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現実は恋愛小説のようにはいかないのよ
現実は恋愛小説のようにはいかないのよ
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今、巷で人気の小説がある。
身分違いを題材にした恋愛小説。
『真実の愛は身分を超える』
内容は、侯爵令嬢が伯爵令息に一目惚れをして父に頼んで無理や婚約を結ぶところから始まる。
『貴方は私の物なのよ』
『私を優先しなさい』
甘やかされて育った侯爵令嬢は自分の思い通りにならないと癇癪を起すような性格。
伯爵令息は立場上婚約者との仲を改善しようと努力するも、婚約者の高慢な態度に辟易していた。
追い掛けてくる婚約者から逃げた先で、朗らかな平民に出会う。
自身の苦しみを受け止めてくれる平民に安らぎを覚え、次第に惹かれ始める伯爵令息。
秘密の関係だったが、婚約者の異変に気が付いた侯爵令嬢が後を付けると平民の存在に気が付く。
『貴方、彼は私の婚約者よ。平民風情が親しくしないで』
直接忠告するも、態度を変えないことに苛立ち嫌がらせを始める。
平民を守る為に距離を取っていたが、その事で二人は自身の気持ちを自覚。
『あの女……』
二人は人目を忍んで街に買い物へ出かける。
それを偶然婚約者に目撃されてしまう。
怒りが頂点に達した侯爵令嬢は、平民を誘拐する計画を実行。
平民は誘拐されるも、すんでのところで伯爵令息に助け出され事なきを得る。
誘拐事件を調査していくと、婚約者の侯爵令嬢の指示だと判明。
伯爵令息は証拠や証人を集め、卒業パーティーで事件について侯爵令嬢を追及し断罪。
その後、婚約は解消となり侯爵令嬢は修道院へ。
伯爵令息と平民は婚約し、幸せに暮らしました……という物語。
平民のアンナは学園入学に胸を躍らせていた。
「こんな事って本当にあるのね……楽しみっ。んふふ、お母さん待っててね」
平民が特待生枠で学園に通えるようになったのは数年前。
毎年増えつつある平民だが、まだ貴族の方が多い。
学園に入学できる事は平民には夢のような事。
試験の後に面接を受け、合格した者だけが通える。
アンナは嬉々とした様子で学園に足を踏み入れる。
「きゃっ」
浮かれ切っていたアンナ。
校舎に続く石畳に躓き、前を歩く人物に突撃してしまった。
「君、大丈夫か?」
「はい。ごめんなさい。躓いちゃって……」
それが、アンナとアイザックの出会い。
二人は同じクラスとなり、親密になっていく。
それからアイザック本人から貴族であるのを聞き、態度を改めるも……
「気にする必要はない。僕達は友人なんだから」
「はい」
アンナは、アイザックと過ごせることに浮かれていた。
「なんだか、あの小説みたい……」
そんな風に思ったのはアンナだけではなかった。
『あの二人、親密過ぎませんか?』
『トラヴァース様は、婚約者様がいらっしゃるのに……』
『お相手は平民の方ですわよね?』
『クローディア様はどうなさるのかしら』
噂は隣のクラスへと伝わり、学年全体へと広がって行く。
「貴方、少し宜しいかしら?」
「はい」
「アイザック様と親しいと聞いたのだけど、それは本当かしら?」
「はい。アイザックとは仲いいですよ」
「……アイザック? 貴方は、平民と聞いたのだけど貴族の彼をそう呼んでいるの?」
「学園は平等ですよ。友人を名前で呼ぶことは悪い事ではありませんよ」
「彼はそれを許しているのかしら?」
「アイザックですか? アイザックがそう呼んでほしいって言ったのよ」
天真爛漫に告げるアンナ。
「……彼が……」
「あの……ところで、貴方は誰? 私はアンナよ」
アンナは手を差し出し握手を求める。
「私は、アイザック・トラヴァースの婚約者、クローディア・アルドリットよ」
差し出された手にたいし、クローディアは貴族の作法で挨拶を返す。
「貴方があの……」
「あの? あのとは何かしら?」
「えっいえ、なんでも……とても……貴族らしい方だと思いまして……」
「……そう。ご存じないかもしれませんが、貴方とアイザック様の関係について良からぬ噂を流している方がいるようなの。私はそのことを忠告しに来たの」
「良からぬ噂ですか?」
