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序章
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目覚めると見知らぬ部屋で眠っていた。
辺りを見渡し状況を確認すると、そこは田舎というより森の中だ。
「あっエレナ、起きたの?」
部屋に入ってきた綺麗な女性が私に向かって声をかける。
エレナ?
私と確りと目を合わせながら言葉を発する女性に見覚えはなく、この部屋にも馴染みがない。
女性の部屋というには簡素なもので、自分の姿を確認できるような鏡すら見つけられない。
「今日は漸く晴れたからお父さんと森に行ってくるよ、エレナは庭の野菜収穫しておいて…それと誰か来たら隠れるか、何かあれば大声をあげてお父さんやお母さんを呼ぶのよ。それでもダメなら逃げなさい」
「…はぃ」
女性に返事をしたが、頭の中を整理するのに必死だった。
私は昨日、夜遅くまでゲームをして布団に入ったはず…
私はまだ眠っていて、これは夢なのだろうか?
物に触れれば感触はあり、意識もハッキリしているように思え夢にしては鮮明だ。
立ち上がり何か情報がないか他の部屋も確認したが、手掛かりになりそうなものはなく諦めて外に出た。
扉を開けた瞬間、肌で風や温度を感じる。
これは…現実なんだ。
外に出て家の回りを一周するも、なにも見つけられなかった。
小屋にしか見えない家と小さい畑があるだけ。
そして周囲は木々に囲まれ、他の家があるのかさえ判断できない。
あの女性は森へ行くと言ったが、この家がある場所も充分森の中と言える。
私はどうするべきか悩んだが、一応あの女性の指示通り野菜を収穫することにする。
ザァザァザァザァ…
「雨?」
空を見上げても快晴で、雨は降っていない。
なのに、雨が降っているような音は続いている。
「木でも伐採しているの?」
ザザザザザザザガザガザガサガザ
音は次第に大きくなり、更には揺れを感じた。
「何っ地震?」
咄嗟に頭を抱えながら屈み、揺れが収まるのを待った。
「…止まった?」
体感としては二十秒ほど揺れていたように思えた。
周囲を見渡すも、何かが崩れた形跡はない。
簡単に壊れそうだと感じていた小屋も無事だ。
「お父さんと森へ行ってくるよ」
ふと、あの女性の言葉を思い出した。
もしかしたらあの女性が地震に巻き込まれたかもしれない…嫌な予感がして足が勝手に森の中へ入って行った。
歩いても歩いても木々に覆われ、変わらない風景が続く。
かなり歩いてから気付いたが、何の目印もなく闇雲に歩いてしまった。
これでは迷子になってもおかしくはない、あの小屋にも帰れなくなるのでは?と不安に襲われた。
よく分からない森の中を探し続けるのと、女の人を探すことを天秤に掛け悩んだ末女の人を探すことにした。
小屋にいても森の中にいても一人と言うことには変わらず、今は誰かと居たかった。
「何も起きてないと良いけど…」
不安なせいか、独り言が多くなる。
森が終わるのか光が差し込んでいるように見えたので、無意識に早足になる。
光の先へ行けば、あの女性と旦那さんを見つける事が出来るはず。
私は不安を掻き消すように森を抜ける…
「…嘘」
私が目にした光景は予想とは違う拓けた場所だった。
人工的にではなく、自然に土が露出している。二十メートル先まで不自然に木がなくなっていた。ここには初めてきた場所だが、きっとこの辺り一帯には木があったんだろうと推測できる。
専門的な知識もない私だが、ここで何が起きたのか大方予想ができた。
きっと土砂崩れが起きたのだろうと思わせた。
そして、先ほどの轟音は土砂が流れる音…
「…あっあの人は?」
大声で呼んであの女性を探さなければと思うも、名前が分からない。
あの人と私の関係って…あの女性の口調からして多分だが…親子…なんだよね?
なら、呼ぶとしたら…
「…ぉ…おか…さん…おかあさん…お母さん…」
初めは躊躇いながら呼んでいたが、この状況で恥ずかしいなんて思ってもいられず大声で何度も呼び続けた。
いくら呼んでも帰ってくる返事はなかった。
足場に気を付けながら手掛かりになるような物はないかと探すも、見つけられない。
ガサガサガサ
誰かが歩いてくる気配を感じた。
お母さん?
