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オマケの続き
結婚式
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身構えていた王宮への訪問も終え私は結婚式の準備に集中する。
出来上がったドレスはとても品のあるもので、文句の付けようがなかった。
そして結婚式当日。
その日は朝から準備を行う。普段のパーティーでも準備は念入りにするのだが、結婚しかとなれば私というよりも使用人達の気合いが違う。
私はされるがままで、完成するまで身を預けた。
コンコンコン
扉をノックされ使用人が対応すると、ある日の光景を思い出した。
使用人を眺めていると、彼女の手には箱がある。
「奥様、宝石をお持ちいたしました。お付けいたしますね」
以前オルフレッドから贈られた宝石を一つ一つ身に付けていく。
結婚式の為に新しいものを準備するとオルフレッドは言ったのだが、私はこれが良かった。
「…準備が整いました」
使用人の言葉で花嫁が完成し、準備が整ったことを知らされたお父様とお母様が入ってきた。
「ヴァレリア、綺麗だ」
「本当に綺麗よ」
二人は私を見るなり褒めてくれる。
「ありがとうございます」
今日はまだオルフレッドに会っていない。
結婚式当日は夫婦が対面するのは教会に入ってから、それまでは会ってはいけない仕来たりとなっている。なのでオルフレッドは別の馬車で既に教会に向かっていた。花嫁を教会までエスコートするのは父親の役目らしい。移動は両親と同じ馬車に乗り、目撃した平民は誰の結婚なのか興味津々で馬車を覗き見る。教会の前で馬車は停車し、お父様にエスコートを受けながら歩いていく。注目されることに恥ずかしいと感じつつそれ以上に緊張しているので、転ばないように気を付けながら歩いていく。
「何があってもヴァレリアは私達の子供だよ」
転ばないようにと足下ばかり向いていた私にお父様が囁く。目線を上げお父様を見ると、優しく微笑み「大丈夫」と励ましてくれた。その言葉で私は貴族らしくない姿勢でいたことを知る。
「はい」
私は目線を上げ胸を張ると、今までの不安が嘘のように無くなった。
教会の扉が開き盛大な拍手を受けながら、お父様と共に愛しい人が待つ場へ向かう。従来より遅れて出してしまった招待状にも関わらず、王都一の広さを持つ教会は貴族で埋め尽くされていた。そして、オルフレッドの前まで辿り着くと、私はお父様から彼へ受け渡される。
神の前で愛を誓い、式は滞りなく進む。
本来はここで、結婚証明の書類にサインするのが仕来たりだが私達は既に行っているので彼らの前を通りすぎ屋敷に帰宅する。
だが戻って終わりではなく、そこからパーティーの主催者として準備が始まる。会場内は既に使用人により整っているが、夫婦は衣裳を着替え私に至っては髪型と化粧まで手直しされていく。
招待客は教会から馬車で直接公爵家に訪れ、用意された会場に待機している。式からパーティーは強制ではないが、多くの者は大抵参加するので軽食も用意されている。
ランクーベ公爵家の料理人は元来優秀だが、「呪い」を解明したヴァレリアの為に結婚式の数ヵ月前から準備をしていたのは本人には秘密の事。「どの結婚式よりも素敵なものにして見せる」と公爵家に仕える使用人達は気合いが入っていた。それは、過去に行われたランクーベ公爵の初めての結婚式を越えるものを目指している。
パーティーが始まり、二人の幸福な姿を横目に使用人達は貴族に対し粗相がないよう細心の注意を払い接客していく。善からぬ事を考えていそうな貴族には使用人同士が合図をして目を離さなかった。その事もありパーティーは問題もなく進み、ランクーベ公爵夫妻は貴族の誰もが認める夫婦となった。
その証拠に、挨拶をすると誰もが私を「ランクーベ公爵夫人」と呼んだ。本格的なパーティーの主催者がこれほどまで忙しいとは知らず、一歩進んでは挨拶一歩進んでは別の人に挨拶を繰り返す。私も大変だが、オルフレッドは大丈夫だろうか様子を伺うも、なんの問題もなく妖艶さを醸し出していた。間近で夫人や令嬢からねっとりとした視線を受けても彼は動じることなく流していく。
私は喉が枯れるのではないか?と思うくらい挨拶を交わし会場内を回る。
そしてパーティーは終わり招待客を見送り全てから解放され二人きりの時間になる。
「ヴァレリア疲れましたか?」
「ぁっいえ…はぃ…」
パーティーでは本当に疲れていて、侍女により念入りに身体を洗われマッサージまで施されこのまま眠ってしまいそうだったが、私の眠気は消えている。
隣には足が触れてしまう程の距離にオルフレッドが座り、確認できない程の至近距離に彼を感じている。今の私は心臓が爆発してしまうんじゃないかと思う程緊張している…なぜなら私は今、夫婦の寝室のベッドに腰掛け呼吸するのも普段通りには出来ず、床を見つめこの後の展開をない知識から振り絞っている。私はこれから初めてオルフレッドとベッドを共にしようとしている。
この後はきっと…
「ヴァレリア…こっち向いて」
私が向くよりも先に、顎を取られ優しく誘導される。
目の前にはオルフレッドの顔が…こういう時は目を瞑るのよね…目を瞑る…目を…瞑る…
【完】
オマケから続き長々とお付き合いくださりありがとうございます。
