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二音 友達ゴッコ(三)
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「相原さんは園部さんに……、その、見下されたことが有るの?」
「昔から、ずっとですよ」
蓮は眉間に皺を寄せた。
「容姿のことでちょくちょく馬鹿にされてきました。再会してから更に酷くなった感じ。あたしの体型が有り得ないとか、このままじゃ成人病まっしぐらとか」
それ心配してくれているんじゃないかな。
「そーゆー態度取られると、あんたの顔だってニセモノじゃん、って言いたくなるんです!」
「ニセモノか……。そこまで変わっちゃったの?」
「面影を残して全取っ替えですよ。別人の顔が付いちゃったみたいで違和感が有るんです。うーん、説明しにくいな。写真や遠くから見る分には藍理なんですけどね、近くで直接見たら、あ、コイツ顔いじったなってすぐに判るレベル」
「そっか……」
正直、俺はショックを受けていた。今日感動した藍理の美しさが造り物だと知って。自分が美容整形に偏見を持っているとは思っていなかったので、二重にショックだった。
男だって薄毛や低身長にコンプレックスを抱き、隠そうとする人間はたくさん居る。男以上に容姿の優劣で判断されがちな女が、悩んだ末に美容整形という手段を取っても俺に責める権利は無い。そう思っていた。
だのに目の当たりにした今、騙されたという黒い感情が俺の中に生まれた。藍理の美しさに貢いだ訳でもないのに。図々しいし、小せぇ男だったんだな、俺は。
「小せぇ男だったんだな、俺は」
「えっ」
あ、心の中で呟いたつもりが、最後の部分を声に出してしまっていたようだ。
「いやっ、気にしなくていいですよ。そんな……」
蓮が頬を赤く染めていた。
「あのですね、男の人ってサイズに拘りがちだけど、女のコはあんまり大きいとツライってコが多いんですよ、実は。ハハ……」
「?」
何を言っているんだろう、丸ちゃんは。
「!?」
俺は気づいた。間の悪いことに自分に運ばれてきたミックスグリルの皿の、大振りソーセージをフォークでつついていたところだったのだ。
ちょっと待て丸、テメェ何を誤解した!?
「あの、今のはっ、これはっ……」
「ハハ、大丈夫、大丈夫です。話を戻しますね。九音の鬼と藍理のイジメについてなんですけどぉ……」
気まずそうに蓮は俺を慰めた。くっ、こんな奴に同情されるとは……!
「あれは確か、小学五年生の時でした。クラスに梓ちゃんって言う、とても可愛い女子が居たんです。梓ちゃんはね、勉強もスポーツも学年上位のスーパー美少女で、同学年の子だけじゃなくて、違う学年の子や先生達にも一目置かれる存在でした」
屈辱的な展開を無かったことにしたくて、俺は蓮の話に集中した。
「梓ちゃんが属するグループはもちろん、女子ヒエラルキーのトップです。そのグループには藍理も居ました」
「うんうん」
「そんな人気者の梓ちゃんが、二学期が始まって少ししたくらいの頃、急に学校に来なくなったんです。なんでも、骨盤と脚の骨を折る怪我をしたとかで」
「骨盤って……大変じゃないか!」
「ええ。ヒビが入った程度の単純骨折らしかったけど、腰は危ないですよね」
当時のことを思い出した蓮は遠い目をした。
「梓ちゃんが休み出して数日後にね、梓ちゃんのご両親が学校へ来たんです。娘がクラスメイトからイジメを受けて大怪我をした。イジメをした子達を出せって、物凄い剣幕で。二人は職員室から校長室へ通されるまでずっと怒鳴ってて……怖かった。その後、藍理のグループが先生に連れて行かれて、あたし達の学年は自習になってんです」
ふぅっと蓮は一息吐いた。
「クラスのみんなは興味津々ですよ。どうして藍理達が連れて行かれたんだろう、あの梓ちゃんがイジメられたって本当なのか、仲良さそうなグループだったのに見せかけだったのか、ってね。梓ちゃんのご両親は廃工場……、郊外に潰れた廃工場が在ったんですが、そこで梓ちゃんが藍理達に怪我をさせられて、その上で放置されたって訴えたらしいです」
「先生から説明が有ったの?」
骨折した重傷者を放置とはかなり悪質だ。クラスメイトがそんなことをしたと聞かされるのは、小学生の子供にはショックが大きいだろうに。
「いいえ、藍理達が触れ回ったんです。自分達は何もしていないのに、梓ちゃんの親にこんなことを言われたんだよ、酷いでしょって」
「何もしていないと、園部さん達は言ったんだね?」
「ええ。梓ちゃんに廃工場を見学しようって誘われて近くまで行ったけど、学校で遊ぶのを禁止されてる場所だからマズイと思って、藍理達は何もせずに先に帰ったって。独り残った梓ちゃんがその後どうしたか、自分達は知らないって白々しく言ってましたよ。グループ内で予め相談して、口裏を合わせたんでしょうね」
蓮は完全に藍理側が悪だと決めつけていた。
「待ってよ。園部さんを庇う訳ではないけどさ、彼女達がやったと断言できる証拠は有るの?」
「はい。あたしの弟が見たんです」
「え」
「あたしには二つ下に弟が居るんですが、ヤツがですね当日、藍理達が廃工場に入るのを見てるんです」
「それは確かに園部さんだったの?」
「あたしと藍理は家が近所だって話したでしょう? 登校班が一緒だったから、弟は藍理の顔をよく知ってるんですよ。小さい頃はお互いの家をしょっちゅう行き来して遊んでましたし」
