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本当は怖い乙女ゲームの世界
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「あの方も私達の事に気付きそうになったのですが…」
「んふ、間に合いませんでしたね」
双子は遊びの結果を集められた人達に報告する。
「…あの匂い袋を渡したのはシェナね?」
クレアベールは狩猟大会でクリストフが聖女に匂袋を渡したと知り、急いで聖女が手にしていた匂袋を払い落とし、態々「拾うな」と言った。
「はいっ」
シェナは満面の笑みで返事をする。
「折角私が払い落としたというのに…」
「私が拾い、確りとお渡ししましたっ」
シェナは「クレアベール様のミスを私が取り返しましたよ」とでも言いたそうに自信満々な表情を見せる。
「…匂袋ですか?」
クレアベールとシェナの会話を聞いていたエレンターナが疑問を口にした。
「狩猟大会での匂袋です」
「匂袋がどうかなさったのですか?」
匂袋とは狩猟大会で、男性が女性に贈る事は珍しくない。
「…クリスがあの方に渡した匂袋ですが、あれは魔獣避けではなく誘き寄せるためのものです」
「まぁ」
「では、あの獣が現れたのって…」
「クリスもあんな大きなものが現れるとは思っていませんでしたが、望んでいたのは確かです。万が一を考え貴方達には騎士を配置し、更にはあの方以外の周囲には騎士の数をお伝えしていた人数よりも増やしておりました」
「そうなんですね。都合よくあの方に獣が向かったのには違和感がありましたが、そういうことだったのですね」
クリストフ王子が婚約者のクレアベールを大事に思っているのは、ここにいる人間は誰もが知っていた。喩え彼が他の令嬢と共にいたとしても、そこには何らかの意図がありクレアベールを裏切る行動でないのは説明されなくとも理解している。
誰も直接クリストフ王子から今後の計画を説明されなくとも、エレナ・ワンダーソンとの関係を疑うことはなかった。
皆、思考を巡らせ過去の文献から王子が聖女を食すのではないかと導いていた。
二十年前の聖女の時には、彼女達の父親も参加している。
当時の効果を正確には証明できないが、食した人間達は健康であり家門も繁栄しているし魔力の高い者が生まれているのも確かだ。寿命の方はこれから証明される。
今まで聖女の秘密に近付いた貴族はいない。王族や高位貴族が聖女を探しているのはきっと、「聖女は偉大な能力を秘めているに違いないからだ」という噂だけが貴族達に広まった。
貴族であっても過去の聖女について厳密に伝えられることはなく、それはこれからもだ。
まさか二十年前確保した聖女は、初日に王宮で高位貴族に食べられたなんて事実を国民に大々的に公表できるものではない。
表向きは王宮で国民のために祈り続け、病に倒れるも平和を願っていた…とだけ伝え国民に姿を見せることはなかった。
そして、今回も誰にも姿を見せることなく王宮から祈りを捧げていると伝えられることが決まったいる。
それがトルニダード王国の聖女。
他国まで行き、聖女を探すことはしないし無理強いもしない。
国内で発見し、本人の意思を確認してから行う…
「あんなに何度もクレアベール様が「隣国へ」と仰ったのに、留まることを選択するなんて理解できませんわ」
「本当です。クレアベール様にあんなに心配されて羨ましいですわ」
「厳しい言葉をくださる方がどれ程大事なのか、あの方は全く理解していないのね」
「クレアベール様の思いを踏みにじるなんて…考えられません」
四人は愛しのクレアベールを信じないなんて、あり得ないと言いたげだった。
「…貴方達が、令嬢の耳を塞いでいたのでしょう。全く…」
クレアベールは聖女の為にと言う訳ではないが、トルニダード王国の聖女の扱いには疑問があったので、あのような運命から逃れるように必死に助言していたつもりだ。
それを全く聞き入れなかったのは聖女自身。
ギリギリまで彼女を隣国へ行くように促すも、クレアベールの言葉は聖女に届く事はなかった。
結果、聖女のエレナ・ワンダーソンは選ばれた高位貴族に召し上がられ受け入れられた。
