【完結】ホラー乙女ゲームに転生しちゃった…

天冨 七緒

文字の大きさ
52 / 52

本当は怖い乙女ゲームの世界

しおりを挟む
「あの方も私達の事に気付きそうになったのですが…」

「んふ、間に合いませんでしたね」

双子は遊びの結果を集められた人達に報告する。

「…あの匂い袋を渡したのはシェナね?」

クレアベールは狩猟大会でクリストフが聖女に匂袋を渡したと知り、急いで聖女が手にしていた匂袋を払い落とし、態々「拾うな」と言った。

「はいっ」

シェナは満面の笑みで返事をする。

「折角私が払い落としたというのに…」

「私が拾い、確りとお渡ししましたっ」

シェナは「クレアベール様のミスを私が取り返しましたよ」とでも言いたそうに自信満々な表情を見せる。

「…匂袋ですか?」

クレアベールとシェナの会話を聞いていたエレンターナが疑問を口にした。

「狩猟大会での匂袋です」

「匂袋がどうかなさったのですか?」

匂袋とは狩猟大会で、男性が女性に贈る事は珍しくない。

「…クリスがあの方に渡した匂袋ですが、あれは魔獣避けではなく誘き寄せるためのものです」

「まぁ」

「では、あの獣が現れたのって…」

「クリスもあんな大きなものが現れるとは思っていませんでしたが、望んでいたのは確かです。万が一を考え貴方達には騎士を配置し、更にはあの方以外の周囲には騎士の数をお伝えしていた人数よりも増やしておりました」

「そうなんですね。都合よくあの方に獣が向かったのには違和感がありましたが、そういうことだったのですね」

クリストフ王子が婚約者のクレアベールを大事に思っているのは、ここにいる人間は誰もが知っていた。喩え彼が他の令嬢と共にいたとしても、そこには何らかの意図がありクレアベールを裏切る行動でないのは説明されなくとも理解している。
誰も直接クリストフ王子から今後の計画を説明されなくとも、エレナ・ワンダーソンとの関係を疑うことはなかった。
皆、思考を巡らせ過去の文献から王子が聖女を食すのではないかと導いていた。
二十年前の聖女の時には、彼女達の父親も参加している。
当時の効果を正確には証明できないが、食した人間達は健康であり家門も繁栄しているし魔力の高い者が生まれているのも確かだ。寿命の方はこれから証明される。

今まで聖女の秘密に近付いた貴族はいない。王族や高位貴族が聖女を探しているのはきっと、「聖女は偉大な能力を秘めているに違いないからだ」という噂だけが貴族達に広まった。
貴族であっても過去の聖女について厳密に伝えられることはなく、それはこれからもだ。
まさか二十年前確保した聖女は、初日に王宮で高位貴族に食べられたなんて事実を国民に大々的に公表できるものではない。
表向きは王宮で国民のために祈り続け、病に倒れるも平和を願っていた…とだけ伝え国民に姿を見せることはなかった。
そして、今回も誰にも姿を見せることなく王宮から祈りを捧げていると伝えられることが決まったいる。

それがトルニダード王国の聖女。
他国まで行き、聖女を探すことはしないし無理強いもしない。
国内で発見し、本人の意思を確認してから行う…

「あんなに何度もクレアベール様が「隣国へ」と仰ったのに、留まることを選択するなんて理解できませんわ」

「本当です。クレアベール様にあんなに心配されて羨ましいですわ」

「厳しい言葉をくださる方がどれ程大事なのか、あの方は全く理解していないのね」

「クレアベール様の思いを踏みにじるなんて…考えられません」

四人は愛しのクレアベールを信じないなんて、あり得ないと言いたげだった。

「…貴方達が、令嬢の耳を塞いでいたのでしょう。全く…」

クレアベールは聖女の為にと言う訳ではないが、トルニダード王国の聖女の扱いには疑問があったので、あのような運命から逃れるように必死に助言していたつもりだ。
それを全く聞き入れなかったのは聖女自身。
ギリギリまで彼女を隣国へ行くように促すも、クレアベールの言葉は聖女に届く事はなかった。

結果、聖女のエレナ・ワンダーソンは選ばれた高位貴族に召し上がられ受け入れられた。

五人は聖女の人生をまるで観劇でもしていたかのように受け止め、優雅に紅茶を口にした。




【完】
しおりを挟む
感想 15

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(15件)

mikan
2025.03.25 mikan

ギャー。怖かった!

2025.03.25 天冨 七緒

ありがとうございます。
嬉しい反応です。
もっと、頑張ります。

解除
mikan
2024.07.05 mikan

キャー😨さんざん忠告されたのに。こうなってしまったか💨

2025.03.24 天冨 七緒

こうなってしまいました。
人の忠告を悪意前提と決めつけてしまった結果です。
乙女ゲームモノを書いていると、作者自身誰を信じて良いのか分からなくなります…
怖い世界だ

解除
k
2023.04.23 k

最初の「エンド」から、あ~これはグロ系のホラーなんだなー、と推測していたのですが、最後の最後まで読んで推測は正しかったかー、というのが素直な感想ですね。

こういうグロ系でゲームが終わる作品というのは、エロゲーで体験したことがあるんですよねー。
究極のヤンデレ作品で、ツンデレから始まり執着が過ぎるとヤンデレとなり、種を受入れ最後は私だけのモノ(浮気防止)ってことで殺されちゃう作品でした。エロかったから印象に残った作品でしたね。

確かに最後のシーンが晩餐会で終わるってのは、一見するとわからないですねー。
設定資料集とか裏話とか知らないと、ホラー乙女ゲームじゃなかったのー?ってなるでしょうねー。
転生者だったのだから最後は、主人公が魂となって、裏話を知って憤慨する場面があっても面白かったと思いました。
そうすると作品の主人公に感情移入して読んでるので、ちょっとスッキリすると思います。

2025.03.24 天冨 七緒

あっ、バレていましたか…

そんな作品があったんですね、勉強不足です

最後の詰めが甘かったようで…
とても参考になる感想でした。
感想を頂けて大変感謝しております。

解除

あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど

紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。 慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。 なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。 氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。 そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。 「……俺にかけた魅了魔法を解け」 私、そんな魔法かけてないんですけど!? 穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。 まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。 人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い” 異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。 ※タイトルのシーンは7話辺りからになります。 ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。 ※カクヨム様にも投稿しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。