蓮の弟が見間違えた可能性は低いようだ。
「昔から、ずっとですよ」
蓮は眉間に皺を寄せた。
「容姿のことでちょくちょく馬鹿にされてきました。再会してから更に酷くなった感じ。あたしの体型が有り得ないとか、このままじゃ成人病まっしぐらとか」
それ心配してくれているんじゃないかな。
「そーゆー態度取られると、あんたの顔だってニセモノじゃん、って言いたくなるんです!」
「ニセモノか……。そこまで変わっちゃったの?」
「面影を残して全取っ替えですよ。別人の顔が付いちゃったみたいで違和感が有るんです。うーん、説明しにくいな。写真や遠くから見る分には藍理なんですけどね、近くで直接見たら、あ、コイツ顔いじったなってすぐに判るレベル」
「そっか……」
正直、俺はショックを受けていた。今日感動した藍理の美しさが造り物だと知って。自分が美容整形に偏見を持っているとは思っていなかったので、二重にショックだった。
男だって薄毛や低身長にコンプレックスを抱き、隠そうとする人間はたくさん居る。男以上に容姿の優劣で判断されがちな女が、悩んだ末に美容整形という手段を取っても俺に責める権利は無い。そう思っていた。
だのに目の当たりにした今、騙されたという黒い感情が俺の中に生まれた。藍理の美しさに貢いだ訳でもないのに。図々しいし、小せぇ男だったんだな、俺は。
「小せぇ男だったんだな、俺は」
「えっ」
あ、心の中で呟いたつもりが、最後の部分を声に出してしまっていたようだ。
「いやっ、気にしなくていいですよ。そんな……」
蓮が頬を赤く染めていた。
「あのですね、男の人ってサイズに拘りがちだけど、女のコはあんまり大きいとツライってコが多いんですよ、実は。ハハ……」
「?」
何を言っているんだろう、丸ちゃんは。
「!?」
俺は気づいた。間の悪いことに自分に運ばれてきたミックスグリルの皿の、大振りソーセージをフォークでつついていたところだったのだ。
ちょっと待て丸、テメェ何を誤解した!?
「あの、今のはっ、これはっ……」
「ハハ、大丈夫、大丈夫です。話を戻しますね。九音の鬼と藍理のイジメについてなんですけどぉ……」
気まずそうに蓮は俺を慰めた。くっ、こんな奴に同情されるとは……!
「あれは確か、小学五年生の時でした。クラスに梓ちゃんって言う、とても可愛い女子が居たんです。梓ちゃんはね、勉強もスポーツも学年上位のスーパー美少女で、同学年の子だけじゃなくて、違う学年の子や先生達にも一目置かれる存在でした」
屈辱的な展開を無かったことにしたくて、俺は蓮の話に集中した。
「梓ちゃんが属するグループはもちろん、女子ヒエラルキーのトップです。そのグループには藍理も居ました」
「うんうん」
「そんな人気者の梓ちゃんが、二学期が始まって少ししたくらいの頃、急に学校に来なくなったんです。なんでも、骨盤と脚の骨を折る怪我をしたとかで」
「骨盤って……大変じゃないか!」
「ええ。ヒビが入った程度の単純骨折らしかったけど、腰は危ないですよね」
当時のことを思い出した蓮は遠い目をした。
「梓ちゃんが休み出して数日後にね、梓ちゃんのご両親が学校へ来たんです。娘がクラスメイトからイジメを受けて大怪我をした。イジメをした子達を出せって、物凄い剣幕で。二人は職員室から校長室へ通されるまでずっと怒鳴ってて……怖かった。その後、藍理のグループが先生に連れて行かれて、あたし達の学年は自習になってんです」
ふぅっと蓮は一息吐いた。
「クラスのみんなは興味津々ですよ。どうして藍理達が連れて行かれたんだろう、あの梓ちゃんがイジメられたって本当なのか、仲良さそうなグループだったのに見せかけだったのか、ってね。梓ちゃんのご両親は廃工場……、郊外に潰れた廃工場が在ったんですが、そこで梓ちゃんが藍理達に怪我をさせられて、その上で放置されたって訴えたらしいです」
「先生から説明が有ったの?」
骨折した重傷者を放置とはかなり悪質だ。クラスメイトがそんなことをしたと聞かされるのは、小学生の子供にはショックが大きいだろうに。
「いいえ、藍理達が触れ回ったんです。自分達は何もしていないのに、梓ちゃんの親にこんなことを言われたんだよ、酷いでしょって」
「何もしていないと、園部さん達は言ったんだね?」
「ええ。梓ちゃんに廃工場を見学しようって誘われて近くまで行ったけど、学校で遊ぶのを禁止されてる場所だからマズイと思って、藍理達は何もせずに先に帰ったって。独り残った梓ちゃんがその後どうしたか、自分達は知らないって白々しく言ってましたよ。グループ内で予め相談して、口裏を合わせたんでしょうね」
蓮は完全に藍理側が悪だと決めつけていた。
「待ってよ。園部さんを庇う訳ではないけどさ、彼女達がやったと断言できる証拠は有るの?」
「はい。あたしの弟が見たんです」
「え」
「あたしには二つ下に弟が居るんですが、ヤツがですね当日、藍理達が廃工場に入るのを見てるんです」
「それは確かに園部さんだったの?」
「あたしと藍理は家が近所だって話したでしょう? 登校班が一緒だったから、弟は藍理の顔をよく知ってるんですよ。小さい頃はお互いの家をしょっちゅう行き来して遊んでましたし」
蓮の弟が見間違えた可能性は低いようだ。
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