ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

文字の大きさ
50 / 291

新一幕 勇者と聖騎士と魔王(6)

しおりを挟む
「同じ十日間?」
「ああ。深緑の月11日午後から、同月21日の午後までの十日間。世界はこの期間だけを繰り返している」
「繰り返す……同じ期間を……」

 私の目的は殉職した友を助けることだった。でもひょっとして、それだけでは済まない大きなくさびが世界には打ち込まれているのかもしれない。
 不安になった私はアルクナイトの顔を見た。彼も私を見ていたので視線が合った。真面目な表情。だから次に彼が発した言葉が真実だと理解した。

「俺達は全員、ループする時間の中に閉じ込められているんだ」

 何てこと。
 ブルッと身体を震わせた私の肩へ、左右から男達の腕が伸びてきて再びホールドされた。こういう時は力を抜いてそっと手を置いてほしい。

「どうしてそんな事態になっているんだ、アル!?」
「そこまでは知らん。俺は聡明な頭脳と抜群の観察眼で時間のループに気づいただけだ」

 さりげなく自分を上げるね魔王。

「気づいた切っ掛けは小さな既視感だった。それが積み重なっていき、自分は同じ時間を行ったり来たりしているのだと認識した」
「既視感……、私もそうだった!」

 私は身を乗り……出せなかった。ガッチリ男達の腕で押さえ込まれていたので。

「アンダー・ドラゴンの二つ目のアジトで、去っていくマキアとエンの背中を見て思い出したんだ。二人が殺されてしまうって。だから止めようと思って追いかけたのに、私の力では助けられなかった……」
「決まった未来は変えられないってことか?」
「いいえ、神様みたいな少女は言ってた。過去を書き換えると未来も変わるって」
「少女……あのガキか」

 あれ?

「アルクナイトもあのコに会ったことが有るの?」
「ああ。夢の中に何度も現れては文句をほざかれた。余計なことはするなと」
「余計なこと?」
「おまえの結婚相手を代えた」
「へっ!?」

 全く予期せぬ発言だった。

「何で……私の結婚相手?」
「結末を変えればループの輪も壊せるかと思ったんだ」
「いやあの、だから何でそれと私の結婚が関係するの? 世界中のみんなが巻き込まれている時間ループだよね? 私にとって自分の結婚は大問題だけど、世界全体から見たら些細な出来事でしょう?」

 アルクナイトが苛ついた口調で返した。

「そうだ。世界中が巻き込まれている。小娘、世界の中心であるおまえと、創造主を名乗るあのガキに……な」

 ……………………。
 頭の中でアルクナイトの言葉を何度も反芻《はんすう》したけれど実感なんて湧かなかった。当たり前だ。

「私が世界の中心な訳はないでしょう」
「いや、キミは私の世界の中心だ、ロックウィーナ」

 すみませんがエリアスさん、今はそういうのいいんで。

「アルクナイト、何を根拠にそんなことを言うの?」
「世界のエンディングだ。……ブス顔になっているぞ」
「だって言っていることがサッパリ解らないんだもん」
「馬鹿でも解るように説明してやる。21日の午後、世界は闇に包まれるんだ」
「大戦争でも起きるのか……?」

 身構えたルパートにアルクナイトは否定した。

「そうじゃない。言葉通り急に真っ暗になる。そしてその闇の空間に、巨大な一枚の絵が掲げられるんだ」

 一枚の絵。とってもとっても嫌な予感がした。続きが気になるのに聞きたくない。

「アル、その絵とは何だ」
「小娘の結婚式を描いた絵だ」

 やっぱりぃぃぃぃ!! 何で!?  アレを見たのは私だけだと思っていた。忘れているだけで他のみんなも見てたんかいぃぃ!!

「絵に合わせてナレーションが入る。小娘がどういう経緯で結婚の運びとなったか、そして配偶者とどういう家庭を築くか」
「どうして私の結婚式と後日談が世界放映されてんのよ!?」

 たまらず私は叫んだ。恥ずかしい。関係の無い人にまで自分の幸せを強制的に見せつける。嬉しいどころか公開処刑だ。

「知るか、あのガキに聞け。ナレーションの声はあのガキと同じだった」

 確かに。

「おおかた小娘、おまえはガキのお気に入りなんだ。俺とエリーみたいな関係だな。だからおまえの結婚式を世界の締め括りとして使っているんだろう」
「ウィーは神様にまで気に入られてんのか……?」
「流石は私のロックウィーナ」

 そういうのはいいってば。しっかし少女は何で私を特別扱いするんだろう?

「ナレーションが終わった後、それっぽい音楽が流れてきてエンディングだ。暗闇が一転、目がくらむ眩しい光に包まれる。そして次にまぶたを開けるとそこは十日前なんだ。世界の住民は記憶を消された状態で、同じ日々を再び繰り返すことになる」

 アルクナイトのおかげでいろいろと判明した。疑問も同じくらい増えたが。

「どうして世界は十日間を繰り返しているんだろう?」
「知らん」
「あまりに短いよな」
「待て。私とロックウィーナの結婚式とその後は絵とナレーションのみなのか? 体感できないのか?」

 エリアスが別の部分に噛み付いた。

「そうでしたよ。見て聞くだけ。だから私、自分の将来なのに他人事みたいに感じたんです」
「残念だなエリー。おまえは四人の子持ちになるらしいが、サラッと説明されただけだぞ」
「なっ」
「なっ」
「あっ」

 馬鹿魔王! そこは黙っとけぇぇぇ!!

「何てことだ! 人生においての最大の幸福イベントじゃないか! 何故ソレを体感できない!? 神にやり直しを要求する!!」
「ソレってどっちのことだよ。子育てか? 子作りか!?」
「デリケートな質問を女性の前でするな。おまえに言う必要は無い!」
「どーせ後者だろこのムッツリ! 子だくさんじゃねーか畜生!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

処理中です...