「貴方達二人が親密だと」
「親密? 私達は友人なので、仲がいいのは確かですよ」
「……平民の貴方に貴族の常識を押し付けてしまうようだけど、彼と私の婚約は家同士の繋がりなの。おかしな噂が出回っては困るのよ」
「おかしな噂なんて……私達は友人で、親しいのは事実です。もしかして私の事を心配してくれたんですか? 嬉しい。クローディアさんはとは初対面だけど、仲良くなれそう。私達姉妹みたいじゃないですか?」
「何を言っているの? 私達が姉妹? 間違っても今後同じことを言わないで。貴方が彼との関係を友人を名乗るのであれば、二人きりで会うのは控えなさい。それに、名前で呼ぶのも誤解を生むからやめるべきよ」
「誤解だなんて。私は後ろめたい事はしていません。間違っている事はしていないし、私は私を変えるつもりはありません。クローディア様がアイザックの婚約者だからと言って、彼の交友関係について口を挟むような行動は間違っているわ」
「……貴方は分かっていないのよ。貴族というものを」
「ここは学園です。身分を持ち出さないでください」
「平民の貴方にはそうでも、貴族の私達は違うのよ」
「地位というのはそんなに大事ですか?」
「当たり前の事を言わせないで」
「私が貴族であれば問題ないと?」
「貴族だとしても、貴方は婚約者のいる男性にイヤらしく接触していることに代わりないわ」
「イヤらしいって……クローディアさんは身分関係なくアイザックと親しくしている私の事が気に入らないんですよね?」
「違うわ、常識のない貴方が嫌いなの」
「私が嫌いなのを、身分で誤魔化しているだけじゃないですか」
「いえ、私は貴方の全てが嫌いなのよ」
「酷いです。私はクローディアさんとも仲良くしたいだけなのに」
「平民の貴方と仲良くするつもりは無いわ」
「クローディアさん平民だからと線を引くべきではないわ。私達は仲良くなれるはずよ」
「いい加減にしなさい」
「アンナッ、大丈夫か?」
二人の口論を聞きつけた、アイザックが登場。
「アイザック……」
潤んだ瞳でアイザックを見上げるアンナ。
「……クローディア、アンナに何をした?」
責めるようなアイザック。
「私は、学園で広まっている噂について尋ねていただけよ」
「噂?」
「アイザック様はご存じありません? 貴方と平民のアンナ様の親密過ぎる関係についての噂を」
「僕とアンナの? 僕達は友人だ」
「えぇ。アンナ様も友人だと仰っていたわ」
「なら、どうしてアンナは涙を流しているんだ?」
アンナを庇うように立つアイザック。
「あら、アンナさん。いつの間に泣いていたの?」
クローディアと会話している時は、涙を流していなかった。
アイザックが来て、いつの間にか泣いていたアンナ。
「やめろクローディア」
「ごめんなさい、アイザック。私の存在がアイザックの迷惑になっているなんて知らなかったの」
「迷惑なんかじゃない。クローディアにそう言われたのか?」
「うん。平民の私はアイザックと親しくするべきじゃないって……アイザック……アイザック様に近付くなと……」
「……クローディア。君とは婚約しているが、僕の交友関係にまで口を出すのはやめてくれ。僕が誰と仲良くしようと君には関係ない」
「アイザック様、それは本気ですか?」
「あぁ。アンナ、大丈夫か? 教室に戻ろう」
アンナとアイザックはクローディアを置き去りにしてその場を去る。
中庭での会話は、周囲の生徒によって新たな噂となって拡散された。
それから、クローディアとアイザックの関係は悪化。
アイザックはアンナと親しくしているのをクローディアに見せつけるよう振舞いだす。
そんな三人に、生徒達は困惑。
二年生になる頃には、その関係は公然の事実に。
『あの方達、どうなるのかしら?』
『もしかしたら、婚約も見直されたりするのではありませんか?』
『相手は平民ですよ? 』
『トラヴァース様と平民が街で買い物をしているのを目撃した者がいるそうよ』
高位貴族の問題に誰もが興味を示す。
周囲に注目されようとお構いなしな二人。
アイザックとアンナは一緒に食堂を利用し、目撃したクローディアに責め立てられる。
次第に周囲も厳しく忠告するクローディアより、涙目で耐えるアンナに同情しはじめる。
『あの三人て、あの小説のようではありませんか?』
