10 / 64
二音 友達ゴッコ(二)
しおりを挟む
「すっごい昔は友達でしたよ? それこそ保育園時代ですけど、お互いの実家が割と近くて……。ホラ、小さい時って行動範囲が狭いから、近所の子供同士で遊ぶしかないっていうか、近所の子とは仲良くしなくちゃいけない流れになるっていうか……」
自分の幼少時のことを思い出してみると、確かに。
「でもそれは、あくまでも臨時の友達なんです。小学校に上がって自我が強くなると、今度は本当に気の合う者同士で親しくするんです。藍理はクラスのリーダー的なグループに入って、あたしは地味なコ達と固まってました」
地味……。目の前の肥満女デーモンが?
「あ、あたし今はギャル風ですけど、昔はおとなしい子供だったんですよ!?」
俺の視線の意味に気づいたのか。やるな。
「だからまぁ、派手目な藍理とはイマイチ合わなくて」
「それなのに今も付き合いを続けているの?」
「母親同士の仲がいいんですよ」
蓮は大きな溜め息を吐いた。
「誕生会とか夏祭りとか、他のコと遊ぼうとすると親がうるさいんです。藍理ちゃんも誘いなさいって。もうそれぞれ別に友達ができたって説明しても無駄。親と同じく、子供同士も仲良くするべきだって考えの人だから。藍理のお母さんもそんな感じ」
困った親だな。自分達の交友関係を子供世代にまで持ち越すなよ。
「だから親に注意されない程度に、藍理とは遊んでいました。さすがに高校で学校が別れてからは会わなくなりましたけど。それでも、親や共通の知り合いを通じて藍理の情報は入ってきました」
「なんだ、男を世話されるくらいだから、よっぽど仲が良いんだと思っていたよ」
あっ、「男を世話」だなんて露骨な表現を使ってしまった。仮にも女性相手にこれは無い。
「ごめん、失言。嫌な言い方だった」
「あはは、いいんですよ。はっきり言って、今日はモロにそういう設定の飲み会でしたもん」
蓮は明るく笑い飛ばしてくれた。料理にも手を付け始めた。
「藍理と再会したの、ほんの二ヶ月前なんですよ。母が番号教えたみたいで、急に電話かかってきて久し振りにゴハン行かないかって。上京してこっちに地元の友達居なくて寂しかったから、まーいいかなって、あたし軽く考えてOKしたんです」
一度笑って心のしこりが取れたのか、蓮は饒舌になった。スプーンも軽やかに動いた。
「それで三回、藍理と遊びに行ったんですけどね、あのコ、その全部にヒロくん同伴で来たんですよ。有り得なくないですか? しかも上から目線で、あんたも彼氏くらい作らなきゃ駄目とか説教してくるし」
「あー、俺もヒロに説教されたわー。三十過ぎて恋人居ないのってヤバイですよって。今日はお互い、無理に連れてこられたみたいだね」
「大鳥さんもそうだったんですかー。まいっちゃいますねー」
俺はちょっと期待して来たんだけれどな。三十代の内に結婚して、できれば子供を授かりたいという夢が有るし。
だけれど自分の好みとは真逆なタイプの女性を前にして、ポッキリ心が折れてしまいました。
「今日はお互いに災難だったね」
俺は心からそう言った。
「え~、でも、あたしぃ、大鳥さんと知り合えたのはラッキーだったかなぁって」
空気読めよブヒモス。上目遣いでパチパチまばたきするな。うんざりしながら話題を本筋に戻した。
「園部さんに意地悪ってどういうこと?」
「あ……」
蓮はスプーンを置き、再び真面目な表情に戻した。
「ヒロくんの部屋でした話……、九音の鬼のことです」
「ああ、うん。園部さん異様に嫌がっていたね」
「そうなんです。藍理はあの話がすごく嫌いなんです。それを知っててあたし、わざと話したんです」
なるほど。相手が嫌がることを解ってやったのなら、それは意地悪に違いない。
「だけれどさ、九音の鬼ってそんなに怖い話かな? イジメが絡む陰湿さには確かにゾッとしたけれど、幽霊が出てくる訳じゃないし。園部さんって怖い話に強そうだったのに、あの程度で怯えるなんて意外だったよ」
「イジメの当事者にとっては、アレは充分に怖い話なんですよ」
「え?」
「藍理は小学校時代、九音の鬼を使って、同級生の子に酷いイジメをしているんです」
「!……」
俺は息を呑んだ。イジメ……。あの気配りができる上品な女性が過去にイジメを?
