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幕撤去 不穏な動きと輝ける聖騎士(3)
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「はいはい、何かと口実を付けてロックウィーナに触ろうとしては駄目ですよ」
「はは、エリアスさんたら踏んだり蹴ったりだな」
完全に他人事のルパートが茶々を入れた。しかし奴はリリアナにキツイ事実を告げられた。
「エリアスさんのお相手とされている第一候補は、ルパートお兄様なんですよぉ? きゃっ♡」
「はぁ!? 俺!? 俺もゲイだって思われてんの!?」
「なっ、何故私がルパートと!?」
「ええ~? いっつも至近距離で見つめ合ってるからかなぁ? きゃっ♡」
「あれは睨み合って牽制してたんだ!」
「発言を撤回しろ!」
「や~ん、私に怒られても困りますぅ~」
マキアとエンがクスッと笑って、慌ててルパートとエリアスから目を逸らせた。その彼らはレクセン支部の青い防護ベストから、フィースノー支部の赤い防護ベストへ着替えていた。……本当に仲間になったんだなぁ。私は感慨深く二人を眺めつつ、自分の出動準備を整えた。
「そういう訳でしてエリアスさんには、ここぞという任務の時だけ助力して頂けると幸いです。普段は鍛錬なり、冒険者としてミッションに挑むなりお好きなように過ごして下さい。魔お……アルもそうです。目立つ行動は控えて下さいね」
「む……。そういえばアルは何処だ?」
エリアスと同じく私も周囲を見渡した。あの派手で破廉恥な魔王が居ない。
「俺はここだエリー」
少し離れた所に黒いローブを着て、首の左側に三つ編みを結った落ち着いた雰囲気の美青年が佇んでいた。
「え、どちら様……?」
素で誰だか判らなかった私に、黒いローブの美青年は詰め寄って怒った。
「おまえはっ! 未来の夫の顔を忘れる奴があるか!!」
…………へ? この不躾な態度、輝く銀髪、魔力の循環で赤く変色した瞳。
「あなたアルク…………じゃない、アル!? 噓でしょ!」
「何が嘘だ。一発で気づけ馬鹿者が!」
「だっておへそとお乳が出ていない!」
「おまえがギャーギャー騒ぐから、露出が少なく地味な服にわざわざ着替えてやったんだ!」
「それすっごい似合ってる! いいね、素直にカッコイイと思うよ?」
「は…………はぁ?」
アルクナイトは暴言を飲み込んで下を向いた。
「そ、そうか……。俺の美しさを認識したのならそれでいい……」
まさか照れてる?
いやー、それにしてもビックリだ。露出を控えた途端に綺麗なお兄さん。ああいや、アルクナイトは元々美形なんだろうね。今まで半裸の姿が恥ずかしくて、私はまともに彼を見られていなかったんだ。
「服装一つでああも雰囲気が変わるもんなんだな……」
「マズいぞルパート。ロックウィーナがアルに見惚れている」
「……マジか。アイツ何気に面食いだからな。キースさん、ウィーを宜しく頼むな。出動してくれ!」
「あっ、はい。行きましょうロックウィーナ!」
何だか慌ただしく私達は冒険者ギルドを出ることになった。準備は終わっていたからいいけどさ。
ギルド横の乗場から、一つの馬車を選んで乗り込んだ。ええと、行き先はラフターの森で、野営の際に置いてきてしまった魔道具を回収すればいいのね。
久し振りの通常業務だ。ようし、頑張ろう!
「張り切っていますね、ロックウィーナ」
馬車の中で腕のストレッチをしていた私。落ち着き無いって思われた? ちょっと恥ずかしい。
あ、私、キースと二人きりの出動はこれが初めてなんだ。彼は回復系だから私がメインのアタッカーになるのか。……私に務まるかな?
冒険者ギルドに就職して七年間、いつも横にルパートが居てくれた。彼の物言いに苛ついたことも度々有った。でも何か遭った時は彼が何とかしてくれるという安心感を持てた。
(大丈夫、大丈夫……)
そのルパートが、私の力で充分やれると言ってくれたんじゃないか。マスターだって、私の攻撃力を信頼した上でキースと組ませたんだ。
(よし……!)