『私も以前からそのように思っていましたわ』
三人の関係があまりにも小説と酷似していた事で、学園の生徒は観劇でも見ているように現実の三人を小説と重ね合わせる。
そして、自身もほんの少しでも物語に関わろうと平民に近付きそっと手を差し伸べる。
彼らの中では、クローディアは卒業式に断罪とまではいかなくとも婚約を解消されるのではないかと楽しみ始めている。
他人の婚約破棄ほど面白いものはないと、貴族達は興味津々。
「ねえ、アイザック……すごく大事な話があるの……秘密なんだけどね……」
「うん。僕に何でも話してアンナ」
クローディアの十八回目の誕生日パーティーの招待状が貴族達に届けられる。
「アイザック様。私の誕生日パーティーなのですが、エスコートをお願いできますか?」
「……その日は忙しいかもしれない」
「……何かあるのですか?」
「あぁ、ちょっと。遅れるとは思うが、出席はする」
「そうですか、分かりました。アイザック様のお越しお待ちしております」
クローディアの誕生日パーティー当日。
招待状を送った貴族の全員が出席。
「クローディア様、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます」
主催者として、招待客全員と挨拶を交わしていく。
婚約者のアイザックが不在の為、クローディアの父がエスコートを務めている。
『ねぇ、あちらを見て』
『えっ……アイザック様……よね?』
『どうして……』
『招待されていないでしょう?』
『どうなさるおつもりなのかしら?』
突然、主催者とは別の場所でざわめきが起きる。
「クローディア、誕生日おめでとう」
「……アイザック様。わざわざありがとうございます」
「遅れてしまって申し訳ないね」
「いえ。事前に伺っておりましたから……よそれより……」
「あぁ、アンナもクローディアの誕生日を祝いたいというので連れてきた」
「……そう。アンナさんを招待した覚えはありませんが、わざわざ来てくれてありがとう」
「いえ。同級生として招待状が来なかったのは寂しかったですが、どうしてもアルドリット公爵家には訪れたいと思っていたんです」
「それは、どういう意味でしょう?」
「……アルドリット公爵様。私は、アンナです。貴方の娘です」
思わぬアンナの言葉に会場内に緊張感が走る。
身分違いを題材にした恋愛小説。
『真実の愛は身分を超える』
内容は、侯爵令嬢が伯爵令息に一目惚れをして父に頼んで無理や婚約を結ぶところから始まる。
『貴方は私の物なのよ』
『私を優先しなさい』
甘やかされて育った侯爵令嬢は自分の思い通りにならないと癇癪を起すような性格。
伯爵令息は立場上婚約者との仲を改善しようと努力するも、婚約者の高慢な態度に辟易していた。
追い掛けてくる婚約者から逃げた先で、朗らかな平民に出会う。
自身の苦しみを受け止めてくれる平民に安らぎを覚え、次第に惹かれ始める伯爵令息。
秘密の関係だったが、婚約者の異変に気が付いた侯爵令嬢が後を付けると平民の存在に気が付く。
『貴方、彼は私の婚約者よ。平民風情が親しくしないで』
直接忠告するも、態度を変えないことに苛立ち嫌がらせを始める。
平民を守る為に距離を取っていたが、その事で二人は自身の気持ちを自覚。
『あの女……』
二人は人目を忍んで街に買い物へ出かける。
それを偶然婚約者に目撃されてしまう。
怒りが頂点に達した侯爵令嬢は、平民を誘拐する計画を実行。
平民は誘拐されるも、すんでのところで伯爵令息に助け出され事なきを得る。
誘拐事件を調査していくと、婚約者の侯爵令嬢の指示だと判明。
伯爵令息は証拠や証人を集め、卒業パーティーで事件について侯爵令嬢を追及し断罪。
その後、婚約は解消となり侯爵令嬢は修道院へ。
伯爵令息と平民は婚約し、幸せに暮らしました……という物語。
平民のアンナは学園入学に胸を躍らせていた。
「こんな事って本当にあるのね……楽しみっ。んふふ、お母さん待っててね」
平民が特待生枠で学園に通えるようになったのは数年前。
毎年増えつつある平民だが、まだ貴族の方が多い。
学園に入学できる事は平民には夢のような事。
試験の後に面接を受け、合格した者だけが通える。
アンナは嬉々とした様子で学園に足を踏み入れる。
「きゃっ」
浮かれ切っていたアンナ。
校舎に続く石畳に躓き、前を歩く人物に突撃してしまった。
「君、大丈夫か?」
「はい。ごめんなさい。躓いちゃって……」
それが、アンナとアイザックの出会い。
二人は同じクラスとなり、親密になっていく。
それからアイザック本人から貴族であるのを聞き、態度を改めるも……
「気にする必要はない。僕達は友人なんだから」
「はい」
アンナは、アイザックと過ごせることに浮かれていた。
「なんだか、あの小説みたい……」
そんな風に思ったのはアンナだけではなかった。
『あの二人、親密過ぎませんか?』
『トラヴァース様は、婚約者様がいらっしゃるのに……』
『お相手は平民の方ですわよね?』
『クローディア様はどうなさるのかしら』
噂は隣のクラスへと伝わり、学年全体へと広がって行く。
「貴方、少し宜しいかしら?」
「はい」
「アイザック様と親しいと聞いたのだけど、それは本当かしら?」
「はい。アイザックとは仲いいですよ」
「……アイザック? 貴方は、平民と聞いたのだけど貴族の彼をそう呼んでいるの?」
「学園は平等ですよ。友人を名前で呼ぶことは悪い事ではありませんよ」
「彼はそれを許しているのかしら?」
「アイザックですか? アイザックがそう呼んでほしいって言ったのよ」
天真爛漫に告げるアンナ。
「……彼が……」
「あの……ところで、貴方は誰? 私はアンナよ」
アンナは手を差し出し握手を求める。
「私は、アイザック・トラヴァースの婚約者、クローディア・アルドリットよ」
差し出された手にたいし、クローディアは貴族の作法で挨拶を返す。
「貴方があの……」
「あの? あのとは何かしら?」
「えっいえ、なんでも……とても……貴族らしい方だと思いまして……」
「……そう。ご存じないかもしれませんが、貴方とアイザック様の関係について良からぬ噂を流している方がいるようなの。私はそのことを忠告しに来たの」
「良からぬ噂ですか?」
「貴方達二人が親密だと」
「親密? 私達は友人なので、仲がいいのは確かですよ」
「……平民の貴方に貴族の常識を押し付けてしまうようだけど、彼と私の婚約は家同士の繋がりなの。おかしな噂が出回っては困るのよ」
「おかしな噂なんて……私達は友人で、親しいのは事実です。もしかして私の事を心配してくれたんですか? 嬉しい。クローディアさんはとは初対面だけど、仲良くなれそう。私達姉妹みたいじゃないですか?」
「何を言っているの? 私達が姉妹? 間違っても今後同じことを言わないで。貴方が彼との関係を友人を名乗るのであれば、二人きりで会うのは控えなさい。それに、名前で呼ぶのも誤解を生むからやめるべきよ」
「誤解だなんて。私は後ろめたい事はしていません。間違っている事はしていないし、私は私を変えるつもりはありません。クローディア様がアイザックの婚約者だからと言って、彼の交友関係について口を挟むような行動は間違っているわ」
「……貴方は分かっていないのよ。貴族というものを」
「ここは学園です。身分を持ち出さないでください」
「平民の貴方にはそうでも、貴族の私達は違うのよ」
「地位というのはそんなに大事ですか?」
「当たり前の事を言わせないで」
「私が貴族であれば問題ないと?」
「貴族だとしても、貴方は婚約者のいる男性にイヤらしく接触していることに代わりないわ」
「イヤらしいって……クローディアさんは身分関係なくアイザックと親しくしている私の事が気に入らないんですよね?」
「違うわ、常識のない貴方が嫌いなの」
「私が嫌いなのを、身分で誤魔化しているだけじゃないですか」
「いえ、私は貴方の全てが嫌いなのよ」
「酷いです。私はクローディアさんとも仲良くしたいだけなのに」
「平民の貴方と仲良くするつもりは無いわ」
「クローディアさん平民だからと線を引くべきではないわ。私達は仲良くなれるはずよ」
「いい加減にしなさい」
「アンナッ、大丈夫か?」
二人の口論を聞きつけた、アイザックが登場。
「アイザック……」
潤んだ瞳でアイザックを見上げるアンナ。
「……クローディア、アンナに何をした?」
責めるようなアイザック。
「私は、学園で広まっている噂について尋ねていただけよ」
「噂?」
「アイザック様はご存じありません? 貴方と平民のアンナ様の親密過ぎる関係についての噂を」
