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エピローグ(1)
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「ロックウィーナ、おめでとう!」
「キースさん素敵、お幸せに!」
顔を合わせる皆が私達を祝福してくれる。今日は私とキースの結婚式だ。
私達は半年の交際を経て、ついにお互いを伴侶とするべく式に臨んだ。ルパートが「急ぎ過ぎじゃね?」とブーブー文句を垂れていたが、出会ってから数えたら八年になるのだから早過ぎるということはない。
私達は互いの両親と親しい友人達に祝ってもらえればそれで良かったのだが、ギルド常連の冒険者達までもが参加したいと申し出てくれて、大人数を収容できる会場探しに苦労するという嬉しい悲鳴を上げることになった。
最終的に領主の息子であるマシューの伝手で、街に在る公園の一つを貸し切ることとなった。
誓いの祭壇は大工仕事が得意な猫達が造ってくれ、テーブルとイスに陽射し避けのパラソルは、リーベルトが友達価格でシュターク商会からレンタルさせてくれたのでだいぶ予算を抑えられた。(リーベルトはタダにしようとしてくれたが、流石にそれは断った)
式を終え、今は食事と歓談の時間だ。私とキースは各テーブルに着く出席者達に挨拶をして回っていた。
私の親と姉夫婦は吞気にお酒を楽しんでいたが、式から泣きっ放しのキースのご両親は何度も私にお礼を言ってくれた。キースによく似た線の細い美人のお義母さんと私が、「これから宜しくお願いします!」「こちらこそお願いします!」合戦をすることになった。
「さぁて、いよいよあの問題のテーブルだね」
タキシード姿のキースがヤレヤレと首を振った。
会場中が祝福ムードに包まれているというのに、三つばかり、負のオーラを発生させる鬱々としたテーブルが存在した。かつて私に告白してくれた男達が座席の多くを占めるテーブルだ。
「えと、みんな、今日はどうもありがとう」
目が死んでいる男達へ私は頭を下げた。
「式の時もお世話になっちゃったね」
「まーなー」
ルパートが不貞腐れた態度で応じた。
「キースさんが前髪全開で式に挑むなんて、無謀なチャレンジをしてくれたおかげでなー」
「晴れの日だからね」
キースはルパートの嫌味にしれっと返した。今は長い前髪を下ろしている。
リーベルトが苦言を呈した。
「キースお兄様、晴れの日の一言で片付けちゃ駄目ですよ。魅了された人間大多数で、阿鼻叫喚の地獄絵図と化すところだったじゃないですか。僕達が物理的に押さえたから何とかなったけど」
「ほっほっほ。まるでゾンビのようでしたな」
そうなのである。前髪をオールバックにセットしたキース(滅茶苦茶カッコ良かった♡)に参列者が次々と魅了され、彼に群がろうとするのを冒険者ギルドのみんなと聖騎士達が制止するという、ホラー映画さながらの光景が繰り広げられたのである。
魔法を一時的に無効化する、アンチ・マジックの使い手が冒険者の中に居たことが幸運だった。彼女の能力を猫達が増幅させ、精神魔法の一種であるキースの魅了効果を消し去ることに成功したのだ。
「まさか、司祭殿まで魅了されるとは思わなかったな……」
疲れた顔でエドガーが呟き、アルクナイトも頷いた。
「世界広しと言えど白、祝福に来た司祭に異議を唱えられた新郎はおまえくらいなものだぞ」
司祭に「その婚姻に異議有り!」宣言をかまされるとは思わなかった。その後キースに抱き付こうとした司祭は防御障壁に弾かれていた。
「ロックウィーナはロックウィーナで、誓いのキスの前にキースさんの唇を奪っちゃうしな」
「振られた女の結婚式に出て、俺達は何を観させられているんだって感じだったな」
マキアとエンが愚痴っていた。
ははは。実は私も式の最中に魅了されていたのだ。だってオールバックでタキシード姿のキースだよ? そりゃバッチリ見ちゃうでしょ。
