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そう簡単には変わらない
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私は王子と共に奥の部屋へと向かうと、司祭は既に王子をもてなす準備をしていた。
「ケイトリーン嬢の今後についてなのだが、大聖堂で聖女誕生を国民に向け宣言し、パレードで王宮まで向かいお披露目パーティーを開催したいと思っている」
王子は人前では私を『聖女様』と呼ぶが、事実を知らない者がいないところでは『ケイトリーン嬢』と呼ぶ。
聖女でない私が『聖女』と宣言するのは心苦しいが、覚悟を決めるしかない。
王子も教皇も私に確認を求めるが、これは王族が既に決定し私に報告している段階なので受け入れるしかない。
「畏まりました」
「こちらも問題ありません」
司祭も協力的だ。
「ありがとう。当日の流れなどは追って連絡する。着用するドレスもこちらで準備するがデザイナーがケイトリーン嬢の元に訪れるので、その日は大聖堂での活動は補佐達だけに任すつもりだが問題ないか? 」
「はい、こちらで対応させて頂きます」
「それでケイトリーン嬢は……ここでの生活はどうだろうか? 」
「はい、以前より余裕があるのでゆっくり過ごさせていただいております」
「余裕がある……あの生活でか? 」
王子は唖然とした表情を見せる。
「はい」
あちらの国では午後の掃除が終わると国民の意見に直接耳を傾け、その後王宮に戻り王妃教育を学び祈りを捧げ、一日の授業内容を復習する生活だった。
まだ『聖女』と公表していないので、国民と直接対面し話を聞く事は出来ず。
更には王妃教育も学ぶ必要もないので、その分の時間は空いている。
なので、私の午後にはかなり余裕がある。
「聖女様は……まさか……以前お仕えしていた聖女様と同じ生活を? 」
「いえ、午後の授業はありませんので夕方から夜にかけての時間は空いております」
「夕方から夜……」
確か、こちらの国の聖女は高齢で無理をさせない為に祈りだけに専念してもらっていたと聞く。
補佐達も聖女様の体調を考え、刺激するようなことはせず優雅に過ごさせていたらしい。
そのせいで司祭は、聖女様がお亡くなりになっても補佐達に奉仕活動など提案を躊躇っていた。
それが聖女の生活と刷り込まれた彼らからしたら、私の生活は信じられないもののようだ。
「ケイトリーン嬢は大丈夫なのか? 世話係だったとはいえ、聖女の生活を実行するというのは体に負担がかかるものだろう? 」
そうだった。
私は聖女の世話係という設定でした。
「いっ今のところは問題ありません」
「そうか。だか、無理はしないでくれ。『聖女様』は多くの者が待ち望んでいた。それなのに倒れられたら……」
王子の心配の仕方は複雑ではあるが、心配してくれたのは素直に嬉しい。
あちらの国では、誰も私を気に掛けてはくれなかった……
「はい」
王子は目的を果たすと王宮へ戻って行った。
私は再び大聖堂に戻ると、大聖堂の扉の前で待機していた使用人が慌てた様子で大聖堂に入って行くのを確認した。
大聖堂に入ると驚愕の光景を目にした。
「えっ……」
今まで頑なに掃除を行わなかった令嬢達が皆、箒を手にしていた。
困惑のまま中を歩いて行く。
「聖女様、お帰りなさい。えっと……ジェイコブ王子は……? 」
私に声を掛けていながら、イニアスは私の後方に視線を送る。
「王子は王宮に戻りました」
「へっ? 」
王子が既に去ったことを告げると、イニアスと漸く視線が合う。
私達の会話を聞いていた令嬢達は、持っていた箒を使用人に押し付け再びいつもの定位置に着く。
先程掃除をしていたワーグナーだけ王子と会話した事で、掃除をすれば王子に声を掛けてもらえると考え皆掃除をしていたのだろう……
「まさか……」
大聖堂の前にいた使用人はいつ王子が戻ってくるのか扉の前で待機していたのか?
