ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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第七師団と合流(2)

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 ここでエンが軽く手を挙げた。

「ロックウィーナに告白していない者が、彼女と同じ馬車に乗るべきだと思います」
「なっ」

 魔王、勇者、元聖騎士、元僧侶が余計なことを言うなとエンを睨みつけたが、彼は動じなかった。

「同じ馬車にロックウィーナを狙う男が乗ったら大変です。彼女の身の安全を計る為には、隔離するのが一番かと」

 エンの意見に年長組は言い返せなかった。やましい気持ちが有ったのだろう。おーい。
 結局私はアスリー、マキア、エン、リリアナと一緒の馬車に乗ることになった。やたらと私に引っ付きたがるリリアナは微妙じゃね? という意見も出たが、至近距離での戦闘は私の方が断然強いだろうということで落ち着いた。

「ありがとうエン。場を収めてくれて」
「いや……。アンタも毎日大変だな。鍛えられて精神修養にはなると思うが、俺だったら鬱陶しくなって途中で始末しているぞ」

 本気で同情の眼を向けられた。後ろにまだ年長組居るよー。睨んでるよー?

「やったねロックウィーナと同じ馬車! いろいろ話したかったのに、いっつも先輩達に邪魔されてきたからさー」

 先輩か……。マキアとエンはキースとルパートの後輩になったんだなぁ。感慨深い。

「あまり調子に乗るなよマキア。ロックウィーナと親しくなり過ぎたら、おまえもあっちの馬車に移動だからな」
「えっ……それは嫌だ。うわ、先輩達が怖い笑顔で手招きしてる」
「ほっほっほ。ロックウィーナ様はおモテになるのですな。流石はリーベルト様の……」
「はいはーいアスリー、とっとと馬車に乗ろうねー」

 執事は受付嬢に背中を押されながら私達の馬車へ乗り込んだ。続こうとした私の横をアルクナイトが通り過ぎた。

「次は消しにくい印にする。覚悟しろよ」

 捨て台詞を吐いて、アルクナイトは向こうの馬車へ乗り込んだ。ヒィ。魔王が不機嫌な理由はそれだったか~!!


 我らがフィースノーの街もそれなりに大きく賑わっているが、冒険者ギルドは旅人が立ち寄りやすいように、街の正門から近い位置に建てられている。なので馬車が街の外へ出るのにさほど時間はかからなかった。
 ちなみに今回はちゃんとプロの御者ぎょしゃが付いてくれている。アルクナイトを助けに行った際は広範囲が戦場になると予測して、危険なので御者《ぎょしゃ》は戦士である私達が交代で務めた。方向音痴なエリアスが御者ぎょしゃ台に乗った時は大変だったよ。馬車が意味も無くあっちこっちへ行った。

「お、兵団はもう来てたんだね」

 窓の外を見たマキアが言うように、街を囲む塀の北側に大勢の兵士や馬が見えた。私達が合流する予定の王国兵団第七師団だろう。
 もう一つの馬車からルパートとエリアスが降りてきて、こちらの馬車の扉を開けた。

「俺達はこれから師団長に挨拶してくる。大勢でゾロゾロ行っても迷惑になるから、おまえ達はここで待機していてくれ」

 それだけ伝えるとルパートは扉を閉め、エリアスをともなって兵団の群れの中へ入って行った。

「主任のルパート先輩だけでなく、エリアスさんも一緒に行くんだね」

 何気ない私の呟きへ、リリアナが見解を述べた。

「エリアスさんのご実家モルガナン家は有力貴族ですからね。兵団側への牽制だと思います。僕達に矢面へ立てとか、兵団が無茶な要求をして来ないように」

 リリアナは完全に商人リーベルトの顔になっていた。なるほど、駆け引きか。
 あのルービック師団長なら大丈夫だと思うけれど、荒っぽい性格の他の兵士が私達を粗雑に扱わないよう、エリアスの身分を明かすことは釘を刺す意味になるんだね。

「魔王が居ると知ったら一番の牽制になると思いますけどね」
「ほっほっほ。魔王様の存在が外部に漏れたら大混乱が起きますよ、坊ちゃん」
「坊ちゃんはやめてって言ってるだろ、アスリー」
「これは失礼致しました、リーベルト様」

 こうしたやり取りを見るとリリアナが普通の青年に見える。私よりも大きい偽乳を所持しているけれども。何故もっとささやかな膨らみにしなかったんだろう。どうせやるなら徹底的に、な心境だろうか。今度そこら辺を聞いてみたい。

「俺達はリリアナとリーベルト、どっちで呼べばいい?」

 マキアがもっともな質問をした。

「受付嬢の格好をしている時はリリアナでお願いします。アスリーもだよ?」
「承知致しました」
「よしリリアナだね。キミは何で女装姿で今回参加したの? 男の格好の方が動きやすくない?」
「男の僕ってけっこう有名人でして……。シュターク商会の人間が兵団と接触していると知られたくないんです。賄賂わいろを渡して国から仕事を貰っているんじゃないかと、黒い噂が囁かれそうで」
「ああ、そうだね……」
「まぁ実際、多少の賄賂わいろは渡してますけど」
「渡してんのかい!」

 どうでもいいことだがマキアはツッコミのリズムが良い。兄弟多いとノリツッコミが日常的になるのかな。

「商売していく以上リベートは必須ですよ? でもお客様にはクリーンなイメージを見せなければならないので、暗い部分は内緒なんです」

 商売するって大変なんだな。すぐ顔に出る私には無理な世界だ。
 なごやかに企業の闇について会話している最中、トントントントン、馬車の扉がノックされた。こちらが応じる前にせっかちな誰かさんによって扉が外側から開けられた。

「あれ魔王様……じゃなくてアルにキース先輩、どうしたんスか?」

 外には仏頂面のアルクナイトとキースが揃っていた。

「俺達もこの馬車に乗せろ。エリーとチャラ男が戻ってくるまでの間でいいから」
「すみませんね。二人きりになって解ったのですが、僕とアルは壊滅的に相性が悪いみたいです」

 そんな予感がしていた。アルクナイトの暴走を止められるのはキースの防御障壁と魅了の瞳だけだ。アルクナイトは邪魔されてイライラしていただろうし、キースはキースで、何度防いでもセクハラ行為をやめない魔王にやはりイライラしていたのだろう。
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