120 / 291
合宿中は恋のフラグが乱立する!?(4)
しおりを挟む
「おまえ髪の毛濡れてるぞ?」
「さっきまでお湯で頭皮を清めていたから」
「涼しい時期なんだからちゃんと乾かさないとな。温かなる風よ、この者を優しく包め」
ルパートが得意の風魔法を使って、私へ向けて柔らかい風を起こした。おお、何だか温かい気もする。
「……さっきのが、嫉妬から出た言葉だったら嬉しいんだけどな」
さっき? ああ、マリナと意気投合の件か。
「まー、おまえの場合それは絶対に無いな!」
ルパートは笑って頭を振った。
「……………………」
私は何も言わなかった。
本当はちょっぴり嫉妬してた。私以外の女性と仲良くするルパートを見て、彼が急に遠い存在になったような、落ち着かない寂しさを感じていた。
今は彼に摘まれている髪の毛がくすぐったい。
でもまだこの気持ちは彼に伝えられない。今はまだ……。
私とルパートは並んで腰かけた。21時過ぎの完全なる夜、人目を遮断する大樹の陰に身を潜めるように。
……身構えなくていい。隣の長髪はいつも一緒に居るルパートお兄ちゃんだ。口が悪くて人の恋人候補を勝手に遠ざけるお邪魔虫で、仕事以外の用事も言いつける俺様野郎で、だけどずっと私を護ってくれていた頼もしいイケメンで……。
(だあっ!)
ルパートの良い要素は思い出しちゃ駄目! 今この瞬間に必要無い!
私は頭を抱えた。わあぉ。ルパートの風魔法のおかげでサラッサラに乾いていた。手櫛だけで整う髪、サロンクオリティ。あの風ってばトリートメント効果も有るんじゃないかしら。
「……何かさ」
ルパートが空で輝く三日月を見ながら口を開いた。
「俺達はほぼ毎日一緒に居たからさ、おまえと離れて行動するって……、何か気分が落ち着かないんだよ」
改めて考えてみると異常だよね。休日も何だかんだで一緒に過ごす日が多かった。そりゃーお互い恋人なんてできる訳がないよ。ハハハ……。
そして自分の鈍さに呆れてしまった。
ルパートがずっと私に惚れていたというのは事実だろう。気の無い相手に毎日付き纏う人間なんて居ない。嫌っていたらバディを解消していただろうし、無関心ならプライベートな時間にまで声はかけない。
とても簡単な答えだったのに、一度振られたことで私は何も見えなくなってしまっていた。ルパートが私の傍に居たのは私を好きだったからなんだ。
(まー、当のルパート本人も恋心に気づいていなかったんだけどね!)
何てお間抜けな二人。貴重な二十代前半を思いっきり無駄に消費してしまったよ。せめてねぇ、もっと早くルパートが気づいて告白してくれていたならなぁ。
そのルパートは月に目線を定めたまま、静かな声で聞いてきた。
「おまえはどうなんだウィー。俺とは別行動だが……馬車の連中と上手くやれているか? 困っていることはないか?」
「うーん……。今のところは特に困ってないですね。一緒の馬車に乗るみんなも、知り合ったミラとマリナも親切にしてくれるので」
「……そうか」
ルパートは寂しそうに笑った。
「おまえ、出動のバディを変えたいとか思ってるか?」
「…………はい?」
おいおい金髪のゲス貴公子、今更それを言うの? 私を解放せず近くに縛り付けていたあなたが。
ここでもし私が、「別の人との方が気が合いそう」とか答えたらどうするのさ。諦めるの? 身を引くの?
