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二章 ハーレムルート
アレッサンドロ ギノフォード
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フィンコックとの訓練初日。
私のが楽しみにしてしまっているのではないだろうか。
フィンコックは遅刻すること無く楽しそうに私を待っていた。
その笑顔を見ると勘違いしてしまいそうになる。
初日の訓練は初歩の初歩、私が魔法を覚え家庭教師に教わる前に独学でやっていた方法だ。
身体の中の魔力の流れを感じながら、両手のひらに集め同量の魔力を二属性で表現する。
複雑なように聞こえるが、大したことではない。
右手と左手で別の事をする、慣れれば難しいことではない。
楽器を弾くようなもので、感覚と練習さえすればある程度どの人間にも可能な事だ。
フィンコックは己の魔力量で諦めてきたのだろう。
授業では自身の魔力の限界に苦悩していたのかもしれない…不真面目ではなく必死に努力していたのを私は自分の魔力と比べ手を抜いていると決めつけ不真面目な生徒と判断していた。
「魔法が好き」と言った彼のあの言葉が私の心を支配した。
今も必死に訓練している。
邪な考えに囚われるな。
今、フィンコックは真剣に訓練しているんだ。
汗を流しながら荒い呼吸で魔法と向き合っている。
私は何を連想しているんだ。
やめろ。
私は教師だ。
「できたっ。」
声の方へ視線を向ければ、嬉しそうな顔したフィンコックがいた。
彼の手のひらには小さな風と水が生まれていた。
魔力の少ない生徒も見てきたが、この訓練はフィンコックが初めてなので驚いた。
二属性同時を甘く見ていたのかもしれない。
Fクラスの彼にとってこれは、高度過ぎたのかもしれない。
予想以上の結果に、しまった…と反省していると突然抱き付かれた。
予告もなかったので、誘惑されているのか?フィンコックも私に気が有るのかと勘違いしてしまいそうだった。
柑橘系の香りに誘われ流されてしまいそうにはなったが、なんとか本能に勝つことができた。
出来るなら私も抱きしめ喜びを分かち合いたかったが、フィンコックと距離をとった。
離れないと離れられなくなる…。
離れていくフィンコック、香りだけを残して…。
目を瞑り一旦自分を落ち着かせようとしたいると、フィンコックの体勢が崩れ始めた。
咄嗟に受け止めるも、違和感を感じた。
「魔力が…」
試験を終えてから魔法授業はなかったし、本人からも試験から今まで魔法はしていなかったと聞いた。
それなのに、魔力が回復していない。
それどころか、試験の時より魔力量が減っている…?
何かがおかしい。
もしや健康に問題が?
魔力回路に何か…。
翌日フィンコックを見つけた。
数いる生徒の中でも黒髪のフィンコックは目立っていた。
もしフィンコックの髪色が違ったとしても私は見つけ出せる自信があった…。
「フィンコック」
「ギノフォード先生っ」
笑顔で振り向く彼…。
彼に…名前を呼んでほしい。
「迷惑じゃないですか?」
突然何を?
もしや、初日の訓練厳しかったのか?
私はEクラスの魔力の認識が甘かった…。
「訓練辞めますか?」
魔法が好きだと言った生徒を私は追い詰めてしまった…。
彼にそんな苦しそうな表情をさせているのは私だ。
「そんな泣きそうな顔しないでください。…魔法は好きですか?」
「………はぃ」
嫌いになら無くて良かった。
涙を耐える姿は心臓を締め付けられた。
「訓練は無理にしなくて良いですよ、したい時に声掛けてくださいね。」
私から完全に失くすことが出来なかった。
少しでも希望を…。
未練を残しながら離れると服の裾が何かに引っ掛かった。
振り向けばフィンコックが掴み、潤んだ瞳で私を見上げる。
娼婦の手練手管のように普段では引っ掛からないが、相手がフィンコックだと…。
そのまま頬に触れ可愛らしい唇に触れたかった。
「きょっ、今日…はダメ?ですか?」
フィンコックから誘われた…魔法の訓練に…。
そんな意味ではないと分かりながら喜ぶ私がいた。
約束の場所、秘密の訓練、二人きり。
決して、この感情を認めてはいけない。
私は教師、彼は生徒。
油断するな。
訓練は昨日と同じにも関わらず、フィンコックは昨日よりも苦戦しているように見える。
ふざけているわけでも手を抜いているわけでもない。
魔力の使い方に問題が?
