトの妻とする」
「このエリアス・モルガナンも宣誓する。ロックウィーナを護り愛し抜くのは自分であると」
またカオスになっちゃったよ。でも私も波に乗った。
「私も諦めません!」
そうだよ。キースが心変わりをして私を嫌いになったのならともかく、まだ好きでいてくれる状況で諦められるもんか。私だって頑張るんだ。
「キース先輩が背負ってきたものの重さを私は知りません。あなたを支えるには力不足かもしれません。私がハッキリと、自信を持って提示できるのはあなたを好きだという気持ちだけです」
キースはマキアからあれだけ批判されても平然としていたのに、私の訴えからは逃げようと顔を背けた。
「好きだという気持ちしかないから……私はこれを大切に育てます。あなたに届くように、いつか実を結ぶように!」
キースが歯を食いしばった。苦しそうだ。
感情が揺さ振られているってことは、彼の中にも私に対する確かな想いが存在するという証拠だ。
なら望みは有る。両想いなんだもの。
彼は前に言った。「自分は幸せになることを諦めている」と。それを覆してやる。意地でも幸せな未来をプレゼントしてみせる。幸せを押し付けてやるんだ、私の心と身体と一緒に彼へ。
私は願う。私達の想いが通じ合い、寄り添い、更に大きなものへと成長できますように。
☆☆☆
会議室の告白ラッシュから二時間後。
マキアとエンを加えたBチームは馬車二台に分乗して、出動先に決まったケベック湿原へ到着した。水溜りが多いので足がぬかるみに嵌まらないよう、注意して歩かなければならないフィールドだ。
先に馬車から降りたマキアが手を差し出してエスコートしてくれた。私が手を取ると彼は嬉しそうにニコッと笑顔を見せた。積極的になったマキアに戸惑うものの、つい可愛いと感じてしまう。
逆にキースは私を避けて違う馬車に乗ってここまで来た。寂しいけど焦っちゃ駄目だよね。
「はたしてここにアンドラの構成員が居るかどうか」
「……人気が無いな」
「地形が悪いし、例の件で立ち入り自体が制限されているからな」
最後に発言したのは我らがギルドマスターのケイシーだ。今回のミッションには急遽、普段は事務仕事の彼も同行することになった。キースの精神状態が不安定だから、それも有るが主にもう一つの理由によって、マスターは久々に戦士の装いでこの地に降り立った。
私達は仕事モードに切り替わり、湿原の地図を見ながら輪になって本日のミッションについて話し合った。
「ガチでドラゴンが出てきたらどうします~?」
そう言ったマシューはあまり怖がっていない様子だったが、私は非常に怯えていた。ドラゴンなんかと戦いたくない。
そう、これこそがマスターが同行した理由。このケベック湿原には犯罪者の他に、恐ろしいドラゴンが棲息しているかもしれないのだ。
実は一ヶ月ほど前に国から冒険者ギルドへ、Sランクに相当する超高難易度の依頼が入っていたのだ。それがサンダードラゴンの討伐だ。ちなみに国からは500万ゴル預かり、仲介料と保険料を差し引いた成功報酬は300万ゴルとなっている。
とはいえドラゴンを倒せるSランクパーティなどそうそう居ない。依頼は未達成のまま放置されていた。
「ドラゴン発見情報は一ヶ月前なんでしょう? もう別のフィールドへ移動しているのでは?」
エンの指摘通りだったらいいのに。ドラゴン怖いよぉ。
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