短編集

天冨 七緒

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私は悪女らしいです

私は悪女らしいです 雑談

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「スコット君、君と娘との婚約は解消させてもらうよ」

 商人の息子、スコット。
 平民だがスコットの父の商会は順調で今後は貴族との取引も視野に入れ、コールソン男爵令嬢と婚約していた。

「まっ待ってください、コールソン男爵。息子は確かに間違いました。若気の至りと言いますか、こいつはまだ学生です。一度の失敗で見限るのは早計ではないでしょうか? 」

「早計だと思いますか? 」

「男爵様、私はニーナが『メルヴィン王子との婚約は既に決定している』と話していたので協力したんです」

「だとしたら、尚更君に娘を預けられない」

「どうしてですか? 」

「君は間違った情報に踊らされ公爵令嬢を陥れる事に加担した。そのことは社交界で知らない者はいないだろう」

「これから挽回しますっ、男爵様、お願いします。私に機会をください」

 スコットは必死にコールソンに訴える。

「私からも頼みます。息子をどうか見捨てないでやってください」

 スコットの父も息子の失態を一緒に頭を下げる。

「君が騙されやすい人間と言うのが知れ渡ってしまった今、シュールマン商会の信用は失墜。貴族も倦厭するだろう」

「ですが、コールソン男爵家の商会と合併すれば……」

「そうなれば、共倒れだな」

「そんな……」

「シュールマン商会は事業拡大することなく、これまで通り続けた方が良いんじゃないのか? 」

「これまで通り……」

「それに、スコット君の口から娘に対しての謝罪もないようだしな」

「シンクレア、すまなかった。これからは誤情報に惑わされぬよう気を付ける。だから婚約解消なんて言わないでくれ」

 コールソンの言葉にスコットは婚約者のシンクレアに向き直る。

「スコット様、有益な情報をどこでどう扱おうが商人の自由です。私はスコット様のやり方を否定しません」

「本当か? なら……」

「ですが、私がスコットと今後取引をすることは無いでしょう」

「えっ……」

 シンクレアの言葉に一度は希望を抱くも、拒絶された事に愕然とする。

「ニーナ様に騙されたと仰いましたが、学園でニーナ様と仲睦まじい姿を何度も目撃しております。私、二人は恋人関係にあると思っておりましたのよ」

「それは違う」

「違うと否定されても、私はスコット様の言葉を信じる事が出来ないのです」

「こ……これから……信じてもらえるように努力する」

「いえ、結構です。私達の婚約は、両家の事業拡大でしたよね? シュールマン商会は貴族との繋がりが欲しい為の婚約。であれば、私は必要ないのではありませんか? 」

「それは……どういう意味? 」

「貴方はメルヴィン王子の婚約者であるニーナ様と恋人関係……親密なご友人ですもの。私などいなくても王族との繋がりがあるではありませんか」

「いや……二人は……」

「我が家はシュールマン商会と繋がりを持ったとしても、利益を得ることは難しいでしょう。ですので、今回の婚約は解消させていただきます。スコット様のお父様も貴方が次期王妃と繋がりを得た事で私よりも素晴らしい婚約相手を見繕うはずよ」

「シンクレア……」

 その後、シンクレア・コールソンとスコットの婚約は解消。
 シュールマン商会に戻った親子。

「公爵令嬢を敵に回してどうするっこの無能がっ」

 スコットの父は屋敷に到着すると、何度も何度も息子を蹴った。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

「コールソン令嬢との婚約も駄目にしやがって」

「父さんっごめんなさいっ……」

「ニーナのような平民が次期王妃に成れるわけないだろうがっ。あんなものは王妃の慈悲で生かされる側室だっ。勘違いしおって」

 その後も父の怒りは収まらず、スコットが気を失うまで続いた。
 シュールマン商会はコールソン男爵との婚約を得てから強引な取引が頻発していた為、婚約解消が知れ渡ると今までの契約者は蜘蛛の子を散らすように去って行った。
 何とか事業を続けるも新たにできた商会に残っていた契約も奪われ、結局業績の良い商会に買われ父はスコットを見捨て愛人と去って行った。
 一人残されたスコットは行く当てもなく、商会の下働きとして働く事に。

「おい、誰かぁこっちを手伝っくれないか? 」

「俺……手伝いましょうか? 」

「お前に任せたら、価値も分からない平民に渡しちまうだろう。あっちを掃除しとけ。絶対に、商品には触るなよ」

「……はい」

 ふとした瞬間に過去の失態が知れ渡り、一目での接客も重要な仕事も割り当ててもらえず掃除ばかりさせられていた。
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