「焦ってはいけませんよ、今まで連日魔力を使いきるなんてしたことないんじゃないですか?」
そうはいっても、納得していない表情だ。
幼い子供のように可愛いのだが、本人はそれどころではないのだろう。
私が何をいっても慰めにしか聞こえてないのだろうな。
「…僕は…Fクラスでは普通ですか?」
彼の質問に悩んでしまった。
「そうですね…平均ですかね。」
私は嘘を付いた。
必死に努力している人間に、真実を伝えることが出来なかった。
実際フィンコックの魔力量は、Fクラスの平均以下だ。
「今日は、ここまでにしましょう。」
「ぇっ……はぃ……。」
明らかに落ち込む姿に、私の魔力を分けてやりたいと本気で願ってしまった。
涙を堪えるフィンコックに、もどかしさを感じる。
魔法を好きだと言った彼に何故こんなにも魔力がないのだろうか…。
努力している人間は報われてほしい。
私は魔法の苦手な者を知るために教師になった。
魔法省ではなく、教師を選んだのはこの為なのかもしれない。
魔力量の少ない者の魔力の上げ方を研究する。
少し興味が湧いた。
フィンコックは体調面などは問題なく見える、だが内部…コアや魔力回路に問題があるのかもしれない。
フィンコックの魔力量が著しく低い今日は、魔法が得意な私ですら彼の魔力を感知するのが難しい。
それほどフィンコックの問題は深刻だった。
私のが楽しみにしてしまっているのではないだろうか。
フィンコックは遅刻すること無く楽しそうに私を待っていた。
その笑顔を見ると勘違いしてしまいそうになる。
初日の訓練は初歩の初歩、私が魔法を覚え家庭教師に教わる前に独学でやっていた方法だ。
身体の中の魔力の流れを感じながら、両手のひらに集め同量の魔力を二属性で表現する。
複雑なように聞こえるが、大したことではない。
右手と左手で別の事をする、慣れれば難しいことではない。
楽器を弾くようなもので、感覚と練習さえすればある程度どの人間にも可能な事だ。
フィンコックは己の魔力量で諦めてきたのだろう。
授業では自身の魔力の限界に苦悩していたのかもしれない…不真面目ではなく必死に努力していたのを私は自分の魔力と比べ手を抜いていると決めつけ不真面目な生徒と判断していた。
「魔法が好き」と言った彼のあの言葉が私の心を支配した。
今も必死に訓練している。
邪な考えに囚われるな。
今、フィンコックは真剣に訓練しているんだ。
汗を流しながら荒い呼吸で魔法と向き合っている。
私は何を連想しているんだ。
やめろ。
私は教師だ。
「できたっ。」
声の方へ視線を向ければ、嬉しそうな顔したフィンコックがいた。
彼の手のひらには小さな風と水が生まれていた。
魔力の少ない生徒も見てきたが、この訓練はフィンコックが初めてなので驚いた。
二属性同時を甘く見ていたのかもしれない。
Fクラスの彼にとってこれは、高度過ぎたのかもしれない。
予想以上の結果に、しまった…と反省していると突然抱き付かれた。
予告もなかったので、誘惑されているのか?フィンコックも私に気が有るのかと勘違いしてしまいそうだった。
柑橘系の香りに誘われ流されてしまいそうにはなったが、なんとか本能に勝つことができた。
出来るなら私も抱きしめ喜びを分かち合いたかったが、フィンコックと距離をとった。
離れないと離れられなくなる…。
離れていくフィンコック、香りだけを残して…。
目を瞑り一旦自分を落ち着かせようとしたいると、フィンコックの体勢が崩れ始めた。
咄嗟に受け止めるも、違和感を感じた。
「魔力が…」
試験を終えてから魔法授業はなかったし、本人からも試験から今まで魔法はしていなかったと聞いた。
それなのに、魔力が回復していない。
それどころか、試験の時より魔力量が減っている…?