(困った人)
でもそれがルパートなんだろうなぁ。意地っ張りで強引で、それなのに私の気持ちが何処を向いているのか、不安になってすぐ確かめようとする。
そんな幼稚で我儘なあなたと上手くやれる人間なんて、七年も一緒に居た私くらいのもんでしょうが。
「私のバディの相手は、今のままルパート先輩がいいです」
「………………え」
「お互いのクセとか解っているから、コンビネーションが取りやすいです。上手くいっているペアを変える必要は無いかと」
ルパートが驚いた顔をして私を見た。
「そうなのか? 俺でいいのか? 俺は……ずっとおまえを振り回してきた男だぞ?」
「ええ。とは言っても、あくまでも仕事上での話ですよ? 恋人になるとかは異次元レベルでの別問題ですからね」
「たとえ仕事の付き合いだとしても……、俺が相棒として傍に居てもいいのか?」
らしくない謙虚な姿勢だ。綺麗なお月様を眺めて心が清められたか。
「先輩が私にした酷いことは、もう蒸し返さないことに決めました」
「どうして?」
「前の周回でですが、私の鬱積した感情は一度しっかり先輩へぶつけたんです。蹴りと共に」
「蹴り……」
「残念ながら蹴りはほとんど避けられましたけどね。溜まってた不満は言えたから……、だからいいんです」
「この時間軸の俺にはぶつけてないぞ?」
「こっちの世界でも、キース先輩に諭されて反省してくれたでしょ? そして私と良い関係を築こうと努力してくれていますよね? ならもう……昔のことはいいんです」
「良くないだろ!」
ルパートが顔を接近させた。近い近い。エリアス並みに近い。距離を取ろうと私は横へ少し傾いた。
「おまえを俺は何年にも渡って傷付けてきたんだ。簡単に許すなよ!!」
うわぁ面倒臭いなぁ。いいって言ってんだから素直に受け止めなさいよ。
「だから? それで責任を取る為に私へプロポーズしたんですか? そんな経由で結婚だなんて、私すっごい惨めじゃないですか」
「違う! そうじゃない、そうじゃないんだ……」
「?………………」
苦しそうにルパートは端正な顔を歪めた。そして更に私へ接近した。逃げる為に身体を余計に傾けた私は……ゴロン、草の上に寝転がってしまった。
「おい!」
ルパートは私を起き上がらせようと手を伸ばしたが、
「……………………」
私に到達する前にその手を止めてしまった。何で? 引っ張り上げてくれないの?
「……………………」
見下ろすだけで放置プレイのルパート。痺れを切らせた私は自力で起き上がろうとした。しかし私が身体を起こす前に、隣のルパートがゆっくり身体を倒してきたのだった。
「さっきまでお湯で頭皮を清めていたから」
「涼しい時期なんだからちゃんと乾かさないとな。温かなる風よ、この者を優しく包め」
ルパートが得意の風魔法を使って、私へ向けて柔らかい風を起こした。おお、何だか温かい気もする。
「……さっきのが、嫉妬から出た言葉だったら嬉しいんだけどな」
さっき? ああ、マリナと意気投合の件か。
「まー、おまえの場合それは絶対に無いな!」
ルパートは笑って頭を振った。
「……………………」
私は何も言わなかった。
本当はちょっぴり嫉妬してた。私以外の女性と仲良くするルパートを見て、彼が急に遠い存在になったような、落ち着かない寂しさを感じていた。
今は彼に摘まれている髪の毛がくすぐったい。
でもまだこの気持ちは彼に伝えられない。今はまだ……。
私とルパートは並んで腰かけた。21時過ぎの完全なる夜、人目を遮断する大樹の陰に身を潜めるように。
……身構えなくていい。隣の長髪はいつも一緒に居るルパートお兄ちゃんだ。口が悪くて人の恋人候補を勝手に遠ざけるお邪魔虫で、仕事以外の用事も言いつける俺様野郎で、だけどずっと私を護ってくれていた頼もしいイケメンで……。
(だあっ!)
ルパートの良い要素は思い出しちゃ駄目! 今この瞬間に必要無い!
私は頭を抱えた。わあぉ。ルパートの風魔法のおかげでサラッサラに乾いていた。手櫛だけで整う髪、サロンクオリティ。あの風ってばトリートメント効果も有るんじゃないかしら。
「……何かさ」
ルパートが空で輝く三日月を見ながら口を開いた。
「俺達はほぼ毎日一緒に居たからさ、おまえと離れて行動するって……、何か気分が落ち着かないんだよ」
改めて考えてみると異常だよね。休日も何だかんだで一緒に過ごす日が多かった。そりゃーお互い恋人なんてできる訳がないよ。ハハハ……。
そして自分の鈍さに呆れてしまった。
ルパートがずっと私に惚れていたというのは事実だろう。気の無い相手に毎日付き纏う人間なんて居ない。嫌っていたらバディを解消していただろうし、無関心ならプライベートな時間にまで声はかけない。
とても簡単な答えだったのに、一度振られたことで私は何も見えなくなってしまっていた。ルパートが私の傍に居たのは私を好きだったからなんだ。
(まー、当のルパート本人も恋心に気づいていなかったんだけどね!)