辺りを見渡し状況を確認すると、そこは田舎というより森の中だ。
「あっエレナ、起きたの?」
部屋に入ってきた綺麗な女性が私に向かって声をかける。
エレナ?
私と確りと目を合わせながら言葉を発する女性に見覚えはなく、この部屋にも馴染みがない。
女性の部屋というには簡素なもので、自分の姿を確認できるような鏡すら見つけられない。
「今日は漸く晴れたからお父さんと森に行ってくるよ、エレナは庭の野菜収穫しておいて…それと誰か来たら隠れるか、何かあれば大声をあげてお父さんやお母さんを呼ぶのよ。それでもダメなら逃げなさい」
「…はぃ」
女性に返事をしたが、頭の中を整理するのに必死だった。
私は昨日、夜遅くまでゲームをして布団に入ったはず…
私はまだ眠っていて、これは夢なのだろうか?
物に触れれば感触はあり、意識もハッキリしているように思え夢にしては鮮明だ。
立ち上がり何か情報がないか他の部屋も確認したが、手掛かりになりそうなものはなく諦めて外に出た。
扉を開けた瞬間、肌で風や温度を感じる。
これは…現実なんだ。
外に出て家の回りを一周するも、なにも見つけられなかった。
小屋にしか見えない家と小さい畑があるだけ。
そして周囲は木々に囲まれ、他の家があるのかさえ判断できない。
あの女性は森へ行くと言ったが、この家がある場所も充分森の中と言える。
私はどうするべきか悩んだが、一応あの女性の指示通り野菜を収穫することにする。
ザァザァザァザァ…
「雨?」
空を見上げても快晴で、雨は降っていない。
なのに、雨が降っているような音は続いている。
「木でも伐採しているの?」
ザザザザザザザガザガザガサガザ
音は次第に大きくなり、更には揺れを感じた。
「何っ地震?」
咄嗟に頭を抱えながら屈み、揺れが収まるのを待った。
「…止まった?」
体感としては二十秒ほど揺れていたように思えた。
周囲を見渡すも、何かが崩れた形跡はない。
簡単に壊れそうだと感じていた小屋も無事だ。
「お父さんと森へ行ってくるよ」
ふと、あの女性の言葉を思い出した。
もしかしたらあの女性が地震に巻き込まれたかもしれない…嫌な予感がして足が勝手に森の中へ入って行った。
歩いても歩いても木々に覆われ、変わらない風景が続く。
かなり歩いてから気付いたが、何の目印もなく闇雲に歩いてしまった。
これでは迷子になってもおかしくはない、あの小屋にも帰れなくなるのでは?と不安に襲われた。
よく分からない森の中を探し続けるのと、女の人を探すことを天秤に掛け悩んだ末女の人を探すことにした。
小屋にいても森の中にいても一人と言うことには変わらず、今は誰かと居たかった。
「何も起きてないと良いけど…」
不安なせいか、独り言が多くなる。
森が終わるのか光が差し込んでいるように見えたので、無意識に早足になる。
光の先へ行けば、あの女性と旦那さんを見つける事が出来るはず。
私は不安を掻き消すように森を抜ける…
「…嘘」
私が目にした光景は予想とは違う拓けた場所だった。
人工的にではなく、自然に土が露出している。二十メートル先まで不自然に木がなくなっていた。ここには初めてきた場所だが、きっとこの辺り一帯には木があったんだろうと推測できる。
専門的な知識もない私だが、ここで何が起きたのか大方予想ができた。
きっと土砂崩れが起きたのだろうと思わせた。
そして、先ほどの轟音は土砂が流れる音…
「…あっあの人は?」
大声で呼んであの女性を探さなければと思うも、名前が分からない。
あの人と私の関係って…あの女性の口調からして多分だが…親子…なんだよね?
なら、呼ぶとしたら…
「…ぉ…おか…さん…おかあさん…お母さん…」
初めは躊躇いながら呼んでいたが、この状況で恥ずかしいなんて思ってもいられず大声で何度も呼び続けた。
いくら呼んでも帰ってくる返事はなかった。
足場に気を付けながら手掛かりになるような物はないかと探すも、見つけられない。
ガサガサガサ
誰かが歩いてくる気配を感じた。
お母さん?
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