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新一幕 勇者と聖騎士と魔王(6)
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「同じ十日間?」
「ああ。深緑の月11日午後から、同月21日の午後までの十日間。世界はこの期間だけを繰り返している」
「繰り返す……同じ期間を……」
私の目的は殉職した友を助けることだった。でもひょっとして、それだけでは済まない大きな楔が世界には打ち込まれているのかもしれない。
不安になった私はアルクナイトの顔を見た。彼も私を見ていたので視線が合った。真面目な表情。だから次に彼が発した言葉が真実だと理解した。
「俺達は全員、ループする時間の中に閉じ込められているんだ」
何てこと。
ブルッと身体を震わせた私の肩へ、左右から男達の腕が伸びてきて再びホールドされた。こういう時は力を抜いてそっと手を置いてほしい。
「どうしてそんな事態になっているんだ、アル!?」
「そこまでは知らん。俺は聡明な頭脳と抜群の観察眼で時間のループに気づいただけだ」
さりげなく自分を上げるね魔王。
「気づいた切っ掛けは小さな既視感だった。それが積み重なっていき、自分は同じ時間を行ったり来たりしているのだと認識した」
「既視感……、私もそうだった!」
私は身を乗り……出せなかった。ガッチリ男達の腕で押さえ込まれていたので。
「アンダー・ドラゴンの二つ目のアジトで、去っていくマキアとエンの背中を見て思い出したんだ。二人が殺されてしまうって。だから止めようと思って追いかけたのに、私の力では助けられなかった……」
「決まった未来は変えられないってことか?」
「いいえ、神様みたいな少女は言ってた。過去を書き換えると未来も変わるって」
「少女……あのガキか」
あれ?
「アルクナイトもあのコに会ったことが有るの?」
「ああ。夢の中に何度も現れては文句をほざかれた。余計なことはするなと」
「余計なこと?」
「おまえの結婚相手を代えた」
「へっ!?」
全く予期せぬ発言だった。
「何で……私の結婚相手?」
「結末を変えればループの輪も壊せるかと思ったんだ」
「いやあの、だから何でそれと私の結婚が関係するの? 世界中のみんなが巻き込まれている時間ループだよね? 私にとって自分の結婚は大問題だけど、世界全体から見たら些細な出来事でしょう?」
アルクナイトが苛ついた口調で返した。
「そうだ。世界中が巻き込まれている。小娘、世界の中心であるおまえと、創造主を名乗るあのガキに……な」
……………………。
頭の中でアルクナイトの言葉を何度も反芻《はんすう》したけれど実感なんて湧かなかった。当たり前だ。
「私が世界の中心な訳はないでしょう」
「いや、キミは私の世界の中心だ、ロックウィーナ」
すみませんがエリアスさん、今はそういうのいいんで。
「アルクナイト、何を根拠にそんなことを言うの?」
「世界のエンディングだ。……ブス顔になっているぞ」
「だって言っていることがサッパリ解らないんだもん」
「馬鹿でも解るように説明してやる。21日の午後、世界は闇に包まれるんだ」
「大戦争でも起きるのか……?」
身構えたルパートにアルクナイトは否定した。
「そうじゃない。言葉通り急に真っ暗になる。そしてその闇の空間に、巨大な一枚の絵が掲げられるんだ」
一枚の絵。とってもとっても嫌な予感がした。続きが気になるのに聞きたくない。
「アル、その絵とは何だ」
「小娘の結婚式を描いた絵だ」
やっぱりぃぃぃぃ!! 何で!? アレを見たのは私だけだと思っていた。忘れているだけで他のみんなも見てたんかいぃぃ!!
「絵に合わせてナレーションが入る。小娘がどういう経緯で結婚の運びとなったか、そして配偶者とどういう家庭を築くか」
「どうして私の結婚式と後日談が世界放映されてんのよ!?」
堪らず私は叫んだ。恥ずかしい。関係の無い人にまで自分の幸せを強制的に見せつける。嬉しいどころか公開処刑だ。
「知るか、あのガキに聞け。ナレーションの声はあのガキと同じだった」
確かに。
「おおかた小娘、おまえはガキのお気に入りなんだ。俺とエリーみたいな関係だな。だからおまえの結婚式を世界の締め括りとして使っているんだろう」
「ウィーは神様にまで気に入られてんのか……?」
「流石は私のロックウィーナ」
そういうのはいいってば。しっかし少女は何で私を特別扱いするんだろう?
「ナレーションが終わった後、それっぽい音楽が流れてきてエンディングだ。暗闇が一転、目がくらむ眩しい光に包まれる。そして次に瞼を開けるとそこは十日前なんだ。世界の住民は記憶を消された状態で、同じ日々を再び繰り返すことになる」
アルクナイトのおかげでいろいろと判明した。疑問も同じくらい増えたが。
「どうして世界は十日間を繰り返しているんだろう?」
「知らん」
「あまりに短いよな」
「待て。私とロックウィーナの結婚式とその後は絵とナレーションのみなのか? 体感できないのか?」
エリアスが別の部分に噛み付いた。
「そうでしたよ。見て聞くだけ。だから私、自分の将来なのに他人事みたいに感じたんです」
「残念だなエリー。おまえは四人の子持ちになるらしいが、サラッと説明されただけだぞ」
「なっ」
「なっ」
「あっ」
馬鹿魔王! そこは黙っとけぇぇぇ!!
