【完結】全ては王子の手のひらの上

天冨 七緒

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本題

夢…ではなかった

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「んわっ」

 高所から落下する恐怖に身体がびくんと反応し、そこで目覚めた。

「…怖かった…」

 天井が目に入り、落下したのが夢だったことを知る。
 
「お…お嬢様…お目覚めですか?」

 人の声で私はテレビでも付けっぱなしで眠ってしまったと思い、リモコンに手を伸ばしテレビを消さなければと寝ぼけながら探す。

「お嬢様っ」

 突然手を掴まれ、一気に目が覚めた。

「なっ何?」

「お嬢様ぁ良かったです…旦那様をお呼びしますね」

 何が起きたのか理解する暇もなく、女性は部屋を出ていった。

「誰?」

 起き上がり走り去る女性を見送るも、目覚めた部屋が私の部屋ではない見知らぬ場所だという事を知る。

「…ここ、何処?」

 広い空間に高級感のある家具、和風…日本風ではなく洋風な部屋。

「私の…部屋じゃない」

 呆然としながらベッドから立ち上がると、大きな足音が近づいてくる気配を感じる。
 急いで出ていった女性は扉を閉め忘れていたので音がダイレクトに伝わり、無視することも出来ず誰も現れていない扉を眺め続けた。

「スカーレット」

 勢いよく現れたのはとてもダンディーな男性。私の父親は五十二歳だったがそれよりも若そう。
 私のいるベッドまで歩みより突然抱き締められた。

「えっ?えっ?えっ?えっ?」

「三日も目覚めないから心配したぞ?もう体は平気なのか?」

 これはどういう状況?私はまだ夢の中なの?
 だけど、強く抱き締められた感触はハッキリとしている。

「…どうしたスカーレット?スカーレット?」

「えっ…どなたですか?」

 急いでやってきた者達は、私の第一声に驚いていた。

「…私が分からないのか?」

 男性は真剣な眼差しで尋ね、私は静かに頷いた。

「私が視てみましょう」

 共に部屋に現れた初老の男性は医師を名乗り、私の健康状態に質問しその後私自身についての質問に変わる。
 
「名前は分かりますか?」
 
 本当の事を話すべきか悩んだ末、私は応えずに首を振った。

「そんなっ」

 声をあげ口元を押さえ私を見つめる姿がある。

「健康状態は問題ありませんね…記憶の方は三日間眠っていた為の混濁…であれば良いのですが、私にもこればかりは分かりません。いずれ記憶が戻る可能性もありますが戻らない可能性もあります。それに、戻るまでどのくらいかかるのかも不明です」

 医師は躊躇いながら真実を告げた。

「…そうか。だが、目覚めてくれただけで十分だ。スカーレット」

 暗い雰囲気が支配する部屋で私を抱き締めた男性だけは微笑み私の頭を撫でた。
 それから私は私について教えられた。
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