「見た目そういうイメージじゃないでしょ? 親切そうに振る舞っているから。そーゆー裏表が有るところも嫌い。……あ」
口にしてから蓮はしまったという顔をした。しかしすぐに開き直った。
「いいやもう、ぶっちゃけます。あたし藍理が嫌いなんです。これから言うことは、ズバリあのコの悪口です。でも全部本当のことですから!」
鼻息荒く宣言された。迫力に押され俺はたじろいた。
「で、でも、イジメといっても、鬼ゴッコで嫌いな子をわざと鬼にしたり、その程度のことでしょ?」
藍理を擁護するような発言をしてしまった俺に、蓮は侮蔑の視線で応じた。
「男の人って本当、美人に弱いんだから。言っておきますけど藍理のあの顔、全部整形ですからね」
「ふえっ!?」
驚いて喉から変な音が出た。
「藍理は小さい頃からずっとオシャレだったけど、顔立ちは平凡なんです。髪型や喋り方で可愛く見せる、いわゆる雰囲気美人ってやつ。それがこの前再会したら、顔の造り自体がキレイに変わっててもうビックリ」
マジか。
「成長して顔が変わる人ってけっこう居るよ、それじゃないの? あとは……メイクの腕が上がったとか」
「無い無い無い無い」
蓮は大袈裟に手を顔の前で振るジェスチャーで否定した。
「成人式にチョロっと見かけた時は前の顔でしたもん。それにね、メイクしない男の人には判らないかもだけど、女はメイクで誤魔化せるのはここまで、ここから先はメイクじゃ無理って判るんですよ」
そういうものなのか。
「あたし、別に整形が悪いって言ってるんじゃないんです。あたしだって自分の顔にコンプレックス有るし」
肉に埋もれていて顔立ちがよく判らない。
「キレイになって嬉しくなるのは当然です。自慢に思うのも。だけどそれで他のコを見下すのはどうかと思うんです」
自分の幼少時のことを思い出してみると、確かに。
「でもそれは、あくまでも臨時の友達なんです。小学校に上がって自我が強くなると、今度は本当に気の合う者同士で親しくするんです。藍理はクラスのリーダー的なグループに入って、あたしは地味なコ達と固まってました」
地味……。目の前の肥満女デーモンが?
「あ、あたし今はギャル風ですけど、昔はおとなしい子供だったんですよ!?」
俺の視線の意味に気づいたのか。やるな。
「だからまぁ、派手目な藍理とはイマイチ合わなくて」
「それなのに今も付き合いを続けているの?」
「母親同士の仲がいいんですよ」
蓮は大きな溜め息を吐いた。
「誕生会とか夏祭りとか、他のコと遊ぼうとすると親がうるさいんです。藍理ちゃんも誘いなさいって。もうそれぞれ別に友達ができたって説明しても無駄。親と同じく、子供同士も仲良くするべきだって考えの人だから。藍理のお母さんもそんな感じ」
困った親だな。自分達の交友関係を子供世代にまで持ち越すなよ。
「だから親に注意されない程度に、藍理とは遊んでいました。さすがに高校で学校が別れてからは会わなくなりましたけど。それでも、親や共通の知り合いを通じて藍理の情報は入ってきました」
「なんだ、男を世話されるくらいだから、よっぽど仲が良いんだと思っていたよ」
あっ、「男を世話」だなんて露骨な表現を使ってしまった。仮にも女性相手にこれは無い。
「ごめん、失言。嫌な言い方だった」
「あはは、いいんですよ。はっきり言って、今日はモロにそういう設定の飲み会でしたもん」
蓮は明るく笑い飛ばしてくれた。料理にも手を付け始めた。
「藍理と再会したの、ほんの二ヶ月前なんですよ。母が番号教えたみたいで、急に電話かかってきて久し振りにゴハン行かないかって。上京してこっちに地元の友達居なくて寂しかったから、まーいいかなって、あたし軽く考えてOKしたんです」
一度笑って心のしこりが取れたのか、蓮は饒舌になった。スプーンも軽やかに動いた。