そう簡単には変わらないですよね。
「ケイトリーン嬢の今後についてなのだが、大聖堂で聖女誕生を国民に向け宣言し、パレードで王宮まで向かいお披露目パーティーを開催したいと思っている」
王子は人前では私を『聖女様』と呼ぶが、事実を知らない者がいないところでは『ケイトリーン嬢』と呼ぶ。
聖女でない私が『聖女』と宣言するのは心苦しいが、覚悟を決めるしかない。
王子も教皇も私に確認を求めるが、これは王族が既に決定し私に報告している段階なので受け入れるしかない。
「畏まりました」
「こちらも問題ありません」
司祭も協力的だ。
「ありがとう。当日の流れなどは追って連絡する。着用するドレスもこちらで準備するがデザイナーがケイトリーン嬢の元に訪れるので、その日は大聖堂での活動は補佐達だけに任すつもりだが問題ないか? 」
「はい、こちらで対応させて頂きます」
「それでケイトリーン嬢は……ここでの生活はどうだろうか? 」
「はい、以前より余裕があるのでゆっくり過ごさせていただいております」
「余裕がある……あの生活でか? 」
王子は唖然とした表情を見せる。
「はい」
あちらの国では午後の掃除が終わると国民の意見に直接耳を傾け、その後王宮に戻り王妃教育を学び祈りを捧げ、一日の授業内容を復習する生活だった。
まだ『聖女』と公表していないので、国民と直接対面し話を聞く事は出来ず。
更には王妃教育も学ぶ必要もないので、その分の時間は空いている。
なので、私の午後にはかなり余裕がある。
「聖女様は……まさか……以前お仕えしていた聖女様と同じ生活を? 」
「いえ、午後の授業はありませんので夕方から夜にかけての時間は空いております」
「夕方から夜……」
確か、こちらの国の聖女は高齢で無理をさせない為に祈りだけに専念してもらっていたと聞く。
補佐達も聖女様の体調を考え、刺激するようなことはせず優雅に過ごさせていたらしい。
そのせいで司祭は、聖女様がお亡くなりになっても補佐達に奉仕活動など提案を躊躇っていた。
それが聖女の生活と刷り込まれた彼らからしたら、私の生活は信じられないもののようだ。
「ケイトリーン嬢は大丈夫なのか? 世話係だったとはいえ、聖女の生活を実行するというのは体に負担がかかるものだろう? 」
そうだった。
私は聖女の世話係という設定でした。
「いっ今のところは問題ありません」
「そうか。だか、無理はしないでくれ。『聖女様』は多くの者が待ち望んでいた。それなのに倒れられたら……」
王子の心配の仕方は複雑ではあるが、心配してくれたのは素直に嬉しい。
あちらの国では、誰も私を気に掛けてはくれなかった……
「はい」
王子は目的を果たすと王宮へ戻って行った。
私は再び大聖堂に戻ると、大聖堂の扉の前で待機していた使用人が慌てた様子で大聖堂に入って行くのを確認した。
大聖堂に入ると驚愕の光景を目にした。
「えっ……」
今まで頑なに掃除を行わなかった令嬢達が皆、箒を手にしていた。
困惑のまま中を歩いて行く。
「聖女様、お帰りなさい。えっと……ジェイコブ王子は……? 」
私に声を掛けていながら、イニアスは私の後方に視線を送る。
「王子は王宮に戻りました」
「へっ? 」
王子が既に去ったことを告げると、イニアスと漸く視線が合う。
私達の会話を聞いていた令嬢達は、持っていた箒を使用人に押し付け再びいつもの定位置に着く。
先程掃除をしていたワーグナーだけ王子と会話した事で、掃除をすれば王子に声を掛けてもらえると考え皆掃除をしていたのだろう……
「まさか……」
大聖堂の前にいた使用人はいつ王子が戻ってくるのか扉の前で待機していたのか?
そう簡単には変わらないですよね。
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