「まぁまぁ、結婚して二年以内に一割の夫婦が離婚するらしいから。俺らにもまだチャンスは有るよ」
爽やかな顔でマシューが不吉なことを宣った。おい。
ユーリが突っ込んだ。
「何だよ中隊長、アンタはロックウィーナの友達ポジションだろ? 何でこっち側に来てんの?」
「俺もロックウィーナが好きだと気づいたから」
ほえ!? 思わぬ伏兵の登場に男達の目が更に険しくなった。
エリアスが溜め息を吐いた。
「旧世界が滅んだ時に、一緒に私達の記憶も消えていたら良かったのにな。ロックウィーナがキース殿と付き合っていたと認識していなければ、私達にもう一度チャンスが……」
「訪れないね」
キースがバッサリ切った。ソルが苦笑した。
「我々にだけ記憶が残っているのは、女神がそう望んだからだろう。滅んでしまった旧世界のことも覚えていて欲しいと」
人間も魔族も新世界へ引っ越してきた訳だけれど、実はほとんどの者が旧世界の出来事を忘れている。
記憶を持っているのは新世界が誕生した際に、草原の丘で私を待っていてくれた彼らだけなのである。
つまり同じ冒険者ギルドの職員でも、セスやマーカス先生は一度自分達が消滅したという事実を知らない。
「霧に世界が喰われるなんて、あんな恐ろしい惨事は人々から忘れられた方がいい。ただ、私達は覚えていて胸を張ろう。皆が自分の役割を果たしたからこそ、新しいこの世界が生まれたんだ」
楽しそうにはしゃいでいる他テーブルの招待客を見て、ルービックがしみじみと言った。
「ああ。私達の頑張りで女神とルディオは現実世界へ戻れた。……二人はあちらで仲良くやっているようだ」
目を細めて珍しくソルが柔らかく微笑んだ。彼の眺める先には銅像が立っている。新世界には旧世界には無かった建物や街が増えていたりするのだが、この銅像もその一つだ。
元気そうな少女が前方を指差し、使い魔の猫が少女の肩に乗っている。
台座には「始祖神ベラルと神獣」とあるが、どう見てもポケ〇ンとポケ〇ンマスターだ。私にしか解らないネタだろうから突っ込まないけどさ。
「キースさん素敵、お幸せに!」
顔を合わせる皆が私達を祝福してくれる。今日は私とキースの結婚式だ。
私達は半年の交際を経て、ついにお互いを伴侶とするべく式に臨んだ。ルパートが「急ぎ過ぎじゃね?」とブーブー文句を垂れていたが、出会ってから数えたら八年になるのだから早過ぎるということはない。
私達は互いの両親と親しい友人達に祝ってもらえればそれで良かったのだが、ギルド常連の冒険者達までもが参加したいと申し出てくれて、大人数を収容できる会場探しに苦労するという嬉しい悲鳴を上げることになった。
最終的に領主の息子であるマシューの伝手で、街に在る公園の一つを貸し切ることとなった。
誓いの祭壇は大工仕事が得意な猫達が造ってくれ、テーブルとイスに陽射し避けのパラソルは、リーベルトが友達価格でシュターク商会からレンタルさせてくれたのでだいぶ予算を抑えられた。(リーベルトはタダにしようとしてくれたが、流石にそれは断った)
式を終え、今は食事と歓談の時間だ。私とキースは各テーブルに着く出席者達に挨拶をして回っていた。
私の親と姉夫婦は吞気にお酒を楽しんでいたが、式から泣きっ放しのキースのご両親は何度も私にお礼を言ってくれた。キースによく似た線の細い美人のお義母さんと私が、「これから宜しくお願いします!」「こちらこそお願いします!」合戦をすることになった。
「さぁて、いよいよあの問題のテーブルだね」
タキシード姿のキースがヤレヤレと首を振った。
会場中が祝福ムードに包まれているというのに、三つばかり、負のオーラを発生させる鬱々としたテーブルが存在した。かつて私に告白してくれた男達が座席の多くを占めるテーブルだ。
「えと、みんな、今日はどうもありがとう」
目が死んでいる男達へ私は頭を下げた。