「それで三回、藍理と遊びに行ったんですけどね、あのコ、その全部にヒロくん同伴で来たんですよ。有り得なくないですか? しかも上から目線で、あんたも彼氏くらい作らなきゃ駄目とか説教してくるし」
「あー、俺もヒロに説教されたわー。三十過ぎて恋人居ないのってヤバイですよって。今日はお互い、無理に連れてこられたみたいだね」
「大鳥さんもそうだったんですかー。まいっちゃいますねー」
俺はちょっと期待して来たんだけれどな。三十代の内に結婚して、できれば子供を授かりたいという夢が有るし。
だけれど自分の好みとは真逆なタイプの女性を前にして、ポッキリ心が折れてしまいました。
「今日はお互いに災難だったね」
俺は心からそう言った。
「え~、でも、あたしぃ、大鳥さんと知り合えたのはラッキーだったかなぁって」
空気読めよブヒモス。上目遣いでパチパチまばたきするな。うんざりしながら話題を本筋に戻した。
「園部さんに意地悪ってどういうこと?」
「あ……」
蓮はスプーンを置き、再び真面目な表情に戻した。
「ヒロくんの部屋でした話……、九音の鬼のことです」
「ああ、うん。園部さん異様に嫌がっていたね」
「そうなんです。藍理はあの話がすごく嫌いなんです。それを知っててあたし、わざと話したんです」
なるほど。相手が嫌がることを解ってやったのなら、それは意地悪に違いない。
「だけれどさ、九音の鬼ってそんなに怖い話かな? イジメが絡む陰湿さには確かにゾッとしたけれど、幽霊が出てくる訳じゃないし。園部さんって怖い話に強そうだったのに、あの程度で怯えるなんて意外だったよ」
「イジメの当事者にとっては、アレは充分に怖い話なんですよ」
「え?」
「藍理は小学校時代、九音の鬼を使って、同級生の子に酷いイジメをしているんです」
「!……」
俺は息を呑んだ。イジメ……。あの気配りができる上品な女性が過去にイジメを?
「見た目そういうイメージじゃないでしょ? 親切そうに振る舞っているから。そーゆー裏表が有るところも嫌い。……あ」
口にしてから蓮はしまったという顔をした。しかしすぐに開き直った。
「いいやもう、ぶっちゃけます。あたし藍理が嫌いなんです。これから言うことは、ズバリあのコの悪口です。でも全部本当のことですから!」
鼻息荒く宣言された。迫力に押され俺はたじろいた。
「で、でも、イジメといっても、鬼ゴッコで嫌いな子をわざと鬼にしたり、その程度のことでしょ?」
藍理を擁護するような発言をしてしまった俺に、蓮は侮蔑の視線で応じた。
「男の人って本当、美人に弱いんだから。言っておきますけど藍理のあの顔、全部整形ですからね」
「ふえっ!?」
驚いて喉から変な音が出た。
「藍理は小さい頃からずっとオシャレだったけど、顔立ちは平凡なんです。髪型や喋り方で可愛く見せる、いわゆる雰囲気美人ってやつ。それがこの前再会したら、顔の造り自体がキレイに変わっててもうビックリ」
マジか。
「成長して顔が変わる人ってけっこう居るよ、それじゃないの? あとは……メイクの腕が上がったとか」
「無い無い無い無い」
蓮は大袈裟に手を顔の前で振るジェスチャーで否定した。
「成人式にチョロっと見かけた時は前の顔でしたもん。それにね、メイクしない男の人には判らないかもだけど、女はメイクで誤魔化せるのはここまで、ここから先はメイクじゃ無理って判るんですよ」
そういうものなのか。
「あたし、別に整形が悪いって言ってるんじゃないんです。あたしだって自分の顔にコンプレックス有るし」
肉に埋もれていて顔立ちがよく判らない。
「キレイになって嬉しくなるのは当然です。自慢に思うのも。だけどそれで他のコを見下すのはどうかと思うんです」
13
あなたにおすすめの小説
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる