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暗闇の中の義兄弟(5)
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グラハム連隊長は形ばかりの謝罪をした。表情はまだ決して私達に気を許していない。
だけど同じ兵団の部下が殺されて、手柄を冒険者ギルドに奪われたんだもの、彼がイラついてしまうのは仕方が無いことだろう。
ルパートが挙手して質問した。
「あの、師団に連隊長は二人いらっしゃるのでは?」
彼もかつて騎士だったので兵団の隊編成に詳しい。
「居るぞ。もう一人の連隊長はそこに居るエドガーだ」
師団長の紹介で四十歳前後に見えるエドガーが頭を下げた。おお、聖騎士の出世が早いと言うのは本当だな。
しかしそうなると私が居るこのテントに、師団長と二人の連隊長が揃ったことになる。超エリートの皆さんだ。今更ながら緊張してきた。
「さて、先ほど敵襲を受けて、こちら側は見張りに立っていた八名の兵士が犠牲となった訳だが……」
ルービック師団長が切り出した。
「賊の人数は五人。四人は冒険者ギルド職員の手によって倒されたが、残念ながらリーダーと思しき男を取り逃がした」
私のミスだ。
「ここからが問題だ。賊のリーダーの名前はユーリ。彼はアンダー・ドラゴンの幹部であると、そこに居るエンから情報がもたらされた」
「えっ」
「アンダー・ドラゴン!?」
「なんと」
「ユーリさんが……来ていたのか!?」
全員の視線がエンに注がれた。驚いているギルド職員の顔を見回して師団長が尋ねた。
「キミ達は、ユーリと言う男と面識が有るんだな?」
ルパートが答えた。
「いいえ、俺達は話に聞いただけです。彼から……」
再び注目されたエンは静かに言った。
「……ユーリは、俺の義理の兄です」
「馬鹿な!」
声を荒げたのはグラハム連隊長だった。
「その男はアンダー・ドラゴンの幹部なのだろう!? 貴様は敵と通じていたのか!?」
「待てグラハム」
「しかし師団長、我々が討伐へ向かう相手から先制で攻撃されたのですぞ? 誰かが敵へ情報を漏らしたと考えるのが自然でしょう!?」
下っ端職員の私だが、思わず口を挟んでいた。
「そうとは限りません。こちらがアンダー・ドラゴンの連絡員を捕らえたことは向こうにも伝わっているでしょう。その直後にこうして一個師団が動いているのですから、兵団が本拠地を狙う大がかりな作戦を実行する気なんじゃないかと、敵は危惧して間者を放ったんですよ、きっと」
「……むぅ」
連隊長は黙り師団長が苦笑した。
「そうだな。カモフラージュとしてこの第七師団は、国境警備の第二師団と交代する為に行軍しているとあちこちに偽の情報を流したんだが、アンダー・ドラゴンは騙されてくれなかったようだな」
穏やかな口調だったが、ルービック師団長の言葉には有無を言わさぬ圧が含まれていた。
「エン、ユーリについて全て話してもらおうか」
エンは躊躇うことなくユーリについて語り出した。
「ユーリは俺と同じ東国の出身です。忍びと言う組織に属していましたが、仕えていた主の失脚に伴い組織は解体されました」
私情を挟まず事実の報告。それも忍者に必要なスキルなんだろうか。
「忍びか……。聞いたことが有る。諜報活動や暗殺に長けた集団だと」
「やはり彼はスパイでは? アンダー・ドラゴンの側近と通じていて手引きを……」
「黙っていろグラハム。判断するのは全てを聞いてからだ」
ルービック師団長は年上の部下を睨みつけた。
「エン、東国の戦士であるキミとユーリが何故このラグゼリア王国に居るんだ?」
ラグゼリア。これこそが我が愛する祖国の名前だ。
「ユーリは自分の腕を高く買ってくれる新しい主を求めて、方々を旅してこの土地に流れ着いたのだと思います」
「はっ、新しい主だと? その相手がアンダー・ドラゴンの首領とはな!」
グラハム連隊長うるせぇ。師団長に黙ってろって言われたやん。