「僕とアンナの? 僕達は友人だ」
「えぇ。アンナ様も友人だと仰っていたわ」
「なら、どうしてアンナは涙を流しているんだ?」
アンナを庇うように立つアイザック。
「あら、アンナさん。いつの間に泣いていたの?」
クローディアと会話している時は、涙を流していなかった。
アイザックが来て、いつの間にか泣いていたアンナ。
「やめろクローディア」
「ごめんなさい、アイザック。私の存在がアイザックの迷惑になっているなんて知らなかったの」
「迷惑なんかじゃない。クローディアにそう言われたのか?」
「うん。平民の私はアイザックと親しくするべきじゃないって……アイザック……アイザック様に近付くなと……」
「……クローディア。君とは婚約しているが、僕の交友関係にまで口を出すのはやめてくれ。僕が誰と仲良くしようと君には関係ない」
「アイザック様、それは本気ですか?」
「あぁ。アンナ、大丈夫か? 教室に戻ろう」
アンナとアイザックはクローディアを置き去りにしてその場を去る。
中庭での会話は、周囲の生徒によって新たな噂となって拡散された。
それから、クローディアとアイザックの関係は悪化。
アイザックはアンナと親しくしているのをクローディアに見せつけるよう振舞いだす。
そんな三人に、生徒達は困惑。
二年生になる頃には、その関係は公然の事実に。
『あの方達、どうなるのかしら?』
『もしかしたら、婚約も見直されたりするのではありませんか?』
『相手は平民ですよ? 』
『トラヴァース様と平民が街で買い物をしているのを目撃した者がいるそうよ』
高位貴族の問題に誰もが興味を示す。
周囲に注目されようとお構いなしな二人。
アイザックとアンナは一緒に食堂を利用し、目撃したクローディアに責め立てられる。
次第に周囲も厳しく忠告するクローディアより、涙目で耐えるアンナに同情しはじめる。
『あの三人て、あの小説のようではありませんか?』
『私も以前からそのように思っていましたわ』
三人の関係があまりにも小説と酷似していた事で、学園の生徒は観劇でも見ているように現実の三人を小説と重ね合わせる。
そして、自身もほんの少しでも物語に関わろうと平民に近付きそっと手を差し伸べる。
彼らの中では、クローディアは卒業式に断罪とまではいかなくとも婚約を解消されるのではないかと楽しみ始めている。
他人の婚約破棄ほど面白いものはないと、貴族達は興味津々。
「ねえ、アイザック……すごく大事な話があるの……秘密なんだけどね……」
「うん。僕に何でも話してアンナ」
クローディアの十八回目の誕生日パーティーの招待状が貴族達に届けられる。
「アイザック様。私の誕生日パーティーなのですが、エスコートをお願いできますか?」
「……その日は忙しいかもしれない」
「……何かあるのですか?」
「あぁ、ちょっと。遅れるとは思うが、出席はする」
「そうですか、分かりました。アイザック様のお越しお待ちしております」
クローディアの誕生日パーティー当日。
招待状を送った貴族の全員が出席。
「クローディア様、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます」
主催者として、招待客全員と挨拶を交わしていく。
婚約者のアイザックが不在の為、クローディアの父がエスコートを務めている。
『ねぇ、あちらを見て』
『えっ……アイザック様……よね?』
『どうして……』
『招待されていないでしょう?』
『どうなさるおつもりなのかしら?』
突然、主催者とは別の場所でざわめきが起きる。
「クローディア、誕生日おめでとう」
「……アイザック様。わざわざありがとうございます」
「遅れてしまって申し訳ないね」
「いえ。事前に伺っておりましたから……よそれより……」
「あぁ、アンナもクローディアの誕生日を祝いたいというので連れてきた」
「……そう。アンナさんを招待した覚えはありませんが、わざわざ来てくれてありがとう」
「いえ。同級生として招待状が来なかったのは寂しかったですが、どうしてもアルドリット公爵家には訪れたいと思っていたんです」
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