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第七師団と合流(1)
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12時55分。荷物が入ったリュックを背負って、私は冒険者ギルドの入口前に何とか到着した。
待ち合わせ時間は13時だから遅刻ではないが、大事なミッション時は十分前行動をしろと、常日頃ルパートに口が酸っぱくなるほど注意されていた。先に来ていた彼を見て私は頭を下げた。
「お待たせしました! 他の皆さんは?」
「あっち。ここに大勢居ると依頼人や冒険者の邪魔になるからな」
ルパートが顎で指した方向を見ると、少し離れた所に私達以外の全員が揃っていた。リリアナと彼の執事であるアスリーも居た。
(私が最後だったか……。こういう所が駄目なんだよなぁ)
出動班の待機組には、およそ半年前にギルドへ就職した職員が二人居る。でも彼らは元冒険者だったり、王国兵団の元兵士だったりで、私よりも旅慣れていて腕も立つ。だから二人を後輩などとはとても呼べない。
碌な経験無しにギルドへ就職した私みたいな若者も居たが、そういった新人達は訓練の厳しさや、出動のキツさに根を上げてすぐに辞めていった。(ルパートとセスにいびられた人も居たようだけど)
つまり私が出動班の中で一番の下っ端だ。そしてその立場に慣れて甘えてしまっている。気を引き締めないと!
「遅くなってすみません。すぐにみんなの元へ行きます」
「あ、ちょっと待て」
私を呼び止めたルパートは何やらモゴモゴと言った。
「……アレ、いつにするよ?」
「はい? アレ?」
「街へ遊びに行く日。……デートしようって前に話したろ?」
「あ」
仕事ではなく遊び目的で、ルパートと一緒に街へ行こうと約束していたんだった。
途端に恥ずかしくなってきた。デート。でえと。Go on a date。
「この大きな任務が終わった次の日はどうだ? 流石に休みを貰えるだろうから」
「は、はい……。それで大丈夫です」
部屋で逢うのは危ないから人が多い所へ行きなさい、キースにそう忠告されて計画された街デート。あれ、そう言えばキースも付いてくるとか言っていなかった?
「あの、キース先輩も誘うのですか?」
ルパートは右手人差し指を自分の口元へ当てて笑った。
「内緒だ。二人で行くぞ」
うわぁ、ルパートの金髪が日光に当たってキラキラしている。昨日会った聖騎士に負けていない。それに腹が立つけど改めて、この人ってば私好みのイケメンなんだよね。笑顔の破壊力が半端ない。
過去にあれだけ酷くフラれたってのに、性懲りもなくまたトキメいてしまっている。私ってチョロい女だな。
だけど……厳しい仕事内容の冒険者ギルドで、私が七年もやってこられたのはルパートのおかげなんだよね。他の新人は逃げているんだもの。きっと私が気づかない所でも、彼はいろいろサポートしてくれていたんだ。
それに跪いてプロポーズしてくれたあの晩、あの時の彼は本心を伝えていたと思う。
あああ。思い出してまた照れてきたぁ!
「おいチャラ男、女装男が付いてくるというのは何の冗談だ」
みんなの元へ行くと開口一番、アルクナイトがルパートへ不満をぶつけた。どうやらリリアナに対する愚痴らしい。
「こんなヒラヒラした格好で戦場へ出てくるとは、おまえは正気か?」
エンと同じ指摘をアルクナイトはしたが、彼だってイメージチェンジ前はかなり恥ずかしい格好をしていた。同じ尻振り仲間同士仲良くすればいいのに。
リリアナはケロッと返した。
「ダークストーカーを目の前で撃ってみせたのだから、僕の強さはご存知でしょう? 魔王様」
「アルと呼べ。不意打ちのあの一回きりでは実力が測れん。しかもジジイも一緒だと言うではないか!」
「えっ、執事さんも? それは俺もマスターに聞いてないが」
驚くルパートへ、執事のアスリーは上品な物腰で笑った。
「ほっほっほ。わたくしのことはどうかお気になさらずに。リーベルト様の背後霊とでも思って頂ければ」
「いや気になるだろ。アスリーさん、でしたよね? これから向かう先は犯罪組織の本拠地なんです。身の安全の保証はできませんよ?」
「だからこそ参るのです。わたくしはリーベルト様の影ですから」
影にしては超目立っている。姿勢がいいなぁ。
「アスリーは強いですよ。元傭兵で僕の銃の先生でもあるんです」
なるほど。アスリーもリリアナと同じ型の銃を装備していた。ルパートはふぅっと息を吐いた。
「同行を許可しますが、くれぐれも無茶はしないで下さいね?」
「……気に食わん! 俺の許可無く人員を増やすとは!」
な~んかアルクナイトがカリカリしているな。牛乳飲みなさい。イライラに効くよ?