聖騎士以外で、騎士の要職に就けるのは貴族か金持ちの子供だけだと以前ルパートから聞いた。グラハム連隊長は典型的な我儘ボンボンかね。それでもって実力でスピード出世していく聖騎士達に嫉妬しているとか。
「エン、キミはユーリとは別行動を取っていたのか?」
「……はい。ある日突然、ユーリは俺の前から姿を消しました。俺は義兄弟の契りを交わした彼を捜してラグゼリアに来たんです。自力では見つけられず、情報を得る為にレクセンの冒険者ギルドへ就職しました」
「なるほどな」
「師団長? まさかこの者の話を信じるのですか?」
「私はエンとユーリの戦闘をこの目で見た」
「その男はピンピンしているではありませんか! 敵対していると見せかける為の茶番ですよ!!」
あ~、グラハムの口を縫い付けたい。
「彼が受けた傷は私が治療した。ロックウィーナが間に入らなかったら、間違い無くユーリはエンを殺していただろう。そういう傷だった」
テント内のギルドメンバー達が、私とエンを交互に見て表情を険しくした。
「ロックウィーナの推測通り、敵は戻らない連絡係が本拠地の情報を吐いたと考えたんだろう。そして移動している第七師団へ潜入して、責任者である私の暗殺を企てたんだ」
エドガー連隊長が意見した。
「乱暴な行動ですね。師団長クラスを殺されでもしたら、それこそ国は許さないでしょうに。アンダー・ドラゴン構成員の最後の一人までを血祭りに上げる大戦争となりますよ」
「本拠地を兵団に特定されたと予想した時点で、奴らは国外逃亡を決めたんだろう。大組織だろうが流石に国には勝てるほどの武力は無い。ただ奴らにはこれまで強奪した金銀財宝……荷物が多いからな、引っ越しに時間がかかるのさ。国境を越える為の偽装も必要だしな」
「なるほど。アンダー・ドラゴンは時間稼ぎをしたい訳ですか」
「そうだ。万が一私が死んだ場合、残ったおまえ達は王都の兵団本部へ早馬を飛ばして、今後の方針を伺わない限り動けない」
「でしたら我々はこのまま進むべきですね。昨日今日よりも速いペースで」
「その通りだエドガー。奴らに時間を与えてはならない。諦めて早々に逃亡を図るかもしれないが、それならば奪われた財宝の大半を取り戻せる」
隊のすべきことが決まったようだ。
だけど同じ兵団の部下が殺されて、手柄を冒険者ギルドに奪われたんだもの、彼がイラついてしまうのは仕方が無いことだろう。
ルパートが挙手して質問した。
「あの、師団に連隊長は二人いらっしゃるのでは?」
彼もかつて騎士だったので兵団の隊編成に詳しい。
「居るぞ。もう一人の連隊長はそこに居るエドガーだ」
師団長の紹介で四十歳前後に見えるエドガーが頭を下げた。おお、聖騎士の出世が早いと言うのは本当だな。
しかしそうなると私が居るこのテントに、師団長と二人の連隊長が揃ったことになる。超エリートの皆さんだ。今更ながら緊張してきた。
「さて、先ほど敵襲を受けて、こちら側は見張りに立っていた八名の兵士が犠牲となった訳だが……」
ルービック師団長が切り出した。
「賊の人数は五人。四人は冒険者ギルド職員の手によって倒されたが、残念ながらリーダーと思しき男を取り逃がした」
私のミスだ。
「ここからが問題だ。賊のリーダーの名前はユーリ。彼はアンダー・ドラゴンの幹部であると、そこに居るエンから情報がもたらされた」
「えっ」
「アンダー・ドラゴン!?」
「なんと」
「ユーリさんが……来ていたのか!?」
全員の視線がエンに注がれた。驚いているギルド職員の顔を見回して師団長が尋ねた。
「キミ達は、ユーリと言う男と面識が有るんだな?」
ルパートが答えた。
「いいえ、俺達は話に聞いただけです。彼から……」
再び注目されたエンは静かに言った。
「……ユーリは、俺の義理の兄です」
「馬鹿な!」
声を荒げたのはグラハム連隊長だった。
「その男はアンダー・ドラゴンの幹部なのだろう!? 貴様は敵と通じていたのか!?」
「待てグラハム」
「しかし師団長、我々が討伐へ向かう相手から先制で攻撃されたのですぞ? 誰かが敵へ情報を漏らしたと考えるのが自然でしょう!?」
下っ端職員の私だが、思わず口を挟んでいた。
