117 / 291
合宿中は恋のフラグが乱立する!?(1)
しおりを挟む
馬車に揺られてまた二時間くらい経ったのかな? 腰とお尻が痛くなってきた頃に第七師団は進軍を止めた。場所はサザナ平原。冒険者ギルドではEランクフィールドとして認定されている。
前の馬車からルパートが降りて、後続の私達の元へ来て指示を出した。
「今日はここで野営をするそうだ。テント張りと飯の準備をするからみんな降りろ」
そしてルパートは、馬車の扉近くに座っていた私へ右手を差し出した。え? 何?
彼の意図が解らず動かない私へ、対面のエンがボソッと囁いた。
「馬車から降りる際のエスコートだろう」
マジか。ルパートにそんなことをされるとは。でもせっかくだから手を借りた。滅多に無いことだからね、記念に。
「ルパート先輩、ギルドメンバー用のテントを張るんですか?」
「そうだ」
「あの私、夜は女性兵士さんのテントへご一緒することになったんです。お世話になるのだから彼女達のテント設営を手伝いたいのですが、行ってもいいですか?」
「あー……そうなのか。おまえは馬車で独りで寝てもらおうと思っていたんだが。御者もテントに来てもらって」
あらあら。ルパートはちゃんと、女の私にプライベートな空間を用意してくれていたんだな。ありがとう。
「もう向こうと話はついているんだよな?」
「はい。ありがたいことに、ルービック師団長が仲介して下さったんですよ」
「ルービックさんが? あの人の顔は潰せないな、行ってこい」
「はい」
「あ……待て」
行こうとした私はルパートに引き留められた。
「メシくらいは俺達と食えよ。待ってるから」
「は、はい。食事の時には戻ってきます」
ルパートに優しく微笑まれてドキッとしてしまった。動揺を隠す為に身体を反転させて、今度こそ私は女性兵士達の元へ走った。
エスコートといい調子が狂うな。
女性兵士達が使う馬車と馬には、黄色い布が巻かれていたのですぐに見つけることができた。男性兵士がむやみに彼女達のテリトリーへ立ち入らないように、目印として付けているらしい。
テント設営は既に大方終わっていたので、私は料理を担当することにした。ニンジンにジャガイモとタマネギ。大量の野菜の皮を剥いて刻む。故郷で一通りの家事を仕込まれたので問題ない。
夕食は大鍋で作った野菜スープと干し肉と乾パン。遠征中は毎日このメニューになるらしいが贅沢は言っていられない。温かい食事ができるだけでも御の字だ。
「お疲れ様、ロックウィーナ。私達も食べよう」
仲良くなった女兵士、黒髪のミラが背後から私の肩を叩いた。金髪のマリナも居た。
「あ、ごめんね。ご飯はギルドのみんなと食べる約束をしてるんだ。戻らないと」
「そっか、残念」
マリナがずいっと近付いてきた。
「ギルドのみなさんって、元聖騎士の主任さんがリーダーなのよね?」
「うん」
「紹介して欲しいわ。駄目かしら?」
およ。大人しいと思ったマリナの目の色が変わっている。ミラがあちゃーって顔をしていた。
「紹介ぐらい……いいよ? 何ならあっちで一緒にご飯食べる?」
「嬉しいわ! ぜひ!!」
マリナに痛いほど手をがっちり握られた。メチャクチャ嬉しそう。何なんだ?