何かがおかしい。
もしや健康に問題が?
魔力回路に何か…。
翌日フィンコックを見つけた。
数いる生徒の中でも黒髪のフィンコックは目立っていた。
もしフィンコックの髪色が違ったとしても私は見つけ出せる自信があった…。
「フィンコック」
「ギノフォード先生っ」
笑顔で振り向く彼…。
彼に…名前を呼んでほしい。
「迷惑じゃないですか?」
突然何を?
もしや、初日の訓練厳しかったのか?
私はEクラスの魔力の認識が甘かった…。
「訓練辞めますか?」
魔法が好きだと言った生徒を私は追い詰めてしまった…。
彼にそんな苦しそうな表情をさせているのは私だ。
「そんな泣きそうな顔しないでください。…魔法は好きですか?」
「………はぃ」
嫌いになら無くて良かった。
涙を耐える姿は心臓を締め付けられた。
「訓練は無理にしなくて良いですよ、したい時に声掛けてくださいね。」
私から完全に失くすことが出来なかった。
少しでも希望を…。
未練を残しながら離れると服の裾が何かに引っ掛かった。
振り向けばフィンコックが掴み、潤んだ瞳で私を見上げる。
娼婦の手練手管のように普段では引っ掛からないが、相手がフィンコックだと…。
そのまま頬に触れ可愛らしい唇に触れたかった。
「きょっ、今日…はダメ?ですか?」
フィンコックから誘われた…魔法の訓練に…。
そんな意味ではないと分かりながら喜ぶ私がいた。
約束の場所、秘密の訓練、二人きり。
決して、この感情を認めてはいけない。
私は教師、彼は生徒。
油断するな。
訓練は昨日と同じにも関わらず、フィンコックは昨日よりも苦戦しているように見える。
ふざけているわけでも手を抜いているわけでもない。
魔力の使い方に問題が?
「焦ってはいけませんよ、今まで連日魔力を使いきるなんてしたことないんじゃないですか?」
そうはいっても、納得していない表情だ。
幼い子供のように可愛いのだが、本人はそれどころではないのだろう。
私が何をいっても慰めにしか聞こえてないのだろうな。
「…僕は…Fクラスでは普通ですか?」
彼の質問に悩んでしまった。
「そうですね…平均ですかね。」
私は嘘を付いた。
必死に努力している人間に、真実を伝えることが出来なかった。
実際フィンコックの魔力量は、Fクラスの平均以下だ。
「今日は、ここまでにしましょう。」
「ぇっ……はぃ……。」
明らかに落ち込む姿に、私の魔力を分けてやりたいと本気で願ってしまった。
涙を堪えるフィンコックに、もどかしさを感じる。
魔法を好きだと言った彼に何故こんなにも魔力がないのだろうか…。
努力している人間は報われてほしい。
私は魔法の苦手な者を知るために教師になった。
魔法省ではなく、教師を選んだのはこの為なのかもしれない。
魔力量の少ない者の魔力の上げ方を研究する。
少し興味が湧いた。
フィンコックは体調面などは問題なく見える、だが内部…コアや魔力回路に問題があるのかもしれない。
フィンコックの魔力量が著しく低い今日は、魔法が得意な私ですら彼の魔力を感知するのが難しい。
それほどフィンコックの問題は深刻だった。
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