「よし、二台の馬車に乗り込んで行くぞ。王国兵団と合流後も俺達は基本、このギルドの馬車で移動することになる」
そうなんだ、良かった。だったら野営用のテントを張れなくても、馬車の中で寝ることができるな。座りながらだけど。夜露をしのげるのはありがたい。
「全員で九人だから五人と四人だな。どうやって分けるか……」
「あっ、年長組と年少組に分けるべきだと思いますぅ。年が近い方が話しやすいですしぃ」
女言葉に戻ったリリアナが手を挙げて発言し、マキアが「賛成!」と続いた。
年齢順で言うと……アルクナイト(桁が違う最年長)、アスリー(60代?)、キース(29)、エリアス(29)、ルパート(もうすぐ28)、私(25)、マキア(23)、エン(21)、リリアナ(19)となる。
「それでいいか。年長四人と年少五人で馬車を使おう」
「ちょっと待てルパート。何故年長組が四人と少ないのだ?」
すかさずエリアスが疑問を呈した。
「そりゃ年長組の方が身体の大きい男が多いからさ。馬車が狭くなるだろ?」
「そう言っておまえはちゃっかり年少組に混ざるつもりだろう? ロックウィーナの側に! ずるいぞ!!」
「うっ……。いや年少組にはまとめるリーダーが必要だと思ってさ。俺主任だし」
「それなら僕が適任ですよ。いざという時に、障壁で馬車ごと護ってあげられますから」
「出しゃばるな白。強さでは俺がナンバー1だ。俺がちびっ子どもの馬車へ乗り込もう」
「ははは、そうですね。アルにはみんなの警備に当たってもらいましょうか。空を飛んでもらって」
「殺すぞ白」
「ほっほっほ、これではいつまで経っても馬車に乗り込めそうにないですな」
アスリーの言う通りだ。何て大人げない大人達の集まりなんだろう。
待ち合わせ時間は13時だから遅刻ではないが、大事なミッション時は十分前行動をしろと、常日頃ルパートに口が酸っぱくなるほど注意されていた。先に来ていた彼を見て私は頭を下げた。
「お待たせしました! 他の皆さんは?」
「あっち。ここに大勢居ると依頼人や冒険者の邪魔になるからな」
ルパートが顎で指した方向を見ると、少し離れた所に私達以外の全員が揃っていた。リリアナと彼の執事であるアスリーも居た。
(私が最後だったか……。こういう所が駄目なんだよなぁ)
出動班の待機組には、およそ半年前にギルドへ就職した職員が二人居る。でも彼らは元冒険者だったり、王国兵団の元兵士だったりで、私よりも旅慣れていて腕も立つ。だから二人を後輩などとはとても呼べない。
碌な経験無しにギルドへ就職した私みたいな若者も居たが、そういった新人達は訓練の厳しさや、出動のキツさに根を上げてすぐに辞めていった。(ルパートとセスにいびられた人も居たようだけど)
つまり私が出動班の中で一番の下っ端だ。そしてその立場に慣れて甘えてしまっている。気を引き締めないと!
「遅くなってすみません。すぐにみんなの元へ行きます」
「あ、ちょっと待て」
私を呼び止めたルパートは何やらモゴモゴと言った。
「……アレ、いつにするよ?」
「はい? アレ?」
「街へ遊びに行く日。……デートしようって前に話したろ?」
「あ」
仕事ではなく遊び目的で、ルパートと一緒に街へ行こうと約束していたんだった。
途端に恥ずかしくなってきた。デート。でえと。Go on a date。
「この大きな任務が終わった次の日はどうだ? 流石に休みを貰えるだろうから」
「は、はい……。それで大丈夫です」
部屋で逢うのは危ないから人が多い所へ行きなさい、キースにそう忠告されて計画された街デート。あれ、そう言えばキースも付いてくるとか言っていなかった?
