ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

文字の大きさ
111 / 291

第七師団と合流(1)

しおりを挟む
 12時55分。荷物が入ったリュックを背負って、私は冒険者ギルドの入口前に何とか到着した。
 待ち合わせ時間は13時だから遅刻ではないが、大事なミッション時は十分前行動をしろと、常日頃ルパートに口が酸っぱくなるほど注意されていた。先に来ていた彼を見て私は頭を下げた。

「お待たせしました! 他の皆さんは?」
「あっち。ここに大勢居ると依頼人や冒険者の邪魔になるからな」

 ルパートがあごで指した方向を見ると、少し離れた所に私達以外の全員が揃っていた。リリアナと彼の執事であるアスリーも居た。

(私が最後だったか……。こういう所が駄目なんだよなぁ)

 出動班の待機組には、およそ半年前にギルドへ就職した職員が二人居る。でも彼らは元冒険者だったり、王国兵団の元兵士だったりで、私よりも旅慣れていて腕も立つ。だから二人を後輩などとはとても呼べない。
 ろくな経験無しにギルドへ就職した私みたいな若者も居たが、そういった新人達は訓練の厳しさや、出動のキツさに根を上げてすぐに辞めていった。(ルパートとセスにいびられた人も居たようだけど)

 つまり私が出動班の中で一番の下っ端だ。そしてその立場に慣れて甘えてしまっている。気を引き締めないと!

「遅くなってすみません。すぐにみんなの元へ行きます」
「あ、ちょっと待て」

 私を呼び止めたルパートは何やらモゴモゴと言った。

「……アレ、いつにするよ?」
「はい? アレ?」
「街へ遊びに行く日。……デートしようって前に話したろ?」
「あ」
 
 仕事ではなく遊び目的で、ルパートと一緒に街へ行こうと約束していたんだった。
 途端に恥ずかしくなってきた。デート。でえと。Go on a date。

「この大きな任務が終わった次の日はどうだ? 流石に休みを貰えるだろうから」
「は、はい……。それで大丈夫です」

 部屋で逢うのは危ないから人が多い所へ行きなさい、キースにそう忠告されて計画された街デート。あれ、そう言えばキースも付いてくるとか言っていなかった?

「あの、キース先輩も誘うのですか?」

 ルパートは右手人差し指を自分の口元へ当てて笑った。

「内緒だ。二人で行くぞ」

 うわぁ、ルパートの金髪が日光に当たってキラキラしている。昨日会った聖騎士に負けていない。それに腹が立つけど改めて、この人ってば私好みのイケメンなんだよね。笑顔の破壊力が半端ない。
 過去にあれだけ酷くフラれたってのに、性懲しょうこりもなくまたトキメいてしまっている。私ってチョロい女だな。

 だけど……厳しい仕事内容の冒険者ギルドで、私が七年もやってこられたのはルパートのおかげなんだよね。他の新人は逃げているんだもの。きっと私が気づかない所でも、彼はいろいろサポートしてくれていたんだ。
 それにひざまずいてプロポーズしてくれたあの晩、あの時の彼は本心を伝えていたと思う。
 あああ。思い出してまた照れてきたぁ!

「おいチャラ男、女装男が付いてくるというのは何の冗談だ」

 みんなの元へ行くと開口一番、アルクナイトがルパートへ不満をぶつけた。どうやらリリアナに対する愚痴らしい。

「こんなヒラヒラした格好で戦場へ出てくるとは、おまえは正気か?」

 エンと同じ指摘をアルクナイトはしたが、彼だってイメージチェンジ前はかなり恥ずかしい格好をしていた。同じ尻振り仲間同士仲良くすればいいのに。
 リリアナはケロッと返した。

「ダークストーカーを目の前で撃ってみせたのだから、僕の強さはご存知でしょう? 魔王様」
「アルと呼べ。不意打ちのあの一回きりでは実力が測れん。しかもジジイも一緒だと言うではないか!」
「えっ、執事さんも? それは俺もマスターに聞いてないが」

 驚くルパートへ、執事のアスリーは上品な物腰で笑った。

「ほっほっほ。わたくしのことはどうかお気になさらずに。リーベルト様の背後霊とでも思って頂ければ」
「いや気になるだろ。アスリーさん、でしたよね? これから向かう先は犯罪組織の本拠地なんです。身の安全の保証はできませんよ?」
「だからこそ参るのです。わたくしはリーベルト様の影ですから」

 影にしては超目立っている。姿勢がいいなぁ。

「アスリーは強いですよ。元傭兵で僕の銃の先生でもあるんです」

 なるほど。アスリーもリリアナと同じ型の銃を装備していた。ルパートはふぅっと息を吐いた。

「同行を許可しますが、くれぐれも無茶はしないで下さいね?」
「……気に食わん! 俺の許可無く人員を増やすとは!」

 な~んかアルクナイトがカリカリしているな。牛乳飲みなさい。イライラに効くよ?

「よし、二台の馬車に乗り込んで行くぞ。王国兵団と合流後も俺達は基本、このギルドの馬車で移動することになる」

 そうなんだ、良かった。だったら野営用のテントを張れなくても、馬車の中で寝ることができるな。座りながらだけど。夜露をしのげるのはありがたい。

「全員で九人だから五人と四人だな。どうやって分けるか……」
「あっ、年長組と年少組に分けるべきだと思いますぅ。年が近い方が話しやすいですしぃ」

 女言葉に戻ったリリアナが手を挙げて発言し、マキアが「賛成!」と続いた。
 年齢順で言うと……アルクナイト(桁が違う最年長)、アスリー(60代?)、キース(29)、エリアス(29)、ルパート(もうすぐ28)、私(25)、マキア(23)、エン(21)、リリアナ(19)となる。

「それでいいか。年長四人と年少五人で馬車を使おう」
「ちょっと待てルパート。何故年長組が四人と少ないのだ?」

 すかさずエリアスが疑問を呈した。

「そりゃ年長組の方が身体の大きい男が多いからさ。馬車が狭くなるだろ?」
「そう言っておまえはちゃっかり年少組に混ざるつもりだろう? ロックウィーナの側に! ずるいぞ!!」
「うっ……。いや年少組にはまとめるリーダーが必要だと思ってさ。俺主任だし」
「それなら僕が適任ですよ。いざという時に、障壁で馬車ごと護ってあげられますから」
「出しゃばるな白。強さでは俺がナンバー1だ。俺がちびっ子どもの馬車へ乗り込もう」
「ははは、そうですね。アルにはみんなの警備に当たってもらいましょうか。空を飛んでもらって」
「殺すぞ白」
「ほっほっほ、これではいつまで経っても馬車に乗り込めそうにないですな」

 アスリーの言う通りだ。何て大人げない大人達の集まりなんだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

処理中です...