五人は聖女の人生をまるで観劇でもしていたかのように受け止め、優雅に紅茶を口にした。
【完】
「んふ、間に合いませんでしたね」
双子は遊びの結果を集められた人達に報告する。
「…あの匂い袋を渡したのはシェナね?」
クレアベールは狩猟大会でクリストフが聖女に匂袋を渡したと知り、急いで聖女が手にしていた匂袋を払い落とし、態々「拾うな」と言った。
「はいっ」
シェナは満面の笑みで返事をする。
「折角私が払い落としたというのに…」
「私が拾い、確りとお渡ししましたっ」
シェナは「クレアベール様のミスを私が取り返しましたよ」とでも言いたそうに自信満々な表情を見せる。
「…匂袋ですか?」
クレアベールとシェナの会話を聞いていたエレンターナが疑問を口にした。
「狩猟大会での匂袋です」
「匂袋がどうかなさったのですか?」
匂袋とは狩猟大会で、男性が女性に贈る事は珍しくない。
「…クリスがあの方に渡した匂袋ですが、あれは魔獣避けではなく誘き寄せるためのものです」
「まぁ」
「では、あの獣が現れたのって…」
「クリスもあんな大きなものが現れるとは思っていませんでしたが、望んでいたのは確かです。万が一を考え貴方達には騎士を配置し、更にはあの方以外の周囲には騎士の数をお伝えしていた人数よりも増やしておりました」
「そうなんですね。都合よくあの方に獣が向かったのには違和感がありましたが、そういうことだったのですね」
クリストフ王子が婚約者のクレアベールを大事に思っているのは、ここにいる人間は誰もが知っていた。喩え彼が他の令嬢と共にいたとしても、そこには何らかの意図がありクレアベールを裏切る行動でないのは説明されなくとも理解している。
誰も直接クリストフ王子から今後の計画を説明されなくとも、エレナ・ワンダーソンとの関係を疑うことはなかった。
皆、思考を巡らせ過去の文献から王子が聖女を食すのではないかと導いていた。
二十年前の聖女の時には、彼女達の父親も参加している。
当時の効果を正確には証明できないが、食した人間達は健康であり家門も繁栄しているし魔力の高い者が生まれているのも確かだ。寿命の方はこれから証明される。
今まで聖女の秘密に近付いた貴族はいない。王族や高位貴族が聖女を探しているのはきっと、「聖女は偉大な能力を秘めているに違いないからだ」という噂だけが貴族達に広まった。
貴族であっても過去の聖女について厳密に伝えられることはなく、それはこれからもだ。
まさか二十年前確保した聖女は、初日に王宮で高位貴族に食べられたなんて事実を国民に大々的に公表できるものではない。
表向きは王宮で国民のために祈り続け、病に倒れるも平和を願っていた…とだけ伝え国民に姿を見せることはなかった。
そして、今回も誰にも姿を見せることなく王宮から祈りを捧げていると伝えられることが決まったいる。
それがトルニダード王国の聖女。
他国まで行き、聖女を探すことはしないし無理強いもしない。
国内で発見し、本人の意思を確認してから行う…
「あんなに何度もクレアベール様が「隣国へ」と仰ったのに、留まることを選択するなんて理解できませんわ」
「本当です。クレアベール様にあんなに心配されて羨ましいですわ」
「厳しい言葉をくださる方がどれ程大事なのか、あの方は全く理解していないのね」
「クレアベール様の思いを踏みにじるなんて…考えられません」
四人は愛しのクレアベールを信じないなんて、あり得ないと言いたげだった。
「…貴方達が、令嬢の耳を塞いでいたのでしょう。全く…」
クレアベールは聖女の為にと言う訳ではないが、トルニダード王国の聖女の扱いには疑問があったので、あのような運命から逃れるように必死に助言していたつもりだ。
それを全く聞き入れなかったのは聖女自身。
ギリギリまで彼女を隣国へ行くように促すも、クレアベールの言葉は聖女に届く事はなかった。
結果、聖女のエレナ・ワンダーソンは選ばれた高位貴族に召し上がられ受け入れられた。
五人は聖女の人生をまるで観劇でもしていたかのように受け止め、優雅に紅茶を口にした。
【完】
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