「そうとは限りません。こちらがアンダー・ドラゴンの連絡員を捕らえたことは向こうにも伝わっているでしょう。その直後にこうして一個師団が動いているのですから、兵団が本拠地を狙う大がかりな作戦を実行する気なんじゃないかと、敵は危惧して間者を放ったんですよ、きっと」
「……むぅ」
連隊長は黙り師団長が苦笑した。
「そうだな。カモフラージュとしてこの第七師団は、国境警備の第二師団と交代する為に行軍しているとあちこちに偽の情報を流したんだが、アンダー・ドラゴンは騙されてくれなかったようだな」
穏やかな口調だったが、ルービック師団長の言葉には有無を言わさぬ圧が含まれていた。
「エン、ユーリについて全て話してもらおうか」
エンは躊躇うことなくユーリについて語り出した。
「ユーリは俺と同じ東国の出身です。忍びと言う組織に属していましたが、仕えていた主の失脚に伴い組織は解体されました」
私情を挟まず事実の報告。それも忍者に必要なスキルなんだろうか。
「忍びか……。聞いたことが有る。諜報活動や暗殺に長けた集団だと」
「やはり彼はスパイでは? アンダー・ドラゴンの側近と通じていて手引きを……」
「黙っていろグラハム。判断するのは全てを聞いてからだ」
ルービック師団長は年上の部下を睨みつけた。
「エン、東国の戦士であるキミとユーリが何故このラグゼリア王国に居るんだ?」
ラグゼリア。これこそが我が愛する祖国の名前だ。
「ユーリは自分の腕を高く買ってくれる新しい主を求めて、方々を旅してこの土地に流れ着いたのだと思います」
「はっ、新しい主だと? その相手がアンダー・ドラゴンの首領とはな!」
グラハム連隊長うるせぇ。師団長に黙ってろって言われたやん。
聖騎士以外で、騎士の要職に就けるのは貴族か金持ちの子供だけだと以前ルパートから聞いた。グラハム連隊長は典型的な我儘ボンボンかね。それでもって実力でスピード出世していく聖騎士達に嫉妬しているとか。
「エン、キミはユーリとは別行動を取っていたのか?」
「……はい。ある日突然、ユーリは俺の前から姿を消しました。俺は義兄弟の契りを交わした彼を捜してラグゼリアに来たんです。自力では見つけられず、情報を得る為にレクセンの冒険者ギルドへ就職しました」
「なるほどな」
「師団長? まさかこの者の話を信じるのですか?」
「私はエンとユーリの戦闘をこの目で見た」
「その男はピンピンしているではありませんか! 敵対していると見せかける為の茶番ですよ!!」
あ~、グラハムの口を縫い付けたい。
「彼が受けた傷は私が治療した。ロックウィーナが間に入らなかったら、間違い無くユーリはエンを殺していただろう。そういう傷だった」
テント内のギルドメンバー達が、私とエンを交互に見て表情を険しくした。
「ロックウィーナの推測通り、敵は戻らない連絡係が本拠地の情報を吐いたと考えたんだろう。そして移動している第七師団へ潜入して、責任者である私の暗殺を企てたんだ」
エドガー連隊長が意見した。
「乱暴な行動ですね。師団長クラスを殺されでもしたら、それこそ国は許さないでしょうに。アンダー・ドラゴン構成員の最後の一人までを血祭りに上げる大戦争となりますよ」
「本拠地を兵団に特定されたと予想した時点で、奴らは国外逃亡を決めたんだろう。大組織だろうが流石に国には勝てるほどの武力は無い。ただ奴らにはこれまで強奪した金銀財宝……荷物が多いからな、引っ越しに時間がかかるのさ。国境を越える為の偽装も必要だしな」
「なるほど。アンダー・ドラゴンは時間稼ぎをしたい訳ですか」
「そうだ。万が一私が死んだ場合、残ったおまえ達は王都の兵団本部へ早馬を飛ばして、今後の方針を伺わない限り動けない」
「でしたら我々はこのまま進むべきですね。昨日今日よりも速いペースで」
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隊のすべきことが決まったようだ。
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