「式の時もお世話になっちゃったね」
「まーなー」
ルパートが不貞腐れた態度で応じた。
「キースさんが前髪全開で式に挑むなんて、無謀なチャレンジをしてくれたおかげでなー」
「晴れの日だからね」
キースはルパートの嫌味にしれっと返した。今は長い前髪を下ろしている。
リーベルトが苦言を呈した。
「キースお兄様、晴れの日の一言で片付けちゃ駄目ですよ。魅了された人間大多数で、阿鼻叫喚の地獄絵図と化すところだったじゃないですか。僕達が物理的に押さえたから何とかなったけど」
「ほっほっほ。まるでゾンビのようでしたな」
そうなのである。前髪をオールバックにセットしたキース(滅茶苦茶カッコ良かった♡)に参列者が次々と魅了され、彼に群がろうとするのを冒険者ギルドのみんなと聖騎士達が制止するという、ホラー映画さながらの光景が繰り広げられたのである。
魔法を一時的に無効化する、アンチ・マジックの使い手が冒険者の中に居たことが幸運だった。彼女の能力を猫達が増幅させ、精神魔法の一種であるキースの魅了効果を消し去ることに成功したのだ。
「まさか、司祭殿まで魅了されるとは思わなかったな……」
疲れた顔でエドガーが呟き、アルクナイトも頷いた。
「世界広しと言えど白、祝福に来た司祭に異議を唱えられた新郎はおまえくらいなものだぞ」
司祭に「その婚姻に異議有り!」宣言をかまされるとは思わなかった。その後キースに抱き付こうとした司祭は防御障壁に弾かれていた。
「ロックウィーナはロックウィーナで、誓いのキスの前にキースさんの唇を奪っちゃうしな」
「振られた女の結婚式に出て、俺達は何を観させられているんだって感じだったな」
マキアとエンが愚痴っていた。
ははは。実は私も式の最中に魅了されていたのだ。だってオールバックでタキシード姿のキースだよ? そりゃバッチリ見ちゃうでしょ。
「まぁまぁ、結婚して二年以内に一割の夫婦が離婚するらしいから。俺らにもまだチャンスは有るよ」
爽やかな顔でマシューが不吉なことを宣った。おい。
ユーリが突っ込んだ。
「何だよ中隊長、アンタはロックウィーナの友達ポジションだろ? 何でこっち側に来てんの?」
「俺もロックウィーナが好きだと気づいたから」
ほえ!? 思わぬ伏兵の登場に男達の目が更に険しくなった。
エリアスが溜め息を吐いた。
「旧世界が滅んだ時に、一緒に私達の記憶も消えていたら良かったのにな。ロックウィーナがキース殿と付き合っていたと認識していなければ、私達にもう一度チャンスが……」
「訪れないね」
キースがバッサリ切った。ソルが苦笑した。
「我々にだけ記憶が残っているのは、女神がそう望んだからだろう。滅んでしまった旧世界のことも覚えていて欲しいと」
人間も魔族も新世界へ引っ越してきた訳だけれど、実はほとんどの者が旧世界の出来事を忘れている。
記憶を持っているのは新世界が誕生した際に、草原の丘で私を待っていてくれた彼らだけなのである。
つまり同じ冒険者ギルドの職員でも、セスやマーカス先生は一度自分達が消滅したという事実を知らない。
「霧に世界が喰われるなんて、あんな恐ろしい惨事は人々から忘れられた方がいい。ただ、私達は覚えていて胸を張ろう。皆が自分の役割を果たしたからこそ、新しいこの世界が生まれたんだ」
楽しそうにはしゃいでいる他テーブルの招待客を見て、ルービックがしみじみと言った。
「ああ。私達の頑張りで女神とルディオは現実世界へ戻れた。……二人はあちらで仲良くやっているようだ」
目を細めて珍しくソルが柔らかく微笑んだ。彼の眺める先には銅像が立っている。新世界には旧世界には無かった建物や街が増えていたりするのだが、この銅像もその一つだ。
元気そうな少女が前方を指差し、使い魔の猫が少女の肩に乗っている。
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