私は迷いを捨てて前を見据えた。
☆☆☆
「えええええぃっ!」
私はウサギ系のモンスター相手に苦戦していた。クレイジーダンサーと言う名前のこのモンスターは、とにかく機敏でピョンピョン跳ねて私の鞭から逃げ回った。かと思えば猪すらも蹴り殺せる、強力なカウンターキックを繰り出す凶暴性も兼ね揃えている。
「こんのぉ!」
スカッ。鞭は縄跳びのように飛んでかわされた。続いて助走を付けたウサぴょんの蹴りが私を襲った。
バチッ。
今回もキースの障壁に護られた。跳ね返されるウサぴょん。しかしあくまでも防御用の障壁なので、触れた相手は軽い痛みを受ける程度で怪我まではしない。アタッカーの私が敵にダメージを与えないと。
「大丈夫、あなたならやれます。たとえ外して反撃されても、相手の攻撃は何度でも僕が弾きます」
戦闘中だというのに、いつもと変わらない穏やかなキースの口調に私は励まされた。ここで「何回攻撃を外してんだ!」とか責められたら萎縮しちゃってただろうな。
キースの優しさに感謝して、私は再び鞭をうならせた。
バシュンッ!
ヒット! 鞭はモンスターの皮膚を裂き地面に叩き付けた。…………動かない。倒したようだ。
ふうっと私は息を吐き、キースが小さく拍手した。
「おみごとでした」
「いえ、時間がかかって申し訳ないです。ルパート先輩なら一分もかからずに倒していたでしょう。瞬殺かも」
「あなただって倒しました。何分かかろうが、結果は同じ勝利なんです。胸を張りなさい」
「は、はい……!」
キースには学校の先生のような雰囲気が有る。それも子供に好かれる良い先生の。
ギルドで生活してきて彼に注意されることも有ったけれど、筋が通っているせいか反発心が湧かないんだよね。ルパートだって魅了の瞳の前から、何だかんだ言ってキースに懐いているし。
ギルドの優しいお兄ちゃん。キースに付けられた渾名だ。ピッタリだと思うけれど、キースは自分の我を出したいとか思わないのかな……?
「はは、エリアスさんたら踏んだり蹴ったりだな」
完全に他人事のルパートが茶々を入れた。しかし奴はリリアナにキツイ事実を告げられた。
「エリアスさんのお相手とされている第一候補は、ルパートお兄様なんですよぉ? きゃっ♡」
「はぁ!? 俺!? 俺もゲイだって思われてんの!?」
「なっ、何故私がルパートと!?」
「ええ~? いっつも至近距離で見つめ合ってるからかなぁ? きゃっ♡」
「あれは睨み合って牽制してたんだ!」
「発言を撤回しろ!」
「や~ん、私に怒られても困りますぅ~」
マキアとエンがクスッと笑って、慌ててルパートとエリアスから目を逸らせた。その彼らはレクセン支部の青い防護ベストから、フィースノー支部の赤い防護ベストへ着替えていた。……本当に仲間になったんだなぁ。私は感慨深く二人を眺めつつ、自分の出動準備を整えた。
「そういう訳でしてエリアスさんには、ここぞという任務の時だけ助力して頂けると幸いです。普段は鍛錬なり、冒険者としてミッションに挑むなりお好きなように過ごして下さい。魔お……アルもそうです。目立つ行動は控えて下さいね」
「む……。そういえばアルは何処だ?」
エリアスと同じく私も周囲を見渡した。あの派手で破廉恥な魔王が居ない。
「俺はここだエリー」
少し離れた所に黒いローブを着て、首の左側に三つ編みを結った落ち着いた雰囲気の美青年が佇んでいた。
「え、どちら様……?」
素で誰だか判らなかった私に、黒いローブの美青年は詰め寄って怒った。
「おまえはっ! 未来の夫の顔を忘れる奴があるか!!」
…………へ? この不躾な態度、輝く銀髪、魔力の循環で赤く変色した瞳。
「あなたアルク…………じゃない、アル!? 噓でしょ!」
「何が嘘だ。一発で気づけ馬鹿者が!」
「だっておへそとお乳が出ていない!」
「おまえがギャーギャー騒ぐから、露出が少なく地味な服にわざわざ着替えてやったんだ!」
「それすっごい似合ってる! いいね、素直にカッコイイと思うよ?」
「は…………はぁ?」
アルクナイトは暴言を飲み込んで下を向いた。
「そ、そうか……。俺の美しさを認識したのならそれでいい……」
まさか照れてる?
