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鈴音より愛を込めて(2)
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☆☆☆
『そうそう、ここで使うのはその式でOK』
夕食後、私はルディオに教えてもらいながら因数分解の予習復習に励んでいた。学校へ復帰した際に困らないように、お母さんが勉強道具一式を差し入れてくれたのだ。
流石は知能の高さでSランクの魔物に認定されたニャンコ。ルディオは教科書を渡したらあっという間に数学を理解してしまった。保護色になった彼を学校へ連れていき、テストのカンニングを一瞬だけ企んでしまったことは内緒だ。
「はい、今日のノルマ分は終~了~」
『もっと先に進んでもいいんだぞ?』
勉強を終了させたい私は、猛スピードで教科書とノートをカバンに仕舞い込んだ。
「今日はもう勘弁して、知恵熱が出そう。それにあっちの作業もしないとね」
『ま、そうだな』
ルディオがニヤリと笑い、棚から取り出した真新しいファイルとルーズリーフを、ベッドに備え付けられた折り畳みテーブルの上に置いた。
『そろそろ仮、じゃなくて真面目にタイトル考えなきゃな。新生ラグゼリア王国の愉快な仲間達が正式タイトルになったら、ソルさんあたりが大いに暴れそうだ』
「魔王じゃなくて?」
『何気にソルさんは魔王様以上のカッコつけなんだ。ダサいものを毛嫌いしている』
「なるほど。ラノベ風にしようと思ったけど、カッコイイ系のが良いのかな……」
現在の私は【ギルド回収人は勇者をも背負う】をベースにした、新しい小説を助手のルディオと共同で執筆中である。
つまり新世界は女神と猫によって創造されることになる。肉球のモニュメントが世界の何処かに出現するかもしれない。
ちなみに身体の調子はすこぶる良い。ルディオが私の生命値を上げてくれたおかげだ。でもルディオ曰く、上げたのは現実世界へ戻る直前のあの一回きりだけだとか。
『僕は元々キミが持っていた力を増幅しただけ。スズネ自身に、何が遭っても生きてやるという活力が無かったら死んでいた』
彼はそう言った。病を退けたのは私自身なんだと。そうだったらいいなと思う。いや、実際にそうなんだろう。
そもそも小説世界のキャラクターであるルディオが、現実世界に居ること自体が有り得ないのだ。隣の彼は「空想上の友達」……イマジナリーフレンドと言うやつなんだと思う。私の体調が上向きになったのもプラシーボ効果なんだと。
たけど私は信じたい。彼が存在すると。みんなで頑張ってここまで来たんだと。
『ギルドマスターの妻は拳闘士なんだよね? 二人が出会ったエピソードも掘り下げてみたら?』
「お、いいねぇ」
ルーズリーフの上にシャープペンシルで文字が書き起こされていく。
設定の細部の手直し、エピソードの大幅追加。前作に比べてだいぶボリュームが増した。これで新世界が豊かになってくれたらいいんだけど。
だけれども、物語の結末はハッキリとは書かない予定だ。読んだ人によって解釈が別れるぼやかしエンドにする。
未来は新世界を実際に生きる、キャラクターのみんなに決めてもらいたいと思ったから。ルディオも賛成している。
────ロックウィーナ。
瞼を閉じると彼女の姿が脳裏に浮かぶ。
暗闇の中にたった独りだった彼女は、突然目の前に現れた白い扉に戸惑っていた。
────大丈夫、怖がらないで。
ロックウィーナは心を決めてノブに手をかけた。そして一気に押し開けた。
扉も暗闇も消えて、青空の下に一面の草原が広がり彼女は息を呑んだ。
────夢で私達が会った場所も、こんな草原だったよね。
最初は恐る恐る、徐々に力強くロックウィーナは草の上を歩いた。
────そう、進みなさい。この先に待っているのは私じゃない。あなたの大切な人達。
小高くなった丘の上に、ロックウィーナと深く関わった彼らが揃っていた。その姿を視認した彼女は、彼らの名前を大きく叫びながら駆け出した。
私も彼らの顔を確認する。私の子でありながら自立したみんなを。
エリアス、ルパート、キース、エン、マキア、ギルドマスター、リーベルト、アスリー、アルクナイト、ソル、猫の兄弟アナシスとローウェル、マシュー、エドガー、ルービック、マリナ、ミラ、そして少し離れた所にユーリと……あれはレスター・アークだ。
────幸せにね、ロックウィーナ。みんな。
みんなの中からキースが飛び出してきて、走り寄ったロックウィーナと抱き合った。二人とも泣いていた。
────新しい世界が優しさで満ちますように。こちらからずっとルディオと一緒に見守っているからね。
しがみ付いたまま離れないキースとロックウィーナ。他の仲間達が近付いて二人を囃し立てた。
────遠い世界の私の友達。全てのキャラクターに祝福あれ。
居心地悪そうにしているレスター・アークにユーリが笑いかけ、傭兵仲間だったアスリーが背を叩いた。
アンダー・ドラゴン首領の肩書きが消えた新世界なら、レスターの居場所も作れるだろう。元々は聡明で志の高い人物だったのだから。
────希望と前進、我慢強さをみんなの胸に。創造の女神、スズネより愛を込めて。
■■■■■■
次話から、ついにエピローグです!!!!!!