何てお間抜けな二人。貴重な二十代前半を思いっきり無駄に消費してしまったよ。せめてねぇ、もっと早くルパートが気づいて告白してくれていたならなぁ。
そのルパートは月に目線を定めたまま、静かな声で聞いてきた。
「おまえはどうなんだウィー。俺とは別行動だが……馬車の連中と上手くやれているか? 困っていることはないか?」
「うーん……。今のところは特に困ってないですね。一緒の馬車に乗るみんなも、知り合ったミラとマリナも親切にしてくれるので」
「……そうか」
ルパートは寂しそうに笑った。
「おまえ、出動のバディを変えたいとか思ってるか?」
「…………はい?」
おいおい金髪のゲス貴公子、今更それを言うの? 私を解放せず近くに縛り付けていたあなたが。
ここでもし私が、「別の人との方が気が合いそう」とか答えたらどうするのさ。諦めるの? 身を引くの?
(困った人)
でもそれがルパートなんだろうなぁ。意地っ張りで強引で、それなのに私の気持ちが何処を向いているのか、不安になってすぐ確かめようとする。
そんな幼稚で我儘なあなたと上手くやれる人間なんて、七年も一緒に居た私くらいのもんでしょうが。
「私のバディの相手は、今のままルパート先輩がいいです」
「………………え」
「お互いのクセとか解っているから、コンビネーションが取りやすいです。上手くいっているペアを変える必要は無いかと」
ルパートが驚いた顔をして私を見た。
「そうなのか? 俺でいいのか? 俺は……ずっとおまえを振り回してきた男だぞ?」
「ええ。とは言っても、あくまでも仕事上での話ですよ? 恋人になるとかは異次元レベルでの別問題ですからね」
「たとえ仕事の付き合いだとしても……、俺が相棒として傍に居てもいいのか?」
らしくない謙虚な姿勢だ。綺麗なお月様を眺めて心が清められたか。
「先輩が私にした酷いことは、もう蒸し返さないことに決めました」
「どうして?」
「前の周回でですが、私の鬱積した感情は一度しっかり先輩へぶつけたんです。蹴りと共に」
「蹴り……」
「残念ながら蹴りはほとんど避けられましたけどね。溜まってた不満は言えたから……、だからいいんです」
「この時間軸の俺にはぶつけてないぞ?」
「こっちの世界でも、キース先輩に諭されて反省してくれたでしょ? そして私と良い関係を築こうと努力してくれていますよね? ならもう……昔のことはいいんです」
「良くないだろ!」
ルパートが顔を接近させた。近い近い。エリアス並みに近い。距離を取ろうと私は横へ少し傾いた。
「おまえを俺は何年にも渡って傷付けてきたんだ。簡単に許すなよ!!」
うわぁ面倒臭いなぁ。いいって言ってんだから素直に受け止めなさいよ。
「だから? それで責任を取る為に私へプロポーズしたんですか? そんな経由で結婚だなんて、私すっごい惨めじゃないですか」
「違う! そうじゃない、そうじゃないんだ……」
「?………………」
苦しそうにルパートは端正な顔を歪めた。そして更に私へ接近した。逃げる為に身体を余計に傾けた私は……ゴロン、草の上に寝転がってしまった。
「おい!」
ルパートは私を起き上がらせようと手を伸ばしたが、
「……………………」
私に到達する前にその手を止めてしまった。何で? 引っ張り上げてくれないの?
「……………………」
見下ろすだけで放置プレイのルパート。痺れを切らせた私は自力で起き上がろうとした。しかし私が身体を起こす前に、隣のルパートがゆっくり身体を倒してきたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる