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三幕 ギルドへの挑戦状(2)
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「おいパゲ! 何バラしてんだよ!?」
「誰が禿じゃあ!! ……何だよルパート、おまえまだ言ってなかったのか? 相棒のウィーにも?」
「う……。騎士って真面目なイメージを押し付けられるから嫌なんだ。できれば知られたくなかったんだよ」
え、じゃあ本当に聖騎士だったの? ルパートの騎士姿なんて想像できないよ。
「おまえ素行不良で騎士団をクビになったんだもんな?」
それは容易に想像できた。ルパートは横を向いて拗ねた。
「この話はもう終わり! 次行って!!」
「……私で最後だな。エリアス・モルガナン。キース殿と同じ29歳で剣士だ」
全員の自己紹介が終わったところで、マスターがいよいよ本題に移った。
「おまえ達は地潜りの竜について知っているよな?」
「ああ、最近台頭してきた犯罪組織だよな?」
「そうだ。盗みから殺しまで何でもやるタチの悪い集団だ。そいつらの狙いが冒険者ギルドへ向かいつつある」
「それって……何度か構成員を王国兵団に引き渡したからか?」
「おそらくな」
アンダー・ドラゴンは場所を掴めていない本拠地の他に、いろいろな地域に小さなアジトを幾つも所有している。私達が住むフィースノーの街の近くにも在り、犯罪者達はそこから街に来てはちょいちょい悪事を働いている。
街には王都から派遣された兵士が駐留していて警備に当たっているが、彼らはあくまでも街中の治安維持部隊。街の外へ逃亡した犯罪者までは追わない。
アンダー・ドラゴンから被害を受けた者は冒険者ギルドに依頼し、ギルドはアジトと思しき場所へ冒険者を派遣して逃亡した犯罪者を確保、兵団へ引き渡すという流れになっている。
「逆恨みかよ」
「まぁ、ぶっちゃけ戦闘になって何人か構成員を殺害しちまってるからな。俺達フィースノーの支部だけでも二つのアジトを壊滅させたし。冒険者とギルドに対する恨みが積もっているんだろう」
「奴らの自業自得じゃねぇか」
ルパートは吐き捨てたが、
「彼らはそう思ってないようです」
マキアが悔しそうに述べた。
「俺達のレクセン支部は四つのアジトを鎮圧しました。それに対する報復なのか、支部の先輩二名が闇討ちに遭って命を落としたんです……」
重苦しい空気が会議室に充満した。
「闇討ちしてきた相手がアンダー・ドラゴンの構成員だって判明したのか?」
「犠牲になった先輩達の手の甲に……、アンダー・ドラゴンの組織マークが焼き印されていたんです」
「畜生が……」
ルパートが舌打ちして、私は身震いした。ギルド職員が逆恨みで犯罪者に殺害されるなんて。明日は我が身かもしれない。
「……はふっ?」
「何だよウィー」
変な声を出してしまった私をみんなが怪訝そうに見つめた。
「何デモ無イデス。続キヲドウゾ」
動揺を隠しつつ答えた私の身には、ある意味大事件が起きていた。
エリアスが、私の左隣に座るエリアスが、テーブルの下で私の左手を握ってきたあぁぁぁぁ!!
おそらく不安そうにしている私を元気づけようとしたのだろうが、こういうことに慣れていない私は一気に動悸が激しくなった。エリアスってば隠れてお手々ニギニギしているくせに、表情には一切出していない。もう片方の手でテーブルに頬杖ついてシレッとしているyo!
「おまえ熱でも有んの?」
「無イデス」
顔が赤くなってしまったか、恥ずかしい。ルパートはしつこく私をチラチラ見たが、奴が座る右側からは握られた手が死角になっていたのでセーフだった。
ギルドマスターが話を戻した。
「……レクセン支部の件で解ってもらえたと思う。不敵にもアンダー・ドラゴンは、冒険者ギルドへ挑戦状を叩き付けてきやがったんだ」
「殺るか殺られるか、もう全面対決を回避できないってことか」
「その通りだ。ならばこちらから打って出る!」
えええ~? 犯罪組織と戦争するの!? 噓でしょ?
身体が再び震えたが、エリアスが握る力を強めて私を無言で励ました。うわはぁ。怖かったり照れ臭かったりルパートの視線がウザかったり、私の思考は目まぐるしく入れ替わっていた。
「ですがケイシー、まだ全容が解明されていない大規模な犯罪組織なのでしょう? 二つの支部だけで太刀打ちできるでしょうか?」
キースが慎重な意見を述べた。もっともだ。
「安心しろ、ついに国が動いた。我々ギルドの仕事は、奴らのアジトを辿って本拠地の場所を掴むところまでだ。本拠地の制圧は王国兵団の一個師団が担当する」
凄い。一個師団は三千人超えの兵士の集まりだ。そんなに大勢の兵が動くのか。
「本拠地を探ることも危険な任務に変わりはないですが……、先輩の仇をのさばらせてはおけません!」
「……必ず突き止める」
先輩を殺されたレクセン支部の二人は熱を帯びた瞳となった。
「師団長は誰になるんでしょうね?」
「うーんと、届いた資料によるとルービックとか言う名前だったような……」
「おお、ルービックさんか! あの人も聖騎士だよ。俺が在籍していた頃は大隊長だったのに、この八年で師団長にまで出世したのか!!」
ルパートが興味を示した。騎士の話は終わりだと自分で言ったのに、懐かしい知り合いの名前が出てきて嬉しくなったようだ。
……ん? 八年?
「ルパート先輩、八年って何ですか?」
「八年は八年だよ。俺が聖騎士を辞めてからの年月」
「それから冒険者ギルドへ就職したんですか?」
「ああ」
「先輩、ギルドの古株だって言ってましたよね?」
「あ」
ヤベッという表情を作ってからルパートは私から顔を背けた。私は彼に俺は古株だ、大ベテランなんだから言うことを聞けと散々こき使われていた。大先輩の指示だからと仕事と関係の無い使いっ走りもやったのに、ルパートは私よりたった一年早くギルドに来ただけだった。やっぱりウンコ野郎だよコイツ。
「誰が禿じゃあ!! ……何だよルパート、おまえまだ言ってなかったのか? 相棒のウィーにも?」
「う……。騎士って真面目なイメージを押し付けられるから嫌なんだ。できれば知られたくなかったんだよ」
え、じゃあ本当に聖騎士だったの? ルパートの騎士姿なんて想像できないよ。
「おまえ素行不良で騎士団をクビになったんだもんな?」
それは容易に想像できた。ルパートは横を向いて拗ねた。
「この話はもう終わり! 次行って!!」
「……私で最後だな。エリアス・モルガナン。キース殿と同じ29歳で剣士だ」
全員の自己紹介が終わったところで、マスターがいよいよ本題に移った。
「おまえ達は地潜りの竜について知っているよな?」
「ああ、最近台頭してきた犯罪組織だよな?」
「そうだ。盗みから殺しまで何でもやるタチの悪い集団だ。そいつらの狙いが冒険者ギルドへ向かいつつある」
「それって……何度か構成員を王国兵団に引き渡したからか?」
「おそらくな」
アンダー・ドラゴンは場所を掴めていない本拠地の他に、いろいろな地域に小さなアジトを幾つも所有している。私達が住むフィースノーの街の近くにも在り、犯罪者達はそこから街に来てはちょいちょい悪事を働いている。
街には王都から派遣された兵士が駐留していて警備に当たっているが、彼らはあくまでも街中の治安維持部隊。街の外へ逃亡した犯罪者までは追わない。
アンダー・ドラゴンから被害を受けた者は冒険者ギルドに依頼し、ギルドはアジトと思しき場所へ冒険者を派遣して逃亡した犯罪者を確保、兵団へ引き渡すという流れになっている。
「逆恨みかよ」
「まぁ、ぶっちゃけ戦闘になって何人か構成員を殺害しちまってるからな。俺達フィースノーの支部だけでも二つのアジトを壊滅させたし。冒険者とギルドに対する恨みが積もっているんだろう」
「奴らの自業自得じゃねぇか」
ルパートは吐き捨てたが、
「彼らはそう思ってないようです」
マキアが悔しそうに述べた。
「俺達のレクセン支部は四つのアジトを鎮圧しました。それに対する報復なのか、支部の先輩二名が闇討ちに遭って命を落としたんです……」
重苦しい空気が会議室に充満した。
「闇討ちしてきた相手がアンダー・ドラゴンの構成員だって判明したのか?」
「犠牲になった先輩達の手の甲に……、アンダー・ドラゴンの組織マークが焼き印されていたんです」
「畜生が……」
ルパートが舌打ちして、私は身震いした。ギルド職員が逆恨みで犯罪者に殺害されるなんて。明日は我が身かもしれない。
「……はふっ?」
「何だよウィー」
変な声を出してしまった私をみんなが怪訝そうに見つめた。
「何デモ無イデス。続キヲドウゾ」
動揺を隠しつつ答えた私の身には、ある意味大事件が起きていた。
エリアスが、私の左隣に座るエリアスが、テーブルの下で私の左手を握ってきたあぁぁぁぁ!!
