【完結】恋愛に向いていない女性の記録。婚約者との関係改善を目指して記憶喪失のフリをしたら……婚約解消になった編

天冨 七緒

文字の大きさ
21 / 75

フランツ・タドミール

しおりを挟む
「フランツ様っ」

 突然トゥーリッキが俺の前に現れた。

「トゥー……リッキ? 」

「フランツ様ぁ」

「……なんのようだ? 」

 心構えなく現れた事で、完全に動揺してしまった。
 俺を捨てた女が現れたくらいで……弱みを見せるな。

「私、あの方と婚約……フランツ様と一緒にいたいんです」

「……急に……なんだ? 」

 俺は……騙されているのか?

「だって、私……フランツ様の事、愛しておりますもの」

 真剣な表情のトゥーリッキ。
 彼女は本気だ。
 簡単に許せるものではない。
 だが……
 彼女は俺を裏切ったのではなく、相手が侯爵という事で断れなかったのだろう……
 過去の俺と同じように。
 俺だけでも彼女の気持ちを分かってやらなければならなかったのに、俺は彼女を責めた……
 度量の小さい男では『許す』という選択は難しいかもしれないが、俺は違う。
 彼女の全てを愛している。
 多少の間違いだって……

「俺も……愛してる」

 俺達は抱きしめ合い、誤解があった事を互いに謝罪した。
 トゥーリッキは伯爵に強引に侯爵との婚約を進められ断れなかったと話す。
 伯爵はトゥーリッキも婚約を喜んでいたように語っていたが、実際は侯爵の提案に喜んで承諾したのは伯爵だけに違いない。
 子供は親の道具ではない。
 俺とトゥーリッキは境遇が似ていると実感する。

「侯爵に黙って来たのか? 」

「……それなのですが……私も父も騙されていたのです」

「騙されていた? 」

「オルトロス侯爵は……我が家との業務提携の延長として私との婚約を望んだのですが、侯爵の事業は偽りだらけでした」

「偽り? どいうことだ? 」

「……調査が入りました」

「調査? 」

「侯爵は他国から大量の武器輸入を計画していたようで、王族の監視対象だったみたいです。それで婚約後は我が家を隠れ蓑にする予定だったとか……」

「武器輸入……」

 侯爵の計画はどんな理由があったとしても、謀反を計画していたと捉えられても仕方がなく、刑罰は免れない。
 その調査は細部まで行われる。
 当然婚約したカタストロフィ伯爵家にも調査が入り……最悪、我が家にも捜査の手が入るだろう。
 疚しい事はないので調査されても問題ないが、調査されたという事実が貴族に広まると厄介だ。
 婚約解消し新たに婚約しようとした者に捨てられ、その婚約者が選んだ相手は謀反を計画していた。
 ここまでくると、俺達がいくら『関係ない』と主張しても貴族は俺達と距離を置くだろう。
 それに問題はそれだけではない……

「トゥーリッキ、俺は愚かな事をしてしまった」

「どう……されたんです? 」

「俺は……君を信じることが出来ず……こんな契約をしてしまった……」

 俺は先日セラフィーナと交わした契約書をトゥーリッキに差し出す。

「……なんですか? この契約……」

「今の彼女は……事故の後遺症で記憶喪失となった。その為、全ての約束は契約書として残すことに……」

「だからって、こんな契約は……」
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜

咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。 もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。 一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…? ※これはかなり人を選ぶ作品です。 感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。 それでも大丈夫って方は、ぜひ。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。

MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。 記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。 旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。 屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。 旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。 記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ? それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…? 小説家になろう様に掲載済みです。

どうしてあなたが後悔するのですか?~私はあなたを覚えていませんから~

クロユキ
恋愛
公爵家の家系に生まれたジェシカは一人娘でもあり我が儘に育ちなんでも思い通りに成らないと気がすまない性格だがそんな彼女をイヤだと言う者は居なかった。彼氏を作るにも慎重に選び一人の男性に目を向けた。 同じ公爵家の男性グレスには婚約を約束をした伯爵家の娘シャーロットがいた。 ジェシカはグレスに強制にシャーロットと婚約破棄を言うがしっこいと追い返されてしまう毎日、それでも諦めないジェシカは貴族で集まった披露宴でもグレスに迫りベランダに出ていたグレスとシャーロットを見つけ寄り添う二人を引き離そうとグレスの手を握った時グレスは手を払い退けジェシカは体ごと手摺をすり抜け落下した… 誤字脱字がありますが気にしないと言っていただけたら幸いです…更新は不定期ですがよろしくお願いします。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

処理中です...