【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒

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新たな授業

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 毎朝の日課である王宮の祈りの場を清掃中。
 
「聖女様」

 訪れたのはマドリゲス。

「はい」

 彼はあれから定期的に訪れている。
 王子の側近であり私への報告係を担っている為、良好な関係を築こうとしているのかもしれない。
 彼は気を使ってか、普段掃除を終える十分前にやってくる。

「報告があります」

「報告……はい、なんでしょう」

 今日も他愛無いいつものおしゃべりかと思った。

「本日から令嬢にはダンスの授業を受けていただきたいのです」

「ダンス……ですか? 」

 何故急にダンスの授業が決定したのか疑問に思いマドリゲスを見上げる。

「聖女様お披露目のパーティーで、王子とダンスを披露することになりました」

「……王子と……ダンス」

 王子とのダンスは嫌な過去を思い出す。
 あちらの国では突然婚約が決定し、聖女と王子婚約お披露目パーティーでダンスを披露させられた……
 ダンスはあちらの国で経験済みなので不安ではない。
 それよりも何故私が王子とダンスをしなければならないのか……
 そちらの方が気になってしまう。

「聖女様の事情を把握し爵位的にも相手が出来る者が限られているというのと、パーティーの開始で王族がダンスをするのが我が国の習わしとなっております」

「はい」

 ここまでは理解できたが、それでも王子でなくても……と思ってしまう。

「……ジェイコブ王子にはまだ婚約者が決定しておらず……」

「あぁ……」

 マドリゲスの一言で察する。
 聖女補佐達が王子の婚約者候補と言われているが、決定はしていない。
 決めかねている段階なので、王子の婚約者候補に挙がっていない私が丁度良かったのだろう。
 私もしなければならないし、王子もしなければならない。
 二人とも相手がいなかったので都合が良かったというわけだ。

「王子とのダンス……気が進みませんか? 」

「いえ、構いません」

 誰かとダンスをしなければいけないなら、知っている人間の方が増しだ。
 それに私は王子の婚約者になるつもりはないし、誰も私が王子の婚約者になることを望んでいない。
 私がパーティーに参加するのは聖女お披露目の今回くらいだろう。
 なんどもあることではないので、相手が誰であろうと関係ない。

「……俺が変わりましょうか? 」

「王子とダンスされるんですか? 」

「違いますっ。聖女様のパートナーを俺がするってことです」

 びっくりした。
 マドリゲスは本気で王子とダンスがしたいのかと思った。
 その……ねぇ。
 補佐をしている令嬢の事を避けていたので、瞬時にそっちに繋げてしまった。

「マドリゲス様と私ですか? 」

「はい」

「マドリゲス様は……婚約者……いらっしゃらないのですか? 」

「はい。俺に婚約者はいません」

 王子とダンスするのとマドリゲスとダンスするのは、どっちがましなんだろうか?
 変な誤解を受けないのは……マドリゲスか? いや、婚約の座を狙っている令嬢が誤解する可能性が……
 王子の方が……どっちが正解?
 
「んん……私がマドリゲス様を選んでしまったら、王子様は困るのではありませんか? お相手が決まらず……」

「候補者の中から選択するだけです。一応、候補者である令嬢を順番に誘っています」

 それを聞いて納得するも、王子としては候補者全員に気を使わなければならないだろう。
 私という存在に逃げたのに、再び悩ますのは気の毒にも……


「あっ、そうなんですね……王宮で決定した事ですので王子にお願いします。気を使って頂きありがとうございます」

「……聖女様はジェイコブの事……」

「……王子様がどうなさいました? 」

「……王妃とか……ご興味が? 」

「ありません。絶対に嫌です」

「あっ、そうなんですか? 」

「あ゛い」

 過去の苦い経験から強く否定してしまい、他愛無い会話程度の気持ちで聞いたマドリゲスは驚いていた。

「……そうですか」

「あっ、はい……えっと、世話係をしていた時に聖女様は王子の婚約者も兼任されており、大変な想いをしていたのを間近に感じていまして……」

「そうだったんですね」

「はい……」

 どうにか誤魔化せただろうか?

「では、ジェイコブ王子にもダンスのパートナーの件問題ないと伝えておきます」

「はい」
 
 確認を終えるとマドリゲスは去って行く。
 そして私は今日からダンスの授業が始まることになった。
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