おそらく不安そうにしている私を元気づけようとしたのだろうが、こういうことに慣れていない私は一気に動悸が激しくなった。エリアスってば隠れてお手々ニギニギしているくせに、表情には一切出していない。もう片方の手でテーブルに頬杖ついてシレッとしているyo!
「おまえ熱でも有んの?」
「無イデス」
顔が赤くなってしまったか、恥ずかしい。ルパートはしつこく私をチラチラ見たが、奴が座る右側からは握られた手が死角になっていたのでセーフだった。
ギルドマスターが話を戻した。
「……レクセン支部の件で解ってもらえたと思う。不敵にもアンダー・ドラゴンは、冒険者ギルドへ挑戦状を叩き付けてきやがったんだ」
「殺るか殺られるか、もう全面対決を回避できないってことか」
「その通りだ。ならばこちらから打って出る!」
えええ~? 犯罪組織と戦争するの!? 噓でしょ?
身体が再び震えたが、エリアスが握る力を強めて私を無言で励ました。うわはぁ。怖かったり照れ臭かったりルパートの視線がウザかったり、私の思考は目まぐるしく入れ替わっていた。
「ですがケイシー、まだ全容が解明されていない大規模な犯罪組織なのでしょう? 二つの支部だけで太刀打ちできるでしょうか?」
キースが慎重な意見を述べた。もっともだ。
「安心しろ、ついに国が動いた。我々ギルドの仕事は、奴らのアジトを辿って本拠地の場所を掴むところまでだ。本拠地の制圧は王国兵団の一個師団が担当する」
凄い。一個師団は三千人超えの兵士の集まりだ。そんなに大勢の兵が動くのか。
「本拠地を探ることも危険な任務に変わりはないですが……、先輩の仇をのさばらせてはおけません!」
「……必ず突き止める」
先輩を殺されたレクセン支部の二人は熱を帯びた瞳となった。
「師団長は誰になるんでしょうね?」
「うーんと、届いた資料によるとルービックとか言う名前だったような……」
「おお、ルービックさんか! あの人も聖騎士だよ。俺が在籍していた頃は大隊長だったのに、この八年で師団長にまで出世したのか!!」
ルパートが興味を示した。騎士の話は終わりだと自分で言ったのに、懐かしい知り合いの名前が出てきて嬉しくなったようだ。
……ん? 八年?
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「八年は八年だよ。俺が聖騎士を辞めてからの年月」
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「ああ」
「先輩、ギルドの古株だって言ってましたよね?」
「あ」
ヤベッという表情を作ってからルパートは私から顔を背けた。私は彼に俺は古株だ、大ベテランなんだから言うことを聞けと散々こき使われていた。大先輩の指示だからと仕事と関係の無い使いっ走りもやったのに、ルパートは私よりたった一年早くギルドに来ただけだった。やっぱりウンコ野郎だよコイツ。
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