『そうそう、ここで使うのはその式でOK』
夕食後、私はルディオに教えてもらいながら因数分解の予習復習に励んでいた。学校へ復帰した際に困らないように、お母さんが勉強道具一式を差し入れてくれたのだ。
流石は知能の高さでSランクの魔物に認定されたニャンコ。ルディオは教科書を渡したらあっという間に数学を理解してしまった。保護色になった彼を学校へ連れていき、テストのカンニングを一瞬だけ企んでしまったことは内緒だ。
「はい、今日のノルマ分は終~了~」
『もっと先に進んでもいいんだぞ?』
勉強を終了させたい私は、猛スピードで教科書とノートをカバンに仕舞い込んだ。
「今日はもう勘弁して、知恵熱が出そう。それにあっちの作業もしないとね」
『ま、そうだな』
ルディオがニヤリと笑い、棚から取り出した真新しいファイルとルーズリーフを、ベッドに備え付けられた折り畳みテーブルの上に置いた。
『そろそろ仮、じゃなくて真面目にタイトル考えなきゃな。新生ラグゼリア王国の愉快な仲間達が正式タイトルになったら、ソルさんあたりが大いに暴れそうだ』
「魔王じゃなくて?」
『何気にソルさんは魔王様以上のカッコつけなんだ。ダサいものを毛嫌いしている』
「なるほど。ラノベ風にしようと思ったけど、カッコイイ系のが良いのかな……」
現在の私は【ギルド回収人は勇者をも背負う】をベースにした、新しい小説を助手のルディオと共同で執筆中である。
つまり新世界は女神と猫によって創造されることになる。肉球のモニュメントが世界の何処かに出現するかもしれない。
ちなみに身体の調子はすこぶる良い。ルディオが私の生命値を上げてくれたおかげだ。でもルディオ曰く、上げたのは現実世界へ戻る直前のあの一回きりだけだとか。
『僕は元々キミが持っていた力を増幅しただけ。スズネ自身に、何が遭っても生きてやるという活力が無かったら死んでいた』
彼はそう言った。病を退けたのは私自身なんだと。そうだったらいいなと思う。いや、実際にそうなんだろう。
そもそも小説世界のキャラクターであるルディオが、現実世界に居ること自体が有り得ないのだ。隣の彼は「空想上の友達」……イマジナリーフレンドと言うやつなんだと思う。私の体調が上向きになったのもプラシーボ効果なんだと。
たけど私は信じたい。彼が存在すると。みんなで頑張ってここまで来たんだと。
『ギルドマスターの妻は拳闘士なんだよね? 二人が出会ったエピソードも掘り下げてみたら?』
「お、いいねぇ」
ルーズリーフの上にシャープペンシルで文字が書き起こされていく。
設定の細部の手直し、エピソードの大幅追加。前作に比べてだいぶボリュームが増した。これで新世界が豊かになってくれたらいいんだけど。
だけれども、物語の結末はハッキリとは書かない予定だ。読んだ人によって解釈が別れるぼやかしエンドにする。
未来は新世界を実際に生きる、キャラクターのみんなに決めてもらいたいと思ったから。ルディオも賛成している。
────ロックウィーナ。
瞼を閉じると彼女の姿が脳裏に浮かぶ。
暗闇の中にたった独りだった彼女は、突然目の前に現れた白い扉に戸惑っていた。
────大丈夫、怖がらないで。
ロックウィーナは心を決めてノブに手をかけた。そして一気に押し開けた。
扉も暗闇も消えて、青空の下に一面の草原が広がり彼女は息を呑んだ。
────夢で私達が会った場所も、こんな草原だったよね。
最初は恐る恐る、徐々に力強くロックウィーナは草の上を歩いた。
────そう、進みなさい。この先に待っているのは私じゃない。あなたの大切な人達。
小高くなった丘の上に、ロックウィーナと深く関わった彼らが揃っていた。その姿を視認した彼女は、彼らの名前を大きく叫びながら駆け出した。
私も彼らの顔を確認する。私の子でありながら自立したみんなを。
エリアス、ルパート、キース、エン、マキア、ギルドマスター、リーベルト、アスリー、アルクナイト、ソル、猫の兄弟アナシスとローウェル、マシュー、エドガー、ルービック、マリナ、ミラ、そして少し離れた所にユーリと……あれはレスター・アークだ。
────幸せにね、ロックウィーナ。みんな。
みんなの中からキースが飛び出してきて、走り寄ったロックウィーナと抱き合った。二人とも泣いていた。
────新しい世界が優しさで満ちますように。こちらからずっとルディオと一緒に見守っているからね。
しがみ付いたまま離れないキースとロックウィーナ。他の仲間達が近付いて二人を囃し立てた。
────遠い世界の私の友達。全てのキャラクターに祝福あれ。
居心地悪そうにしているレスター・アークにユーリが笑いかけ、傭兵仲間だったアスリーが背を叩いた。
アンダー・ドラゴン首領の肩書きが消えた新世界なら、レスターの居場所も作れるだろう。元々は聡明で志の高い人物だったのだから。
────希望と前進、我慢強さをみんなの胸に。創造の女神、スズネより愛を込めて。
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次話から、ついにエピローグです!!!!!!
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