いやー、それにしてもビックリだ。露出を控えた途端に綺麗なお兄さん。ああいや、アルクナイトは元々美形なんだろうね。今まで半裸の姿が恥ずかしくて、私はまともに彼を見られていなかったんだ。
「服装一つでああも雰囲気が変わるもんなんだな……」
「マズいぞルパート。ロックウィーナがアルに見惚れている」
「……マジか。アイツ何気に面食いだからな。キースさん、ウィーを宜しく頼むな。出動してくれ!」
「あっ、はい。行きましょうロックウィーナ!」
何だか慌ただしく私達は冒険者ギルドを出ることになった。準備は終わっていたからいいけどさ。
ギルド横の乗場から、一つの馬車を選んで乗り込んだ。ええと、行き先はラフターの森で、野営の際に置いてきてしまった魔道具を回収すればいいのね。
久し振りの通常業務だ。ようし、頑張ろう!
「張り切っていますね、ロックウィーナ」
馬車の中で腕のストレッチをしていた私。落ち着き無いって思われた? ちょっと恥ずかしい。
あ、私、キースと二人きりの出動はこれが初めてなんだ。彼は回復系だから私がメインのアタッカーになるのか。……私に務まるかな?
冒険者ギルドに就職して七年間、いつも横にルパートが居てくれた。彼の物言いに苛ついたことも度々有った。でも何か遭った時は彼が何とかしてくれるという安心感を持てた。
(大丈夫、大丈夫……)
そのルパートが、私の力で充分やれると言ってくれたんじゃないか。マスターだって、私の攻撃力を信頼した上でキースと組ませたんだ。
(よし……!)
私は迷いを捨てて前を見据えた。
☆☆☆
「えええええぃっ!」
私はウサギ系のモンスター相手に苦戦していた。クレイジーダンサーと言う名前のこのモンスターは、とにかく機敏でピョンピョン跳ねて私の鞭から逃げ回った。かと思えば猪すらも蹴り殺せる、強力なカウンターキックを繰り出す凶暴性も兼ね揃えている。
「こんのぉ!」
スカッ。鞭は縄跳びのように飛んでかわされた。続いて助走を付けたウサぴょんの蹴りが私を襲った。
バチッ。
今回もキースの障壁に護られた。跳ね返されるウサぴょん。しかしあくまでも防御用の障壁なので、触れた相手は軽い痛みを受ける程度で怪我まではしない。アタッカーの私が敵にダメージを与えないと。
「大丈夫、あなたならやれます。たとえ外して反撃されても、相手の攻撃は何度でも僕が弾きます」
戦闘中だというのに、いつもと変わらない穏やかなキースの口調に私は励まされた。ここで「何回攻撃を外してんだ!」とか責められたら萎縮しちゃってただろうな。
キースの優しさに感謝して、私は再び鞭をうならせた。
バシュンッ!
ヒット! 鞭はモンスターの皮膚を裂き地面に叩き付けた。…………動かない。倒したようだ。
ふうっと私は息を吐き、キースが小さく拍手した。
「おみごとでした」
「いえ、時間がかかって申し訳ないです。ルパート先輩なら一分もかからずに倒していたでしょう。瞬殺かも」
「あなただって倒しました。何分かかろうが、結果は同じ勝利なんです。胸を張りなさい」
「は、はい……!」
キースには学校の先生のような雰囲気が有る。それも子供に好かれる良い先生の。
ギルドで生活してきて彼に注意されることも有ったけれど、筋が通っているせいか反発心が湧かないんだよね。ルパートだって魅了の瞳の前から、何だかんだ言ってキースに懐いているし。
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