「何てことだ! 人生においての最大の幸福イベントじゃないか! 何故ソレを体感できない!? 神にやり直しを要求する!!」
「ソレってどっちのことだよ。子育てか? 子作りか!?」
「デリケートな質問を女性の前でするな。おまえに言う必要は無い!」
「どーせ後者だろこのムッツリ! 子だくさんじゃねーか畜生!」
「ああ。深緑の月11日午後から、同月21日の午後までの十日間。世界はこの期間だけを繰り返している」
「繰り返す……同じ期間を……」
私の目的は殉職した友を助けることだった。でもひょっとして、それだけでは済まない大きな楔が世界には打ち込まれているのかもしれない。
不安になった私はアルクナイトの顔を見た。彼も私を見ていたので視線が合った。真面目な表情。だから次に彼が発した言葉が真実だと理解した。
「俺達は全員、ループする時間の中に閉じ込められているんだ」
何てこと。
ブルッと身体を震わせた私の肩へ、左右から男達の腕が伸びてきて再びホールドされた。こういう時は力を抜いてそっと手を置いてほしい。
「どうしてそんな事態になっているんだ、アル!?」
「そこまでは知らん。俺は聡明な頭脳と抜群の観察眼で時間のループに気づいただけだ」
さりげなく自分を上げるね魔王。
「気づいた切っ掛けは小さな既視感だった。それが積み重なっていき、自分は同じ時間を行ったり来たりしているのだと認識した」
「既視感……、私もそうだった!」
私は身を乗り……出せなかった。ガッチリ男達の腕で押さえ込まれていたので。
「アンダー・ドラゴンの二つ目のアジトで、去っていくマキアとエンの背中を見て思い出したんだ。二人が殺されてしまうって。だから止めようと思って追いかけたのに、私の力では助けられなかった……」
「決まった未来は変えられないってことか?」
「いいえ、神様みたいな少女は言ってた。過去を書き換えると未来も変わるって」
「少女……あのガキか」
あれ?
「アルクナイトもあのコに会ったことが有るの?」
「ああ。夢の中に何度も現れては文句をほざかれた。余計なことはするなと」
「余計なこと?」
「おまえの結婚相手を代えた」
「へっ!?」
全く予期せぬ発言だった。
「何で……私の結婚相手?」
「結末を変えればループの輪も壊せるかと思ったんだ」
「いやあの、だから何でそれと私の結婚が関係するの? 世界中のみんなが巻き込まれている時間ループだよね? 私にとって自分の結婚は大問題だけど、世界全体から見たら些細な出来事でしょう?」
アルクナイトが苛ついた口調で返した。
「そうだ。世界中が巻き込まれている。小娘、世界の中心であるおまえと、創造主を名乗るあのガキに……な」
……………………。
頭の中でアルクナイトの言葉を何度も反芻《はんすう》したけれど実感なんて湧かなかった。当たり前だ。
「私が世界の中心な訳はないでしょう」
「いや、キミは私の世界の中心だ、ロックウィーナ」
すみませんがエリアスさん、今はそういうのいいんで。
「アルクナイト、何を根拠にそんなことを言うの?」
「世界のエンディングだ。……ブス顔になっているぞ」
「だって言っていることがサッパリ解らないんだもん」
「馬鹿でも解るように説明してやる。21日の午後、世界は闇に包まれるんだ」
「大戦争でも起きるのか……?」
身構えたルパートにアルクナイトは否定した。
「そうじゃない。言葉通り急に真っ暗になる。そしてその闇の空間に、巨大な一枚の絵が掲げられるんだ」
一枚の絵。とってもとっても嫌な予感がした。続きが気になるのに聞きたくない。
「アル、その絵とは何だ」
「小娘の結婚式を描いた絵だ」
やっぱりぃぃぃぃ!! 何で!? アレを見たのは私だけだと思っていた。忘れているだけで他のみんなも見てたんかいぃぃ!!
「絵に合わせてナレーションが入る。小娘がどういう経緯で結婚の運びとなったか、そして配偶者とどういう家庭を築くか」
「どうして私の結婚式と後日談が世界放映されてんのよ!?」
堪らず私は叫んだ。恥ずかしい。関係の無い人にまで自分の幸せを強制的に見せつける。嬉しいどころか公開処刑だ。
「知るか、あのガキに聞け。ナレーションの声はあのガキと同じだった」
確かに。
「おおかた小娘、おまえはガキのお気に入りなんだ。俺とエリーみたいな関係だな。だからおまえの結婚式を世界の締め括りとして使っているんだろう」
「ウィーは神様にまで気に入られてんのか……?」
「流石は私のロックウィーナ」
そういうのはいいってば。しっかし少女は何で私を特別扱いするんだろう?
「ナレーションが終わった後、それっぽい音楽が流れてきてエンディングだ。暗闇が一転、目がくらむ眩しい光に包まれる。そして次に瞼を開けるとそこは十日前なんだ。世界の住民は記憶を消された状態で、同じ日々を再び繰り返すことになる」
アルクナイトのおかげでいろいろと判明した。疑問も同じくらい増えたが。
「どうして世界は十日間を繰り返しているんだろう?」
「知らん」
「あまりに短いよな」
「待て。私とロックウィーナの結婚式とその後は絵とナレーションのみなのか? 体感できないのか?」
エリアスが別の部分に噛み付いた。
「そうでしたよ。見て聞くだけ。だから私、自分の将来なのに他人事みたいに感じたんです」
「残念だなエリー。おまえは四人の子持ちになるらしいが、サラッと説明されただけだぞ」
「なっ」
「なっ」
「あっ」
馬鹿魔王! そこは黙っとけぇぇぇ!!
「何てことだ! 人生においての最大の幸福イベントじゃないか! 何故ソレを体感できない!? 神にやり直しを要求する!!」
「ソレってどっちのことだよ。子育てか? 子作りか!?」
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