【完結】ホラー乙女ゲームに転生しちゃった…

天冨 七緒

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折れるフラグは折ります

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多くの生徒には誤解されたままだが、サリモンの婚約者には誤解が解けたと思っている私は少しだけ気が楽になっていた。
そして、新たなイベントがすぐそこまでやって来ている。
それは、長期休暇に入る前の試験イベント。

試験といえば図書館イベント。

ここは宰相の息子、マシューズ・カントルークの出会いの場だ。
付け焼き刃の知識しかないヒロインは、誰かに頼るのは相手の迷惑になると考え一人で勉強していた。そんな姿を遠目から見ていた彼の方から声をかけ、彼女に勉強を教える。ヒロインは彼に応えるように試験に望み好成績を取り彼の好感度を上げる。

出会い場を知っているので私は誰にも頼らず一人、男爵家で勉強に打ち込む選択をした。
今現在意図せずゲーム通りに攻略対象との接触を果たしてしまっているので、躊躇いがちになっている。
乙女ゲームを元にした世界に転生・憑依した人間が好き勝手して幸せになった話を私は知らない。ましてや最近の流行りは「ざまぁ」だ。ヒロインになった女が幸せを掴んだ話を久しく読んでいない。なので、どうしても慎重にならざるを得ない。

私は「ざまぁ」に出てくるようなヒロインにはならないと自分を戒め、真面目に平穏に暮らし長生きすると決めている。
これ以上攻略対象と接触する気はない、特に婚約者がいる相手には尚更だ。

私は試験日まで放課後は居残りなどすることなく、男爵家で勉強に励んだ。その甲斐もあり、マシューズとの接触もなく試験当日までやってこれた。
異世界での始めての試験に不安はあったが、私なりに全力で挑んだ。その結果、五十位以内に入ることが出来たのは上々ではないだろうか。
上位過ぎると優秀なマシューズの好感度が上がってしまい、下位過ぎると男爵に迷惑が掛かり更には攻略対象であるジャック先生が登場する。
なので今回の試験結果は丁度良い成績だと自分に言い聞かせた。

先生には婚約者がいないのでそこまて問題はないのかもしれないが、恋愛は学園を卒業し乙女ゲームから解放されてからにしたい。
学園にいる間は強制力のようなものが働き、私に対し本人の意思とは別に大した好意がなくとも恋愛まで発展してしまい、卒業後ゲームから解き放たれ瞬間冷静になり私に一切興味が無くなったと言われたら哀れで虚しすぎる。
恋愛するなら純粋な状態で、私自身強制力ではないんだと安心したい。

なので、今折れるフラグは折っておく。
他の攻略対象とは出会ってしまったが、マシューズだけは回避できる。
このまま出会いイベントの試験が終われば、マシューズルートには行かないはず…
試験も無事に終わり、長期休暇となる。

学園にいる間はサリモンに護衛されるが、屋敷に戻れば騎士団が男爵家の護衛となる。
休暇中私が屋敷から出なければ攻略対象と会うことはない。

やっと乙女ゲームを忘れ心身ともに休むことが出来る。
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