オマケの続きの番外編が…あったり…なかったり…あります…一気に行くのでお気をつけください。
出来上がったドレスはとても品のあるもので、文句の付けようがなかった。
そして結婚式当日。
その日は朝から準備を行う。普段のパーティーでも準備は念入りにするのだが、結婚しかとなれば私というよりも使用人達の気合いが違う。
私はされるがままで、完成するまで身を預けた。
コンコンコン
扉をノックされ使用人が対応すると、ある日の光景を思い出した。
使用人を眺めていると、彼女の手には箱がある。
「奥様、宝石をお持ちいたしました。お付けいたしますね」
以前オルフレッドから贈られた宝石を一つ一つ身に付けていく。
結婚式の為に新しいものを準備するとオルフレッドは言ったのだが、私はこれが良かった。
「…準備が整いました」
使用人の言葉で花嫁が完成し、準備が整ったことを知らされたお父様とお母様が入ってきた。
「ヴァレリア、綺麗だ」
「本当に綺麗よ」
二人は私を見るなり褒めてくれる。
「ありがとうございます」
今日はまだオルフレッドに会っていない。
結婚式当日は夫婦が対面するのは教会に入ってから、それまでは会ってはいけない仕来たりとなっている。なのでオルフレッドは別の馬車で既に教会に向かっていた。花嫁を教会までエスコートするのは父親の役目らしい。移動は両親と同じ馬車に乗り、目撃した平民は誰の結婚なのか興味津々で馬車を覗き見る。教会の前で馬車は停車し、お父様にエスコートを受けながら歩いていく。注目されることに恥ずかしいと感じつつそれ以上に緊張しているので、転ばないように気を付けながら歩いていく。
「何があってもヴァレリアは私達の子供だよ」
転ばないようにと足下ばかり向いていた私にお父様が囁く。目線を上げお父様を見ると、優しく微笑み「大丈夫」と励ましてくれた。その言葉で私は貴族らしくない姿勢でいたことを知る。
「はい」
私は目線を上げ胸を張ると、今までの不安が嘘のように無くなった。
教会の扉が開き盛大な拍手を受けながら、お父様と共に愛しい人が待つ場へ向かう。従来より遅れて出してしまった招待状にも関わらず、王都一の広さを持つ教会は貴族で埋め尽くされていた。そして、オルフレッドの前まで辿り着くと、私はお父様から彼へ受け渡される。
神の前で愛を誓い、式は滞りなく進む。
本来はここで、結婚証明の書類にサインするのが仕来たりだが私達は既に行っているので彼らの前を通りすぎ屋敷に帰宅する。
だが戻って終わりではなく、そこからパーティーの主催者として準備が始まる。会場内は既に使用人により整っているが、夫婦は衣裳を着替え私に至っては髪型と化粧まで手直しされていく。
招待客は教会から馬車で直接公爵家に訪れ、用意された会場に待機している。式からパーティーは強制ではないが、多くの者は大抵参加するので軽食も用意されている。
ランクーベ公爵家の料理人は元来優秀だが、「呪い」を解明したヴァレリアの為に結婚式の数ヵ月前から準備をしていたのは本人には秘密の事。「どの結婚式よりも素敵なものにして見せる」と公爵家に仕える使用人達は気合いが入っていた。それは、過去に行われたランクーベ公爵の初めての結婚式を越えるものを目指している。
パーティーが始まり、二人の幸福な姿を横目に使用人達は貴族に対し粗相がないよう細心の注意を払い接客していく。善からぬ事を考えていそうな貴族には使用人同士が合図をして目を離さなかった。その事もありパーティーは問題もなく進み、ランクーベ公爵夫妻は貴族の誰もが認める夫婦となった。
その証拠に、挨拶をすると誰もが私を「ランクーベ公爵夫人」と呼んだ。本格的なパーティーの主催者がこれほどまで忙しいとは知らず、一歩進んでは挨拶一歩進んでは別の人に挨拶を繰り返す。私も大変だが、オルフレッドは大丈夫だろうか様子を伺うも、なんの問題もなく妖艶さを醸し出していた。間近で夫人や令嬢からねっとりとした視線を受けても彼は動じることなく流していく。
私は喉が枯れるのではないか?と思うくらい挨拶を交わし会場内を回る。
そしてパーティーは終わり招待客を見送り全てから解放され二人きりの時間になる。
「ヴァレリア疲れましたか?」
「ぁっいえ…はぃ…」
パーティーでは本当に疲れていて、侍女により念入りに身体を洗われマッサージまで施されこのまま眠ってしまいそうだったが、私の眠気は消えている。
隣には足が触れてしまう程の距離にオルフレッドが座り、確認できない程の至近距離に彼を感じている。今の私は心臓が爆発してしまうんじゃないかと思う程緊張している…なぜなら私は今、夫婦の寝室のベッドに腰掛け呼吸するのも普段通りには出来ず、床を見つめこの後の展開をない知識から振り絞っている。私はこれから初めてオルフレッドとベッドを共にしようとしている。
この後はきっと…
「ヴァレリア…こっち向いて」
私が向くよりも先に、顎を取られ優しく誘導される。
目の前にはオルフレッドの顔が…こういう時は目を瞑るのよね…目を瞑る…目を…瞑る…
【完】
オマケから続き長々とお付き合いくださりありがとうございます。
オマケの続きの番外編が…あったり…なかったり…あります…一気に行くのでお気をつけください。
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