【完結】恋愛に向いていない女性の記録。婚約者との関係改善を目指して記憶喪失のフリをしたら……婚約解消になった編

天冨 七緒

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パーティー

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 彼と距離を置き、静かに主催者を待つ。
 その間もちらちらと視線を感じる。
 
「本日はパーティーに参加して頂き感謝いたします」

 主催者の登場によって、視線から解放された。
 だが次第にダンスの時間が迫り、じりじりと近寄ってくる人物に気が付く。
 過去の婚約者としてダンスした時には、私の方が彼を探し目が合うと彼は一度目を伏せ溜息を吐いていたのを思い出す。
 思い出す彼は全部不満を態度に表していたのだと分かる。
 気持ちが冷めると彼に対してもだが、自分に対しても嫌いになって行く。
 
「それではパーティーをお楽しみください」

 主催者の挨拶が終わると周囲が一斉に動く。
 婚約者や気になる相手を誘う光景を眺めつつ、ダンスホールから遠ざかっていく。

「セラフィーナッ……待ってくれ、約束したろ? 」

 彼の行動を受けれ入れていいものか悩む。
 
「少し、一人にさせてもらえませんか? 人が多すぎて……」

「あっ……そうなのか……一人だと心細いだろう、俺も一緒に……」

「いえ、婚約者ではない方と一緒にいたら誤解されてしまいますから」

 『婚約者ではない方』というと何か言いたげだったが、彼は引き下がる。
 一人になりたいと言った手前、静かな場所を探す。
 会場には食事の準備もされているが、どの貴族もお話やダンスに夢中。
 稀に、高級なワイン目当てに何杯も頂いている者もいる。
 私は会場の片隅で静かに観察していた。

「まぁギャスパル令嬢ではありませんか、こちらでどうされたんです? 」

 友人とまではいかないが、パーティーやお茶会で会話する令嬢だ。
 
「ごきげんよう、流石はレオミュール公爵家のパーティーだと感心していたのです」

「そうですわね」

 自身の事を語れば足元を救われるが、本日の主催であり公爵の話題では誰も嫌味などは口にしない。

「令嬢は、どうされたのですか? 」

「私は、ギャスパル令嬢が一人でいらっしゃたので気分でも優れないのかと心配になってしまいまして」

「まぁ、そうでしたの? お気遣いありがとうございます」

「令嬢は最近お辛い事がありましたでしょ? 皆さん心を砕いておりましたのよ」

 令嬢は私を心配していると言いながら『知りたい』という欲を抑える事が出来ないよう。
 要は私が婚約解消した経緯が知りたいらしい。
 ただの婚約解消であれば令嬢の価値を落とすような噂で終わる。
 だが、パーティー開始前やダンスを誘う光景を目撃した事で私達がどういう状況なのか興味深々のよう。
 万が一男性側の瑕疵であれば、私の婚約解消を揶揄した際処罰を受けるのは噂を拡散した令嬢側となるので前もって確認しておきたいのだろう。
 目の前の令嬢は伯爵家。
 婚約解消で傷を負ったとしても、私は侯爵令嬢。
 侯爵家を敵に回すことはしたくないのだろう。
 真実であれば口にしても許されるが、間違っていたら……

「どのような事でしょうか? 」

 婚約解消の事だろうとは分かっていても、敢えて伯爵令嬢から言わせた。

「それは……その……タドミール伯爵令息の事ですわ」

「あぁ、その事ですか。そちらは私の口からは言えませんの。詳細をお伝えする事は出来ませんが、皆さん気に掛けてくださっていたのですね。『私は問題ありません』と、令嬢からお伝え出来ますか? 」

「……そうなのですね。わかりましたわ」 

 『私問題ありません』という言葉と動揺を見せない振る舞いさらには元婚約者の対応、突撃してきた令嬢は私ではなく相手側に問題があるのでは? と顔が言っている。
 突撃令嬢の援護射撃するつもりでいた令嬢達は私の反応が予想と違ったので、会釈をして去って行く。

「令嬢の婚約者様はどちらに? これからダンスをされるのですよね? 」

 この令嬢も、私と一緒でトゥーリッキによって婚約者に蔑ろにされていた。
 令嬢は伯爵家だが、令息は子爵。
 令嬢の方が格上だが、嫁ぐことを考え令嬢は強くは言えないのだろう。
 嫌味と受け取ってしまいがちの社交界だが、令嬢は本当に私を心配してくれていたのかもしれないと今になって反省する。

「私は……本日は……彼とはしません」

「そうなんですか? 令息はお怪我でもされているのですか? 」

「いえ。私の気分です」

「……ふふっ、そういう時もありますよね」

「えぇ。それでは、令嬢とお話しできてよかったです」

 吹っ切れた様子の彼女。
 短い会話だったが、表情が変わった。
 
「こちらこそ、私も令嬢と話せてよかったわ」

 私の婚約解消は誰かの勇気に……
 もし、あの令嬢が婚約解消を選んでも私の責任じゃないわよね? 

「……しぃらないっ」
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