私は頬を紅潮させたマリナと呆れ顔のミラを連れて、冒険者ギルドのみんなが集まっている場所へ引き返した。
野営時の食事は外で調理される。火起こしなど大変だが、旅慣れているエリアスと料理上手なキースが揃っているので、ギルド用の鍋からも美味しそうなスープの香りが漂っていた。
「戻りましたー」
声をかけた私にみんなが振り返った。そして一緒に居るミラとマリナを不思議そうに眺めた。
「ウィー、そちらは?」
ミラとマリナがモジモジしている。私が彼女達を紹介しないとね。
「こちらは第七師団所属の兵士、ミラとマリナです。親切にしてもらっています。今晩は一緒に夕食を……うわぁっ!!」
私はマリナとミラに引っ張られて茂みの中に倒された。ガサガサッ。私達三人は茂みの中で腹這いの低い姿勢となった。
「な、何事!?」
敵襲かと思いきや、ミラが早口でまくし立てた。
「何事かはこっちの台詞だよ! 何なの? 何なのよあのイケメンパラダイスは!!」
「……へ?」
マリナも興奮していた。
「あああああ、師団長クラスのイイ男が揃ってるじゃない! どうしよう、誰にしよう!」
「えええ!?」
呆気に取られていると、逞しい腕が茂みを搔き分けた。
「どうしたんだロックウィーナ。怪我は無いか?」
魅惑の低音ボイス、勇者エリアスの登場だ。上背が有るので至近距離だと迫力が有る。マリナが目を見開いた。
「さ、手を。そちらのレディ達も大丈夫か?」
「レディ……」
ミラが唾を呑み込む音がした。
私達はエリアスの助けを借りて茂みから出た。
「ロックウィーナ、髪に葉が付いている」
エリアスが私の髪をそっと撫ぜて葉を落とした。ミラとマリナが赤い顔をしてぼうっと見ていた。
「さっきからどうしたの二人とも。具合悪い?」
「いやちょっとカルチャーショックと言うか……。普段ムサくて乱暴な男しか見ていなかったもんで……。レディ扱いされるなんて」
ミラが頭を振ってブツブツ言った。マリナは潤んだ瞳でエリアスに尋ねた。
「あなたはロックウィーナの恋人さんですか?」
うひゃあ。気まずい質問をされたよ。エリアスはフッと笑って芝居がかった口調で返した。
「彼女に恋焦がれる憐れな男の一人に過ぎない。……今は」
この人は役者になっても成功しそうだ。
「ふわぁぁ……。完全に私の許容範囲を超えてる……」
頭を抱えるミラが心配になった。
「テントに戻って休む?」
「いえ。一緒にご飯を頂きましょう。そして全員を紹介してちょうだい!」
答えたのはマリナだった。彼女に背中を押されて、私は食事の席に着いたのだった。
前の馬車からルパートが降りて、後続の私達の元へ来て指示を出した。
「今日はここで野営をするそうだ。テント張りと飯の準備をするからみんな降りろ」
そしてルパートは、馬車の扉近くに座っていた私へ右手を差し出した。え? 何?
彼の意図が解らず動かない私へ、対面のエンがボソッと囁いた。
「馬車から降りる際のエスコートだろう」
マジか。ルパートにそんなことをされるとは。でもせっかくだから手を借りた。滅多に無いことだからね、記念に。
「ルパート先輩、ギルドメンバー用のテントを張るんですか?」
「そうだ」
「あの私、夜は女性兵士さんのテントへご一緒することになったんです。お世話になるのだから彼女達のテント設営を手伝いたいのですが、行ってもいいですか?」
「あー……そうなのか。おまえは馬車で独りで寝てもらおうと思っていたんだが。御者もテントに来てもらって」
あらあら。ルパートはちゃんと、女の私にプライベートな空間を用意してくれていたんだな。ありがとう。
「もう向こうと話はついているんだよな?」
「はい。ありがたいことに、ルービック師団長が仲介して下さったんですよ」
「ルービックさんが? あの人の顔は潰せないな、行ってこい」
「はい」
「あ……待て」
行こうとした私はルパートに引き留められた。
「メシくらいは俺達と食えよ。待ってるから」
「は、はい。食事の時には戻ってきます」
ルパートに優しく微笑まれてドキッとしてしまった。動揺を隠す為に身体を反転させて、今度こそ私は女性兵士達の元へ走った。
