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想いは解放されて願いとなる(4)
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「ケイシー、アンタなら僕がどうやって生きてきたか知っているだろう!? 僕のこの瞳はね、呪われているんだよ!!」
キースの叫びに近い反論。おそらく全員の胸に刺さった。
「おめぇはつらくても乗り切ったじゃねぇか! 胸を張れよキース!」
「それは僕が独り身だからできたんだ! 独りだから……耐えられなくなったら死んでもいいんだ、そう思って今まで生きてきた!」
魅了の瞳を持つキースの苦悩。それは私達が思っている以上に重いものだった。
「……キースおめぇ、そんな風に思っていたのか……?」
マスターの語調が弱まった。穏やかな笑顔の裏側でキースは自殺を考えていた。親子のように接していたマスターは、自分の支えが足りなかったと落ち込んだのだろう。
「だが……だがよウィーナなら、おめぇの全てを受け入れてくれるさ。ウィーは強くてイイ娘だ。きっと二人で幸せに……」
「無責任なことを言うなッ!!!!」
激昂したキースからブワッと魔力が放出された。
回復の担い手としての柔らかい魔力じゃない。魔力感知能力が低い私だが、マシューの闇魔法が発動した時の空気に似ていると思った。
「ロックウィーナを僕の呪いに巻き込むことになるんだぞ!? もし子供が産まれたら、その子に魅了の瞳が遺伝するかもしれない!!」
「……っ!」
もうマスターは何も言えなかった。他のみんなも。どんな言葉をかけても軽くなってしまいそうで。
ここでキースは漸く私と目を合わせてくれた。
「……無責任なのは僕も一緒だ。自分の想いを伝えたくてキミに告白してしまった」
その先を聞きたくない。
「惑わせてごめんね。僕の告白は取り消すよ」
そんなのやだ。
「先輩は前に言いました。そんなに早く答えを出さないでくれって」
私はキースに考え直してもらいたかった。
「私との未来に、幸せになれる確率は1パーセントも無いんですか?」
「無い」
断言されてしまった。
固まった私へキースは疲れたように笑った。
「キミは結婚を前提とした交際を望んでいるのだから、僕なんかに関わっていちゃ駄目だ。キミにはもっと相応しい男が居る」
でも私が好きになったのはあなたなんだよ?
「これからはまた、普通の同僚の関係に戻ろう」
戻れないよ。そんなに簡単に気持ちは切り替えられない。
やっと自分の気持ちに気づけたのに、その直後に振られるなんて。
キースのことが好きなのに。キースだって私を好きなのに。
泣いたらキースを更に困らせる。奥歯を噛んで涙が精製されるのを止めた。
ルパートは振った私を恨まずに応援までしてくれた。私もキースにそうすべきなのかな? 引くべきなんだ。彼はもう決めてしまっているのだから。
でも……でも、やっぱりキースが好きだよぉ~~~~。
「……ヘタレ野郎が」
キースを貶す声が聞こえて会議室のみんながギョッとした。それもそのはず、発言の主がまさかのマキアだったからである。
「アンタは選ばれたのに……。自分から好きだと告げておきながら、彼女が好意を向けた途端に逃げるのかよ? それ酷くないか?」
先輩であるキースをマキアは見据えた。ほとんどの相手に友好的に接して、目上の相手への礼節を貴ぶマキア。そんな彼が豹変していた。
しかしキースは戸惑うことなくマキアへ返した。
「そのことについては本当にすまなく思っている。罵倒されて当然だ。……でも、僕じゃ駄目なんだよ。彼女を幸せにはできない」
「……俺だってそうだ」
マキアが悔しそうに呻いた。
「力が無くて、ロックウィーナの役に立てなくて、情けなくてイライラして、強い先輩達に毎日嫉妬してた……」
…………マキア?
「自分は駄目なんだって思って何度も諦めようとした。自分じゃ彼女に相応しくないって、気持ちを伝えたら彼女の負担になるだけだから黙っていようって。……でも、ロックウィーナを好きだって気持ちは止められなかった。今もどんどん大きくなっている」
……ちょっと待って。マキアは何を言っているの?
ほとんどの人が私のようにポカンとしていた。でもマキアの相棒のエンと、詰め寄られているキースは静かに彼の言い分を聞いていた。
「俺はもう自分の気持ちから逃げない」
マキアはキッパリと言い切って、私を振り返った。人好きのする明るい友人ではなく、男の表情となっていたマキアにドキリとした。
マキアはゆっくり息を吸って、少し緊張した面持ちで私へ告げた。
「ロックウィーナ、俺はキミが好きです。友達としても、一人の女性としても、心底キミのことが大好きです」
マキア……!
「俺じゃあどうせ振られる、だったら友達で居続けようと思ってた。でも……やっぱり頑張りたいって思ったんだ。いつかキミに男として認められるように」
ちょっとだけ彼の声が震えていた。さっきキースへ告白した私と同じだ。みんなの前で心の内を晒すのは勇気が要るよね。
「それだけ、どうか覚えていて。俺のことを心の片隅にでも留めておいてくれたら嬉しい。これから少しずつでもキミの中で俺の存在を、大きくできるように頑張るから」
……マキアはずっと私のことをそんな風に想ってくれていたの? 全く気づかなかったってどんだけ鈍いんだよ、私は。それとも彼が上手く隠してくれていたんだろうか。私の負担にならないように。
そしてマキアは急に照れ出した。両手で己の顔面を覆って隠した。
「うおぉ……。愛の告白って初めてやったけどスゲェ恥ずかしい……!」
ああ、彼は女性との交際経験が何度か有るけれど、どれも流れで付き合って失敗していたんだっけ。
初めての相手(こう言うと語弊が有る)が私で……いいの?
キースの叫びに近い反論。おそらく全員の胸に刺さった。
「おめぇはつらくても乗り切ったじゃねぇか! 胸を張れよキース!」
「それは僕が独り身だからできたんだ! 独りだから……耐えられなくなったら死んでもいいんだ、そう思って今まで生きてきた!」
魅了の瞳を持つキースの苦悩。それは私達が思っている以上に重いものだった。
「……キースおめぇ、そんな風に思っていたのか……?」
マスターの語調が弱まった。穏やかな笑顔の裏側でキースは自殺を考えていた。親子のように接していたマスターは、自分の支えが足りなかったと落ち込んだのだろう。
「だが……だがよウィーナなら、おめぇの全てを受け入れてくれるさ。ウィーは強くてイイ娘だ。きっと二人で幸せに……」
「無責任なことを言うなッ!!!!」
激昂したキースからブワッと魔力が放出された。
回復の担い手としての柔らかい魔力じゃない。魔力感知能力が低い私だが、マシューの闇魔法が発動した時の空気に似ていると思った。
「ロックウィーナを僕の呪いに巻き込むことになるんだぞ!? もし子供が産まれたら、その子に魅了の瞳が遺伝するかもしれない!!」
「……っ!」
もうマスターは何も言えなかった。他のみんなも。どんな言葉をかけても軽くなってしまいそうで。
ここでキースは漸く私と目を合わせてくれた。
「……無責任なのは僕も一緒だ。自分の想いを伝えたくてキミに告白してしまった」
その先を聞きたくない。
「惑わせてごめんね。僕の告白は取り消すよ」
そんなのやだ。
「先輩は前に言いました。そんなに早く答えを出さないでくれって」
私はキースに考え直してもらいたかった。
「私との未来に、幸せになれる確率は1パーセントも無いんですか?」
「無い」
断言されてしまった。
固まった私へキースは疲れたように笑った。
「キミは結婚を前提とした交際を望んでいるのだから、僕なんかに関わっていちゃ駄目だ。キミにはもっと相応しい男が居る」
でも私が好きになったのはあなたなんだよ?
「これからはまた、普通の同僚の関係に戻ろう」
戻れないよ。そんなに簡単に気持ちは切り替えられない。
やっと自分の気持ちに気づけたのに、その直後に振られるなんて。
キースのことが好きなのに。キースだって私を好きなのに。
泣いたらキースを更に困らせる。奥歯を噛んで涙が精製されるのを止めた。
ルパートは振った私を恨まずに応援までしてくれた。私もキースにそうすべきなのかな? 引くべきなんだ。彼はもう決めてしまっているのだから。
でも……でも、やっぱりキースが好きだよぉ~~~~。
「……ヘタレ野郎が」
キースを貶す声が聞こえて会議室のみんながギョッとした。それもそのはず、発言の主がまさかのマキアだったからである。
「アンタは選ばれたのに……。自分から好きだと告げておきながら、彼女が好意を向けた途端に逃げるのかよ? それ酷くないか?」
先輩であるキースをマキアは見据えた。ほとんどの相手に友好的に接して、目上の相手への礼節を貴ぶマキア。そんな彼が豹変していた。
しかしキースは戸惑うことなくマキアへ返した。
「そのことについては本当にすまなく思っている。罵倒されて当然だ。……でも、僕じゃ駄目なんだよ。彼女を幸せにはできない」
「……俺だってそうだ」
マキアが悔しそうに呻いた。
「力が無くて、ロックウィーナの役に立てなくて、情けなくてイライラして、強い先輩達に毎日嫉妬してた……」
…………マキア?
「自分は駄目なんだって思って何度も諦めようとした。自分じゃ彼女に相応しくないって、気持ちを伝えたら彼女の負担になるだけだから黙っていようって。……でも、ロックウィーナを好きだって気持ちは止められなかった。今もどんどん大きくなっている」
……ちょっと待って。マキアは何を言っているの?
ほとんどの人が私のようにポカンとしていた。でもマキアの相棒のエンと、詰め寄られているキースは静かに彼の言い分を聞いていた。
「俺はもう自分の気持ちから逃げない」
マキアはキッパリと言い切って、私を振り返った。人好きのする明るい友人ではなく、男の表情となっていたマキアにドキリとした。
マキアはゆっくり息を吸って、少し緊張した面持ちで私へ告げた。
「ロックウィーナ、俺はキミが好きです。友達としても、一人の女性としても、心底キミのことが大好きです」
マキア……!
「俺じゃあどうせ振られる、だったら友達で居続けようと思ってた。でも……やっぱり頑張りたいって思ったんだ。いつかキミに男として認められるように」
ちょっとだけ彼の声が震えていた。さっきキースへ告白した私と同じだ。みんなの前で心の内を晒すのは勇気が要るよね。
「それだけ、どうか覚えていて。俺のことを心の片隅にでも留めておいてくれたら嬉しい。これから少しずつでもキミの中で俺の存在を、大きくできるように頑張るから」
……マキアはずっと私のことをそんな風に想ってくれていたの? 全く気づかなかったってどんだけ鈍いんだよ、私は。それとも彼が上手く隠してくれていたんだろうか。私の負担にならないように。
そしてマキアは急に照れ出した。両手で己の顔面を覆って隠した。
「うおぉ……。愛の告白って初めてやったけどスゲェ恥ずかしい……!」
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