「あの、キース先輩も誘うのですか?」
ルパートは右手人差し指を自分の口元へ当てて笑った。
「内緒だ。二人で行くぞ」
うわぁ、ルパートの金髪が日光に当たってキラキラしている。昨日会った聖騎士に負けていない。それに腹が立つけど改めて、この人ってば私好みのイケメンなんだよね。笑顔の破壊力が半端ない。
過去にあれだけ酷くフラれたってのに、性懲りもなくまたトキメいてしまっている。私ってチョロい女だな。
だけど……厳しい仕事内容の冒険者ギルドで、私が七年もやってこられたのはルパートのおかげなんだよね。他の新人は逃げているんだもの。きっと私が気づかない所でも、彼はいろいろサポートしてくれていたんだ。
それに跪いてプロポーズしてくれたあの晩、あの時の彼は本心を伝えていたと思う。
あああ。思い出してまた照れてきたぁ!
「おいチャラ男、女装男が付いてくるというのは何の冗談だ」
みんなの元へ行くと開口一番、アルクナイトがルパートへ不満をぶつけた。どうやらリリアナに対する愚痴らしい。
「こんなヒラヒラした格好で戦場へ出てくるとは、おまえは正気か?」
エンと同じ指摘をアルクナイトはしたが、彼だってイメージチェンジ前はかなり恥ずかしい格好をしていた。同じ尻振り仲間同士仲良くすればいいのに。
リリアナはケロッと返した。
「ダークストーカーを目の前で撃ってみせたのだから、僕の強さはご存知でしょう? 魔王様」
「アルと呼べ。不意打ちのあの一回きりでは実力が測れん。しかもジジイも一緒だと言うではないか!」
「えっ、執事さんも? それは俺もマスターに聞いてないが」
驚くルパートへ、執事のアスリーは上品な物腰で笑った。
「ほっほっほ。わたくしのことはどうかお気になさらずに。リーベルト様の背後霊とでも思って頂ければ」
「いや気になるだろ。アスリーさん、でしたよね? これから向かう先は犯罪組織の本拠地なんです。身の安全の保証はできませんよ?」
「だからこそ参るのです。わたくしはリーベルト様の影ですから」
影にしては超目立っている。姿勢がいいなぁ。
「アスリーは強いですよ。元傭兵で僕の銃の先生でもあるんです」
なるほど。アスリーもリリアナと同じ型の銃を装備していた。ルパートはふぅっと息を吐いた。
「同行を許可しますが、くれぐれも無茶はしないで下さいね?」
「……気に食わん! 俺の許可無く人員を増やすとは!」
な~んかアルクナイトがカリカリしているな。牛乳飲みなさい。イライラに効くよ?
「よし、二台の馬車に乗り込んで行くぞ。王国兵団と合流後も俺達は基本、このギルドの馬車で移動することになる」
そうなんだ、良かった。だったら野営用のテントを張れなくても、馬車の中で寝ることができるな。座りながらだけど。夜露をしのげるのはありがたい。
「全員で九人だから五人と四人だな。どうやって分けるか……」
「あっ、年長組と年少組に分けるべきだと思いますぅ。年が近い方が話しやすいですしぃ」
女言葉に戻ったリリアナが手を挙げて発言し、マキアが「賛成!」と続いた。
年齢順で言うと……アルクナイト(桁が違う最年長)、アスリー(60代?)、キース(29)、エリアス(29)、ルパート(もうすぐ28)、私(25)、マキア(23)、エン(21)、リリアナ(19)となる。
「それでいいか。年長四人と年少五人で馬車を使おう」
「ちょっと待てルパート。何故年長組が四人と少ないのだ?」
すかさずエリアスが疑問を呈した。
「そりゃ年長組の方が身体の大きい男が多いからさ。馬車が狭くなるだろ?」
「そう言っておまえはちゃっかり年少組に混ざるつもりだろう? ロックウィーナの側に! ずるいぞ!!」
「うっ……。いや年少組にはまとめるリーダーが必要だと思ってさ。俺主任だし」
「それなら僕が適任ですよ。いざという時に、障壁で馬車ごと護ってあげられますから」
「出しゃばるな白。強さでは俺がナンバー1だ。俺がちびっ子どもの馬車へ乗り込もう」
「ははは、そうですね。アルにはみんなの警備に当たってもらいましょうか。空を飛んでもらって」
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