エスコートといい調子が狂うな。
女性兵士達が使う馬車と馬には、黄色い布が巻かれていたのですぐに見つけることができた。男性兵士がむやみに彼女達のテリトリーへ立ち入らないように、目印として付けているらしい。
テント設営は既に大方終わっていたので、私は料理を担当することにした。ニンジンにジャガイモとタマネギ。大量の野菜の皮を剥いて刻む。故郷で一通りの家事を仕込まれたので問題ない。
夕食は大鍋で作った野菜スープと干し肉と乾パン。遠征中は毎日このメニューになるらしいが贅沢は言っていられない。温かい食事ができるだけでも御の字だ。
「お疲れ様、ロックウィーナ。私達も食べよう」
仲良くなった女兵士、黒髪のミラが背後から私の肩を叩いた。金髪のマリナも居た。
「あ、ごめんね。ご飯はギルドのみんなと食べる約束をしてるんだ。戻らないと」
「そっか、残念」
マリナがずいっと近付いてきた。
「ギルドのみなさんって、元聖騎士の主任さんがリーダーなのよね?」
「うん」
「紹介して欲しいわ。駄目かしら?」
およ。大人しいと思ったマリナの目の色が変わっている。ミラがあちゃーって顔をしていた。
「紹介ぐらい……いいよ? 何ならあっちで一緒にご飯食べる?」
「嬉しいわ! ぜひ!!」
マリナに痛いほど手をがっちり握られた。メチャクチャ嬉しそう。何なんだ?
私は頬を紅潮させたマリナと呆れ顔のミラを連れて、冒険者ギルドのみんなが集まっている場所へ引き返した。
野営時の食事は外で調理される。火起こしなど大変だが、旅慣れているエリアスと料理上手なキースが揃っているので、ギルド用の鍋からも美味しそうなスープの香りが漂っていた。
「戻りましたー」
声をかけた私にみんなが振り返った。そして一緒に居るミラとマリナを不思議そうに眺めた。
「ウィー、そちらは?」
ミラとマリナがモジモジしている。私が彼女達を紹介しないとね。
「こちらは第七師団所属の兵士、ミラとマリナです。親切にしてもらっています。今晩は一緒に夕食を……うわぁっ!!」
私はマリナとミラに引っ張られて茂みの中に倒された。ガサガサッ。私達三人は茂みの中で腹這いの低い姿勢となった。
「な、何事!?」
敵襲かと思いきや、ミラが早口でまくし立てた。
「何事かはこっちの台詞だよ! 何なの? 何なのよあのイケメンパラダイスは!!」
「……へ?」
マリナも興奮していた。
「あああああ、師団長クラスのイイ男が揃ってるじゃない! どうしよう、誰にしよう!」
「えええ!?」
呆気に取られていると、逞しい腕が茂みを搔き分けた。
「どうしたんだロックウィーナ。怪我は無いか?」
魅惑の低音ボイス、勇者エリアスの登場だ。上背が有るので至近距離だと迫力が有る。マリナが目を見開いた。
「さ、手を。そちらのレディ達も大丈夫か?」
「レディ……」
ミラが唾を呑み込む音がした。
私達はエリアスの助けを借りて茂みから出た。
「ロックウィーナ、髪に葉が付いている」
エリアスが私の髪をそっと撫ぜて葉を落とした。ミラとマリナが赤い顔をしてぼうっと見ていた。
「さっきからどうしたの二人とも。具合悪い?」
「いやちょっとカルチャーショックと言うか……。普段ムサくて乱暴な男しか見ていなかったもんで……。レディ扱いされるなんて」
ミラが頭を振ってブツブツ言った。マリナは潤んだ瞳でエリアスに尋ねた。
「あなたはロックウィーナの恋人さんですか?」
うひゃあ。気まずい質問をされたよ。エリアスはフッと笑って芝居がかった口調で返した。
「彼女に恋焦がれる憐れな男の一人に過ぎない。……今は」
この人は役者になっても成功しそうだ。
「ふわぁぁ……。完全に私の許容範囲を超えてる……」
頭を抱えるミラが心配になった。
「テントに戻って休む?」
「いえ。一緒にご飯を頂きましょう。そして全員を紹介してちょうだい!」
答えたのはマリナだった。彼女に背中を押されて、私は食事の席に着いたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる